音楽番組開戦準備アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
10.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
02/26〜03/02
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●本文
『Battle the Rock』という番組があった。
その番組の責任者であった望月は、一堂に会したスタッフを見渡す。
「‥‥というわけで、みんな一ヶ月ぶりかな。また、よろしくお願いしまーす」
全く威厳を感じさせない挨拶から、会議が始まった。
「‥‥番組の名前、まだ決まってないのか」
「次の番組は、半年の休憩の後って聞いてたけど?」
会議の合間の休憩時間。
スタッフ達の会話だ。
「なんか、色々あったらしいよ。スポンサー関係か知らないけど、上からの指示があったんだって。それで急いで番組を作ることになったって」
「あの人が素直に従うなんてめずらしいな」
あの人、とは先ほど挨拶をした望月である。
彼は、あまり人と喧嘩をすることはないが、決めたことは基本的に守る人物であった。
例え、そのために、自らが危険な立場になろうとも。
会議が再開される。
今回の番組の趣旨が説明された。
今回の番組は、前半チームと後半チームで分けてのミュージシャンたちの戦い、ということだった。
言うなれば、紅白に別れての歌合戦のようなものだ。
そして、観客たちの投票によって、前半チームか後半チーム、どちらかに優劣を付ける、という。
「前半チームで2〜4曲、マイクパフォーマンス。その後で後半チームの方に移る。だいたい、前半30分、後半30分ぐらいかな」
「前半と後半ですか?」
「そう。前回やった番組では基本的に個人戦だったからね、今度はチーム戦をやってみたいんだ。前半と後半の各チームリーダーは、今まで司会をやってくれていた二人組にそれぞれやって貰おうとおもっているんだ」
「たしか‥‥、上田さんと下田さん、でしたっけ?」
「そうだね。さすがに上田チーム、下田チームっていう呼び方はしたくないから、それぞれのチーム名も募集したいところだね」
質疑応答によって、多くの疑問が提出され、それについて答えがまとめられていく。
「なるほど。でも、それだけじゃ、この人数は集めませんよね?」
「もちろん。舞台や衣装とかいろいろ決めなきゃいけないことはたくさんあるんだ。基本的には何も決まってないかもしれない」
望月の言葉に苦笑をする一同。
「でも、一つ、決定的に決まっていることがあって、番組名は変わるけど、ロゴマークだけは同じのを使おうとおもってるんだ」
そう言うと、羽織っている革製のスタッフジャンパーについたマークを指さした。
「急な仕事になっちゃったけど、しっかりやっていこう。主だったことは外部からも優秀なスタッフを募るから、その人たちの言うことを良く聞いて行動すればうまくいくと思う。じゃあ、みんなよろしく!」
●リプレイ本文
●語られるコロシアム
「おはようございます」
会議室に向かう廊下、望月がセルゲイ・グラズノフ(fa4965)に元気よく挨拶をした。
「おはようございます」
セルゲイも同じく答えるが、その言葉はどこか元気がない。
「? どうかしたんですか?」
「いや、こういう会議にでるのは柄じゃないな、と思ってな」
苦笑するセルゲイに、笑いながら言う望月。
「そんなことないですよ。大丈夫、いざ、やってみたら慣れちゃうものです。若いうちは順応できます。ごーごー」
いちおう偉いはずの人物が妙にハイテンションのために、多少引きつつも、それに従うセルゲイ。
そこへ、スモーキー巻(fa3211)が廊下向こうから歩いてくる。
「あ、巻さん、おはようございます」
望月がめざとく見つけ、大きな声で挨拶をすると、巻もそれに倣った。
「久しぶり。そして、改めてこれからもよろしく」
巻の言葉にこちらこそ、と応える望月。
「これからどこか行くんですか? 逆方向ですけど」
「コンテを切った人が何人かいるみたいなので、それの持ち運びの手伝いに、ちょっと」
答えるスモーキーに苦笑する望月。
「そんな、巻さんがわざわざ行かなくても」
「いやいや、相変わらず表と裏を行ったり来たりしているので、きちんと裏方もしないと」
そう言うと、元気よくスモーキーは廊下を歩き始めた。
しばらく後の会議室前。
郭蘭花(fa0917)が元気な声で挨拶をしながらドアをくぐっていく。
一方、由里・東吾(fa2484)は、ふぅと息を吐いた。
ユリが見ているのは、会議室前に毛筆で書かれた『音楽番組、Music War、準備中』の幕。
これが警察だったなら、なんとか事件捜査本部とでも書かれているところだ。
その文字の一番上に、同じく毛筆で器用に描かれたロゴマークを見ていた。
「どうしたの?」
ダミアン・カルマ(fa2544)が後ろから声をかけた。
「いえ、ちょっと気合いを入れていて」
ユリが答えながら振り向くと、ダミアンの腕の中には、おそらく企画書かコンテ絵であろう紙の山があった。
「持ちましょうか?」
「大丈夫。じゃあ、できれば、ドア開けてもらえるかな?」
会議室の黒板に書かれたままになっているいくつかの単語。
文字の上に赤くバツが付けらえているものもあれば、『コロシアム』『RIGHT SWORD』『LEFT SWORD』と言ったそれらの単語には、赤く丸が付けられていた。
舞台として採用されたコロシアムは、本物と舞台とで、どこまで似せるのか、という点が話し合われた。
ダミアンのコンテと写真を見比べながら、トシハキク(fa0629)が言う。
「本来のコロシアムは円形闘技場だけど、舞台は無理して円形にする必要はないよな?」
「そうだね。後ろのお客さんが可哀想だしね」
ジスの言葉に頷くダミアン。
「でも、カメラは後ろからも撮りたいけど」
今度はランが言った言葉に、有珠・円(fa0388)が頷いた。
「確かにカメラは動き回れた方が良いよね。お客さんの邪魔にならない程度にしたいけど」
望月の言葉に、それなら、とセルゲイが手を上げた。
「後ろに回るなら、後ろ用に固定のをいくつか用意しておくのはどうだ? そういうことなら俺もできるぜ?」
「後ろにカメラを置くなら、そのカメラが撮れる絵を確認しておきたいな。セット全部を細部に作り込むわけにもいかないだろうけど、見えるところだけでも、細部に作っておいたほうがそれっぽい雰囲気はでるだろうからな」
ジスの言葉に、頷くダミアンは言葉をつなげる。
「あとセットにだけど、こんなモノクロのポスターを使えないかな?」
これをそのカメラか、別のカメラが捕らえることのできる位置に置いて、オープニングに使えればいいと思う、と続けるダミアン。
彼が持っているのは、西部劇に出てきそうな手配書。
「さすがに、WANTEDの文字は入れないけど」
「イメージはこんな感じで大丈夫かな。あとは‥‥採点方法だけど‥‥」
望月の言葉を受け、マドカが言う。
「今回は投げ銭は厳しそうだよね。普通に紙に書いての投票がいいかも。もちろん、その紙にも何かこだわりたいけど。勝利チームの最多獲得チームとかも分かるし」
「そうだね。僕も『チームごと』っていうのは賛成かな。チーム内のユニット数も作戦のうちにはいるだろうし」
スモーキーもマドカの言葉に頷く。
「となると、投票のタイミングと場所だけど‥‥‥場所は、ステージの真ん中とか映えるんじゃないかな?」
「映えるだろうけど、時間がかからないかな? まぁ、放送ではカットするだろうけど」
ウンウンと唸る一同。
そんな中、四條 キリエ(fa3797)が手を上げた。
「あの‥‥音量測定器を使うのはどうかな?」
「騒音を調べる機械?」
望月の言葉に、頷くキリエ。
「古代ローマのコロッセオってさ、勝敗自体は仕合で当人がつけるけど、敗者の処遇決定って、民衆の喚声を主催の耳で判定して決めたんだってさ。それヒントに、演奏グループ毎の喚声を測定して、その合計数値で勝敗決めるのどうかな? MVPグループもついでに分かるしね」
おおー、と幾人かから拍手が出る。
「たしかに、それだと、時間はかからないね」
でも、とスモーキーが言う。
「それだと曲数が多いチームが勝ちになっちゃわないかな?」
「あ、それだと困りますね、たしかに」
語られていくコロシアム。
様々な物事が思案され、破棄され、そして、決定され、結果、舞台は完成へ近づいていった。
●動き出すコロシアム
釘やビスが山と入っている袋。
それを必死に引きずっているユリがいた。
大道具をしている人に、何かあるか? と尋ねたのが間違いだった、と、心の底から重いながらも必死に運ぼうとするユリ。
「大丈夫ですか?」
声をかけたのはスモーキー。
彼の手には、会議でユリが提案した月桂樹の冠があった。
「あ、それ」
「うん。被ってみる?」
勝者の証として使われる小道具。
「うーん、いいです。これ、早く持って行かないと行けないですから」
名残惜しそうに断るユリの視線の先には今まで引きずっていた袋があった。
「なるほど。それじゃあ、僕が半分持とう。そしたら被る時間もできるかもしれないからね」
スモーカーがにこりと笑った。
「‥‥遅いなぁ」
ジスがぽつりと言った。
ユリに頼んだ品物がなかなか届かないのだ。
「まぁ、あまり焦るなよ」
横ではセルゲイがカメラの点検をしていた。
「ほら、撮るぞ」
カメラをぐるりと回し、ジスに向ける。
「顔に疲れがでてるぞ、少し休んだ方がいいんじゃないか?」
カメラ越しに見たジスに向かって言うセルゲイ。
「そうかな? ここが一段落したら、少し休むか。栄養ドリンクが箱で差し入れしてあったし」
そう言いながら、舞台設営初日に最初に運び込まれたのが栄養ドリンクの箱の山だったことを思い出し、口元が揺るむシズ。
そこへ、スモーカーとユリが荷物を持ってやって来た。
「おつかれ。こっちに持ってきて」
二人に声をかけながら、気合いを入れ直すジス。
まだまだ休みそうもないジスを見て、苦笑しながら、自らの仕事に戻るセルゲイ。
大人数のスタッフたちのなか、それぞれは仕事を再開するのだった。
せめぎ合う二色の光。
そしてついに一方がもう片方の色を追いやり、舞台をその色に染める。
これを、赤、青、黄、緑、紫など様々な色のパターンで行っていたのだ。
「どうかな?」
キリエがカメラ越しに見ているランに尋ねた。
ランの答えは、大きな丸。
「大丈夫ですよ」
「よかった。それじゃ、これで採点の表示は完成!」
キリエの言葉に携わっていた人全てが拍手した。
「よかった。あとは音量測定器のほうっと」
音量測定器と勝利判定の表示はリンクさせる必要があるのだ
「お疲れ様でした。そう言えば、採点はどうなったのかしら?」
ランの疑問に答えるキリエ。
「うん。基本的に最後の曲の後の歓声で判断することになったみたいだよ」
曲数の問題を、クリアするためにだされた案がこれだった。
もちろん、ラストをバラードで締めた時はどうするのか、という意見もあったものの、バラードであっても、ラストなら大歓声は起こるはず、という結論に至ったのだ。
談笑しながらいくつか設営された音量測定器のチェックに向かうキリエとラン。
そこに、『キープアウト』という文字が印刷されているテープが張ってある部屋の中からちょうどダミアンがでてきた。
ダミアンは、持っているミニチュアの舞台をテープに引っかけないように注意しながら歩いてくる。
「おはよう」
「おはようございます」
ダミアンと二人が会うのは今日は初めて。
そのための挨拶が交わされる。
「ミニチュア、完成したんですね」
ランの言葉に頷くダミアン。
「本当はもっと前に完成はしてたんだけど、マドカさんが参考に使うって言うからね」
「マドカさん? この中?」
「そう。この中では、マドカさんが鶴になって織物をしてるんだ。だから覗いちゃダメだよ」
ダミアンの冗談に笑うキリエ。
「見たら逃げちゃうんだね。それは大変だ」
「さて、出来映えは‥‥」
キープアウトの先にある一室で、マドカの作業が行われていた。
パソコンがウィンとDVDを読み込む音を立てた後、ディスプレイには、映像が映し出された。
壮大なコロシアムが映し出された後、それがややコミカルなゲーム盤状に変化する。
そして、司会の一人が転がしたダイスが、光と共に、中世の戦装束に身を包んだギタリストやキーボード弾きに変わっていく。
一方の司会者はコロシアムに置かれたチェスのコマを一歩進めると、コマは、地響きと共に、同じく中世の戦装束のドラマーやボーカリストに変化していった。
睨み合う二つの陣営。
そこに浮かぶ二つの剣。
その二振りの剣がぶつかり合うとそこに上からギター重なり、番組のシンボルマークとなった。
そこに『Music War』の番組タイトル、そして、暫定テーマである夜が、『at Night』と続いた。
わずか1分に満たない映像。
それでも、視聴者を引きつけるために、最新の技術と最高の労力が注ぎ込まれていた。
「よし、完璧っ!」
今回はミニチュアの作成をダミアンがしてくれたおかげで、作業に集中できたということもあり、秀逸の出来のオープニングが完成した。
栄養ドリンクの瓶が数本転がる机。
机の上のパソコンからDVDを取り出しながら、もう片方の手では、頭から出た角を撫でる。
マドカの足はすでに出口へのほうへ向かっていた。
作られていくコロシアム。
様々な物事が思案され、破棄され、そして、決定され、結果、舞台は完成した。