Praise the lifeアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
10.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/16〜10/20
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●本文
「次回なんですけど、本当にこの予定でいいんですか?」
番組のスタッフが進行表を見ながら尋ねる。
「ああ、次回は、ラス前だからね。本当のストリートで番組を撮りたいなって。あと、第一回と同じテーマに戻ろうと思ってるんだ」
番組のプロデューサーの望月はそう答えた後、それはともかく、と話題を変える。
「今回なんだけど、しっかり準備は出来てる?」
「はい、それはだいじょうぶです」
スタッフはそう答えた後、もう一度、資料を確認して、大丈夫です。と繰り返した。
望月がステージを見下ろせる場所に立ち、番組中の動きの確認をしていた。
ストリートを想わせるステージ。
背景が暗くなり青に近い闇が広がる。
そこに輝く星々。
本物の星ではなく、人工的に作り出された光とはいえ、そこには不思議と生命の鼓動を感じる。
それは、ステージを作り上げた職人の魂なのか、今までこのステージで輝いていたアーティストたちの魂なのか、それともただの錯覚なのだろうか。
そんな疑問が心に浮かんだ。
画面には交差する剣の真ん中にギターの番組のシンボルマークが浮かび上がっていた。
いつも通り、「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が続き、今回のテーマである「the sound of the life」と文字が並ぶ。
これから、ここ、ステージで、生命が燃え上がる時にでる美しい輝きが火花を散らし合うことになるのだ。
●リプレイ本文
●楽屋室閑話
収録を控えた控え室。
DESPAIRER(fa2657)がなにやらそわそわしていた。
「‥‥?? どうかした?」
手動のミルを廻しながら、緊張しているのか、と心配をする亜真音ひろみ(fa1339)。
「‥‥‥緊張? ‥かも」
ディーの答えに、佐武 真人(fa4028)が言う。
「大丈夫だ。練習通りに、いつも通りにやれば、うまくいく」
真人の言葉に、半分頷き、半分首を振るディー。
「‥うん、それは‥平気です。でも、そうじゃなくて」
トントン。
扉がノックされると、ディーはびくりと反応した。
『Blackbirds様控え室』と書いてある扉を開く。
紅 勇花(fa0034)が控え室に入ると、きょとんとした顔のひろみと真人。
「‥‥な、なに? どうかしたの?」
勇花が驚いたように言う。
「いや、なんでもない。ただ驚いただけだ」
真人が言う。
「そう? ならいいけど。そうだ、すぐにもう一組のお客さんも来るって」
勇花が首をかしげながら言った。
「この度は仕事をご一緒できて光栄です」
胸に手を当てて一礼をしたのはアレクサンドル(fa4557)だ。
「ご挨拶代わりに、麗しきレディのイメージされる薔薇を紳士への手みやげはこちらを」
そう言い、手みやげを渡していくノワール。
「い、いや、本番前にはさすがに」
アルコールを渡され、困る真人にノワールが仰々しく答えた。
「打ち上げにでも御用立ていただければ幸いです」
「もう挨拶はその程度でいいかしら?」
ノワールの横にはあきれ顔の星野 宇海(fa0379)が、手みやげのお菓子を並べていた。
「まぁまぁ。みんな、来てくれてありがとう、さ、どうぞ」
ひろみもコーヒーを淹れながら、椅子を勧める。
テーブルの上には星海とひろみが用意したお菓子。
「あ、ごめん、手ぶらできちゃった」
勇花が困ったように言う。
「いいって気にしないで」
ひろみの言葉に応えたのは星海だった。
「それでは遠慮せずに」
列んだお菓子をスマートに食べ始める星海。
「せっかく手作りだから、後で感想、聞かせてくれよな」
そう言うひろみも、小さいフォークで器用に食べる。
勇花が、そんな華麗に動く二人の腕にパワーリストが巻かれていることに気がついたのは、後になっての事だった。
Blackbirdsのの控え室。
グループの控え室のため、ソロシンガーの控え室よりは大きいとはいえ、さすがに倍の人数がのんびり出来る広さがあるわけもなく、狭いながらのわいわい騒ぐ空間になった。
その空間の端に座っているディー。
気がついた真人がひろみのお菓子を盛って来る。
「食べないのか?」
「ありがとう」
喧噪を遠くから眺めるように遠くを見ていたディーが横に来た真人に焦点を合わせ、受け取りながら礼を言った。
「騒がしいのは苦手か?」
「うん。‥‥でも、きらいじゃない、かな」
●オープニング
ステージの上には、オープニングのアニメから飛び出してきたような二人の男性。
マイクを持って二人は、おきまりの口上を述べる。
「今宵、開かれる饗宴。それは、ミュージシャンたちのサバイバルバトル」
「繰り広げられる音楽バトルのテーマは、『生命』! 生命、それは最大にして最高の奇跡。それが生み出す歌もまた、最高の奇跡になるのか!」
「今日、登場してくれるミュージシャンはこの5組!」
最初に登場したのは緋桜 美影(fa1362)だった。
赤と黒を基調にしたレザーの衣装を着た美影。
カメラが寄ってくることを確認すると、自らもカメラにより、必要以上に胸元がアップになる。
カメラは、慌てて上に向き、美影の顔を捕らえる。
美影の唇が『スケベ』と声を出さずに動いた。
「歌こそ自らの血肉と断言する、熱き血潮の持ち女! 緋桜美影」
にひひ、と笑いながら、斜めにカメラを見据える美影。
続いての登場は、白金色の和装の女性。
アマラ・クラフト(fa2492)が礼儀正しくお辞儀をした。
「和と洋のコラボレーションが帰ってきた。日本人より日本を愛するロッカー。アマラ・クラフト!」
自らのコールに、いえいえと、控えめに手を振ったアマラ。
客席には手を振ってコールに応えたと思われたのだろう。
歓声が一層大きくなった。
「新加入のメンバーを連れて、今度は姉上が登場! 『BLUE−M』!」
ノワールが、被っていたシルクハットを手に取り、胸元に持って行きつつ、頭を下げる。
一方、星海もブルーから漆黒へと変わるロングドレスを纏い、手を、まるで王室かと思われるような完璧な角度で固定し、左右に小さく振る。
二人の紳士淑女の恭しいお辞儀に、会場から歓声が響く。
「こちらはクラッシックとロックのコラボレーション! 『Blackbirds』!」
コールされたのはディー、ひろみのダブルボーカルとピアノの真人の三人。
ディーとひろみが黒いドレスなのに比べ、真人の衣装はラフそのもの。
ピアノとロック、異質な物同士のコラボレーションだと言うことが、より強調された三人の姿に、声援が送られる。
最後の5組目がコールされる。
「紅勇花。彼女が激しいビートの中に息吹を吹き込む!」
楽屋でのおとなしめの勇花とは違い、照明が当たるところの勇花は、まさに、ビートを刻むミュージシャンそのもの。
一歩前に進み出た勇花は、ギターを持った左手をそのまま大きく挙げて、観客の声援を煽った。
全5組の紹介が終わり、カメラが今度は舞台全体を撮す。
そして、司会者の二人が番組の開始を宣言した。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」
●緋桜美影
「よっ。ひっさしぶりっ」
楽屋からステージへ向かう道すがら、見知った顔のスタッフに声を掛けながら進んでいく美影。
「ステージは変わっても、スタッフはあんまり変わらないなー。夏休み明けの二学期にはイメチェンするのが筋だろ、まったく」
そう言い、笑いながら歩く。
別に、本当に悪態をついているわけではない。
これは彼女が上機嫌な証拠なのだ。
舞台へと向かう道すがら、ヒートアップしていった美影のテンションは、舞台でMAXに達した。
「緋桜美影。『鼓動2ND』」
舞台がスタートした。
ゆったりとスタートした曲に合わせて、美影が、そのままのテンポで歌を歌う。
高鳴る鼓動抱きしめて 皆生まれてきた
命短し唄えよ 人生
胸の鼓動をビートにかえて
命短し唄えよ 人間
迸るリズムが流れる血潮
歌無くて 何の人生 楽しかろう
最初はスローテンポだった歌が、テンポアップし、再度、引きつけるかのようにテンポダウン。
それを繰り返しながら、自らの人生観を歌う美影。
未来と言う名の白紙の楽譜 泥だらけの足跡を刻む
人は生まれながらの シンガーソングライター
自分の人生自分のメロディを 自分の言葉で 高らかに
その人生観は、ただただストレートで、聞く人の心に突き刺さる。
彼女だけに当てはまる歌が、万人の心に届き共感を与える。
そんな矛盾を跳ね返すような歌声が響きわたった。
歌有りて 何の浮世の 辛かろう
歌無くて 何の人生 楽しかろう!
●アマラ・クラフト
テーブルの上の緑茶をすすりと飲み、息を吐く。
衣装のために畳に正座ができないのが惜しいくらいだ。
アマラは、出番に備えて、心を落ち着かせていた。
「‥‥こうしてると‥‥‥」
心が落ち着く、という台詞は心の中で呟いたアマラ。
そうこうしてるうちに、扉がノックされる。
出番が来たのだ。
「アマラ・クラフト。『輪廻の環』」
ゆったりとした厳かなイントロ。
君は目覚めた‥‥ 母なる海から光の元へ‥‥
静かに響き渡る歌声が続いていく。
しばらく厳かな歌声が続いた後、曲が急激に変わる。
今までは止まっていたアマラの腕もうなりを上げ、ギターがハイテンポで刻まれていく。
生命が体験する苦悩や苦痛、困難、それらにぶつかるからこそ、光を増す生命という存在。
それをアマラが歌っていた。
悩み、苦しみ、哀しみ‥‥輝くためには避けられぬ辛い路(みち)‥‥
最後に、スポットライトがアマラを照らすと共に、全ての音が消えた。
バックも、アマラのギターも音を止め、最後に残ったのはアマラの歌声のみ。
さあ、行きましょう‥母なる海へ‥再び輝くために‥
●BLUE−M
「BLUE−M。『Mother』」
ノワールにエスコートされての星海は、長い髪とドレスを煌めかせながら一歩一歩、ステージへ向かう。
対するノワールは、手にした薔薇を、またもやマイクに変えて、星海に手渡す。
そして、それぞれの準備が出来たとき、星海にスポットライトが当たった。
暗闇に彷徨う雫
煌めきを放ち 私を誘う
星海に当たっていたスポットが消え、今度はサックスを吹いているノワールが照らされる。
歌い手と演奏者の交互の掛け合いが繰り返されていく。
そして、三度目の掛け合いの時、ノワールが動いた。
手にしたサックスをスタンドに置き、すぐ横のピアノに向かう。
今まで単体であった歌声が、初めて、他の音とのセッションになった。
白い指先が頬を撫でる
あなたの姿は今も脳裏に焼き付いて
この大きな地球の上で出会う
天文学的確率に 誰が予測できたでしょう?
あなたに会えて良かったと
生まれてきて良かったと
伝えたくて ただ 言いたくて
ピアノの音が止み、響くは星海の歌声だけ。
その歌声も、照明と共に、舞台に染み渡るかのように消えていった。
●Blackbirds
「‥‥どう‥‥しよう?」
「まったく、アタシも迂闊だったよ」
本番直前、ディーとひろみが頭を抱えていた。
「‥‥どうしたんだ? 急に」
真人が不思議そうに尋ねる。
「いやさ、曲のタイトル、完璧に忘れてた」
ひろみが言う。
「もうギリギリだしな。スタッフはなんて言ってるんだ?」
「‥‥タイトル、無し‥‥だそうです」
「‥‥しょうがないか。でも、それならそれで割り切って楽しもう。引きずる方が良くない」
真人が元気づけるように言い、落ち込んでる二人の肩を叩く。
「そう、ですね」
「OK。わかった。気分を変えて行こう! 大丈夫、元気は甘い物食べて、売るほどあるんだ!」
「Blackbirds。『kein Titel』」
名前が呼ばれ、それぞれが位置に付く。
真人が舞台中央屋や後ろに位置するピアノに向かい、ひろみとディーが真人を頂点にピラミッドを描くように舞台に立つ。
そして、その三角形のそれぞれの頂点にライトが当てられる。
流れるように踊る真人の指は、撃ち響かすようにピアノを奏で、不思議とロックミュージックと噛み合っていた。
ピアノに背中を押されるように歌い出すディー。
私が今ここに居る理由はなんでしょうか?
この世界では自分は必要とされてないようで
私の声はあなたに届いていないようで
いつもニュースは厳しい現実を突き付け
巡ってくる悲しい話は私の心を痛めて
何も出来ない辛さが胸を締め付ける
舞台がやや明るくなり、今度はひろみが歌う。
この世に失っていいものなんかない
どれもが大切な生命
無意味な生なんてありはしないんだ
今は無力なこの声でもきっと誰かの力になれる
そう信じて精一杯声を振り絞り唄い続けよう
踏み出せばその一歩は確実に次に繋がっていく
強く明るくなった舞台。
そこで、真人のピアノが止まった。
残ったのは、ディーとひろみの歌声。
今はわずかなこの生命の輝き
いつかあなたに届くよう放ち続けよう
この想いが強く輝きを増すその時まで
あなたに教えてもらった生命の大切さを人に伝えられる日まで
この想いは諦めない
●紅勇花
「紅勇花。『IRRITATION』」
勇花は自らの名が呼ばれたとき、待ちかねたようにギターを手にした。
ドクン、ドクン、ドクン‥‥
心臓の鼓動が、真っ赤な舞台に響き渡る。
心臓の音が止まったとき、勇花が吼えた。
「Don’t stop till the end!」
胸が刻み続ける、終へのCountdown――
誰にも分からない、来るべき“零の刻”――
胸を掻き毟る、意味不明な焦燥――
何かに追われるように走り行く、行く当ても無いまま――
「灯火の消える前に何かを掴め!」と 誰かの叫ぶ声が聞こえる――
只並べられているだけの歌詞が、徐々に感情を帯びてくる。
真っ赤だった舞台が、抜けるようなブルーに染まっていく。
刹那に燃ゆるIRRITATION 己の意味を求め続け――
明日も知らぬIRRITATION 今は只“今”を駆け抜ける――
歌い終わり、勇花のギターソロが演奏されるが、それは意外に短く、さっぱりと終わった。
最後に残ったのは、音の何もない空間。
しかし、観客の耳には、音がまだ聞こえていた。
●エンディング
5組の演奏が終わると、司会者の二人が再び登場した。
そして、いつもの台詞で投票が促される。
「それでは、『judge』。スタート!」
それぞれの観客たちの持つ10枚のコインが、薄暗い舞台へ、光の雨となって投げられていく。
目指すは、各ミュージシャンの箱の中。
投票が終わると、今まで暗かった舞台が、まるで日が昇るかのように赤く染まる。
赤い光を背景に、登場したのは紳士と淑女のペアだった。
舞台に降り立った二人は、恭しく礼をする。
『BLUE−M』の星海とノワール。
星海がマイクを持つと、ノワールは今度は最初からピアノに座った。
星海の声が響き、会場が『Mother』に包まれた。
暗闇に彷徨う雫
煌めきを放ち 私を誘う
朝日に輝く青い雫
生きる喜びに溢れ零れる
永遠に変らぬ暖かい場所
よせては返す波の子守歌
交互に歌われ奏でられる中、画面には、スタッフロールが流れていく。
あなたに会えて良かったと
生まれてきて良かったと
伝えたくて ただ 言いたくて
スタッフロールと歌が同時に終了する。
こうして番組が終了した。