do the dreamアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/11〜09/15

●本文

 実写が織り込まれたパペットアニメ。
 ストリートのステージから始まったトレーラーの旅は、倉庫街、ビルと走り抜け、もう一度ストリートに戻ってきた。
 帰ってきたストリートは、出て行ったときからの歴史が刻まれている。
 トレーラーから飛び出す二人の男。
 渋めの衣装は旅立っていったときとはまた違うワイルドさを醸し出していた。
 旅立つときにトレーラーで開けた金網の穴、そこから、二人がステージに上る。

 番組プロデューサーの望月は、これで、32度目となる新しいオープニングの鑑賞を終えた。
 口元には浮かぶ表情は笑顔。
 目を移すと、オープニングアニメとほぼ同じように再現されたステージ。
 ステージには、番組のシンボルマークであるギターと剣のエンブレムが趣味よく配置されている。
 各回のテーマが記される部分には、『the sound of』と書かれている。
 つまり、未だテーマは決まっていないのだ。

「にやにやしてないで、そろそろ仕事してください」
 横にいるスタッフの一人から突っ込みが入る。
「うん、がんばってるんだけど、このオープニングと舞台を見ると、今まで色んなアーティストの歌が聴けて、いい夢が見れたなぁって実感してさ」
 笑顔の中にも物憂げさ、寂しさが伺える。
 スタッフは、ため息をついた後、大きく息を吸ってから口を開いた。
「望月さん! だいたい、まだ終わってないんですよ! 今から始まるっていうのにそんな状態でどうするんですか! どうせ夢なら新しい夢に向かって行ってください!」
「‥‥それだ!」
「はい?」
「今回のテーマは『夢』にしよう」
 顔が輝きだす望月。
「うん、そうだよ。夢は見るもんじゃないよね。するものだ! よし、がんばろう! さ、まずは会議だ! 急いで急いで!」
 気合いを入れて動き出す望月。
 横にいたスタッフを急かすほどの急激な復活に、思わず笑い出すスタッフ。
「はい、がんばりましょう!」

 その後の会議は順調に進んだ。
 第一回のテーマだけではなく、第二回のテーマまで決まるほどの順調ぐあいだ。
 ちなみに、第二回のテーマが、秋の夜長っていいよね、という一言がきっかけで『夜』に決まったのは、トップシークレットである。


 画面に映るギターと剣。
 そこに番組タイトルである「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が連なる。
 続いて「the sound of dream」と今回のテーマが入る。
 新たなるアーティストのバトルが始まった。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa2105 Tosiki(16歳・♂・蝙蝠)
 fa2521 明星静香(21歳・♀・蝙蝠)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa3847 宇津木 驚(25歳・♂・犬)
 fa3867 アリエラ(22歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●楽屋室閑話
 『flicker様控え室』と書いてある扉の向こう側。
 本番前の一時、メンバーが精神を集中している、と思いきや、その中は意外にも大騒ぎだった。
「あ! お菓子だ。食べても良い?」
 アリエラ(fa3867)の普段より半音上がったうれしそうな声が響く。
 もちろん、flickerの控え室の中で、だ。
 中のテーブルには、EUREKA(fa3661)の作ったクッキーやカップケーキが所狭しと並べられている。
「ええ、どうぞ」
 ゆーりの許しがでて、ホクホク顔でカップケーキに手を出すアリー。
「‥‥‥いいな。ゆーりお母さん、俺も食べたいな」
 それを見ていた早河恭司(fa0124)が言う。
「‥‥‥」
 笑顔で恭司を見つめるゆーり。
「食べたいな、お母さん」
 繰り返す恭司。
「お母さんを食べちゃダメダヨ?」
 嶺雅(fa1514)の横からの突っ込みに、恭司より先に反応したアリー。
「今のって愛の告白ー?!」
「違うから」
 2秒で否定する恭司。
 その手にはいつの間にかクッキーが三枚ほど握られている。
 俺も食べるーとレイもクッキー退治に加わる。
「‥‥賑やかになったな」
 苦笑したのは、黒羽 上総(fa3608)だ。
 彼も、手元に甘味をしっかりと確保してからの発言だ。
「でも、嫌いじゃないだろ?」
 Tosiki(fa2105)の言葉に、クロは、ああ、と返事をしながら、一口目のカップケーキを口の中へ。
 先ほどまで騒がしかったのが、嘘のように静かな時間。
 お菓子を机の上に並べている間の歓声と比べると、台風と凪ほどの違いだ。
 今は、皆、一心不乱に食べているため、会話が少ないのだ。

 そこへ扉がノックされた。
「もう時間? しまったわね。司会者の二人に挨拶しておこうとおもったのに
 ユーリが言う。
「どうぞ」
 クロが扉を開けると廊下にいたのは、同じ番組に参加する予定の宇津木 驚(fa3847)だった。
「宇津木驚です、今日はご一緒に仕事をすることになりまして、宜しく御願いします」
 深々と頭をさげるキョンに、クロも礼を返す。
「まぁ、入ったらいいんじゃないか?」
 トシがパイプ椅子を広げる。
 四人用の楽屋で広いとはいえ、7人となると、あまり広くは感じなくなる。
 恐縮しながら楽屋に入り椅子に座るキョン。
「コンニチハー。こちらこそヨロシクネ。さぁ、駆けつけ三杯ならぬ三個ダヨ」
 レイがカップケーキを三つもってキョンの前に置いた。
「こんなにですか? すいません」
「そう言えば、後一人揃えば、出演者全員が揃うんだね」
 恭司の言葉に、頷くアリー。
「‥‥おお! じゃあ、もう一人呼んでくるヨ」
 二人の会話を小耳に挟んだレイは、そう言いながら、周りの返事も待たずに廊下に出ていた。
「‥‥それじゃあ、私も、下田さん、呼んでこようかしら。あ、もちろん上田さんも」
 イタズラを思いついたかのようなご機嫌な笑顔のゆーりに、誰も逆らう人はいなかった。
「じゃあ望月さんもっ」
 アリーがゆーりに続いて言う。
 結果、レイに続いてゆーりとアリーも楽屋を後にする。
「‥‥賑やかな楽屋になりそうだ」
「でも、嫌いじゃないだろ?」
「ああ」
 先ほどと同じ会話をしたトシとクロ。
 違ったのは、クロのケーキが二つめだったという所だけだった。


●オープニング
 ステージの上には、オープニングのアニメから飛び出してきたような二人の男性。
 二人は、マイクを持ちクールに語り始める。
「‥‥‥ストリートから始まったミュージシャンたちのサバイバル。それが、再びストリートに戻ってきた!」
「今日繰り広げられる音楽バトルのテーマは、『夢』! 全てを魅了するのは、見果てぬ展望なのか。それとも一夜の夢か」
「今日、登場してくれるミュージシャンはこの5組!」

 最初に登場したのはアリーだった。
 長めのピンクのブラウスにジーンズにスニーカーという元気スタイル。
「咲き続ける蒲公英、アリエラ。彼女の明るい歌声が暖かな風を引き起こす」
 やや緊張した面持ちのアリーだったが、名前を呼ばれ顔を上げた瞬間に、表情が変わった。
 アリーが手を振る。
 その表情は、見る人をホッとさせる満面の笑顔だった。

 2番目に登場したのは、恭司。
 不良っぽく学生服を着た恭司は、被っているサングラスを取りながら、前に進む。
 そして、礼儀正しく、しゃなりとお辞儀をし、そのまま手を振った。
「早川恭司! 紳士的な立ち振る舞いの裏にある甘い危険なナイフが、今日も、心を抉る」

「『flicker』。とびきりの音楽集団が、今日は、闇から夢の世界への案内人になった」
 真っ暗の中に、黄、赤、緑、青とカラフルのネクタイが浮かび上がる。
 しばらくすると、それぞれが近づいてきた。
 まず、闇から登場したのは、真っ黒なスーツにシャツ。そこに黄色いネクタイを締めるトシ。
 次に登場したのはクロだ。
 大きな黒いサングラスを光らせながら、登場したクロのネクタイは赤だ。
 そして、緑のネクタイのレイも登場し、最後にゆーりが現れた。
 ゆーりも、三人と同じ男性用の衣装を身に纏っており、ネクタイの色以外は同じ衣装の4人が揃った。
 四人それぞれがもう一度アップになる時、ユーリは、サングラスを少しずらし、ウィンクで、カメラに目線を送る。
 カメラが引き、全体が映し出される。
 真っ黒な集団がカメラの向こうを怪しく見つめていた。

 4番目に登場したのは、キョンだ。
 Tシャツにジーンズとシンプルな衣装のキョンは、登場シンプルだった。
「ニューウェーブ登場! これから数多の波に揉まれようとも確実に夢に向かって進みゆく。宇津木驚!」
 名前を呼ばれるも、クールに片手を上げる。

「華やかな美しい薔薇のような明星静香だが、今日は違う。我々は、激情の闇の縁に振れ、ゆっくりと落ちていくようなその棘を味わうことになる」
 最後に登場になったのは明星静香(fa2521)だ。
 シズカが前に進む。
 彼女の纏った黒のライダージャケットからは、ワインレッドに包まれた白い肌が浮かぶ。
 妖しく誘う紫の足をすらりと伸ばした後、わき起こる観客の声援に余裕の表情で答えるシズカ。
 シズカは、軽やかに反転すると、舞台袖に戻っていった。

 全5組の紹介が終わり、カメラを司会の二人に戻す。
 白と黒の司会者は、番組の開始を宣言する。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●アリエラ
「アリエラ。『花束』」
 暖かな色のスポットライトに照らされたアリーがアコースティックギターを演奏し始める。

手には太陽 心に愛を そして君に花を贈るよ 友情の花を

 伸びやかにアリーの声も響き、続いてテンポが上がり、ドラムとベースが加わる。
 
出会ったのは遠い昔 君も私も制服姿
ぶつかって 怒って 謝って 笑った
そんな始まり ねぇ 憶えてるかな?

一人遠い場所に行く君に ガンバレのエールと共に贈りたい
人一倍寂しがり屋な君のために 私が出来る事 これくらいだから
空を見上げて 両手を伸ばして この花を見たら思いだしてね?
「どんなに離れていたって 大丈夫!」

 アリーの歌に合わせて、ひらひらと舞い落ちる、銀の光。
 忘れることの出来ない、幻想的な花びらの舞。

手には太陽 心に愛を そして君に花を贈るよ 両手一杯の花束を!
夢に向かって走る君を 遠くで応援しているからね

 じゃらん、とギターの音色が最後に響いた。


●早川恭司
「早川恭司。『道標』」
 コールされ、軽快なリズムが鳴り響く。
 ギャウーンと鳴る恭司のエレキギターだけでなく、全体的に響き渡る軽快なリズム。
 出来るだけ簡単なコードを使った曲譜に学生風の衣装と相まって、まるでそこは学園祭の軽音部の様だ。

小さい頃はたくさんの夢を見てた
友達と一緒の夢を見て
自分の将来の夢を見て
夜寝てまた夢を見る
楽しい事悲しい事なんか一まとめにしてさ

成長するにつれいつの間にか見なくなる
「まだ夢を見てるのか」と言われ
悪い事の様に思い込む

夢を見て何が悪い
見る事の出来なくなった大人達の羨望を受け止め
それすら糧にして夢を見る
それは指標 未来へ続く道標

 スゥっと静かに引いていく音。
 それが静寂になる瞬間に、最後の歌詞が恭司の口から紡がれた。

だからたくさん夢を見よう? 恐れることなんて何もない


●flicker
「flicker。『Eternal Dreamer』」

一つの夢を追いかけて がむしゃらに走るって美談?
そんなの俺に似合わない 夢がたった一つなんて冗談

 レイの歌声とトシの澄んだピアノの音色が響く。
 そして、サックスとギターの音色が加わり、薄暗いステージに、バーが合いそうな大人の雰囲気が醸し出される。
 が、静かな雰囲気はそこで一転し、ドラムのビートが加わり、ロック調に取って代わる。
 圧倒的なレイの歌声に、他のメンバーの声も混じり、賑やかな歌が響き渡る。

真面目な奴等が夢叶え 燃え尽き症候群
Only Oneの向こうには もう何も見えないのかい?
不真面目なくらいで丁度良い 肩の力抜いてさ
進む道自分から狭くしないで Some Dreams貪欲に求めろ!

夢 追いかけ(追いつき)いっそ追い越せ
夢 溢れて(零れて)落ちたら拾えばいいだけ

 ジャズには欠かせないそれぞれの独奏パート。
 トシ、クロ、ゆーりと、順に、それぞれアドリブを交えながら、ソロをこなしていく。

いつまでも いつまでも 果てることない限りない夢
満足なんて必要ない 永遠に夢見ろ

We are dreamers!

 締めの言葉にスポットが動く。
 そして、それぞれが手を頭上に掲げ、指を鳴らす。
 同時に、今まで、あった音が一瞬で消える。
 不思議な余韻を残しながら、照明が落ちていった。


●宇津木驚
 キョンは、お願いしたバックバンドのメンバーに頭を下げた。
 本番中のためあまり大きな声を出せないためだ。
 リハーサルで音合わせをしたため、周りの腕は理解している。
 もしかしたら、自分よりも腕が上かもしれない。
 そう思うと、キョンはまた大きく頭を下げた。
 そして、名前がコールされた。

「宇都木驚。『新たなる新世界』」
 立ちこめる煙の中をかき分けてキョンが登場する。
 スポットだったライトが舞台全体を照らし出すと、それを合図にして、キョンの指がキーボードの上を踊り始めた。
 バックの演奏に負けず劣らずに、 キーボードから奏でられる、アップテンポな音色。

見上げる太陽、蒸せる様な暑さに、気落ちすしそうになる
この先何が、待ち受けていようとも、僕達は進むだけ

地図を頼りに、明日に旅立つ、その向うに有る、未来のフロンティア探しに
ready go ready go ready go

 キョンの歌声がここでいったん止まる。
 今度は、キョンの指が、客を魅了する番になったのだ。
 歌が無い分、激しく動き回る指先。
 バックの音も小さくなり、響き渡るキーボードの音色。

さあ行こう、嵐の夜も乗り越え、希望と言う望みを、胸に抱いて
真っ白な、地図には、何も無い、新たに見つけ出す、フロンティア探しに
僕達は歩き出す!
GO WAY!


●明星静香
 出番を待つシズカの視線の先には、お菓子があった。
 先ほど貰ったカップケーキやクッキーがテーブルの上に置いてあるのだ。
「‥‥後で、かな。今甘い物を食べたら、胸を突く痛みが表現できなくなっちゃうかもしれないものね」
 そう言い、鏡を見直すシズカ。
 鏡に映ったのはシズカと、控え室のテーブル。
 ちょうど、カップケーキが映る位置だ。
「‥‥‥ちょっとくらいなら大丈夫かな。うん。歌を歌うのにパワーが必要だもんね」
 ちょこんと一つだけクッキーを指でつまむと、はむと口にするシズカ。
「よし。がんばるぞ」
 シズカはそう自分で気合いを入れ直し、舞台へ向かった

「明星静香。『Live』」
 ベースの低音が響く。
 それにシズカのエレキギターとドラムが加わる。
 そこに、シズカの歌声が加わる。
 それは、美しくが激しい、そして悲痛な叫びのような歌声。

月さえ眩しい闇の中
絶望の海に沈んで行く
届かない光 何もない
ゆがむ世界に1人たたずむ

 低音が基調だった曲調が、今度は高音が爆ぜるかのように変化する。
 それに伴い、シズカの歌声もまた、変わる。
 悲痛の中に込められる決意の歌声。

それでも わかってても 夢が欲しい
絶望だけでも生きなきゃいけないから
何もない わかっている 夢が欲しい
生きるための強さ胸に刻みたいから

月みたいに明るくなくていいから
星みたいに小さくてもいいから
思い描いた夢を抱きしめ

 激しかった歌が静かに終わる。
 余韻を残すように続く演奏の後、シズカが囁くように言った。

生きよう‥‥

 薄暗かった照明が少しだけ強くなる。
 シズカは今まで使っていたピックを、想いを込めて胸に強く抱きしめると、そのピックを投げた。
 全ての人にこの想いが伝わるように。
 その想いとは、生きる希望。


●エンディング
 5組の演奏が終わり、再び、司会者の二人組が登場する。
 いつもどおり、投票が促される。。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客たちが各自の持っている10枚のコインが、各ミュージシャンに届けと、薄暗い舞台に光となって降り注ぐ。
 投票が終わり、しばらくすると、今まで暗かった舞台が、まるで日が昇るかのように赤く染まる。
 赤い光を背景に、登場したのは4人の人影だった。
 『flicker』の四人が、夜明けに立ち会うことになった。
 赤い舞台も一段落すると、4人は演奏の準備に入る。

 レイと歌声とトシの演奏が響き、『Eternal Dreamer』がスタートする。

 ハイテンポな曲調に変わるとき、画面に流れてくるエンドロール。
 最後までたくさんの夢を乗せながら、番組は終了した。