秋の学園祭ドラマSPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/29〜11/02
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●本文
普段は味気ない学校の廊下。
しかし、今日は違っていた。
色とりどりに飾られ、どんな時間であろうとも人が歩いている。
そんな中、荘厳な看板が立てかけられた教室があった。
普段は調理教室として使われているこの部屋だが、看板を見る限り、今は『お料理研究部』の出店だ、という事が分かる。
「いいか、みんな! 我が『お料理研究部』は、発足以来、毎年食品系出店での売り上げナンバー1を守ってきた! 今年もぶっちぎりのトップを目指す! 我らは、そう、この日のために生まれてきた!」
音頭を取っているのは部長だろうか。
それともテンションが高いだけの部員?
それはともかく、ここ『お料理研究部』は、食品系出店ナンバー1の座を守るため熱く燃えているのだった。
学園祭が始まってから2時間。
客足はまばらだった
お昼前のためこんなものか、と部員が、戦場の時間帯に備えていると、部員の一人が飛び込んできた。
「みんな! たいへんよ!」
「どうしたんだ? そんなに急いで」
「それが‥‥他の部にお客が取られてるの!」
衝撃の発言。
「な、なぜ‥」
今にも崩れ落ちそうな部長(と思われる)に答える飛び込んできた部員。
「ライバルは、相撲部が味も良ければ料もあるちゃんこ鍋店だけじゃなかったのよ。サッカー部の巨大たこ焼き、水泳部の水着喫茶、バードウォッチング部の焼き鳥屋、科学部のドリンクバー‥‥」
「そんなに強力なライバルがいつのまに! ‥‥い、いや、しかし、負けるわけにはいかない!」
「ええ! オリケンとしての輝き続ける栄光の歴史を私たちが途絶えさせるわけには!」
「そこ! 変に略すな! お弁当屋さんみたいだろうが!」
そんな中、一人の部員が自信ありげに言った。
「こんなこともあろうかと、用意しておいたわ!」
バーン!
「おれもだ! こんなこともあろうかと、用意しておいた!」
「僕も!」
続々と秘策があると手を挙げる部員達。
いったい、それぞれの部員達が用意していたものとは?
起死回生の絶品料理? 人を呼ぶ小道具? お洒落な衣装? 弾き語りやマジックのステージか?
果たして、彼らはその秘策で、食品系出店No.1の座を今年も手に入れ『お料理研究部』の名誉を守ることが出来るのだろうか!
「という感じです」
あまりに熱い内容に、会議室からため息が漏れた。
「なにか、分からない点などございませんでしょうか?」
説明しているスタッフの大きい声が響く中、一人の重鎮と思われる初老の男性が立ち上がった。
「よくわかったが‥‥一つ問題がある」
「はい? なんでしょうか?」
「舞台は高校ということだが‥‥こんなに子役が集まるかね?」
「‥‥‥」
沈黙する会議室。
「そ、それにつきましては」
隅の方に座っているスタッフが恐る恐る手を上げる。
「なんだね?」
「学生服を着れば10歳から30歳までなら、なんとかごまかせるのではないかと‥‥」
「‥‥なるほど。確かになんとかなるか。最近の若者の歳は私服だとまったく分からないからな」
‥‥こうして、ドラマの制作が始まったのだ。
●リプレイ本文
●お着替えは大変です
「うわっ」
出番を待つために休憩室に入った志羽・武流(fa0669)の第一声がこれだった。
タケルの前に広がる光景、それは、一人の人物を取り囲む女性陣だった。
「スカートの裾、もう少し上げた方が可愛く見えると思いますわ」
「あー、私もそう思う」
富垣 美恵利(fa1338)と木崎 朱音(fa4564)が言う。
「では、少し上げてみます?」
ジュディス・アドゥーベ(fa4339)もゆったりと同意した。
とはいえ、この三人が言っているのは自分たちの衣装のことではなかった。
三人の中心にいて、いわゆる鍋にされている大海 結(fa0074)の衣装のことだ。
「いえ、あ、あの、スタイリストさんがしてくださったものですし‥‥」
ユイが恐る恐る言うが、なかなか三人には届かないようで、ユイをよそに話は進んでいく。
「もっと可愛らしくするためには、どうしたらいいでしょう?」
「そうですねぇ。ブローチなどをつけてみるのはいかがでしょう?」
美恵利の言葉にジュディーが言う。
「じゃあ、じゃあ、うちの部のマスコットキャラのピンバッチとか?」
朱音が言うと、ユイはまたもや恐る恐る言う。
「マスコットキャラは居なかったと思いまーす」
女装のような格好のユイをいじる女性陣のパワーに圧倒されて、タケルは中に入っていけないでいると、後ろから声が掛けられる。
「‥‥どうか、したんですか?」
アンリ・ユヴァ(fa4892)の声に、いや、なんでもない、と我に返ったように応えるタケル。
アンリが両手にお弁当の袋を持っているのに気がついたタケルは、持つよ、と、片方のお弁当の袋に手を伸ばしながら、言う。
「女装姿に燃えるみんなに圧倒されていました」
「‥ああ‥こういう時の女装は華ですから」
「そうなんですか?」
「‥‥たぶん」
二人のやりとりと手にしたお弁当に気がついた中にいる四人は、輪を広げて中にはいるように促す。
「一緒に、どうですか?」
「いや、俺は大丈夫です」
苦笑しながら応えるタケル。
「‥‥お昼、持ってきました」
「わぁー。ありがとう」
アンリの言葉にお礼を言う朱音。
「せっかくですし、さっそくお昼、いただきましょうか?」
「そうですわね。結さん、朱音さん、お洋服、汚してはダメですわよ?」
「大丈夫です。わかってます」
ジュディーと美恵利のお姉さんのような言葉に、笑いながら応えるユイ。
「アンリちゃん、タケルさん、一緒にどうですか?」
「ああ、ありがとう」
朱音の言葉に、頷いて籍に向かうタケル。
そして、まだ仕事があるから、と忙しく出て行ったアンリ。
和気藹々と食事が始まる。
しかし、ユイへのジュディーと美恵利のお食事の礼儀作法講座が始まるのは時間の問題だった。
●お残しは天罰です
巫女さんバーとスタッフには言われているには、巫女さん姿の敷島ポーレット(fa3611)が目印の占い研究部だ。
「カット! OKです」
そして、たった今、占い研究部の全シーンの撮影が終わった。
「ふぅ、おつかれさん」
一段落、と言うことで、ポーやスタッフたちにとって、ある種の達成感が感じられる。
「それにしても、大吉の時に出てきた料理、メチャクチャ出てきはりましたね」
ポーの前にあるのは、満漢全席かとみまがうほどの、豪華で、そして大量の料理。
「‥‥作るの大変でした」
おしぼりを持ってきたアンリがポーに手渡しながら言う。
「やっぱりー。それにしても、これ、どうすんのやろ?」
「‥‥やっぱり、食べないと‥‥」
「そうやね。食べ物は始末にしたらあかんもんね。‥‥大凶の料理も」
ポーが観たのは、満漢全席とは別のテーブルにある料理たち。
大凶が出たときの罰ゲーム料理だった。
「これ、見た目だけで、実は美味しいとか?」
「‥‥」
応えないアンリにため息をつくポー。
「味までまじめに大凶なんかぁ」
「どおしたのっ?」
袴姿の姫野蜜柑(fa3982)がお盆を持ってやってくる。
「いや、しんどいなぁ、って」
「撮影がやっとおわったんだもんね。おつかれさま。そう言うときには、コレ! 甘いモノだよ」
みかんが持ってるお盆の上には、お餅がいっぱいだった。
「うわ、そんなにどないしたん?」
「えへへ。撮影で余っちゃって、みんなにお裾分け。せっかく搗きたてお餅なのにもったいないでしょ?」
「‥‥‥ああ、なるほど」
「??」
ポーの言葉に首をかしげるみかん。
「ウラ研の撮影は終わったのに、どうしてみんな食べへんのかな? と思ったら、みんなお餅でお腹いっぱいなんやね」
ポーが満漢全席を指しながら言うと、ミカンの顔が引きつる。
「うわ、まだ、そんなに残ってるの?」
「残ってるんよ」
「こんなことならお弁当食べなければ良かったー」
「うちもやー」
悲嘆に暮れるみかんとポー。
その頃、アンリはミカンの持ってきたお餅を一口食べていた。
自らが搗いたお餅のできばえに、思わず顔を綻ばせるアンリ。
「‥‥美味しい。捨てるのもったいない」
アンリの言葉をポーが受ける。
「そやねぇ。こうなったら、休憩してるキャスト、スタッフ以外にも、廊下歩いてる人捕まえて、パーティーしよか?」
「そうだね。僕、とりあえず、休憩してるみんなを呼んでくるよ」
元気に休憩室に向かうみかん。
この後、無事に食料を片付ける事が出来たが、撮影は一時中断となった。
お腹いっぱいすぎて、皆が動きたくなくなってしまったのだ。
●秋の学園祭ドラマSP
気合いの入ったオリケン部員たち。
秘策もまとまり、仕切り直し、とそれぞれに熱が入る。
「それじゃ、宣伝に行ってきます!」
「よしのり君、いってらっしゃーい」
宣伝看板を片手に、スカートの裾を翻しながら廊下に出て行ったのは木崎由紀、男子だ。
彼は女性用衣装を間違えて着てしまったが似合っていたためそのままゴーサインがでたのだ。
「それでは、お昼に向けて、焼きそばを作りまーす」
作詞作曲、自分という焼きそばの歌を歌いながら、調理を開始する尾張小雪。
「小雪さん、ほら、たすきを掛けないと、浴衣が汚れてしまいますわよ?」
美恵利が、微笑みながら言う。
「あ、はーい」
小雪の元気を観て静穂も微笑む。
「これならー、きっとだいじょうぶですわね」
無事に大盛況のお昼が過ぎ、今度はクレープタイムにするために、機材替えに衣装替えと大忙しのお料理研究部。
そこに忍び寄る黒い影。
「なるほど、こういう事だったのね」
影の主は、お餅部隊である剣道部を率いる姫野ミカである。
ミカはすくっと隠れていた陰から身を起こすと、オリケンの店の前に立ちはだかる。
「あのー、今は休憩時間なのでー‥‥」
お客と勘違いした静穂が申し訳なさそうに言う。
「クレープ! 確かに甘いモノとしてはいいかもしれない。でもね、休憩時間なんてその余裕が命取り。僕たち剣道部が竹刀を杵に持ち替えてついた美味しいお餅! 食べてみてごらん!」
言いながら、お餅を一つ渡すミカ。
「これはどうもですー。もぐもぐ、美味しいですー」
「でしょう?」
「これは、私たちもがんばらないといけませんねぇ」
あくまでおっとりした静穂の言葉を余裕と受け取ったミカは言う。
「さすがはオリケン、食品系出店ナンバー1の肩書きは伊達じゃないね。けど勝負は売り上げ発表の瞬間までわからない、僕たちは‥‥必ず、勝つ! ‥‥ところで、そのお餅、一つ100円だから」
「おめでとうございますー。大吉ですー」
こちらは巫女喫茶の星宮カレン。
カレンの言葉を受け、次々と料理が運ばれていく。
「あ、あの、俺、まだ何も頼んで‥‥」
「おみくじで、大吉の方には、サービス料理なんですよー。しっかり食べてくださいね」
カレンの笑顔に押されたのか、お客さんは黙って料理が運ばれてくるのを待つ。
しかし、料理は三十分たっても未だに運び終わらない。
すさまじいほどの量の料理が並べられているのだ。
「大吉がでると、しばらく私たちが何もすることがないのが難点ですわね」
言いながらカレンは敵情視察に出向く。
「あちらも大盛況のようですわね」
カレンの目には、行列が出来ているクレープ屋さんだった。
「こちらが列の最後尾でーす」
看板を持った由紀と目が合うと、お互いにお辞儀をした。
出店の中では、メイド姿の美恵利と小雪、そして、別の種類のメイド服の静穂が、一生懸命クレープを巻いている。
「こちらも、がんばらなくてはいけませんね」
カレンが言うその時、叫び声が上がった。
「うまい!!!!!」
声の主は、矢島改斗。
白衣を着ているため、あきらかに科学部のメンバーだと分かる。
「すばらしいぞ、美恵利君! クレープとはこんなに美味いものだったとは!」
「は、はぁ。ありがとうございますわ」
「ぜひ、この私にも協力させてくれないか?!」
「はい?!」
美恵利の驚きの声を肯定の返事と思った改斗は、懐からビーカーを取り出す。
「おお! 協力させてくれるか! このクレープには、炭酸飲料が合うと思う! 今から合成してみせるから待ってくれ、この弾ける美味しさを」
改斗が薬品を混ぜていると、観ていたカレンは不吉な予感がした。
「それ、大凶のオーラを感じますー」
思わず叫んだカレンに反応して由紀が改斗のビーカーを奪い、空に投げる。
ドン!
本当に弾けたビーカー。
「‥‥す、すまない! 次こそは、次こそは!」
「いえ、もういいですから」
無事に過ぎた一日。
店の片付けも済んだ後、部員一同が整列し、部長の美恵利の言葉を待つ。
「えー、運営委員会から連絡がありました。本日の売り上げ一位は‥‥‥‥」
静まりかえる一同。
「お料理研究部、だそうですわー」
美恵利の発表に沸き上がる一同。
小雪などは部長に抱きついたりしている。
「接戦だったそうですから、次も気は抜けません。でも、それは明日から。今日は、存分に喜びましょう」
美恵利の言葉に再度盛り上がる一同。
「余り物ですけどー、みなさん、どうぞー」
静穂が、皆に、食事を配る。
少し冷めているとはいえ、その食事は最高に美味しいものとなった。
おまけ
「あ、あの、元気出してください、ね?」
未だに女装の衣装を着ている由紀が、同じく未だに片隅で寂しく膝を抱えている改斗に、オリケン部員に振る舞われている食事を差し出す。
「うう、かたじけない」
もしゃもしゃと食べる改斗。
「美味い‥‥。ありがとう、女神よ!」
ひしっと抱きつく改斗。
「え、えーと、あの女神って言われても、僕はおと‥‥」
「君の心の優しさに惚れた!」
「あ、あの‥‥‥」
スタッフロール(抜粋)
木崎由紀‥‥‥大海結
富垣美恵利‥‥富垣美恵利
阿部静穂‥‥‥ジュディス・アドゥーベ
尾張小雪‥‥‥木崎朱音
矢島改斗‥‥‥志羽・武流
星宮カレン‥‥敷島ポーレット
姫野ミカ‥‥‥姫野蜜柑
AD‥‥‥‥‥アンリ・ユヴァ