魂を響かせろ!舞台改装アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/11〜02/15

●本文

 『Battle the Rock』という番組のスペシャル版の収録も終わり、スタッフ達が一息ついている頃、一人の男がステージの上に立っていた。
 彼の名は望月。
 この番組の責任者だ。
「綺麗だよね、このステージ。全然壊れてないし」
 ロック番組として作られたこの番組では、幸い、デスメタル系やそれを超えるぶちこわし系ロックを歌う歌手に会わずにすんだことで、比較的綺麗なままだった。
「このステージを作ったときの思い出があるから、ずっと使い続けていたいけど、視聴者のことを考えると、こまめな舞台変えをして、目を楽しませるのも、重要なんだよね。だから、しかたがないか」
 そう言いながら、今まで、舞台の幕の役割をしてきたトラックの荷台を思わせる壁にしみじみとよりかかった。


 明くる日、『Battle the Rock』の製作会議が開かれた。
「舞台の改造なんだけど、今のイメージは『コンクリートジャングルの中、金網で区切られた一角で音による熱いバトル』なんだよね。このイメージをそのまま踏襲するか、新しく作るのか、そこら辺はどうなってるの?」
「そもそも、予算はある程度はあるものの、時間が限られてるので、一から作りなおす場合、寝ない覚悟が必要になりますよ」
「時間か。次の番組もう決まってるんでしたっけ?」
「たしか、国際スポーツ大会にあわせて、『冬のスポーツ』、その後、夜空が綺麗なうちに『星』をやりたいって言ってましたよね?」
「星かぁ、野外ライブ?」
「いや、さすがにそれはないでしょ。この時期の野外ライブは、寒くて大変」
「野外ライブで思い出した。舞台なんだけど、あの場で限定なのかな? ロケとかもできればうれしいんだけど。その場合、輸送できる番組のシンボルみたいなのがほしいんだ。もちろん、ステージごと輸送できればいいけど」
 数多く出る疑問、質問、難問。
 それらを聞いていた、望月が結論を出した。
「‥‥うーん、とりあえず、そこら辺も含めて、現場の意見を聞いてみたいよね」
 結局何も決まってないような気もするが、現場の意見を聞くという方向で、その場が決まった。
 決まったなら、後は行動に移すだけだ。
 つまり、舞台改造を頼み、そして、意見も出してもらおうと、緊急のスタッフを募集するのだった。

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0476 月舘 茨(25歳・♀・虎)
 fa0629 トシハキク(18歳・♂・熊)
 fa0833 黒澤鉄平(38歳・♂・トカゲ)
 fa1374 八咫 玖朗(16歳・♂・鴉)
 fa2387 神田 八助(34歳・♂・猿)
 fa2849 斉藤陽太(16歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

「みなさん、おはようございます!! このたびは、こちらの手違いの方もありましたが、このように皆さんに集まっていただきまことに感謝しています」
 作業開始の朝、集合したスタッフに、責任者の望月が挨拶をした。
 その後、適当な打ち合わせや注意事項などを確認し、作業が開始される。

「あ、極の大将、おはようございます」
 ミーティング後、先ほどの望月が、黒澤鉄平(fa0833)に声をかけた。
「おお、久ぶりだな、望月さん。セットの改装ってんで、今回もTeam【極】のメンバーを連れて仕事をしに来たぜ」
「はい、よろしくお願いします」
 黒鉄の言葉に、ぺこりと頭を下げる望月。
 すると、そこに、パァンという音が鳴り響いた。
 月舘 茨(fa0476)が望月の背中を叩いたのだ。
「よっ。いい顔になったじゃないさ、望月。今回も任せときな。Team【極】参上だよ♪ ‥‥ってどうした?」
 背中に走った衝撃のためにその場で悶えている望月を怪訝な顔で見るばら。
「‥‥い、いえ。ばらさんもよろしくおねがいします」
 そこに、先ほどまで改装前のステージの写真を撮っていた有珠・円(fa0388)がやってきた。
「早速セットイメージの打ち合わせ、頼むよ」
「了解しました。今、行きます」 
 目の前に揃った、黒鉄を除く極の文字入つなぎにスカジャンの集団、壮観な光景に、望月はこっそりまた頭を下げた。
 なお、黒鉄はつなぎを持ってきていなかった。
「おーい?」
「あ、はい。すぐに行きます」
 手にしたノートパソコンを振るアリスのほうへ、望月は小走りで駆けていった。


●作業は安全第一です!
「僕も何か手伝わせて下さい!」
 作業が進む中、斉藤陽太(fa2849)がそう願い出てきた。
 現場を観て、自分もなにかしたい! と思ったらしい。
 ちょうどその場にいたばらが対応をしたが、どうやら、ヨウタの熱心さに負けてしまったらしいく、上層部の許可が下りたのもあって、しっかり手伝ってもらうことになった。
「いい? 現場にでるなら、それ相応の服装っていうのがあるから‥‥、とりあえず、このつなぎ、着てもらえる?」
「はい、わかりました」
 ばらはちょうど予備で持て着ていた自分のつなぎをわたす。

 素直に受け取ったヨウタは、着替えを終えてもどってきた。
「これで、いいですか?」
 少し長めのつなぎを着たヨウタ。
 それを見て、頷くばら。
「うん、上出来。いい? 現場は危険だから。何があるか分からない。そんなときしっかりした生地の服を着ていればいろんなものから、身体を護ってくれるから」
 と、そこに、神田 八助(fa2387)がやってきた。
「あ、おつかれッス」
 カンパチの出で立ちと言えば、今まで着ていたつなぎは腰まで下ろしてあり、上半身はぴちぴちのタンクトップのみの服装のカンパチ。
「‥‥」
「‥‥」
「どうしたッスカ?」
「ま、まぁ、こいつの場合は肉体という名の防具があるから‥‥」
「はい」
「‥‥ヨウタは真似するなよ?」
「はい」
 カンパチの止まった空気に対する質問には答えはなかった。

「お茶かコーヒーでいい?」
 横からトシハキク(fa0629)が声をかけてきた。
「あ、自分はスポーツドリンクでお願いするッス」
「ジュース買いに行くんですね? 僕も買いに行きます。少しの荷物だったらもてますから!」
「そうか、じゃあ、一緒に来てくれ。こいつ、借りてきますね?」
「ああ、よろしく」
 ジスとヨウタが買い物に行くのを見送るカンパチとばら。
 ばらはどこか安心したような、カンパチは笑顔で。
 しかし、程なくして、カンパチが思い出したように尋ねる。
「‥‥さっきなんスけど」
「さ、やるぞ、お茶の時間までもうひとがんばりだ」
 疑問の答えが得られないカンパチであった。


●お昼はちゃんと食べよう!
「お昼でーーす」
 大道寺イザベラ(fa0330)の声が響いた。
 とはいえ、お弁当をもっているのは、横にいるヨウタだったりするが。
「今日は、あたしが試食した中で一番美味しいお弁当屋さんから注文してみました」
 軽く胸をはるイザベラ。
 普段は食事の時間もばらばらで、おむすびばかりだったが、今日はめずらしく一同が食事できたようだ。
「進み具合はどうだ?」
「順調。フェンスもそろそろ取りおわるかな」
「シンボルのほう、あれでOKだって。舞台の残りは俺がやっておくから、シンボル関係のほう頼む」
「ジズさん、それなら自分も手伝うっすよ?」
 それぞれ、打ち合わせをしながらの食事。
「俺はどうしましょう?」
 八咫 玖朗(fa1374)の言葉に、横にいたアリスが言った。
「じゃあ、俺と一緒にトラックの手配頼むよ。なかなかいいもの探すのがたいへんでさ」
 横にいたアリスの言葉に、はい、と素直に言う玖朗。

「はいはーい、では、ここで、がんばってる皆さんへ、私からの応援ソングをプレゼント!」
 イザベラが、MDラジカセを片手に、歌い始める。
 短いが大切なお昼の時間はこうやって過ぎていった。


●夜なべもほどほどに!
「おはようございます」
 玖朗の朝は早い。
 もしかしたら、夜遅くまで作業し、現場に寝泊まりしている仲間たちがもう作業をはじめているかもしれない、そう思うと自然と、朝も早くなるのであった。
「ああ、おはよう。今日も早いな。だいじょうぶか?」
 玖朗と同じ衣装に身を包んでいる黒鉄が挨拶に答えた。
「はい、だいじょうぶです。それより、衣装ですが、やっておきました。これで大丈夫でしょうか?」
 どさっとテーブルに置かれたのは、衣類だ。
 バイク乗りが着るようなレザー中心のその衣類は、玖朗は、家に持ち帰り、作業を進めていたものだった。
「寒暖対策がとれるように工夫はしてあるとおもうんですけど‥‥」
「おう、バッチリだろう。後で、望月さんに聞いてみるよ」
「はい、よろしくおねがいします。少し手伝ってきますね」
「ん? 学校は大丈夫なのか?」
「はい、それまでには抜けます」
 言うが早いか、現場の方に向かう玖朗。

「お、おはようございます」
 朝の現場に響いたもう一つの挨拶の言葉はどこか元気がなかった。
「おはよう‥‥って、その手、どうした?」
 黒鉄は挨拶の主であるカンパチの手を観て驚く。
「い、いえ、玖朗の手伝いをしようと思ったら‥‥」
 照れ笑いする大男カンパチ。
 その左手の5本の指はただで大きいのに、包帯がぐるぐる巻きにされ、さらに大きく見える。
「‥‥大丈夫なのか?」
「問題ないッス!」
 問題はあるとおもうが、黒鉄はこれ以上つっこまなかった。
「わかった。気をつけろよ。そういえば、アリスが探してたぞ。ペンキを頼みたいとか」
「え? そうなんですか? わかしました。行ってくるッス」
 元気良く動き出すカンパチを、黒鉄は苦笑いしながら見送った。


●司会の視界の先は闇!
「司会なんだが、講談師風にするのはどうだろう?」
 ジスの提案を受け、早速、漫談師風に準備された。
「とりあえず、レトロな感じというか、浅草で活動している漫談師を頼んでみましたけど」
 望月が舞台に上がっている人を紹介する。
「‥‥まぁ、聞いてみようか」
 そう言われると、望月は、安心したように、口上をお願いした。
 滑りよくはじまった口上。
「さぁさぁ、とうとう始まった音楽バトル。バトルザロック。寄ってらっしゃい、観てらっしゃい。今宵、皆さんの前に登場するアーティスとは、ごらんのとおりだぁ。安いよ、安いよ、奥さん、どうだい?」
 始まった漫談風舞台紹介。
 聞いていたジスが呟いた。
「‥‥これは、漫談師というか、バナナの叩き売りに近いな‥‥‥」
「‥ですね」
「‥だな」

 しばらく聞いていた一同だったが、出した結論は、全員一致だった。
「保留‥‥だな」
「‥ですね」
「‥だな」


●再び戦場へ!
「完成!」
 だれかがそう叫んだ。
 すると、現場の様々な場所から拍手がわき起こった。
 音楽番組の身体とも言える舞台が完成したのだ。
 倉庫風の外観になった舞台には、新たに加わったシンボルマークが書き加えられている。
 交差する2本の剣とギターというシンボルマークは、舞台だけではなく、小さなところにセンス良く、散りばめられていた。

「じゃあ、恒例の完成記念写真、撮ろうか」
 アリスの提案を受け、スタッフが集まる。もちろん、まだ多少仕事が残っている人もいるが、その人達も含めて全員だ。
「あれ? 望月がいないんじゃない?」
 ばらが周りを探していると、奥から大きな段ボールを幾つも重ねて荷台に乗せてきた望月が現れた。
「はやく、はやく。記念写真」
「あ、記念写真はちょっと待って下さい」
 急かされ、多少は慌てるものの、段ボールを開ける作業に入る望月。
「あ、これって」
 段ボールをのぞき込んだイザベラが驚きの声をあげた。
「はい、そうです」
 笑顔で答えながら、段ボールの中から取り出したのは、革ジャン。
「えーと、みなさん。おつかれさまでした。新しい舞台に、新しいシンボル、それに合わせて、特急でジャンパーを作ってみました。これ、もらって下さい」
 段ボールの中から、舞台と同じく完成したばかりのジャンパーをスタッフ一人一人に手渡ししていく望月は、全て配り終わったとき、自らもそれを羽織り、記念撮影の列に並ぶ。
「じゃあ、今度こそみんな揃ったかな? 写真撮るよー?」
 アリスがカメラを構え、シャッターを押した。

「ん? ヨウタ、どうした?」
 記念撮影後、少しぼーっとしている様にみえたヨウタにジスが声をかけた。
「‥‥いえ、すごいもんだなと思って。こうやって舞台って作られてるのか」
「ああ、そうだな。でも、お前も製作に携わった一人なんだ」
「はい、そうですね」

「おい、イザベラ、ヨウタ。折角完成したんだから、舞台使ってみないか?」 
 黒鉄の提案に、スタッフから拍手がおこった。
「えー? もう仕方がないわね」
 困ったような台詞とは裏腹に、笑顔で舞台に登るイザベラ。
「え? 僕もですかっ?」
 反対に本当に驚いたようなヨウタ。
 それぞれが舞台の登り、ミニコンサートが始まった。

 コンサートを観ている望月の元に、アリスが、やって来た。
 アリスの手には、小さな舞台、新しくなる前のミニチュア舞台。
「はい。これは、俺からのプレゼント。新しい舞台も、前回のと同じように、これくらい盛り上がるように。これからも頑張って」
「え? いただけるんですか? すいません、ありがとうございます」
 受け取り、ミニチュアに感激する望月、だが、あることに気がつく。
「これ、一個もらっちゃうと‥‥今回の舞台のもほしくなっちゃいますね」
「え?」
 欲張りな台詞に、凍り付くアリス。
「‥‥冗談です」
 冗談には聞こえないが、冗談だと言いながらもう一度感謝を言う望月。

 コンサートを目を輝かせて観ているのは玖朗だった。
 自らが製作に関わった舞台でコンサートが行われている事に、胸が熱くなり、目が離せないでいた。
 そんな玖朗の周りに、自然とTeam【極】のメンバーが集まってくる。
 舞台を、コンサートを、そして、まだ若い玖朗を暖かく見守る一同。

 今は、のんびりとこの暖かい時を過ごしていい時間だった。
 なぜなら、このコンサートが終わったとき、舞台は戦場になるのだから。

●ピンナップ


トシハキク(fa0629
PCシングルピンナップ
岬青潮


月舘 茨(fa0476
PCシングルピンナップ
ヨシノサツキ