リフォームでウィンターアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/17〜10/19
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●本文
登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)
TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、すべての発端であった。
その後、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームをしたり、上司Bの愛車を改造してみたり、ディレクター宅でフットサルをしてみたり、上司Aの屋敷で三角ベースをしてみたり、再びディレクター宅にメチャクチャなリフォームをしてみたり、そのディレクター宅を海に沈めて人工漁礁としてみたり、新たなディレクター宅で全裸だるまさんがころんだをしてみたり、そしてPSF連動でラグビーをしてみたり。
そんなわけで、すでに9回もこんなことをしてきているのであった。
そして、10回目がはじまる──
上司Aがディレクターに近づいていく。ディレクターもそれに気づき、声をかけられるよりも早く、答えていた。
「もう、PSFは終わりましたよ! スポーツの秋とか言わないでくださいよ!」
「おいおい、そんなことは言わないよ。何も言う前から、そんなケンカ腰じゃいかんよ」
微妙におとなしい上司A。無論、嵐の前の静けさにすぎないのは言うまでもない。
「そんなことは言わないって‥‥じゃあ、何を言うというんですか?」
「スポーツの秋ではなく、ウィンタースポーツを先取り! コレだ!」
「結局、そういうコトじゃないですか‥‥」
ガックリと肩を落とすディレクター。
「人工雪って、金がかかるんだぞ! うらやましいなぁ、そんなのを堪能できるなんて!」
「‥‥本当にうらやましいと思ってるんですか?」
「ああ、もちろんだとも!」
嘘くさい笑顔を作る上司A。だが、ディレクターも黙って受け入れるわけがない。
「じゃあ、広いゲレンデでやりましょうよ」
「広いゲレンデ?」
「‥‥おまえん家じゃあ!!」
「なっ! おま、ちょ‥‥」
ディレクターの突然の反撃に、声がうまく出なくなってしまう上司A。
「うん、そうしよっか」
そこへすかさず上司Bがやってきて、決定事項としてしまう。
こうして、上司Aの広い屋敷でウィンタースポーツを先取りするという、なんとも贅沢な企画がスタートすることとなった。
企画内容:
8名までの精鋭が、各自思い思いに室内でのスキーやスノボといったウィンタースポーツを楽しみます。
競技は何をしようとも自由。但し、ジャンプ台くらい大がかりな設備は用意できません。エアリアルのジャンプ台程度なら、なんとかなるでしょう。
雪上競技ではなく、氷上競技をすることも可能です。
雪は人工雪を降らせます。どの程度降らせる必要があるかは、各自指定できます。
ウィンタースポーツに必要な用具はすべて用意されます。無論、持ち込みも可能です。
各自のやる競技に、勝者や敗者やルールは存在しません。採点競技の採点も行われません。行われるのは、ディレクターが暴れっぷりのおもしろさを採点するだけです。
優勝者には、賞金10万円と上司Aの殺意が授与されます。
それ以外のルールは、ディレクターや上司Aが適宜ルールブックとなります。
遭難者や死者を出さないでください。ケガは自己責任で(治療費は出ません)。
過去の放送スケジュール(最近5回分):
・リフォーム三角ベース 6月4日 07:00〜
・リフォームで新築が廃墟 7月5日 07:00〜
・リフォームで新築が水没 7月17日 09:30〜
・リフォームでトイレ使用 8月10日 07:00〜
・【PSF】リフォーム闘球 9月17日 07:00〜
●リプレイ本文
『本日はお日柄もよく、ジャッジ兼ルールブックのディレクター氏と上司A氏をゲストにお迎えした』
放送席両脇にディレクターと上司Aを従えての実況、解説はマサイアス・アドゥーベ(fa3957)である。ディレクターと上司Aに挟まれているのは、いざというときにボコられるためのベストポジションであるからなのは言うまでもない。
すでにゲレンデこと上司Aの屋敷は、人工雪を撒いたり、氷を張ったりといったことは終わっているが、ウィンタースポーツとしての会場設営はこれからである。
外は秋空の昼間でも、屋敷中はひんやりとした薄暗闇。すでにZebra(fa3503)と雨宮慶(fa3658)が様々なコースやリンクを黙々と作っているが、そこへ陽気なチェダー千田(fa0427)が飛び込んでくる。
「みんなは気づいてないかも知れないが‥‥今回の収録、かなり危険だゼ! 家の中にッ! 水分をッ! 大量にッ! 撒くんだゼーっ!」
すでに降雪は終わっているにも関わらず、消防用ホースで水を撒くチェダー。設営も終わろうかという会場に撒くわけにもいかないので、放送席に向かってである。
『このようにウィンタースポーツは、常にスコールに襲われる可能性があるもの』
巻き添えを食ったマサイアスだが、笑いながら冷水を浴びている。一方、チェダーは笑っているどころではない。なぜかビリビリと感電していた。
「‥‥このように、かなり危険だゼ! 感電は必至ッ‥‥俺はオイシイけど、みんなは違うだろ?」
アフロになったチェダーが、ブレーカーを落とすのではなく、電線からして切断してしまう。あれこれ理由をつけているが、単に他の人が感電しておいしいところをかぶせられたくないだけである。
だが、これでは薄暗闇どころか暗闇での収録となってしまう。が、チェダーがちゃんと考えていた。おもむろにハンマーを取り出すと、南側の壁を打ち抜きはじめる。
『これは日当たりが最高だな。もはや南向きとかいうレベルを超えておる!』
マサイアスが勝手なコトを言っているが、チェダーも単に壁を打ち抜く口実が欲しかっただけである。
「さー、リフォームも済んだし、俺たちの安全も確保した。後は純粋に競技を楽しもうゼ〜♪」
冷たすぎるほどに突き刺さる上司Aの視線をまったくものともせず、原点であるリフォームをやり遂げた男の顔をするチェダー。アフロだが。
「おぉっ! これは実に眺めのよい家ですな〜☆」
チェダー曰くすばらしい眺望の直近には、庭の池が見える。もちろん、池はすでに凍っていて、その上に阿野次のもじ(fa3092)が氷筍を切って並べる作業に忙しかった。別にスピードスケートをするわけではないので、高速リンクにする意味はまったくないのだが、無意味に金をかけたいお年ごろなのである。
その横では、選手宣誓を控えるウィン・フレシェット(fa2029)が、雄叫びを上げながら気合いを入れていた。
「今日は童心に返って雪合戦だぜー! もちろん、雪合戦の相手は大人でも子どもでもない。あの変圧器に向かって、ただひたすらに巨大ベアリングの表面に人工雪をまぶして、雪団子と称した異形の怪物を投げるぜーッ!」
童心に返るまでもなくまだお子ちゃまのウィンであるが、テンションを上げすぎて自分の歳も分からなくなっているだけだ。しかも、変圧器はチェダーが根こそぎ電気を切ってくれたおかげで、接触プレーをしても安全である。
こうして準備も整い、いよいよシーズン開幕である。
「宣誓! 我々はスポーツマンらしくない精神に則り、ネタと気力の尽きるまでディレクター宅まで破壊しつづけることを、ここに宣言します!」
ウィンの選手宣誓が終わった瞬間、映像がディレクター宅に切り替わる。幸か不幸か本当のリフォームをしているだけで、破壊工作がそこまで及んでいることはなかったが。
「粉雪降る降る、フレフレ☆ のもじ♪」
そこへ、早速最初の競技の阿野次が、銀盤の女王となって現れる。そう、フィギュアスケートだ。となれば、すでに遠い昔のことのようだが実は今年だったトリノに敬意を表し、イナバウアーを決めるしかない。
しかし、イナバウアーどころか、反り返りすぎて頭が氷についてエクソシストのようになっていた。
『おしい! もう半回転すれば、その名のとおり『の』文字になれるというのに』
なんでも評論家ならぬトンデモ評論家といったマサイアスのムチャブリであるが、そもそも番組自体が超絶トンデモ番組なので、裏の裏は表のように、マイナスとマイナスをかけるとプラスになってしまうように、普通の解説になってないか逆に心配である。
一方、広い屋敷を活かして並行して他の競技も行われている。苦労に苦労を重ね、ついでにこのためだけに周辺の土地を借り上げ、更地にした上でコースに組み込んだボブスレーである。番組終了後は上司Aの屋敷だけがポツンと建つことになるが、束の間の輝きのためには将来の負債など気にしていられない。
「氷上のF1、ボブスレーだ!」
しかし、スタート地点にはZebraしかいない。なぜかは知らないが、雨宮はゴールを過ぎたところで待ち構えている。
「ちょ、なんで俺が!?」
パイロットとして、なぜかチェダーが乗せられている。もちろん、押すのはZebraである。
「あのアツい関係を僕らは忘れない‥‥めくるめくスピードの中で、開放的になっちゃえばいいじゃん! さあ、後ろからガンガン押していくゼ!」
「やさしくしてぇ〜ん!」
チェダーの悲鳴も無視して、一気に押されるボブスレー。そしてZebraが乗り込み、あとはコースに翻弄されるがままである。
『ボブスレーの密着して二人きりという特性を活かし切っているな。早くてよく分からんが、さりげなく後ろから耳を噛むZebraに感動を禁じえない』
マサイアスが勝手に涙している間にも、ボブスレーはゴールを通過する。タイムなど計っていないので、記録がどうこうという問題ではない。問題なのは、どう止まるかだけである。
というわけで、そこで雨宮の出番なわけだ。ボブスレーのコースの先にカーリング場を作っていた雨宮が、デッキブラシを持って待ち構えている。
「スイープ! スイープ‥‥って、できるわけないじゃないですか!」
だが、たまらず逃げ出す雨宮。カーリングのストーンだって大きさの割りに20kgもあるのだが、それにも増してボブスレーでは交通事故のようなものである。
「涅槃で会おう、さらばだ!」
「えっ、ちょ!」
ボブスレーから、いつの間にかアイスホッケーのプロテクターで完全防備のZebraが飛び出す。が、前に押し込められていたチェダーにはどうしようもできない。
ドカーン! 一瞬にしてボブスレーがグチャグチャの鉄塊になり、ゴロゴロと跳ね返ってくる。
「フリーでパックが‥‥ゴールのチャーンス!」
氷上のF1をあっさり捨て、氷上の格闘技に転向したZebraが、ボブスレーからわずかにのぞいていたチェダーの真紅のアフロ目がけてスティックを振り下ろす。
「待ってください!」
雨宮が慌ててそのZebraを止める。といっても、チェダーの身を案じたわけではない。
「ほら、ちょうどハウスに!」
一度逃げたにも関わらず、カーリング継続中だったのである。ボブスレーが停止すると、変わり果てたチェダーがこぼれ落ちてくる。
点数は一切関係ないが、この得点に雨宮を抱き上げて喜ぶZebra。すでに二人の頭にチェダーはない。
そんな白熱の試合展開になっている一方、犬神一子(fa4044)は地味に作りつづけていたかまくらを完成させていた。場所はもちろん、座敷にである。中にはコタツが置かれ、その上にカセットコンロも置かれている。
コタツを雪の積もる中に出すこと自体はおかしいが、雪が積もっていようと屋内なのでしょうがない。チェダーが壁をぶち抜いていて吹きっさらしではあるが、屋根さえあれば屋内の理論である。
そこへ、かまくらの中に放送席を移したマサイアスとディレクターが意気揚々とやって来る。あきらめ顔の上司Aもトボトボと入ってくる。
「ウィンタースポーツ、冬にする運動といえば‥‥鍋を囲んでの肉の取り合いバトル!」
黒猫は月気球をめぐって冒険するのかもしれないが、冬のリフォームの匠は鍋をめぐってバトルをするのである。それはリフォームが終わってからすることではないのかという疑問もあるが、それでは折角の冬先取りを活かせないので気にしない。
『中は暖かいな。暖かい‥‥ふむ』
なにやら思案顔のマサイアスであったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「今までにディレクターが上司Aから受けた無念を晴らすため、雪合戦という名の忠臣蔵に挑むのじゃ! 雪のあるところでやれば、何でもウィンタースポーツになるのじゃ!」
犬ゾリに乗って、DarkUnicorn(fa3622)が討ち入りにやって来たからだ。しかも、赤穂浪士は47人でも、犬なら101匹じゃないとダメだろうということで、数が増えている。
もちろん、その中にはウィンもいる。変圧器を破壊する雪合戦を一人黙々とやっていたのだが、やはり電気の来ていない変圧器相手ではおもしろくなかったようだ。
ウィンは当然のごとくソリに乗っていたが、なぜかソリを引く犬側の方で参加していたのはZebraだ。そう、100匹しかそろえられず、101匹目がZebraとなってしまったのである。
「ボブスレーなんてクソ食らえ、断然犬ゾリだぜ♪」
Zebraのソリにはチェダーが乗り、早くもムチをこれでもかと叩き込んでいる。ボブスレー時とは攻守が入れ替わっているが、彼らはリバーシブルなので仕方がない。
「お前さんも中間管理職でてぇへんだろうな、うんうん」
しかし、外でそんなことになっているとは知らない体で、犬神は上司Aに日本酒をススメたりしていた。
ドーン! ドーン! チェダーのせいですでに壁はなかったが、それでも丸太ん棒で門を破壊せずには気の済まないDarkUnicorn。
「ほら、除夜の鐘なんか気にせず、飲めよ」
その音をしきりに気にする上司Aだったが、犬神がムリヤリ丸め込んでしまう。
「者ども、討ち入りじゃ!!」
そんな間にも門は完膚なきまでに破壊され、ついに突入である。
「ええい! 吉良こうのなんとかかんとか上司Aは、どこへ隠れたのじゃ!?」
かまくらのある場所は目の前だったにも関わらず、わざとあさっての方向にばかり突き進むDarkUnicorn。日本刀を振り回しながらなので、ムダにガシャンガシャン壊しまくりである。
「殺意、そんなもので人は殺せない‥‥」
上司Aの殺意を抱こうとも、命まではとられないとばかりに、DarkUnicornに乗っかって雪玉改め氷玉を投げまくりである。
「何を気にしておる! もう野菜が煮えたぞ。野菜を食え、野菜を」
明らかに除夜の鐘というには無理のある喧騒を上司Aが気にし出すが、犬神が鍋奉行という名の独裁政権を布いてしまったので、身動きが取れなかった。
「ぬぅ、ここにおったか悪徳奉行め!」
ついに、DarkUnicornがかまくらに踏み込んでしまう。だが、上司Aではなく犬神に刃を向ける。話の筋が変わってしまっているが、犬ゾリの段階で大きくずれているので、今さらの話である。
「肉は俺のもんだ! 渡さんぞぉ‥‥ぐはっ!」
犬神が必死の抵抗を試みるが、DarkUnicornごと、いやかまくらごと巨大な雪ロールに押しつぶされてしまった。
なんとか難を逃れた上司Aが這い出てみれば、ボブスレーのコースが均されて、急坂に変わっていた。その頂上には、阿野次が立っていた。
「空から落ちてくる『の』文字を受け止め、高台の王座に座る女王のもじ様に捧げよっゲーム!」
この巨大雪ロール、横から見ると『の』という文字になっているのだ。しかし、それを食らう側は単に白い巨大な壁が迫ってくるだけである。
「この10年後の冬季五輪の正式種目になること確実の、画期的世紀末帝王ゲームに、早くもジャンピングチャーンス! 鉄アレイをくぐり抜け、ちくわをキャッチしたら得点が倍に!」
得点などないのだが、勝手にドンドン進行していってしまう阿野次。もちろん、雪ロールは定期的に落ちつづけている。
そんな中、チェダーが飛び出すと坂道を駆け上り、ちくわをダイレクトに口でキャッチする。そして、あっさり戻ってきてしまう。
「好物でござろう? ニンニン♪」
ようやく雪の中から這い出てきた犬神の口に、犬間違いでちくわを突っ込む。
「ニョニョー!」
喉の奥まで突き込まれ、思わず奇声を上げる犬神。しかし、その発音からはどうもノリノリのようである。
「最後にボーナスチャーンス! これを受け止められたら10万‥‥うわっ!」
トドメとばかりに阿野次が超巨大ロールを出したところで、突然坂ごと崩れ落ちる。そう、雪崩発生である。
『‥‥なかなか場が暖まらないんで、いっそ物理的に暖めるかと暖房を全開にしたんだが‥‥雪崩になっちまったか』
見渡す限りの銀世界、動くものは何一つない中、ひょっこりマサイアスが現れた。
『抜けば玉散る氷の刃、国破れて山河あり、ただ春の夜の夢の如し‥‥って、秋だけどな。やっぱ、秋にウィンタースポーツはやるもんじゃないね!』
そう言い残し、一人去っていくマサイアス。何もかもを覆い尽くす白い雪の上を、己の足跡だけを残して。
なお、優勝は最終的に『の』文字と一体化した阿野次のもじとなり、10万円が贈られたという。