T『JB』ラジオ6月アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 4.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/18〜06/20

●本文

「サンダージェット‥‥え?」
 普段通りの番組を始めようとした司会者の下田を、相方の上田が止めた。
 サンダージェットというグループで活動している上田と下田。
 この二人は、サンダージェットストリームというラジオ番組の司会を普段からしていたのだ。
「今回は‥‥『サンダージューンブライドー』」

 番組タイトルが変わったとはいえ、結局、オープニングで流れているテーマは、『サンダージェットを讃える歌』といういつも通りのテーマソングだ。
「‥‥‥なにそれ?」
「今週と来週はスペシャルウィーク! いうわけで、6月だし、JSとJBって似てるから、変えてみたんだよ」
「スペシャルウィークって、聴視率調査週間のことだよな? 数字によっては打ち切り番組を決めるという」
「そうだね。だから、大抵、どこのラジオ局もこの時期は特別な企画をやるね」
「数字が低ければ地獄、しかし、高ければ、銀座で接待三昧! これは張り切らないとな! で、それで、じゅーんぶらいど? 俺さ、クリスマスとバレンタインの次に嫌いなイベントだよ」
「‥‥‥‥」

 オープニングで、既婚者の上田と独り身の下田の分かりやすいトークが終わった後、今回の番組の趣旨が説明された。
「去年は、結婚観とか聞いたんだけど、今回は、結婚相手を探してもらおうかと」
「は?」
 上田の言葉にハテナマークを浮かべる下田。
「題して、『デートスポット体験リポート』というわけなんだ」
「それは‥‥俺が、ゲストと一緒にデートして、ラブラブになるっていう企画なんだな?」
「まぁ、有り体に言うとそうかな? つまり‥‥」
 上田の説明はこうだった。
 まず、ゲスト同士、もしくは、司会者とゲストで、デートスポットに行って貰い、その様子を録音する。

 つまり、今回は、
1、ゲスト同士でマジデート
2、ゲスト同士のペアやグループなどで遊んだり、グループデートしたり
3、司会者の上田さんとデート
4、司会者の下田さんとデート
5、そのほか(宣伝や近況報告、常識的に考えて出来る行動全て)
 の中からゲストが選び、その模様が放送されるのだ。

「おっし、気合い入ってきたー! こういうの、デートとか、俺、超得意だから、まかせろ」
 相方の下田の気合いの入りように一抹の不安を感じる上田であった。
「‥‥まぁ、いいけど。放送できないようなことはするなよ?」
「‥前向きに善処を検討しよう」


 ラジオ番組『サンダージェットストリーム』。
 この番組は、旬なゲストに登場してもらい、色んな事をしたり、喋ったりする番組である。

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)
 fa4028 佐武 真人(32歳・♂・一角獣)
 fa4526 菜姫 白雪(19歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●アマアマおでーと
 司会者が、あずさ&お兄さん(fa2132)とチェダー千田(fa0427)を紹介する。
「こんばんわ、よろしくね。『よろしくなのよぉ』」
 あずさとその傍らにいるお人形のお兄さんの挨拶の後に続くチェダー。
「デートなんて何時ぶりか! チェダーです。親子に観られないように頑張ってきました」
「いいな、お互い残念系の芸人としてよろしく頼むぜ」
 もう一人の司会者である下田が右手をチェダーのほうに差し出した。
「こちらこそ」
 チェダーも手を差し出す。
 しかし、握手は行われず、チェダーに縦のチョップが突き刺さった。
 大げさな効果音が鳴る。
「何がこちらこそだー。観てたぞ、女と一緒の逃避行。貴様は仲間になる前から裏切っているのだー」
 下田のジェラシー満々の態度に、あずさのお兄さんが呟く。
「『いやね、男の嫉妬って』」
「‥‥」
 ギィィと下田の首が動き、その目があずさを捉える。
「ち、ちがうの。私じゃなくて、お兄さんがっ」
 即座にお兄さんを売るあずさ。
「『ちょっと、酷いわっ。きゃーやめてー』」
「あずさちん、お兄さん、こっちに逃げてくるんだー」
「逃ーがーすーかー」
 盛り上がっている三人+1を見ながら、上田が寂しく言う。
「‥‥スィーツの森レポート、聞いてみようか」

 テーブルに並べられた大量のスィーツ。
 スィーツの森の中の8店舗からそれぞれ三種類、計24個。
 遠巻きに観る観客から聞こえる悪気のない声。
 かわいー。うわー超チェダーみてみて。まじで? マジマジ。
 そんな声を受けながらも、テーブルに座った二人と一つ。
「‥‥なんで一店舗3つずつなの?」
「え? チェダーさん、私、お兄さん。一人1つずつだからでしょ?」
「お兄さん!?」
 驚きの声を上げるチェダー。
 ここだけの話、お兄さんは人形なのでおやつは食べないのだ。
「‥‥オーケー。いざとなったら俺が責任を取るぜ」
 残さない決意をするチェダー。
「それじゃ、いただきまーす」
「いただきます。『いただきます』」
 元気な挨拶からお食事がスタート。
「このスフレ、これが食べたかったのー!」
「いちごのミルフィーユ、サクサクすぎて形が崩れる‥‥かくなる上は‥‥一口で喰う!」
「『ちょっと、わたしの分、残しておきなさいよ。あ、そのマロンはわたしの‥』リーフパイとモンブラン、おいしいっ」
「このタルト、ベリー尽くしで‥‥あっ」
「タルトもおいしいー」
「取られた‥‥。あずさちんの横暴、このまま許していいのか、お兄さん!」
「‥‥もぐもぐ‥‥ごくん、『許すわ』」
「えー?! 今の本当にお兄さん?」
 スィーツの具体的な説明は全くなく、和気藹々とお食事タイムは過ぎていった。
 完食されたスィーツ。
 あずさはお兄さんの分もしっかり食べきり、チェダーの決意は杞憂のものとなった。
「色々あったけど、あずさちんのお気に入りはなんだった?」
「うーん、全部だけど、アイスクリームのアップルパイと、スフレと‥‥全部かなぁ」
 味を思い出しているのか、うっとりしているあずさを観ながらチェダーが尋ねる。
「お兄さんは?」
「『私、一口も食べてない‥』」
 嘆くお兄さんを悲しくスルーしてあずさが言う。
「ちょっと疲れちゃった。一休みしない? 隣にスィーツが美味しいレストランがあるんだって」
「‥まだ喰うの?」

「ちなみに、隣には2件レストランがあって、両方美味しかったよ」
 司会者へ、そしてリスナーへのプレゼントを取り出しながら、元気に報告するあずさ。
「あれ? その2件で結構真面目な話もしたんだけど」
 首をかしげるチェダーに、未だにオープニングの尾を引いている下田が冷たく言う。
「真面目すぎたのでカット」
「『ひどいわっ、私が一番輝いていた所なのに』」


●ブラブラおでーと
 下田を囲むように、二人の美女が左右に並ぶ。
「こんな美人二人が付き合ってるのに、元気がないな?」
 シヴェル・マクスウェル(fa0898)が言うとラシア・エルミナール(fa1376)もそれに同意する。
「まったく。今日は二人で付き合ってあげるから幸せに思いたまえと」
「‥‥気の強そうな女が二人」

 青い天井のショッピングモールの中を歩く三人。
 すこし変装気味のためか混乱は起こらなかった。
 三人は下田のお薦めのお店に向かっていた。
 目の前に並んでいる何十種類の蜂蜜に感嘆の声を上げるラシアとマックス。
「蜂蜜専門店って言った意味わかっただろ? とりあえず、この中から三つ選んで」
 下田の言葉に頷き、二人は悩みながらも選んでいく。
 下田の方はというと、マックスの選んだ蜂蜜を見て声を漏らす。
「ん? どうした?」
 マックスが下田に尋ねる。
「‥それ、俺のお気に入り」
「どれ? あたしもそれにしようかな」
 マックスから瓶を受け取るラシア。
「えー」
「何? だめなの?」
「こういう時って、全員別々の選ばない? 俺だけ?」
「まぁ、好きなのを選べばいいんじゃない?」
「うん。美味しそうなので」
「俺だけかよ!」
 二人の冷たい言葉に、しょんぼりする下田であった。

「それでこれからの予定は?」
 マックスがローズマリーの蜂蜜に舌鼓をうちながら、今後の予定を聞く。
「超得意って言ってたからね、期待してるよ?」
「廃墟風ラブホテル、ロイヤルベリーとかどうだ? 血塗られた自動販売機からマニアックな衣装とかがランダムで買える」
「却下」
 下田の案は即座に否定された。
「服とか小物とか見て回って、その後、雰囲気の良い所とか?」
「うーん。ムードスポットか。夜の観覧車とかだとベタすぎるしな‥」
 ラシアの提案に、更に頭をひねらせる。
「じゃあ、最後はマンションに行くか」
「自宅に帰るのか?」
 下田の言葉にマックスが苦笑しながら尋ねる。
「そこはマンションの一室を改造したレストランバーなんだよ。夜景もばっちりだ。どう?」

「と言うわけで、この後、夜まで、アクセサリーとか見てたから、危うくたかられるところだった」
 下田がため息をつきながら言った。
「いつの間にか逃げてたんだよな?」
「一緒に選ぶのもデートのうちだと思うんだけどね」
 マックスとラシアの言葉に笑う上田。
「逃げたんじゃなくて、俺は置いて行かれたんだ」
「だってねぇ?」
「なぁ? 明らかにいかがわしい店の方を目指してたからな」
 下田に冷たい目を送る二人。
「最後に行ったマンションのお店はどうだったの?」
 上田の言葉に、ゲストの二人が答える。
 どうやら食事に関しては合格点だったようである。


●スイスイおでーと
「本日はよろしくお願いしますね」
 丁寧に頭を下げる富垣 美恵利(fa1338)。
「よろしくお願いします」
「お二人とも、こちらこそよろしくお願いします」
 菜姫 白雪(fa4526)の挨拶に続き、上田も頭を下げた。
「それにしても、上田さん、両手に華ですわね」
 くすりと笑う美恵利。

 水族館では、上田が両手に華でエスコートではなく、白雪が美恵利と上田の真ん中で二人を引っ張って行くような感じとなった。
 ペンギンのコーナー。
 水中を華麗に泳ぐペンギン、氷の上へ飛び出すペンギン、別のペンギンは魚を咥えている。
「空を飛べないかわりに、水の中を飛んでいるようですわ」
「かっこいいねー」
 美恵利と上田の感想とは別に、白雪が言う。
「可愛いですー。美味しそう」
「‥‥美味しそう?」
「ペンギンさんが食べてるお魚ですよー」
「‥‥さすが食べ物を無駄にしない女」
 さらに、ラッコが貝を割る所や、雄大に泳ぐ大きなサメが食事をしている所など、水族館のイベントである食事のシーンはチェック済みだったおかげで堪能することができた。
「すごかったですねー」
「そうですね。サメと言っても、凶暴なサメばかりではないのですね」
「うん、可愛かったです。あ、美恵利ちゃん、上田さん、あっち。お魚の群れが!」
 二人を引っ張っていく白雪。
 彼女が目指した場所では、数十匹の魚が一団となって泳いでいた。
 水槽越しに煌めく魚たち。
「大きいお魚も小さいお魚も頑張ってますよ」
 白雪の言葉に頷く上田と美恵利だったが、白雪の続く言葉に、動きが凍った。
「すごい綺麗。美味しそう‥」

「‥‥水族館で美味しそう‥‥白雪って勇気あるな」
 レポートを聞いていた下田が言う。
「でも、本当に素敵だったんですよー。ね?」
 白雪の主張に美恵利が頷いた。
「はい。綺麗でしたね。中で泳いでいた職員の方たちがうらやましかったです」
「TVとかなら、そういうのもやらせてもらえたかな。次、お願いしてみようか?」
 上田の言葉に、是非、と喜ぶ美恵利と白雪。
「あんまり出来ないこと約束しないほうがいいぞ?」
 苦笑しながら下田は言葉を続けた。
「それで、それからどうなった?」
「はい。その後は、これです。じゃーん」
 白雪が自前の効果音で取り出したのは、大きなぬいぐるみ。
「上田さんにクレーンゲームで取っていただきました」
「‥13回挑戦した」
 苦笑する上田に、ぬいぐるみを抱きしめながら、礼を言う白雪。
「がんばったな‥‥」
「誕生日だからって言われるとさ。あ、そうだ。美恵利さん、そろそろアレを」
 上田の言葉を受け、大きい箱と小さい箱の二つを取り出す美恵利。
「はい、こちらですね」
 大きな箱の中にはバースデーケーキが、小さい箱の中には虹色に輝く指輪が。
「ぬいぐるみだけじゃあれなんで、指輪は、水族館で、美恵利さんと一緒に選んでもらったんだ」
「白雪さんにあうと良いのですけれど」
 美恵利が言いながら、白雪に手渡す。
「お二人とも、いつの間に?! いいんですか? ありがとうございます。‥‥ほんとうにいいんですか?」
 本当に知らなかった白雪は、受け取りながら、礼と確認を繰り返した。

 その後、イルカを見ながらの食事やアミューズメント施設でゲームを楽しんだこと。
 そして、その後のカラオケボックスに行ったこと、などの話で盛り上がった。
「カラオケか。三人は何を歌ったわけ?」
 下田の質問に三人は顔を見合わせて、笑った。
「それは‥‥秘密ですわね」
「はい、秘密です」
 白雪の感謝を込めたソロライブや、美恵利のレアな歌声。
 そして、二人に持ち上げられたため、調子に乗った上田のステージ。
 それらはデートコース披露では語られず、三人の思い出にしたのだった。


●ピチピチおでーと
「本当は朝からでもいいんだけど、お昼ご飯を食べてのデート開始ね」
「現地集合だしな。日焼け止め、持ってきたけど使うか?」
 場所は東京湾。
 佐武 真人(fa4028)が蓮 圭都(fa3861)に尋ねた。
 確かに、こんな天気は日の釣りはお肌に悪そうだ。
「大丈夫。ちゃんと塗ってきたから。さぁ、釣るわよ」
 気合いを入れる圭。
 釣り具の準備をする真人。
 そして二人は波止場に座った。
「‥‥のんびりするのも悪くないわね」
「糸に反応があるまではのんびりだな。こういうときに、のんびり話をするのもいいだろう。何かが釣れたら今度は逆に騒がしくなるだろうからな。本格的じゃなくても、こういうのも悪くない」
 テレコに向かって喋る真人。
「なにやってるの?」
「リスナーへのアドバイスだが?」
「なるほ‥‥あ、来た来た! 見て! ほら、なんか重い!」
 先ほどまでのまったりモードから一転、元気になる圭。
 それを見て、魚を釣り上げる手伝いをする真人。
 最初に釣れたのは45cmのアイナメ、大物だった。
 すかさず圭と魚を写真に納める真人。
「これ、食べれるの?」
「もちろん」
 圭の質問に頷く真人。
「‥どうやって食べたらいいのかしら。電子レンジにこのまま入れるのは‥‥」
「‥‥やめとけ」
「だよね」
 即座に料理を諦めた二人。
 行きつけの料理屋に持って行くという手もあるのだが、今回は釣りに集中することにした。

「それがこのときの写真」
 自慢げに見せる圭。
「すごいな。この後は?」
「‥‥外道以下ばかり」
 真人の台詞に笑う下田。
「でも、それでも楽しかったじゃない。ほら、佐武さんも楽しんでるでしょ?」
 別の写真を取り出す圭。
「‥‥いつの間に俺を撮った?」
「釣りに夢中になってる時。いいじゃない、男はいつまでたっても子供だって言うし」
 そんな圭と真人の写真を見ながら上田が言う。
「本当に楽しそうですね」
「ああ、それは事実だな。たしかに楽しかった」
 真人の言葉に頷く圭。
「奢って貰った夕飯も美味しかったし」
「俺が奢ったというか、番組にお礼を言ってくれよ」
 苦笑する真人。
 その時、慌てた様子で、話題を変えろ、と司会者の二人のインカムに指令が入った。

 そして、見せる相手が居ないなら今日来てくれば良かったのにもったいない、と圭の詐欺のように可愛い浴衣姿で盛り上がった後、皆で線香花火の風情を語り合う。
 一通りのデートを終え、終了の宣言。
「デートって言うよりは、一足早く夏休みを満喫できた気分。すごく楽しかったわ」
「そうだな。俺も楽しかったな。意外に財布にも優しいコースだった」
 真人の言葉に笑う上田と下田。
「今、こうやって外で遊ぶことも少ないものね。リスナーさんにもお勧め。そうね、今度はライブハウスデートしたいわ! よろしくね、佐武さん、上田さん、下田さん」
 圭のお願いを笑って受ける男、三人。
 そして終了する番組。
 
 しかし、この後、この男たちに悲劇が襲うことを一体誰が想像できただろうか。


●デートの後で
 番組収録後にあつまった4人の男。
 それぞれの手には、数々の領収書。
 スタッフが一言。
「あ、それ経費で落ちないんで」
 チェダー、真人、上田、そして下田。
 それぞれの男泣きが、そこにあった。