第25回プロレスごっこ王アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/28〜10/30
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「さて、早速だが今回のポイントは、1載、1正、1澗となるわけだが‥‥もうテーマが何かは分かるよな?」
「はい! 何かを載せる、積載するわけですね!」
何かに憑りつかれたかのように、即答するスタッフ。
「そうだ。やっと分かってきたようじゃねーか。ま、別に乗ってもいいし、ノッてもいいし、催眠でもいいんだがな!」
「サー、イエッサー!」
こうして、今回は鉄パイプの出番もなくあっさりと通算44回目のプロレスごっこ王選手権がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・『載』をテーマに試合をしなくてはなりません。『載』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王は、ポイントで不可思議(10の64乗)を超える人が現れたくらいで決定の予定です(年内決着予定。恒河沙〜不可思議は12月にまとめて行う予定)。
・毎回上位総入れ替えのインフレですが、そういうバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。
ランキング(上位5名、第22回プロレスごっこ王分まで)
1位 レイリン・ホンフゥ(fa3739) 1溝pt
2位 キューレ・クリーク(fa4729) 1穣pt
2位 武越ゆか(fa3306) 1穣pt
4位 湯ノ花ゆくる(fa0640) 約2垓pt
5位 小野田有馬(fa1242) 1垓pt
5位 グリモア(fa4713) 1垓pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第20回 10月05日 07:00〜
・第21回 10月09日 07:00〜
・第22回 10月15日 07:00〜
・第23回 10月19日 07:00〜
・第24回 10月24日 07:30〜
●リプレイ本文
『解説が涅槃に行こうとも、プロレスごっこは非情に進んでいきます。さて、槇島色(fa0868)選手の試合前のコメントによりますと『別に搭載とか掲載にこだわらず、『さい』が入れば何でもいいと思うけどね』とやや投げやりな発言。そうです、なんでもいいんです。重要なのは‥‥』
オープニングコントもなく、さっくりと進めていく実況はサトル・エンフィールド(fa2824)。とはいえ、急いでいるのにはワケがあった。
そんな中を、槇島がZXP400に乗って入場してくる。バイクが自前? そんなことはどうでもいい。巨大サイコロを抱えている? 『さい』つながりだろうと、それもどうでもいい。サトルにとって大切なのは、サイコロの目に書かれていることと、それを槇島が実行することなのである。
サイコロの各面を見てみると、メイド服、スクール水着、体操服(ブルマ)、ナース服、リクエスト、(秘)とあった。つまりは、出た目のコスプレ生着替えが待っているのである。少しでも回数をこなしてもらうためにも、急ぐ必要があったというわけだ。
『(秘)とは一体何なのか? 気になって、昨晩からまったく眠れておりません!』
「何が出るかなーっと、いきなりスク水ね!」
なぜか色が真っ白な布切れを持って、試着台へと入っていく槇島。
『なんと! カーテンがシースルーであります! 放送時間帯抜きに、放送してしまっていいんでしょうか‥‥?』
槇島がちょうど着替えはじめようかというときに、リングに物置が運び込まれてきてしまう。当然ながら、槇島の姿はその影に隠れて見えなくなった。
『ちょ、おま、ふざけんな!』
お預けを食らったお子ちゃまは、大激怒である。が、悠然と物置の中からティタネス(fa3251)が出てくる。
「一人で『載』っても大丈夫!」
『乗ってないじゃん!』
「ああ、あたしは今回はレフェリーとして参加だから、物置と戦ったりしないわけよ。だから乗らない。乗るのは選手たちだね。この物置の上が、これから本当のリングになるってわけさ。というわけで、早速試着台もこの上に乗せようか」
『おおっ!?』
怒りで我を忘れていたことも忘れて、再び声を上げて歓迎するサトル。だが、子どもの夢はいつも壊されるもの。試着台にはすでに槇島の姿はなかった。
「ただ着替え終わってサイコロ振りなおすだけじゃおもしろくないんで‥‥水かぶっちゃおっかなー?」
だが、着替え終わった槇島がそんなことを言い出す。水では寒いので実際にはお湯だが、問題にすべきはスク水の色である。白を前提とした水着用の布地ならいざ知らず、スク水の白は透けるためにあるようなものである。白スク水に水分は、混ぜるなキケンなのだ。
『おおっ!?』
男子たるものが懲りてはいけないとばかりに、またもサトルが声を上げる。
「ハォ!」
だが、やっぱりというか妨害が入る。竜華(fa1294)が登場して、槇島の姿が隠れてしまう。
『ちょ、おま‥‥うーん‥‥』
激怒しようとしたものの、プスプス怒りが抜けていってしまうサトル。竜華のチャイナドレスがムダにスリットが深く、脇から下着の黒レースがチラチラ見え隠れしているので、文句を言うにも言えない状況なのだ。
「さ、入って。気持ちイイコトしてあげるから。中国四千年は効くわよー」
「え? あの‥‥」
口車に『載』せて、槇島を物置の中に連れ込んでしまう竜華。口車に乗せるというよりは、有無を言わせず押し込んだだけのように思えるが。
やがて、物置の中から喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。
『〜ッ!? 一体、中では何が‥‥?』
中ではマッサージが行われていただけなのだが、時折聞こえてくる槇島の声に妄想だけがかき立てられてしまう。
だが、触覚とまではいかずとも視覚は満足させて欲しいお年ごろなのである。それなのに、サトルの目の前にZebra(fa3503)のマッチョバディが現れてしまい、一気に絶望のどん底である。
「俺は載と戦うんじゃ〜! つまり、動物のサイと戦うんじゃ〜! というわけで、VTRをどぞ〜」
ガックリうなだれるサトルを無視して、Zebraがアフリカのサバンナの映像に切り替えてしまう。
だが、映っているのはZebraではなく、サイの着ぐるみに入ったグリモア(fa4713)であった。
「‥‥サイの着ぐるみを発注しただけなのに、なんで俺はアフリカに来ているんだろうか?」
「ふっ、これがかぶり芸というものだ。かぶり物をかぶり、芸までかぶせられる。サイコーじゃないか」
「はは‥‥なんか、ワクワクしてきたぞ!」
サイの着ぐるみで炎天下に放り出され、早くもおかしくなりはじめるグリモア。そんな間にも、ジープで走る映像に切り替わる。
「‥‥このように、アフリカは我々の第一歩を歓迎してくれた。クルーたちと一緒にジープの荷台に揺られながら、まだ見ぬサイへと思いを馳せるZebra。その横顔は奇術師のそれではなく、一人の狩猟者のものになっていた‥‥」
その場で本物のサイを求めるナレーションを入れるZebra。だが、ジープの天井にはぐったりしたグリモアが着ぐるみのままくくりつけられている。本物のサイに会うというのに、なんのために連れてこられたのかよく分からない。
かくいうZebraもなぜか柔道着姿で、座禅を組んでいる。と、その目が突然カッと見開かれる。
「見えたッ! 大型のシロサイだッ!」
ジープを止めさせ、飛び出していくZebra。だが、止められたのはそのZebraの方だった。
「え? 保護動物だからダメ? ふっ、俺は誰にも止められないゼ! え? 国際問題になる?」
さすがに二の足を踏むZebra。と、その目にグリモアの姿が飛び込んでくる。
「そうだった。こんなことは考えていなかったけど、こんなこともあろうかと‥‥え? 脱水症状でダメ?」
映像がそこで途切れ、再びリングに戻ってくる。そこでは、ちょうど竜華のマッサージを終えた槇島が、さらにサイコロを振るところだった。
「というわけだ!」
それをバックに、胸を張ってみせるZebra。
「あー! 動かないで!」
「え?」
そのZebraに、いきなり声がかかる。いつの間にか、サトルの横の机で阿野次のもじ(fa3092)が原稿と戦っていた。雑誌に載せてもらうためのラブコメを書いているところだったので、Zebraがそのモデルに勝手にされていたのである。
といっても、それは外見の参考に使われているだけである。本当のモデルは三国志だ。
「うーん、やっぱ一人で突っ立ってるだけじゃダメだね! というわけで、カラミいってみよ!」
ポカーンのZebraをよそに、阿野次が勝手に話を進めていってしまう。
「住めば群国割拠の三国荘、シーン801、とびきりオシャマな張飛子が、ひょんなことから一つ屋根の下に住むことになった憧れの劉美先輩に今日も果敢に恋のアタック‥‥アクション!」
「え? え?」
気づけば、グリモアが変なポーズで登場する。アフリカの日差しで脳が沸いてしまってままなので、すんなり受け入れてしまっているようだ。
「早く! 張飛子が果敢に恋のアタック、アターック!」
「え? 俺が張飛子? まあ、体格的にはそうなのかも知れんが‥‥」
「じゃあ、セリフだけ吹き替えるから‥‥劉美先輩ー好きじゃー!! ワシもじゃー!」
いきなりドスの聞いた渋い声を出す阿野次。原稿のモデルにそこまでやる必要があるのかという疑問を挟むスキを与えない。仕方なく、グリモアに抱きつくZebra。
「はい、もっと激しく! むさぼるように!」
「えい、なのじゃ!」
阿野次の指示に触発されたのか、植木バサミを持ったDarkUnicorn(fa3622)がやって来ると、Zebraとグリモアのベルトを切ってしまう。
「植栽林の手入れをしようと思ってやって来たら、裁縫の裁断をしておったとはこれいかに。全部『載』ではなく『裁』なのは気にするななのじゃ!」
そうとだけ言うと、もはや用はないとばかりにリングに上がっていってしまうDarkUnicorn。残されたZebraとグリモアに、これ以上どうしろというのか?
『えー、あとは美しく脚色された完成原稿で見ることにしましょう!』
サトルがそうとだけ言ってぶった切ると、カメラをリングへと切り替えてしまう。
『あーっと、気づけば槇島選手が竜華選手と共にナースになっています! くそっ、生着替えをまた見逃した。しかーし、今回は我らがDarkUnicorn選手が向かってくれています。きっと、竜華選手が先程来ていたチャイナドレスのスリットよりもスゴいことにしてくれるでしょう!』
ただのエロガキといういか、中身は完全にエロオヤジになっているサトル。だが、こうして汚れていくのが大人の階段というものである。ヨゴレなだけの気もするが。
「おおう、こんなところに布着れが落ちているのじゃ! たくさんあるではないか、まるで『歳』末セールのようじゃ!」
だが、サトルの期待に応えることは一切なく、槇島のコスチュームを勝手に布切れ認定するだけのDarkUnicorn。
「これを使って、世界に一つだけの『プロレスごっこ褌』を作成するのじゃ!」
裁縫をはじめてしまうDarkUnicornだったが、そこへ下半身パンツ一丁のグリモアがなだれ込んできてしまう。
「わー、巨大サイコロだー☆ よーし、『サイ』コキネシスで、かわいい娘にえっちな技が当たれー!」
槇島のサイコロなのでコスチュームが書いてあるのだが、グリモアには他の人には見えないエッチな技名が書いてあるように見えるようだ。自称サイコキネシス使いだけに、ラリって自分だけスプーンが曲がったと感じられるキケンな香りのする男になってしまっている。
「あっ!」
しかし、サイコロがぶつかったのはえらい人であった。とはいえ、そこでエッチな技が繰り出されるハズもない。単にポイントの発表なだけである。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見でポイントによるランキングがつくゼ!」
3位 Zebra 1載
1位 竜華 1正
2位 槇島色 1澗
「目指せ、プロレスごっこ‥‥のわっ!」
「えらい人が乗っても大丈夫なトコロ、見せてやるよ!」
ティタネスがえらい人の首根っこをつかむと、そのまま一緒に物置の上に乗ってしまう。
ドーン! だが、えらい人がどういう重さなのかは分からないが、あっさり天井が抜けてしまう。
「イテテ‥‥はっ! 物置リングがなくなっちゃったから、場外カウントをとらねば! ワン、ツー‥‥」
何の勝敗を決しようというのかさっぱり分からないが、とにかくカウントをとりはじめるティタネス。
「むむ‥‥ここで、用語解説ー♪ びーにじゅうく、それは原稿とかを落として逃げること。またはそれをしちゃう業界人の通称。んじゃ、そういうことで‥‥」
阿野次は原稿を完成させることができず、えらい人転落のどさくさに紛れて逃亡生活に入っていた。
そんな堂々と逃げる阿野次とは対照的に、DarkUnicornは地味に待ち針を指と爪の隙間に刺してしまい、静かに悶絶していた。しかし、プロレスごっこ褌を完成させることができていなかったところだけは阿野次と同様である。
『結局、ちゃんと見せてもらってないよぅ‥‥では、ごきげんよう、さようなら』