TJSラジオ収録3月アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/25〜03/27

●本文

「『サンダージェットストリーム』」
 元気の良いオープニングの声と共に流れるバックミュージック。
 そして、続く二人の男性の声。
「こんばんわ。サンダージェットの上田と」
「下田です」
 上田と下田と名乗った二人は、ホッと息を吐いた。
「短い名前だとなんか安心するな」
「たしかに、素直に自己紹介するのはちょっと久しぶりだったからね」
 でも、と上田が続ける。
「名前を募集してるのは今もずっとなんだけどね」

「3月の1回目と2回目の放送は、なんか特番の所為でなかったわけですが。まったく、ホワイトデー特集なんかするから」
 ぼやく下田に、上田が言う。
「っていうか、ホワイトデーのお返ししなくて済む! ってガッツポーズしてたの誰だよ」
「えー? そんなこと言った覚えはないなぁ」
 とぼける下田だったが、上田のこの一言で馬脚を現した。
「でも、まぁ、あれだよな。お返しに困るほど貰ってないよな」
「うっさいな! それでも、普通にその時期に放送局とかに来ると、いろいろ金かかるんだよ! 無いなら無いほうがいいんだ」
「あー、言っちゃった」
「あ、しまった」
 本音を漏らした下田の一方で笑う上田だった。

「3月っていうと、卒業式の歌ってさ、最近いろいろ変わってるらしいよ」
「変わってる?」
「そう、定番曲をポップス調にしたり、ぶっ飛んだのになるとラップ調にしたり。あと、新曲も卒業式に食い込んできてるらしい」
「へぇ」
 興味深そうに頷く上田。
「そこで、俺は考えた訳よ!」
「またろくでもないことを?」
 下田の自信満々の態度に嫌な予感を覚える上田。
「俺たちが卒業式の歌で歌手デビューしたら超すごくない? 毎年、この時期に歌われるわけよ? 他にもいろいろぶっ込んでさ。題名は『桜と梅と四月馬鹿』。どうよ?」
「‥‥‥途中まではわかるけど、その題名はどうかな? 絶対にあり得ないと思うけど」
「そうかなぁ」
「歌はできてるの?」
 上田の質問に首を振る下田。
「いや、今月のゲストにねだろうかと」
「絶対却下な、それ」


 ラジオ番組『サンダージェットストリーム』。
 この番組は、旬なゲストに登場してもらい、近況報告や、様々な宣伝を、トークを交えて行う番組である。

●今回の参加者

 fa0181 四条総一郎(21歳・♂・兎)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)
 fa4852 堕姫 ルキ(16歳・♀・鴉)
 fa5035 ラファエロ・フラナガン(12歳・♂・狼)
 fa5440 瑞雲 カスミ(22歳・♀・狼)
 fa5470 榛原 瑛(26歳・♂・猫)

●リプレイ本文

●第3週
「どうも、四条です」
 今週のゲストとして紹介された四条総一郎(fa0181)。
「四条‥‥あまり聞かない名‥‥」
 言いかけた下田に上田の手刀が入る。
「おまえな、ゲストだからな、ゲスト」
 指を立てて説教をする上田に、総が言う。
「いや、あまり表に名前が出ないから仕方がないというか。バックダンサーって‥‥」
「バックダンサー!」
 総の職業に激しく反応する下田。
「‥そうです」
「バックダンサーっていうと、アイドルとかの後ろで踊ったり」
「そうですね」
 矢継ぎ早に繰り出される下田の言葉に頷くしかない総。
「コンサートの打ち上げで可愛い女の子お持ち帰りしたり」
「‥それはないと思‥」
「ツアーの達成感とかで、アイドルと連帯感とかできちゃって、そのまま別のものまでできちゃった婚!」
「‥みながそういうわけでは」
「うらやましいな、こいつ」
 下田が指先でつんつんと総を突く。
「人の話を聞けー!」
 再び下田に手刀が突き刺さった。

 話は舞台演劇の方に進んでいく。
「はい。今まで自分か培ってきた経験を活かすように頑張るつもりです。発声や演技に関してはまだまだ勉強しなくてはならないことが山積みだったりしますけど、元々そういった方面の仕事がしたくてこの業界に入ったので結構楽しいんです」
「好きってのはいいな、うん」
 下田と総がお互いに頷きあう。
「仕事の幅も広がりますしね」
「そうそう。そうしたら出会いも広がるしな」
 頷き会う二人だが、どこかずれている感も否めない会話が続いたあと、上田がまとめに入る。
「それでは、舞台の場所と時間、それにチケットが購入できる場所をご紹介します」


「二人目のゲストの、ラファエロ・フラナガンさんです」
「おはようございます」
 司会の上田の言葉に、ラファエロ・フラナガン(fa5035)がはっきりした口調で答える。
「若いなーっていうか子供だ。この番組初の子供ゲストだ」
「ラファエロさん、よろしくお願いします」
 ラフィーの緊張を解かすかのように、笑顔の上田が挨拶をした。

「名前を考えてくれた、って聞いたんですけど」
 上田の言葉に大きく頷くラフィー。
「上田さんのフルネーム、上田神で、かみ、じん。下田さんのフルネーム、下田丹、した、たん、まことという事で」
「えーと、俺がしたたんたん‥‥紫蘇焼酎の名前みたいだな」
「いや、その前に、俺のほう。上と神の間の田んぼがさりげなく超スルーされてるんだけど」
 突っ込む上田をスルーしながら、ラフィーはマイペースで話しを続ける。
「それでは、したたんとかみじんの二人に、『名残雪の別れ』をプレゼンとします。今から歌うのでついてきてください」
「‥‥演歌?」
 下田のつぶやきも同じくスルーするラフィーは、淡々と歌い始めた。


「今度のゲストも元気! だが年増だ!」
「年増?!」
 思わず声を上げた瑞雲 カスミ(fa5440)。
「さっきの子供と比べたらな!」
「それだと俺らはどうなるんだ? それはともかく、次のゲストは、先ほどちらっと声が出ました、この方! 瑞雲カスミさんです」
「どうも。こんばんわ」
 カスミの元気な挨拶でスタートした。 

「カスミはブラスバンドなんだろ?」
「そうですね」
 司会者の無礼な言葉遣いにも動じず、普段通り受け答えするカスミ。
「一人でバンドって名乗るのは寂しくないか?」
「いや、別に一人でやる訳じゃなくて」
 思わず苦笑するカスミに別の司会者が尋ねる。
「カスミさんは何が得意なんですか? フルート?」
「今日持ってきたのはフルートですね。本来ブラスバンドって言うのは金管楽器の楽団なんですよ?」
「金管楽器というと、トランペットとか?」
 そうですね、と頷くカスミ。
「あ、おれ、サックスがいいな。オトナの男って感じで」
「サックスは木管楽器ですよ」
 下田の言葉に即座に答えるカスミ。
「え? だってサックスって金属でできてるだろ?」
「あー、それはですね。音の鳴らし方の問題で‥‥」
 金管楽器の説明から入っていかなければならなかったブラスバンドの説明は、かなり長く続くのであった。

 カスミのフルートの演奏に起こる拍手。
「いいねー。綺麗」
「どもども」
 照れるカスミだが、でも、と続ける。
「でも、一人よりもやっぱり大勢の方が好きかな。みんなでやると、一体感とか、調和音とか、音の広がり、振動とか。もう段違いだから」
「なるほど。そう言われると、演奏会も聞いてみたいですね。予定とかはないんですか?」
 司会者の言葉に応えていくカスミ。
 そこにもう一人の司会者が尋ねる。
「その演奏会って、綺麗な人来る?」
「まぁ、来る‥‥かな、きっと」
「是非呼んでくれ!」


「今週の最後のゲストは、『flicker』からこの方」
 司会者に振られたラシア・エルミナール(fa1376)が挨拶をした。
「こんばんわ。なんだか久しぶりだね」
「確かに、久しぶりですね」
 元気でした? と続けようとした上田を遮り、下田が言った。
「なに? 干されてた?」
「いや、そういうことは、無いんじゃないかな、多分」
 苦笑しながら答えるラシアだった。

 イタリア土産の写真を観ていた下田が言う。
「ポロリとかないの?」
「あったとしても、抜いてあるだろうなぁ」
 上田の冷静な言葉に打ちひしがれながら下田が言う。
「‥‥では、この『flicker』、4人バージョンの生写真を、ラシアのサイン付きで、リスナーの5名にプレゼント」
「勝手に‥」
 相方を止めつつ、大丈夫? とラシアの目を見る上田。
「ま、いいよ」
 ラシアの答えに、喜ぶ司会者の二人。
「よっ、ラシア、太っ腹! イタリアのピザのおかげかな。最近オトナっぽくなってきたもんな」
「‥‥太っ腹と料理と大人って、それ、純粋に太ったって言いたかったり?」
 怖い目のラシアにおびえる司会者の二人だった。

「卒業かぁ」
「もうそんな歳かぁ」
 ちょっとだけしんみりする司会者の二人。
「俺たちは高校は違うからな、上田はどんなだった?」
「普通だったかな。あ、でも、在校生がプロの歌手にお願いして、曲作って歌ってくれた。その曲、CDになって売ってる」
「へぇ、それはすごいね」
 静かながらに盛り上がる三人。
「俺たちにとっては昔の話だけど、ついにラシアもそんな歳に」
「道理で大人っぽくなったわけだ」
 話題がループしてしまったことに、ハッと気がつく司会者達。
 しかし、時すでに遅し。
「‥‥誰が太ったって?」
 何故ギャグで流してくれないのか、と言うに言えずにおびえる下田。
 上田は、最後までこの話題に触れずに行こうと心に決めたのだった。



●第4週
「今週のゲストは、『Fragment’s』のお二人」
 司会者が言葉を振るテーブルの向こうには亜真音ひろみ(fa1339)、魔導院 冥(fa4581)の二人が座っていた。
「御機嫌よう諸君! 私は魔界の旋律を奏でし悪魔ギタリスト、魔導院冥だ。初めての者もそうでない者もよろしく頼むゾ」
「みんな、こんばんわ。亜真音ひろみです」

「同じバンドとは思えないぐらい、二人とも個性がありますよね」
 上田の言葉を高笑いで一蹴するメイ。
「確かにな。そもそも、私がギターをしているのも、ひろみ君に利用価値があるからであるからな。たまに甘味処を教えて貰うこともあるので非常に役立っていると言えよう」
 尊大な悪魔なメイの言葉にも慣れたもので、ひろみが全うに質問に答える。
「バンドはもともとあたしとドラムの二人だったんだけど、たまたまメイと一緒にやってその作曲の腕を見込んで入ってもらったんだ」
「ひろみさんがスカウトしたんですか。甘味で釣って?」
 司会者が尋ねる。
「あたしは作曲が、メイは作詞が苦手でちょうど良かったからね。別に釣ったわけじゃないけど、同じ甘党っていうのも大きな理由だね」
 笑いながら答えるひろみに、甘味ごときに釣られるか! と怒り出すメイ。
「『Fragment’s』に甘味パワー有りか」
「だから、甘味パワーではないと言っておるだろうが」
 メイと下田がやり合ってる間に、上田がひろみに言う。
「なるほど。個性的に見えていて、実はけっこう似ているわけですね」
「そうだね。あ、似ていると言えば、メイに春が来て彼氏が出来たんだ。二人を見てるとあたしの時と似ててね」
「ひろみ君! 何を言っているのだ。そのようなものでは断じてない」
 ひろみのぶっちゃけ発言を慌てて否定するメイ。
「そうなの?」
「何を勘違いしたのかは知らんが、そうだ。‥‥あー、まぁ、つまり、これからの付き合い次第だ」
 結局カミングアウトをしたメイであった。

 それぞれの目標について語った後、ひろみが思い出したように言った。
「そうそう。卒業式の歌だったよね。ちょっと軽く作ってみたんだ。メイ、大丈夫?」
「生ですか?」
 歌の準備をするひろみとメイを観て驚く司会者。
「うむ。ありがたく思えよ。 ひろみ君、良いぞ」

春は別れと出会いの季節
そんな風に言われるけど
気にせず走っていこう
どんな時も君には君でいて欲しいから

 歌い終わり、拍手が帰ってくるが、浮かない顔をするひろみ。
「少し卒業っぽくないかな?」
「うーむ。これはこれで良いと思うが。まぁ、まだ題名も決まってはおらんし」
「そうだね。いつか作り直して自分で歌おう」
 自然な二人の会話に司会者たちは突っ込むのを思わず忘れかける。
「‥‥俺たちにくれる歌じゃなかったの?」


「はじめましてでこんばんはー。夜空の果てからやってきた元天使、堕姫ルキでーっす。宜しくね」
 堕姫 ルキ(fa4852)の可愛い挨拶から始まった。
「悪魔の次は堕天使かー」
「ルキさん、よろしくお願いします。ラジオでは分からないでしょうが、ちゃんと翼もあって、ちゃんと衣装も」
「うん。翼は人間に見えなくすることも出来るけど、余計な力は使いたくないのー。ほら、現世って天国と違って、回復が遅いじゃから」
 キャラ作りでないとしたら完璧な電波にしか思えないルキの発言に悪ノリをする下田。
「そうそう。後が大変なんだよな」
「そうなのー。分かってもらえるのって嬉しいー」
 何故か会話が会う二人を横目に、上田が言う。
「‥‥絶対間違ってる、この空間」

「天国追い出されて随分経つワケだけど、現世ってホント楽しいよねー」
 下田の悪ノリもあるものの、話しの主導権は完璧にルキに握られていた。
「毎日毎日色んなコトがあって、色んな人に会えて。常に変化があって飽きないよ」
「‥‥確かに、色んな人に会えますし」
 上田の言葉には色々な意味が込められていたが、そんなものは堕天使であるルキには全く関係なかった。
「でしょでしょ? いろいろな出会いが恋を生み、愛を育むのよ。男と女が一つになって愛し合う。現世って本当に健全だわ」
「け、健全?」
「そう。愛し合った二人が重ねる肌。例えそれが一夜限りの愛だとしても、想いをオープンにできるのって、健全よ。我慢するなんて信じられないでしょ?」
 ぐっと拳を握りしめた後、ルキは続ける。
「それが、現世と天国の違いなのよね。愛し合うコトは素晴らしいコト、そうだよね? ね?」
 ルキの上目遣いに気圧される上田。
 それを観た下田が言う。
「耳が痛いな、結婚して約200日で子供が生まれた上田さんとしては」
「う‥‥」
 ぐぅの音も出なくなった上田であった。

「今日は楽しかったよ。また来てもいーい?」
 ご機嫌のルキにご機嫌でOKと返す下田。
「ありがとー。それじゃあ、お別れに、一曲かけて貰おうかな」
 盛り上がり続けるルキと下田、二人に負けていられない上田が何とか場を締めようとする。
「はい。最新曲ですね。最後に曲紹介もルキさんからお願いします」
「最新シングルから『OverDose』です。聞いてね。今日はありがとうございました」


「今月、最後のゲスト。タレントの榛原瑛さんです。よろしくお願いします」
 紹介された榛原 瑛(fa5470)がマイクに向かう。
「どーも。宜しくな」
 挨拶をした瑛は、下田の方を見て言う。
「綺麗な姉ちゃんや可愛い嬢ちゃんじゃなくて悪かったな? つまんねーか?」
 笑顔で悪態をつく瑛に下田が言う。
「確かに綺麗なおねーさま分は足りてないが、そんなことより、上田上田」
 下田に促されて瑛が上田のほうを見ると、上田が喜んでいた。
「おおー、男だー。すごい気楽。男最高」
「‥‥‥お前の相方はそんな趣味があるのか!?」
 ガタリと椅子を後ろにずらす瑛に、下田が言った。
「‥実はそうなんだ」

 下田をぼこぼこにされた後に、上田は番組を進行させようとする。
「瑛さんは映画も曲も全部観ました」
「本当? ありがとう。歌もね、この番組出るために歌を出したみたいなもんだからね」
「そうなんですか?」
「ああ、嘘だけど」
 瑛のこの言葉に、下田が突っ込む。
「嘘かよ!」
 そして始まる瑛と下田のやりとり。
 どうやら時間通りには進みそうもなかった。

 アマチュアバンドで何でもやっていた時代の話しの後に、自らの音楽スタイルの話しとなった。
「作詞とか苦手なんだよ、俺」
 頭に手を当てながら言う瑛。
「ま、仕事である以上そうも言ってられねぇけどな」
 瑛に向かって言う上田。
「そんなこと無いと思いますよ」
「みんなそう言ってくれるけど、やっぱり専門家には見劣りするって。歌にしろ、楽器にしろ」
「別に技術で歌を歌うわけでもないだろ?」
 下田が瑛に言った初めてのまともな言葉。
「確かにな。気概だけは負けねぇつもりだ。‥‥しかも、音楽活動再開したらしたで、より質のいいものを作りたくなるんだよな。だから技術も磨いていくつもりだ」
「応援してます」
「さんきゅー。つーわけで、今後とも応援宜しくな」