music carnival 後半アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/28〜02/01
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●本文
番組の準備があわただしく進んでいく。
しかし、彼らがあわただしいのは今回の番組の準備だけではない。
次回、さらに次回と先手先手で動かなければならないのだ。
「番組が休んでる間の舞台改装の手配、進んでる? マイナーチェンジでもいいし、全面改装でもいいと思ってるんだ。とりあえず、どっちでもいいように手配しておいてね」
「はい、わかりました」
「あと、改装明けなんだけど、1回目、冬スポーツで行きたいと思ってるんだよね。SPの番組の最後で、宣伝できるかな? 無理かな?」
「はい、そこら辺も調べておきますね」
しばらく打ち合わせが続けられる。
と、そこへ、スタッフが飛び込んできた。
「SPの番宣のVTR、できました!」
そう言いながら、飛び込んできたスタッフは、携帯DVDプレイヤーをセットし始めた。
けたたましい音楽と共に映し出される映像。
最初は柵で区切られている何もない舞台。
そこにギターを持った男性と、元気な女の子が映し出される。
さらに映像が切り替わり、今度は吸血鬼を思わせる男女のデュエット。白い衣装の女性に、三人組のバンドと、次々と切り替わっていく。
盛り上がる観客や、数々のアーティストが入れ替わりに登場し、その後、『Battle the Rock SP』という文字が、横に滑らせるように流れ出てくる。
送れて、その下に『the music carnival』という文字が続く。
舞台で繰り広げられる音楽バトル! 『Battle the Rock』。
スペシャル番組の今回は、その名も『the music carnival』だ。
今夜、音楽の宴の幕が上がる。
●リプレイ本文
●閑話
「おつかれさまでしたー」
ステージ裏の通路に声が響く。
『Battle the Rock SP the music carnival』の収録現場。
現在、前半が終わったところだ。
短い休憩をはさみ、後半がスタートする。
休憩中に少しトラブルがあった。
スタッフ出入り口での押し問答。
「‥‥あのー、あなたは?」
「謎の助っ人 おみっちゃんだ」
「‥‥‥」
そこにいたのは、複数人のスタッフと、マスクに黒眼鏡をかけた怪しい人物。
「‥‥そんな助っ人聞いてる?」
「sageniteを支援にきたんだ」
「‥‥sageniteって二人組だよな? 二人とも楽屋入りしてたし‥‥」
「あ、もしかして、ファンの方ですか? だめですよ、こっちにきたりしちゃ」
そう判断したスタッフは、二人で左右から、自称おみっちゃんの腕を掴み、外に連れ出そうとする。
「怪しい格好してますからね、これが普通なら警察沙汰ですよー」
外に出され、一人になった自称おみっちゃんは、マスクと眼鏡を外す。
そして、いつもの伊達眼鏡をかけると、そこに現れた姿は、三田 舞夜(fa1402) だった。
「‥‥sagenite。俺が出来るのはここまでだ。後はお前達の実力しだいさ」
「‥‥なにか、あったんですか? ‥‥暴動、ですか?」
騒がしかった為だろう、DESPAIRER(fa2657)が、スタッフに尋ねる。
「暴動‥‥い、いえ、そこまで酷いことにはなってないと思いますよ。聞いてきましょうか?」
「私も行きます。爆弾とかを仕掛けられていたら、大変ですから」
「ば、ばくだんっ?!」
ディーの後ろ向きな言葉一つ一つに反応するスタッフ。
「爆弾って、今、出ていった人ですか?」
廊下で話していたためだろう、今の会話が聞こえたのか、上月 真琴(fa1641)も、控え室から顔を出してきた。
「いえ、そんなことはないですよ」
奥から、番組のプロデューサーがでてくる。
「あ、望月さん、おはようございます」
ぺこりと頭を下げる、マコト。
「おはようございます、マコトさん、ディーさん。ちょっとしたトラブルは解決しました。安心して下さい」
疲れた顔の中にも、にこりと笑顔を見せる望月。
「そろそろ休憩が明けますね。お二人とも、最高のステージ、期待してますね。よろしくお願いします」
最後に、今度は自分からぺこりと頭を下げ、奥の方に消えていく望月。
「‥‥もう、はじまるのですね」
「ですね。お互い楽しみましょうね」
「‥‥楽しむ‥‥‥はい、よろしくおねがいします」
休憩が明ける。
最初にスタッフが出向いた先は、稲馬・千尋(fa0304) の控え室だった。
「千尋さん、休憩明けます。出番です」
●稲馬・千尋
「出番‥‥か」
スタッフに呼ばれた千尋は、かけたあった薄手の黒いジャンパーを羽織る。
ファーがもこもこしている。
「‥‥動き回ったら、ちょっと暑いかしら? でも、踊りたくなるような曲だから、仕方ないわね」
一人苦笑した千尋は、気分を切り替えるように、胸元のハーモニカに左から右に流れるように息を吹き込む。
軽やかに響いたハーモニカの音色を確認すると、赤と白のエレキギターをもち、ステージに向かった。
「稲馬・千尋、『sing・song・dancing』」
千尋のステージが始まった。
最初は、歌から始まった。
ロックと言うには、ややのんびり目の曲調、それがサビの部分に行くにつれて、刻むビートが速く鳴っていった。
sing! singing and dancing!!
躊躇ってるだけ無駄じゃない 考えないで 歌え! 踊れ!
sing! singing and dancing!!
リズムは心揺り動かす それにノッて動けばいいだけ!
あとはカラダが勝手に動く 歌を楽しめ 心行くままに!
間奏の間に、エレキギターを演奏し、次の間奏では、ハーモニカを吹き鳴らす。
飽きさせないパフォーマンスと、歌詞の通り、リズムに乗った身体の動きで、心のままに楽しむ千尋の姿。
その全てで観客を魅了していった。
●sagenite
「三田氏、来ませんね」
「きっと観客席で観てるんじゃないか?」
控え室では、Carno(fa0681)と赤川・雷音(fa0701)が、のんびりと座っていた。
「‥‥だとすると、折角ご指導頂いたわけですし、最高のステージを見せなければいけませんね」
「だな。まぁ、居ても居なくても、するけどな、最高のステージ」
控え室がノックされる。
「sageniteさん、時間です。よろしくお願いします」
「sagenite、『Carnival』」
コールされ、舞台に降り立つカルとライオン。
観客の声援に、ライオンが軽く手を挙げて応える。
コバルトブルーの光りが降り注ぎ、ステージは蒼に染まっている。
観客の声援が静まり、しばらく静寂が続く。
それを打ち破ったのが、カルが甘く静かな歌声だった。
君の手を引いて踊りだすCarnival
蒼い月が僕達を見下ろしていたね
そして、ライオンがギターをかき鳴らす。
舞台が青から一転して明るい照明に包まれる。
奏でる曲は、激しいものの、一瞬、どこかで来たことがあるような懐かしいメロディー。
静かな甘い声と、クラシックの名曲をアレンジしたロック。
歌は、二人のそれぞれのソロからはじまった。
幸せのPierrot
おどけてみせる
あふれる仮面 華やかな衣装纏う人々
色とりどりの眩しい光 街を飾る
光の闇に惑う二人
手をつないだまま はぐれた
喧騒に追われるように
路地裏を走り抜けていく
不意に君が流した涙
ふわり 舞い降りた雪より冷たく
張り裂けそうな想い 溢れだす
街を見おろす丘 強い風
君を奪い去ってしまいそうで
抱きしめた
ライオンのギターソロを合図に、明るい照明から、徐々に蒼の夜へ、舞台が元に取っていく。
いとおしむように引かれるギターは徐々にテンポを落とし、曲を最高潮へ導く。
ふわり 微笑む君の笑顔
僕の心焦がしていく
胸の奥に灯る炎に
焼かれていくみたい
二人で探し出す
夢より甘い
Moon Night Carnival
ライオンのギターが止まる。
響くのはカルの声だけだ。
君とまた ここで逢えたなら
しばらくの余韻の後、舞台上の照明が数回暗転する。
最初のように、蒼に染まった舞台の上で、ライオンがウィンクと投げキッスをして声援に応えた。
カルも、観客に深々と礼をしし、胸につけていた蒼薔薇を観客席へ投げてこむ。
観客の声援に出来るだけ応えながら、sageniteは退場していった。
●DESPAIRER
「DESPAIRER、『Fly』」
純白のドレスに身を包んだディーは、静かに、微かに優しい笑顔で、舞台にあがる。
舞台中央のスタンドマイクの前に立つと、ディーは、スッと、その場に座り込んだ。
低めの静かな演奏が始まる。
ディーの顔に浮かんでいるのは、微かな哀しみ、そして静かな狂気。
静かに歌詞を紡ぐ。
傷つき墜ちた 一羽の小鳥 地に伏して
雨降り止まぬ 鈍色の空 見上げてる
また飛びたいの? あの空を
飛びたい理由(わけ)が まだあるの?
けれどもすでに 翼は折れて
その身はすでに 雨に濡れて
最後の力 振り絞れども
その身に迫る 運命(さだめ)は一つ
立ち上がり、マイクを持つディー。
ディーの表情には、負の感情の他に、決意した心地良さが加わっていた。
歌は徐々に重く、激しくなり、3番に移ると、舞台が真っ赤に染まった。
歌はさらに狂おしく、激しくなっていく。
すべて捨て去り 私も行こう
すべて捨てれば 飛べると信じ
残されるのは 冷たき骸
血染めの刃 手にしたままの
歌が終わる、ディーの顔には感情はもう残っていなかった。
●上月 真琴
「上月 真琴、『想い』」
舞台から、マコトのコールがかかった。
ゆったり、のんびりと、舞台に向かうマコト。
その優しい雰囲気は、周囲を安心させた。
始まったその曲も、マコトとおなじ、優しく、ゆったりとした雰囲気のものだった。
ゆったりした 日のさす窓辺
私はただ 思い起こす
キミと私の 幼い頃
ここにある 一つの思い出
キミにだけに 響く想い
そんな想いも あるんだよね?
キミは聞いてくれてるのかな
聞いてくれるのかな
私の想い キミの想い
この想いが いつか確かな
形として 残るのかな‥‥
曲が終わり、観客からは、安堵の息が漏れる。
優しい気持ちへの感謝の完成が観客席を埋め尽くした。
観客に応え、深々と頭を下げるマコトに、さらならる歓声が沸き上がった。
●Venus
ここは、Venusの控え室。
登場が最後になるということもあって、Venusの控え室は静かだった。
明星静香(fa2521)は、じっと立って鏡を見ている。
着替えはもう終わっているため、座ることができなかった。
シズカにあわせてか、同じく立っている滝月・玲(fa1405)。
「Venus、トリなんだな」
「そうみたい。びっくりだわ。‥いやだった?」
「なにが?」
「最後になったこと」
「ううん、そんなことないよ。静香さんは?」
「私も大丈夫よ」
会話が止まる、そんな静かなシズカを観て、緊張しているとおもったのか、レイが言った。
「君の歌には心がある、きっとこの曲も共感して貰えるさ。俺達も未来を掴むぞ!」
レイの励ましの言葉に、シズカが目をパチクリさせる。
「その台詞、考えて置いてくれたの?」
「‥‥変だったかな?」
「ううん、元気出たわ。ありがとう。心強い仲間がいてくれて嬉しい」
「俺もだよ。そろそろ呼ばれる時間だね、行こう」
レイが立ち上がると、シズカもそれに習う。
舞台へ行く途中、スタッフと出会う。
「Venusさん、そろそろ‥‥」
「うん、今から行くところよ。案内よろしくね」
「Venus、『砂漠』」
コールされ、登場したのは、白と黒、それぞれの色のローブを身にまとったシズカとレイ。
シズカがマイクを持つ。
「1人で居ても、一緒に居てくれる人が居てるという事の大切さを感じることもあるわ。この曲はそんな大切な人の事を思い作りました。『砂漠』、聞いて下さい」
その挨拶を合図に、レイのアコースティックギターが、静かに音を響かせる。
単体で静かにゆっくりと響くギターの音が孤独感を伝える。
ずっと私は孤独だった
温もりも知らない 人形だった
暗闇の中 光も知らず
ただうつむくだけの 人形だった
徐々にテンポアップしていくリズム。
シズカの歌声とベース、レイのギターがリズミカルに響く。
キーが上がり、切ない想いを強調する。
そんな私を救ってくれた
優しさという光をくれた
あなたがいてくれるなら
私は未来(さき)へと行けるから
歌詞に合わせて歌が歌声も変化していった。
時には暖かく、時には切なく、時には力強く。
サビも終わり、最後にまた、テンポが最初のゆったりしたものに戻る。
もう孤独を棄てて行ける
そして幸せへと 君と一緒に行けるから ずっと‥‥‥
優しい余韻を残しながら、レイとシズカは軽く礼をし、ステージを後にした。
●エンディング
9組すべての演奏がおわり、後は勝敗を決するだけになった。
番組の最後になってやっと登場した、いつもの司会者の二人組が、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
観客達の手に握られているのは、50枚のコイン。
いつもの5倍だ。
観客達は、そのコインを自らが思うように分配し、舞台の各ミュージシャンのハコに向かって投げ入れていく。
コインのシャワーが舞台に降り注いだ。
そして、今回の勝利者が決定した。
『Venus』の扉が開かれた。
「‥‥楽しかった」
ステージが終わり、控え室で、一休みしているレイ。
「ええ、私も楽しかったわ」
シズカも、今度は椅子に座っていた。
「でも、お疲れさま、はまだだね。いこう」
息を整えたレイは、シズカの手を取り、ステージに向かった。
番組のエンディングテロップのバックには、『Venus』の『砂漠』が静かなバラードになって流れている。
その場にいるのが一人だけだとしても、決してひとりぼっちではない。
それは、ミュージシャンにも、観客にも、視聴者にも、そして、番組にも言えることなのかもしれない。
歌が続く。
間奏に入り、レイは、軽くシズカに気遣いの目線を向ける。
シズカは、目線に気がつき、大丈夫だと目線を返した。
シズカの声が、再び、ステージを埋め尽くした。
そんな私を救ってくれた
優しさという光をくれた
あなたがいてくれるなら
私は未来(さき)へと行けるから
孤独はまるで 砂漠のようで
乾いて 飢えて 1人震える
これ以上は 1人でいたくないから
君と一緒に歩いて行こう
1人じゃない あなたがいるよ
そばに あなたが 支えてくれる
これから先は 君がいる 君がいるから
もう孤独を棄てて行ける
そして幸せへと 君と一緒に行けるから ずっと‥‥‥