song for holly nightアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/17〜12/21
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●本文
「ロックバトルの番組は、うち以外にもあるんだ。そこのところ、ちゃんとわかってるんだろうな?」
「はい、負けないように頑張ります!」
番組表を見ながらの上司に、発破をかけられたのは、若きプロデューサー。
各TV局はそれぞれに協力しあうこともあれば、時には熾烈な争いをするライバルでもあったりする。
系統が同じ番組ならば、その戦いは熾烈なものなのだ。
この『Battle the Rock』は、コンクリートジャングルの中で開かれるミュージシャンたちのサバイバル番組だ。
第1回目の放送は無事終了したが、ほっとする暇はない。
すぐに第2回の準備に入らなくてはならないのだ。
第2回のテーマは『聖夜』に決めていた。
第3回に『聖夜』にしよう、という案もあったが、第3回は時期的に『決意』などといった新年に向けてのもののほうが妥当であろうということで、第2回が『聖夜』になったのだ。
燃え上がる魂を背景に浮かび上がる『魂を響かせろ! Battle the Rock』の文字。
『the sound of holly night』と書かれた荷台風の扉が、上に開く。
開いた先には、ミュージシャンたちが自らが解き放たれる時を待っている。
時が満ちたとき、聖夜に熱き魂が燃えあがるのだ。
●リプレイ本文
●オープニング
暗めの画面に踊る『魂を響かせろ!』と一瞬映し出され、その後、炎が画面を踊り、『Battle the Rock』という文字を描く。
カメラは次に、舞台の扉を映す。
スポットが当てられた扉は、大きく『the sound of holly night』と書かれており、静かに、ゆっくりと、開いていく。
扉と呼応するかのように、徐々に大きくなっていく声援がフェンスで区切られた観客席から溢れだす。
ステージの上にあらわれたのは、黒いジャケットに銀のアクセサリーを身につけた二人の男。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
「今回のテーマは、聖夜‥‥。聖なる夜で始まるミュージシャンたちのロックバトル」
「今日、聖夜の中で、魂を響かせるのは、この4組」
二人の決め台詞が終わったところで、画面は切り替わり、カメラは今宵のミュージシャンをそれぞれに映し出す。
緋桜 美影(fa1362)がまず映し出された。
真っ赤なボンテージの衣装に翼、と悪魔を思わせる出で立ちの美影は、緑色の髪をスッとかき上げる。
美影はかけていたサングラスをはずすと、カメラに向かって、チッチッチッとサングラスを揺らしてみせる。
「緋桜 美影がソロで登場! 二人で聖夜を過ごすどこかの誰かへ、赤い悪魔が祝福を歌う」
次に映し出されたのは3人。
天使を連想する白い衣装の小田切レオン(fa1102)は、カメラに向かって、薄いブルーの瞳を優しく細め、笑顔を向ける。
ややコミカルに赤いサンタ帽をかぶった小悪魔のTosiki(fa2105)。
そして、最後のシャルト・フォルネウス(fa1050)は堕天使の衣装に身を包んでいた。
「聖なる夜のために。‥‥聖なる夜を歌い上げるために、集ったミュージシャン。期間限定3PieceBand『レシト』! 胸に秘めた熱い決意。レシトが、本物の想いを伝える!」
「聖夜を祝うヴァンパイア。自らのために、そしてこの曲を聴くすべての人のために、この瞬間のために燃え上る! flicker〜R2〜!」
黒いゴシック調でまとめられた衣装に身を包んだヴァンパイアが二人。
黒の中に、二人の青い瞳と、胸元のダークレッドのバラが印象的に浮かぶ。
ラシア・エルミナール(fa1376)と嶺雅(fa1514)の二人だった。
二人とも派手なパフォーマンスはせずに、ただ、素直にカメラに視線を向けた。
最後に映し出されたのは、一対の天使と堕天使。
長い白い髪に白い薔薇をかぶった天使、エミュア(fa0755)と、黒い衣装に身を包んだ堕天使のkanon(fa1892)の二人だ。
静かにアコースティックギターを持つカノンの横で、エミュアは相変わらず元気にカメラに駆け寄った。
「天使と堕天使。別たれた二人が、その理由を、その意味を問う。Alea jacta est!」
紹介が終わり、カメラがまた、大きくぶれるように動いて、司会の二人を映す。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」
●緋桜 美影
「緋桜 美影。『Xday−1.NIGHT(Eve)』」
最初にコールされたのは美影だった。
美影の頭には角が、そして、深紅にそろった翼にレザーボンテージ。
まさに赤い悪魔となって舞台に向かう。
そのままスマートにマイクを持つと、ハードに歌い始める。
夜空の帳すら見えない 灰色の闇の中
行くあてさえ知らず 身体寄せ合う彼氏彼女
見かねた星が舞い降りて 2人導く橋になる
美影の歌は、恋人と過ごすクリスマスという、日本独特の宴に対する皮肉。
しかし、その中で、愛し合おうとする二人を後押しするかのような歌だった。
一つ目のサビがおわり、舞台の上を原色のライトが踊り、赤い悪魔がその中心に降り立っていた。
歌はそのまま、2番にサビに入っていく。
今この刹那が重要 君に訪れた選択の時
今宵 イマコソ 覚悟決めろ!
一度乗っかったイベントだろ 行きつくとこまで行っちまえ
今宵 イダケ 愛し人を!
野暮な理性は眠らせて 求める本能フル回転で
今宵 カラダ 刻め愛を!
後悔は先に立たないし 役にも立たない
今宵 ココロ 満たせ愛で!
観客は、その皮肉に、悪魔が人を堕落させるときに言うかのような衝撃的な歌詞に、激しいビートに酔いしれる。
もしも凍えたこの街に 真実の奇跡起きるなら
それは 愛し合う 2人の上で
きっと ヒカリ 輝くだろう!
ダン! と、ドラムの音で閉められた歌に、ワンテンポ遅れて、落とされる照明。
観客の熱狂を後目に、赤い悪魔は暗闇の中に消えていった。
●期間限定 3PieceBand 『レシト』!
「果報は寝て待てって言葉が有るが‥‥。全力で歌い上げてから、寝るとするか。やるだけやって、天命を待とう‥‥」
そう言ったはトシ。
「いい歌になってるんだから、安心だって。大丈夫だぜ」
レオがニカッと笑いながら応えた。
「ま、とにかく頑張ろう」
とシャルトが続く。
‥‥そして、『レシト』がコールされた。
「レシト! 『Navy blue Christmas』」
ベースを持ったレオが中央に、エレキギターのシャルトが上手、キーボードのトシが下手に、とそれぞれ配置につく。
歌は、静かな夜空に浮かぶ星空を思い描くようなシャルトのエレキギターから始まった。
それに透き通る音色のトシのキーボードが加わる。
最後にドラムが加わり、曲にテンポを加える。
黄昏が空を覆う頃 地上の星々が煌きはじめる
哀しいほど 心に染み込み 聖夜(よる)の天を仰ぐ
人混みに孤独憶え 君の事を思い
逢えなくなる日が来るなんて あの時は思いもしなかったんだ
徐々に上がっていく歌のテンションはサビにきて絶頂に。
レオの歌声に、シャルトとトシのコーラスがハーモニーを織りなす。
見上げればNavy blue 君の瞳と同じNavy blue
If you were in a place of a promise
I was not able to say on Christmas before one year
トシの英語の歌声が響き、それを補うかのようにシャルトとトシが日本語で歌う。
もし 君が約束の場所に居てくれたなら
一年前のクリスマスには言えなかった
そして、三人の歌声が重なる。
素直な気持ちを伝えるよ
過去になってしまう前に 見失う前に 本当の気持ちを伝えるよ
見上げればNavy blue 君の瞳と同じ Navy blue
想いが込められた歌が終わる。
この歌を聴いた人に、伝えなければならないこと想いださせ、伝える勇気を与える歌。
そんな歌が終わり、客席からの拍手が起こった。
拍手をうけ、レオがニカッとトシとシャルトに笑いかけた。
●flicker〜R2〜
「flicker〜R2〜。『vampire kiss』」
コールがされ、ラシアとレイが舞台に上がる。
二人のヴァンパイアの歌は、二人のハーモニーから始まった。
冷たい粉雪 舞い降りて
聖夜の街 白く染め上げる
いったん空気が止まり、一転してアップテンポのロックに変わる。
赤で変わることのない信号
立ち止まり耳を澄ませば静かにキャロルが流れてる
日が沈みゆく中で視界は一色に染まり
無色の君に触れることを躊躇う
ラシアの強烈なパワーと、レイの中性的な幻想的な声。
それぞれの持ち味を、一節ごとに交互に歌い分ける。
サビに入り、コーラスに入る。
Quiet Christmas eve.
時だけが過ぎていき
絡めた腕を強く引き寄せたけど
何も言う言葉見付からずにただ口紅(ルージュ)の痕に唇を寄せる
歌いながら、レイがラシアの腕を引き、情熱的に抱きしめる。
そして、そのまま、歌が続く。
It wishes that this holy night be unending.
天使の祝福を皆信じてる
観客からの声援で今にも消えそうな最後の1音。
しかし、それが、完璧に消え去るまで動かない二人。
音と共にゆっくりと消えていく照明。
声援が消えるまで、照明は消えていたままだった。
●Alea jacta est
「もうそろそろ、出番だよね? ワクワクだね。‥‥よーし、がんばるぞー!」
立ったり座ったりと多少忙しないが、片手を大きく上に上げて気合いをいれるエミィ。
「そうだね。そろそろ時間だね」
と、うなずいたカノンだが、エミィを観ていて、少し心配になった。
「そうだ、エミュアちゃん、ちょっと深呼吸してから行こうか」
「え? うん、わかった。でもどうして?」
「今回は聖夜だからね、バラードだし、深呼吸して落ち着いてから行こう。俺もするからさ」
「‥‥なるほど。そうだね、カノちゃん、ありがと」
と言うと、大きく深呼吸をするエミィ。
「‥‥よーし、がんばるぞー!」
今度は小さい声で、そして片手を小さく上に上げたエミィだった。
「Alea jacta est。『revelation(神の啓示)』」
『Alea jacta est』がコールされ、舞台に上がるエミィとカノン。
エミィは舞台中央のスタンドマイクを両手でしっかりと握る。
やや隠れる形になる舞台の端に、ギターを持ったカノンが立った。
スローテンポのやや寂しげな音色、カノンのギターから歌が始まった。
この夜 届いて あなたに
祝福のキスと 慈愛の微笑みを
静かにしっかりと響く天使の歌声。
それに、堕天使の低い声が所々に加わっていく。
最後のフレーズに向かうにつれ、気持ち、歌声。
それに呼応して、ギターの音色も少し強くなっていく。
Beatius est magis dare quam accipere
鎖で繋がれた 傷跡をなぞり
嫉妬の眼でみつめ 笑顔を無くし
Nemo fortunam jure accusat
But a thing good at it?
ただ救われる術は 心 熱くする事
ギターの音が不意に止んだかのように静まる。
天使の声が響き、全てを誘った。
世界に笑顔を 世界を魅了しよう
1番が終わり、2番も同じようにしっかりと歌が続き、そして、サビが終わり、最後のフレーズになる。
ただ許される術は 視線 交わせる事
世界に心を 世界を誘惑しよう
It can do, if it is you and does
最後の音が伸び続け、小さくなるにつれ、目を閉じ、顔をしたに向けるエミィとカノン。
そして、沈黙が訪れ、その沈黙は、次の瞬間、歓声に打ち消された。
●エンディング
4組すべての演奏がおわり、後は勝敗を決するだけになった。
再度登場した司会者の二人組が、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
観客達の手に握られているのは、10枚のコイン。
観客達は、そのコインを自らが思うように分配し、舞台の各ミュージシャンのハコに向かって投げ入れる。
コインの玉入れの要領だ。
時々箱に入らず明後日の方向に投げてしまう人もいるようだが、ハコの中に見る見る貯まっていくコイン。
そして、投票が終了した時、ハコの中に一番コインが入っていたミュージシャンの扉の鍵が開く。
第二回の『Battle the Rock』の勝者、つまり開かれた扉は、『flicker〜R2〜』の扉。
多少照れながらでてくるラシアと、飄々としているレイ。
ラシアはレイに小さな声で言った。
「勝負と来たからには、負けるのは御免だって言ったの覚えてる?」
「うん、イロイロと覚えてるヨ?」
「いろいろ? ま、勝って良かったよ。あんたのおかげだね」
言ってレイの肩をポンと叩くラシア。
「イヤ、二人の力ダヨ。‥‥さて、観客のみんなのアンコールに応えないとネ」
「ああ、そうだね。それじゃ一丁派手に盛り上げてやろうぜ」
舞台中央にたつ、二人。
わき起こる歓声。
そして、画面に流れるエンディングテロップ。
そのバックミュージックは、『flicker〜R2〜』の『vampire kiss』だ。
第二回の放送は、聖なる夜に舞い降りたヴァンパイアによって、幕を下ろした。