Music Fight −RSアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | うのじ |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 難しい |
| 報酬 | 8.6万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 04/02〜04/06 |
●本文
コロシアム風の舞台。黒と白の衣装を纏った並んだ司会者の二人。
「で、俺がライトソードチームっすね？」
黒い衣装を纏った下田という男性が言う。
「それじゃ、俺がレフトソード、と」
繋がるように呟いたのは白い衣装を纏った上田という男性だ。
「そう言うことです。お二人とも、普段は仲が良いと思いますが、今回は敵同士でお願いしますね」
番組プロデューサーである望月が笑いながら言う。
「オーケーっすよ！ ぎったんぎったんにしてやるぜ」
ノリノリの下田を観て、苦笑する他の二人。
一通りの説明を受けた後、司会者の一人、上田が質問した。
「ところで、俺たちは何をすれば良いんでしょうか？ リーダーって言われても特にすることがないみたいですけど‥‥」
「‥‥」
「‥‥あれ？」
沈黙する望月を観て、首をかしげる上田。
「‥‥つまり、することはない？」
下田が言う。
「‥‥えーと、そうですね。とりあえず、『参加者に何かお願いされたらする』、『何かあったら責任を取る』、『勝利した時の代表者になる』ぐらいで‥‥」
「基本的にすることはないんですね」
「はい」
望月は素直に頷いた。
ざわめく客席。
ライブの開始を今か今かと待ちわびている様子がよく分かる。
そんな会場の様子を上から見ながら、なにやら用紙に目を配る望月。
「なるほど。今回は、音楽性や正統派の歌声、楽器演奏を観に来ているお客さんが多いみたいですね」
スタッフの一人がそれに気がつき、尋ねる。
「それは？」
「ああ、これですか。今回のお客さんたちにアンケートを採ったんですよ」
そう言い、アンケート用紙を見せる望月。
それが合図になったかのように、開始のアナウンスが流れた。
壮大なコロシアムが映し出された後、それがややコミカルなゲーム盤状に変化する。
そして、司会の一人が転がしたダイスが、光と共に、中世の戦装束に身を包んだギタリストやキーボード弾きに変わっていく。
一方の司会者はコロシアムに置かれたチェスのコマを一歩進めると、コマは、地響きと共に、同じく中世の戦装束のドラマーやボーカリストに変化していった。
睨み合う二つの陣営。
そこに浮かぶ二つの剣。
その二振りの剣がぶつかり合うとそこに上からギター重なり、番組のシンボルマークとなった。
そこに『Music War』という番組タイトル、そして、今夜のテーマである『at Fight』が加わる。
音楽の戦争、『Music War』が、ここに開戦した。
「いくぜ、野郎ども！ 俺についてこい！！」
●リプレイ本文
●『無』Before the start「それじゃあ、そっち、ひっぱってもらえるかしら？」
「うん。わかったよ。これでどう？」
橘川 円（fa4980）と紗綾（fa1851）が大きな布を広げた。
「ラシアさん、どうかしら？ 遠くからでも見える？」
尋ねられたラシア・エルミナール（fa1376）は円の言葉に、大きく頷いた。
「いいんじゃない？」
ラシアの言葉を受け、大喜びの二人。
「よかったね。頑張った甲斐あったねっ」
「紗綾さんのおかげよ」
「そんなことないよ。円さんががんばったの知ってるもん」
ヒシと抱き合う円とさーや。
しかし、今まで持っていた旗から手を離してしまったために、旗の方はひらひらと地面に落ちていく。
慌てて拾い上げる蓮 圭都（fa3861）とラシア。
「後は下田さんにお願いするだけか」
「それに関しては勝算、ありです」
「俺が？」
下田の控え室。
そこには下田に加え、先ほどの旗を持ったラシアと圭。
普段は、上田と下田で一つの部屋なのだが、今回は別室と言うことになっていた。
「そうなの。円さんと紗綾さんが一生懸命作った旗なんだけど、それを下田さんに託したいの」
そっと上目遣いで言う圭。
「って言うか美術に任せれば‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
下田の容赦のない一言に凍り付くラシアと圭。
「‥‥その話しは二人にはしないようにしようか。もしかしたら、一生懸命さが伝わるかもしれないし」
ラシアの言葉に頷く圭と下田。
それは置いておいて、と圭が話しを元に戻す。
「下田さん‥‥」
「な、なに？」
ぎゅっと下田の両手を握り、圭は言った。
「リーダーとして旗手をつとめて欲しいの」
「‥‥りーだー」
「そう、最後の曲ではステージの端から端を駆け抜けお客さんのウェーブを誘って！ ‥‥凄く目立つし‥‥大変だけど大事なポジションよ！ 私達も演奏頑張るから、ねっ？」
圭の言葉に含まれた間が気になる、と思いつつもラシアはその様子を見ていた。
「‥‥オーケー。分かったぜ。俺に任せとけ！」
下田が答える。
そして、握られていた両手を離し、圭をヒシと抱きしめようと両腕を広げた。
「やったわ、ラシアさん。さあ盛り上げていきましょ！」
下田がその両腕を閉じようとする前に、圭はすでに後ろに控えていたラシアの元に合流していた。
ラシアと圭はハイタッチをしながら気合いを入れ、控え室から帰ろうとする。
「下田さん、期待してるわ。お願いね」
「お、おう」
下田の両腕は閉じられることはなかった。
●『起』Flame and the Arrow
バックには巨大なスクリーン。
そこに映る８名のアーティスト。
ノイズ混じりのモノクロの写真がそれぞれ映し出される。
そこに響きあう低いドラム、ベースの音。
右から左へ、轟音が流れる。
風が揺れるかのような音の響きに揺られるかのように明星静香（fa2521）の奏でる音が揺らぐ。
その風が止んだ後、舞台は炎に揺れる。
そして、満を持して、円のトランペットが声を上げた。
煌めく黒ドレスから伸びる白い腕が銀色のトランペットと絡み合う。
そこから出る鬨の声に呼応するかのように、黒のマントに身を包んだラシアがマイクを取った。
旅人と言うよりも、幻想の世界に出てくるようなシックな剣士、のような出で立ちのラシア。
その剣士の声がコロシアムに響く。
燃える故郷 天を焦がす炎
宵闇さえ赤く塗りつぶしていく
重い剣 手に取り立ち上がる
弓矢背負い 歩き出した
炎を連想するかのような照明が、舞台全て覆おった。
一層激しくなっていく曲調に合わせて、ラシアの歌声もまた、激しいものになっていく。
そしてそのパワフルな声に合わせて、二人の男性によるバックコーラスが加わる。
Flame and the Arrow
熱い風が 戦う力を呼び覚ます
Sword and the Arrow
戦う痛みを 胸に隠して立ち上がれ
想い剣 握り締め願うのは
平和ではなくただ生き延びること
Sword and the Arrow
戦う痛みを 胸に隠して立ち上がれ
Flame and the Arrow
迷う弱さを貫いて
歌い終わりに鳴り響きトランペット。
勝利を告げる音と共に、ふわりと消える照明。
舞台は次のステージへ向かった。
●『承』Awaking
再び明るくなった舞台では、ＬＵＣＩＦＥＬ（fa0475）が舞台の中央に立った。
クラッシックな衣装を纏い軽装な黒騎士の出で立ちのルシフ。
それとは対照的に、板金の鎧を纏った重武装の騎士なのは水威 礼久（fa3398）だ。
舞台は同じく対照的に、こちらは赤と青がせめぎ合う。
二人の中心には、黒のロングコートを纏った明星静香（fa2521）が、エレキギターを持ち、立っていた。
ルシフとクレイス、二人は、シズカを中心に、マイクを持ち、ベースと持ち、左右にと走り回る。
Awaking Awaking Awaking． Don’t afraid．
Blood make noize． Instinct of struggle．
Dryness of soul． Heartless feelings．
Shout of soul． The world that heats up．
間奏の間、クレイスがベースを揺らしながら演奏する。
その姿は、右から左へ箒をかけているかの様に舞台を横断した。
交差するように、左から右へ、動いたのはルシフ。
ルシフはそのまま舞台から飛び降りかねない勢いでギリギリまで舞台端に身を乗り出し、客席のレディに向かってキスを飛ばす。
響き渡ったのはルシフへの黄色い歓声だけではなかった。
舞台の反対側で、ベースが力強い音を鳴らしていた。
クレイスが一音一音丁寧に弾き、客席を鼓舞したのだ。
Awaking Awaking Awaking．Go into raptures．
Blood make noize． Scorching instinct．
Dryness of soul． invincibility feelings．
曲の最中、突然の暗闇が訪れた舞台。
次の瞬間、舞台は再び赤に染まり、ルシフとシズカの声が響いた。
Shout of soul． Break the Fake．
●『転』Resolution
圭のキーボードの音が静かに響き出す。
暗闇の中に照らし出される演奏者たち。
先ほどまでのアップテンポとは違い、どこかもの寂しげな雰囲気を醸し出す音楽に合わせて、ローブに顔が隠れた嶺雅（fa1514）の歌声が響く。
この戦いの結末に
一体何が待つのだろう
勝利はまるで
刹那に消える蜃気楼
終焉ベルは未だ鳴らず
零れる涙で傷は癒えるのに
心は日増しに餓えていく
傷つけて 傷ついて
痛みに耐える事にも疲れて
アコースティックギターに持ち替えたシズカ、そしてベースのクレイスが演奏に加わるが、音はどこか静かなクラッシックのまま。
それは、バイオリンの音がそうさせているのかも知れない。
さーやのドラムも加わり、寂しげに、しかし力強く、不思議な感覚を漂わせながら、続く演奏。
レイの透明な歌声が響き渡る。
嗚呼 でも
君を護る為ならば
私はこの身を刃に変えよう
心の渇きはまだ癒えないけど
もう迷わないと決めたから
止まない雨にうたれながら
もう一度立ち上がれ
勇気をこの手に握り締め
零れる涙も決意に変えて
再び 戦いの地へ
●『結』The brave
静かに余韻が響いていた舞台。
『再び 戦いの地へ』と歌われた様に、再び舞台に灯が灯った時、そこは激しい戦場だった。
激しいドラムの音と共にライトアップされた舞台には、ドラムを中心に３人のボーカル、左右にはベースとギターが二人ずつ。
全員のそろい踏み。
その迫力は、左右の交互に奏でられる演奏が示していた。
Ah 勝者には祝杯を！！
凱旋の道を花吹雪で熱烈歓迎
勝利者だけの無礼講に感謝感激
今は涙に溢す滴もモッタイナイ
傷付いた体の悲鳴さえ ただの歓喜の叫び！
黒いドレスを纏った圭が深紅のギターを弾く。
先ほどとは違い元気に歌うレイ。
そんな個人技だけではなく、そこには全てが集結していた。
レイ、ルシフ、ラシアの歌声。
圭とクレイスの背中合わせの演奏。
シズカと円の背中合わせの演奏。
それぞれがライトアップされる
そして固く誓った幼い勇気 貫き通せたのは
ひとりじゃなくて君がいたから
背中預けた友に乾杯を！！
舞台の上に登場する大旗。
それが右から左へ、大きく駆け抜ける。
歓声を聞くかのように、ドラムが一瞬鳴り止む。
さーやは指先でドラムスティックを回転させ、掴む。
ウィンクの後、さーやが操るドラムスティックが激しく踊る。
それに合わせて、力強く煌めく指先のリング。
踊って歌って騒いで 周り気にせず愛し合って
Wonderful！ Great！ excellent！
賞賛の言葉もっと浴びせて！！
天に向かい伸びる一条の光。
その光に向かい、腕を伸ばし、ポーズを決めるメンバー全員。
最後の台詞は、全員の合唱だった。
―今宵我等ハ勇者ト為リ―
その言葉と共にカットアウトされた照明。
しかし、それとは対照的に、賞賛の拍手、歓声が惜しみなく響いていた。
●『終』Before the continuation
「レイ君。助けてー。はやくー」
楽屋に響くさーやの悲鳴。
「ど、どうしたの？」
レイが慌てて部屋に戻ると、さーやが指さしたのは舞台の様子を見るためのモニター。
「はやく、はやく。録画しないと。始まっちゃうよー。」
「‥‥録画は放送の時にすればいいと思うヨ」
冷静なレイのつっこみにもめげずに、でももったいない、と主張し続けるさーや。
「どうした？ 大丈夫か？」
心配で尋ねてきたルシフに、レイが言う。
「大丈夫。いつもの‥‥」
「ああ、いつものか」
レイの説明に納得するルシフ。
「レイ君、ルシフ君、いつものってどういう‥‥あ」
二人の反応に抗議しようとしたさーやの言葉が止まる。
「どうしたの？」
「えへへ、なんでもない」
そう言うサーヤの目は、ある後半出演者の指先の煌めきを見ていた。
番組終了後、大きくため息をついたクレイス。
「だめだったか‥‥」
「どちらかというと前半は不利なのかもしれないわね」
小さなため息と共に言うシズカ。
そんな二人を見て下田が言う。
「元気出せ、元気。差は数デシベルらしいからな。勝ったも同然だぜ？」
「勝ったも同然は言い過ぎじゃない？ ま、元気を出すのは賛成だけど」
「そうね。いつまでもくよくよしても仕方がないわね」
ラシアと円が下田の言葉に続く。
「それもそうだな。まぁ、楽しかったしな」
クレイスが納得したかのように頷いた。
「なんだか、元気出す、とか言いつつも元気ないな」
下田の言葉に圭が笑った。
「そうね。そうだ。もしかしたらお腹が空いてるのかもしれないから、何かお腹に入れてみるっていうのはどうかしら？」
圭の冗談のような言葉に真面目に頷く下田。
「よし、そうするか。コンビニ弁当以外で」
「‥‥」
「‥‥焼肉でも食べに行こうぜ、焼肉。元気出るぞ。他のメンバーも呼んできてくれよ‥‥シズカ、頼む」
何故か固まっている圭を見て、シズカに頼む下田。
「うん、わかった。みんな呼んでくるわね」
優しく頷いたシズカは、メンバーを集めるために楽屋に向かったのだった。
