the new decisionアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/31〜01/04

●本文

「うーんうーん‥‥」
「おう、何を悩んでるんだ?」
 唸っていたのは、『Battle the Rock』をまとめている望月というプロデューサーだった。
「いや、番組のことでさ。テーマと、チャンピオンカーニバルをどうするかって」
「チャンピオンカーニバルねぇ。チャンピオンに限定するってどうなんだ?」
「うーん、それも悩みどころだね。チャンピンカーニバルのテーマは無しでいく予定だから、普通のカーニバルにしてもいいかもね」
「なんだ。もう決まってるなら悩む必要もないじゃないか」
「‥‥いや、それもそうなんだけど」
「今回のテーマが決まってないとか?」
「いや、それも決まってるよ。まずは、『決意』。つぎに、階段。そして次にカーニバルだ」
「階段? お化け話?」
「それは怪談だろ。そうじゃなくて、成人式もあるし、大人の階段というかさ」
「なるほど‥それなら、『成長』のほうがしっくりくるんじゃないか?」
「あ、たしかに。まぁ、次回のことは次回までに考えておくさ」
「だな。で、何が問題だったんだ?」
「‥‥‥あれ? そう言われるとそうだね。何で悩んでいたんだっけ?」
「‥‥俺に聞くなよ」
 やれやれと、呆れる同僚であった。

 コンクリートジャングルをテーマにした舞台で繰り広げられるミュージック番組である『Battle the Rock』。
 今回のテーマは『決意』だ。
 燃え上がる魂を背景に浮かび上がる『魂を響かせろ! Battle the Rock』の文字。
 コンボイ風の扉には、『the sound of decision』と書かれている。
 重く、しかし確実に開いていくその扉は、ミュージシャンたちに誘う。
 新たなる決意を秘めて、舞台が、ミュージシャンが、そして、観客が燃え上がる。

●今回の参加者

 fa0336 旺天(21歳・♂・鴉)
 fa0751 (23歳・♂・蝙蝠)
 fa0755 エミュア(18歳・♀・狼)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1362 緋桜 美影(25歳・♀・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1465 椎葉・千万里(14歳・♀・リス)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●オープニング
 薄暗い照明しか当たっていないステージ。
 ステージの前はフェンスで区切られ、その先は奈落のように暗闇が広がる。
 そこに、炎が踊り、文字を描く。
 『魂を響かせろ!』と描いた炎は、もう一度、画面を踊り、『Battle the Rock』という文字を描く。
 カメラは切り替わり、現在の舞台の様子を映し出す。
 奈落であったそこには多くの観客がおり、ステージの始まりを、今か今かと待ちかまえていた。
 そして、ステージが開いていく。
 ステージの扉には、『the sound of decision』と書かれており、その扉が、静かに上に向かって開き、ステージが開放される。

 まず、ステージの上にあらわれたのは、黒革のジャケットに、ダメージジーンズ。そしてブーツを履いた二人組の男。
 背の高い男が最初に口を開くと、もう片方も呼応するように台詞を述べる。。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
「今回のテーマは、『決意』‥‥。ミュージシャンたちの決意が、今宵、火花を散らす」
「今日、新たな決意と魂を響かせるのは、この6組」
 二人の台詞が終わると、画面が切り替わり、カメラがミュージシャンを順番に映し出す。

「flicker〜R2〜。二人が生み出す魅惑の空間が、今宵も展開される」
 最初に映し出されたのは、ラシア・エルミナール(fa1376)と嶺雅(fa1514)だ。
 パンクの衣装に身を包んだ二人が、カメラに映し出される。
 ラシアがカメラに向かって軽く手を振ると、冗談風にふっと口元に手を置きポーズをつける嶺雅。
 その姿に、ラシアが思わず苦笑する。

 次に映しだされたのは、オレンジのサングラスをかけ、着くずしたスーツを軽く着こなした一人の男、旺天(fa0336)だ。
 テンは、カメラを向けられると、何ももっていない手にはスティックがあるように、何もない目の前にドラムがあるかのようにして空中を叩いた。
 ドラム版のシャドウボクシングのような、軽やかに動き続け、最後に大きく動くとビシッと動きを止める。
「ボーカル兼ドラマー。規格外のアーティストが今夜、ここに登場! 旺天」

 白い衣装に身を包んだ緋桜 美影(fa1362)が続いて登場した。
 目を閉じているのは考え事か? それとも緊張しているのだろうか?
 そんないつもと違い、どこか静かに見える、美影。
 目を開けると、キッとカメラを観る。
「歌う意味を歌いあげる。歌い続けるボーカル、緋桜 美影」

「もう一つの規格外。ロックとヴァイオリンのコラボレーション! sweet−sour」
 背が小さいエミュア(fa0755)と、さらに小さい椎葉・千万里(fa1465)。
 名前がコールされると、二人とも、両手を振る。
 同じ制服を着た小さなお姉さんと小さな妹、そんな風にも見える二人は、画面の中を所狭しと動き回った。

 続いて登場したのは、亜真音ひろみ(fa1339)。
 ポーズは特にとらなかった。
 ストイックな雰囲気と危険な香りを併せ持つ、その姿は、ただ立っているだけで、観る者を魅了する。
「自由の翼をひろげるのは、1%でも多く想いを、伝えるために! 亜真音ひろみ」

「シュン! 彼の歌は軽やかで、乗りやすい。しかし、それは歪んだ社会からの解放を、新たな自由への決意を、促す」
 最後に登場したのは春(fa0751)だ。
 革のジャケットにズボン。そしてサングラス。手にはギターを持っていた。
 シュンは、ギターを軽く響かせる。もちろんサングラスはつけたままだ。

 紹介が終わり、カメラがまた、大きくぶれるように動いて、司会の二人を映す。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●flicker〜R2〜
「flicker〜R2〜。『freedom chasers』」
 コールされ、登場するラシアとレイ。
 舞台中央に揃うと、レイが高らかに宣言した。
「最後まで突っ走るからな! 最後までついて来いヨ!!」

 始まった曲はハードテンポの激しい曲だった。
 ギターのみがかき鳴らされていく前奏が、ふと止まると、今度は二人の宣言のような言葉から歌が始まり、そのまま歌にドラムとギターが加わっていく。

Are there any dreams?

目指したものがあるから
追い求めるよ何があろうとも
【Even if it becomes solitary】

想いを秘めて歌い続ける
あの日の約束を果たすために
【I will catch up.】

たとえ迷ったとしても
選んだ道を信じ続けたい
【Because this is my way】

 舞台狭しと動き回る、レイとラシア。
 二人の大きな動作の手拍子が観客の手拍子を呼び込む。

自らの力で 掴む夢は一つ
However, everything is only exceed.

 最後までハイペースで、歌い続ける二人。
 そして曲が佳境になると、演奏が一斉に止まる。
 しかし、二人の、そして観客の手拍子は止まらない。
 手拍子だけのバックコーラスで、歌は終わった。

傷ついて 疲れても
諦めたくはない
Because this determines me.


●旺天
「旺天! 『LIFE/ROCK』」
 真ん中に置かれたドラムに、テンが座っている。
「それじゃあ皆! 思いっきり楽しもうじゃねーか! 行くぜ、One、two、three!」
 かけ声とともに、クラッシュが打ち鳴らされ、曲が勢いよくスタートする。

切り裂かれた黒いダイアリー
はなから何も書かれちゃいないぜ
やるべき事が無かったわけじゃねぇが
やりたい事は一つだって無かった

何も見えない無限の荒野
適当に歩いても何処にも行けねぇ
けどお前はもう知ってるんだろう?
抜け出す為に何が必要なのか

そうさ 決めればいいんだ

ココロん中 お前だけの道しるべ
後はただ ソレだけ信じ突き進め life/rock

 シンプルなメロディーにして、客を乗せる。
 その思惑はうまく行ったように思える。
 しかし、それでも間奏中、テンは、オープニングで見せたような捌きを、実際にも見せながら、再び観客を煽った。
「どうしたどうした、そんなもんじゃねぇだろ? もっとガンガン行こうぜ!」
 2番に続いていく曲。
 そして、最後の『life/rock』の言葉と共に、曲が終わった。
「皆ありがとー! 最高だったぜ!」
 歓声が聞こえる客席へスティックを投げ入れるテン。
 それに呼応して、歓声の声がいっそう濃くなった。


●緋桜 美影
「緋桜 美影。『風の歌』」
 白い美影が登場する。
 流れる曲は、前の2組とは違い一転してスローテンポなロックだ。
 マイクを手にした美影は、前を、観客を見据える。
 会場に問いかけが響いた。
「何故、貴女は歌うのですか?」
 その問いに答えるかのように、歌が始まった。

貴方の歴史になかったのかい?
学生時代夢中になった あのmusic.
一人の部屋で気付いたら口ずさんでいた あの歌

彼が恋してるとき 彼女が喜んでるとき
きっと一緒に笑いあえないけど 
この歌で君達の幸せを祝わせてくれよ
空に輝く星にはなれないから 街角わたる風で良い
君の思い出を彩るBGMになれるなら

 問いかけに答えをせつせつと歌い上げる美影。
 曲は2番に続いていく。
 
貴女は覚えていませんか?
思いでの中まだ流れてる あのmusic.
冷たくて孤独な部屋で 泣きながら聞いた あの歌

 歌う意味を歌う歌はまだ 曲はまだ続いていく。
 しかし、観客は終わるまで、聞き入っていた。


●sweet−sour
「はわわ〜、大丈夫かな? 何かあったらフォローよろしゅうにです」
 どきどき顔のチマちゃんに、エミィが笑顔で励ます。
「大丈夫だよ! 一緒に頑張ろうーっ! 二人でがんばって、お客さん釘付けにしちゃおー!」
 コールされるまでの緊張の時間。
 始まってしまえば、なんてことはないのかもしれない。
 始まるまでの緊張感、それが‥‥‥解かれた。

「sweet−sour。『子猫の反乱』」
 欧風の学校制服のような衣装に妙にマッチした狼耳と尻尾をつけた二人が登場する。
 始まった曲は、テンポがよく明るめ、小狼の二人の女の子がはしゃぐかのような曲だ。
 エミィが全身で曲のリズムを取っていると、合わせるように、チマちゃんも、バイオリンを弾きながら全身でリズムを取る。
 歌が始まる。
 大好きな人の、大好きだった人の浮気を知ってしまった子猫。
 そこから始まる歌。
 間奏中、チマちゃんのバイオリンのソロが入る。
 雪の景色を連想させるような北欧フィドル風の旋律が徐々にもの悲しげになっていく。
 それに合わせて、エミィの歌声も少しけだるそうに。

あなたの思うがままな 
らいふすたいる くり返して
そろそろ アキアキしてるの
窓から飛び出してイイかしら?

 子猫が決意したとき、曲が一気に盛り上がる。
 舞台中を駆けめぐる『子猫』。

さぁ! さぁ! 飛び出せ! GO! GO! 自分っ!
だめ! だめ! 頑張れ! bye! bye! あなたっ!

結構、強いぞ! wild girl!!
I am not under your thumb.
パンチにキック かましてっ!!
I part from you.
Good−bye, the prince of mine.

 曲が終わり、二人が目を合わせる。
 そして、ぐるん! とその場でターンをすると、短めのスカートが、一瞬、ふわりと持ち上がる。
 バッと慌ててスカートを抑えるエミィが会場を和ます。
 ターンをし終えると、もう一度、笑顔で目を合わせる。
 エミィとチマちゃん、二人で最後の歌詞を歌う。

『一人だって平気、あなたの前では子猫だけど、ハートは狼だもん☆』


●亜真音ひろみ
「亜真音ひろみ。『夢の翼』」
 名前がコールされると、ひろみが颯爽と登場した。
 歌い始める前に、観客を観る。
 彼らに、自分の想いに少しでも共感してもらいたい。
 そう思ったとき、まっすぐな想いが自然と声にでた。
「これがあたしの決意さ、聞いてくれ」
 ハードな曲調の曲が流れる。

誰にも縛られたくない
何も俺たちを止めることなどできやしない
俺たちはただ自由に笑いたい叫びたい
自分だけのとっておきの夢を
たとえ人に笑われてもいいから
思いっきり自由にはばたきたい
俺の心に一握りの勇気があるかぎり
この心の翼引き裂かれても
飛べるさ とっておきの夢を叶えるその時まで

 ひろみの歌声は、激しい曲に負けないほど、激しかった。
 声を絞り出すかのように全力で突っ走っていた。
 その歌声は自らの想いを訴えているように聞こえた。
 自らの信念を貫く決意、他人ではなく自分のために歩く決意。
 それが出来るからする、なんていうものではなく、出来なくてもするという決意。
 それがサビの部分の最後によくあられていた。

この夢の翼を引き裂かれても
負けない 自分の信念を果たすその時まで


●シュン
「シュン。『Brainwash 〜洗脳〜』」
 最後にコールされたのは、シュンだった。
 シュンのギターから、歌が始まった。

 ロックとポップスの中間のような、非常に乗りやすい曲。
 しかし、その曲に心地よく揺られることを、過激な歌詞が許さなかった。
 
ずっと不器用なままの僕
無様な飼い犬に成り下がる

それが死ぬまで許せなくて
stand the middle finger 決まったレールに唾を吐く

世間に背を向けてると
決まって人は馬鹿にする

心に銃を突きつけて
We can’t stop the mindcontrol 解く事の出来ない呪い

 歌詞はどんどん過激になり、曲にあわせて軽快に紡がれていく。
 サビに入り、それは佳境にはいっていった。
 歪んだ社会に捕らわれて、ある種の平穏に包まれることの意味。
 そこから抜け出すことの意義。
 人から笑われること、そんなことには屈しない決意が歌われていく。

自分失って 醜い華を咲かすのなら
僕は死ぬまで 社会に唾を吐き捨てる


●エンディング
 6組すべての演奏がおわり、後は勝敗を決するだけになった。
 再度登場した司会者の二人組が、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客達の手に握られているのは、10枚のコイン。
 観客達は、そのコインを自らが思うように分配し、舞台の各ミュージシャンのハコに向かって投げ入れる。
 コインの玉入れの要領だ。
 そして、投票が終了した時、ハコの中に一番コインが入っていたミュージシャンの扉の鍵が開く。

 プシュッと濃い赤めの缶を開ける。
 クスリっぽいと言われて敬遠する人もいるが、自分は、よくこの炭酸飲料を飲んでいた。
 一息つこうと思ったその時、奥の扉が開いた。
 どうやら、一息つけないらしい。
 一口、その炭酸飲料を飲むと、再びステージに向かった。

 開かれた扉は、『緋桜 美影』の扉だった。
 扉が開いてから、二呼吸ほど置いて登場した美影に、観客からの声援がどっと響く。
 『決意』の歌の勝者は、歌う事への決意への歌だった。
 『緋桜 美影』の『風の歌』をバックにエンディングテロップが流れていく。

「歌いたいから、君に聞いて欲しいから」

この想いを届けたいから これからも
人知れず吹いて消えて行く 風のような歌だけど
いつか誰かの昔話に華を添えられるように

気まぐれな風を歌い続けるよ