プロごっこHalloweenSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/31〜11/02

●本文

プロレスごっこ王選手権 Halloween Special

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「さて、早速だが今回のポイントは、1極、1載、1正となるわけだが‥‥」
「えっ!? ハロウィン一色の今日、ハロウィンに便乗しないなんて‥‥熱でもあるんですか?」
 思わずえらい人のおでこで熱を測り、自分の額に鉄パイプをパコーンと受けるハメになるスタッフ。
「バカヤロウ! 話は最後まで聞け! 1位のポイントが1極なんだから、今回のテーマは『極』であるのは言うまでもないよな? だから、便乗を極める! ハロウィンネタをパクって、パクって、パクりまくり、最終的には俺たちがハロウィンになる!」
 鉄パイプを高々と掲げ、確実におかしい人と化すえらい人。とはいえ、スタッフに口を挟めようはずがない。
「なるもんじゃないような‥‥いえ、サー、イエッサー!」
 こうして、ハロウィンネタ以外厳禁の、ハロウィン便乗を極めるためのハロウィンスペシャルが開幕するのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・『ハロウィン』をテーマに試合をしなくてはなりません。『ハロウィン』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王は、ポイントで不可思議(10の64乗)を超える人が現れたくらいで決定の予定です(年内決着予定。恒河沙〜不可思議は12月にまとめて行う予定)。
・毎回上位総入れ替えのインフレですが、そういうバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。

ランキング(上位5名、第22回プロレスごっこ王分まで)
 1位 レイリン・ホンフゥ(fa3739) 1溝pt
 2位 キューレ・クリーク(fa4729) 1穣pt
 2位 武越ゆか(fa3306) 1穣pt
 4位 湯ノ花ゆくる(fa0640) 約2垓pt
 5位 小野田有馬(fa1242) 1垓pt
 5位 グリモア(fa4713) 1垓pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第21回 10月09日 07:00〜
・第22回 10月15日 07:00〜
・第23回 10月19日 07:00〜
・第24回 10月24日 07:30〜
・第25回 10月28日 07:00〜

●今回の参加者

 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa4878 ドワーフ太田(30歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 街はハロウィン一色、というほど日本になじみのあるイベントではないが、少なくともTOMITVはハロウィン一色なので、それに便乗するのがプロレスごっこの定め。しかし、プロレスごっこが普通のハロウィンで許されるハズもない。ハロウィンが極まって確実におかしい方向へ進んでこそ、なのである。
 というわけで、早速おかしい方向へ進んでしまった一番手、蕪木薫(fa4040)が入ってくる。
「お菓子をくれなきゃ、い・た・ず・ら、するぞ〜‥‥って、する相手がおらんやん! せっかく実況と解説の子に、あ〜んなコトやこ〜んなコトをするハズやったのに‥‥」
 無人の放送席を見て、意気消沈の蕪木。ハロウィンのいたずらではなく、確実に新聞の三面記事になってしまう方のいたずらお姉さんを目指していたようだ。
「いや、そらまあ、女の子とガタイのいい男も嫌いやないけどさぁ‥‥せやけど、モチベーションでいうたら、やっぱ美少年やん? あ、実況の蕪木です。よろしく」
 そのまま放送席に座る蕪木。20代後半からしかいない男性陣に、早くも敗戦処理モードである。
『あー、ダル〜。ほな、Vから行こか』
 ローテンションな蕪木が、実況の必要のないVに振る。そして、切り替わった映像は、ローテンションをはるかに下回る、極寒の地の映像であった。
「男子たるもの、一度は『極』点を目指すもの。ならば、俺は北極点よりも、日本から少しでも遠い南極点を目指す! 大自然に対して試合を挑む、南極ごっこ物語じゃあ!」
 その中で、一人テンションの高い犬神一子(fa4044)。南極ごっこと言いつつ、ロケ地は本気で南極である。いくら南半球が春から夏になろうとしているとはいえ、南極は南極なのである。
 どれだけ過酷な環境であろうと知ったことではないが、これだと極には関係あっても、ハロウィンとは無関係になってしまう。ソリを引いている犬がジャックオーランタンということもない。
 しかし、心配無用。ソリを引いているのはペンギンの着ぐるみのグリモア(fa4713)である。グリモアがペンギンのコスプレをしてしまったがために、犬神に南極まで一緒に連れてこられてしまっていた。
「Trick or treat‥‥トリック、トリート‥‥トリトリ‥‥鳥鳥‥‥そうだ! 俺は鳥だ。何物にも縛られず、大空を舞うんだ‥‥あはは♪」
 先日サイの着ぐるみでアフリカに行ったばかりのグリモアなので、ハードな寒暖差に打たれすぎの症状が悪化している。だから、ペンギンなのに飛ぼうとしているくらい、まだ軽度な方なのである。
「水中では弾丸ミサイルのような動きをするペンギンも、陸上では重鈍。よちよち歩きだからな‥‥って、滑ればいいんだ!」
 すばらしいことを閃いたかのように、喜び勇んで腹で滑りはじめるグリモア。というか、斜面を滑り落ちていく。その先にクレバスが待ち構えていようとも、知ったことではない。
 しかし、知ったことなのはソリに乗っている犬神だ。
「おい、どうした、タロー! 一応ハロウィンってコトで、食糧をカボチャだけにしたのを怒っているのか? って、タローじゃねーし!」
 今ごろになって、犬ではなくペンギンで、しかも中の人がグリモアであると気づく犬神。
「灰塵と化せ、冥界の賢者。七つの鍵を持て、開け地獄の門‥‥って、とっくに口あけて待ってるが‥‥ハーローウィーン!」
 その様子を遠目に眺めながら、勝手な吹き替えで呪文を唱えているのはミゲール・イグレシアス(fa2671)。その甲斐あってか、グリモアと犬神が見事にクレバスに飲み込まれていく。
「‥‥っくしょん! むぁいどー、ミゲールやで‥‥って、なんでわいまで南極に‥‥。南海は南海でも、南すぎやろ!」
 悲鳴が段々と小さくなり、聞こえなくなるのを確認すると、くしゃみをしてボヤくミゲール。南海の死闘というセットの発注をしたのだが、そのせいで犬神と一緒くたにされてしまったのだ。
「それは、南を極めると南極になるからだ! テーマが極ならば、至極当然のこと!」
「ぬぉっ!」
 驚いたミゲールが振り返ると、犬神がいかにも悪そうな海賊船のキャプテンに扮して立っていた。その隣では、グリモアがダチョウの着ぐるみに入っている。
「極よりハロウィンの方が重めやと思うんやが‥‥んなことより、どうやって‥‥」
「いやー、ペンギンが飛べないコトを忘れていたよ。慌てて飛べる鳥にチェンジで、難を逃れたというわけさ」
 ミゲールの問いに、なぜかさわやかすぎる笑顔のグリモアが答える。
「どっちにしろ飛べんやろが!」
「さあ、南海の死闘へダーイブ!」
 そして、笑顔のままのグリモアは聞く耳を持たない。
「ダイブ関係ないやん!」
 ミゲールのツッコミむなしく、三人してまたも斜面を転げ落ちていく。
 プツッ‥‥そこで映像が途切れ、スタジオへと映像が戻ってくる。
『‥‥私の小学校でハロウィンパーティーがありましてね。日本の皮が緑のカボチャでやったんですよ‥‥もぐもぐ‥‥あれは侘しいですなぁ。なんや松の木ぃでクリスマスツリー作ったみたいな感触が。ま、食べるなら緑のがいいんやけどね‥‥もぐもぐ』
 しかし、蕪木は三人がかりの決死のVを見ることもなく、一人カボチャを煮込んでいた。もちろん、つまみ食い付きである。
 そんな間にも、パンダの覆面をかぶった常盤躑躅(fa2529)がリングに上がっていた。いや、顔にパンダの覆面をしているのはいい。だが、股間にパペットまで装着していた。
「パペットではない! ハロウィンにちなんで、犯しの化け物、ジャックならぬディックと一緒にタッグだ! ハロウィンをエロWINとすべく戦い、エロは地球を救うどっかの番組を超えてみせるぜ!」
 いきなり不穏な宣言をしてみせる常盤。と、そのジャックとの会話をはじめてしまう。
「おっと、どうした? 『タートルネックのセーターがジャマ』だって? おいおい、失礼なコトを言わないでおくれよ。『そんなことよりも、早く起こしてくれ』だって? おうよ、エボナイト棒をこすって電気を起こすよりもたやすいぜ!」
 常盤があっという間にキケン領域に突入しようかというとき、白衣を着たドワーフ太田(fa4878)が飛び込んできた。
「ここに重症患者がいると聞いたんじゃが‥‥お、おったの。ん? ああ、わしはハロー医院の院長じゃ。ハロウィン→ハロウィーン→ハロウイイン→ハロー医院、というわけじゃな!」
 なぜかカメラ目線で解説してみせる太田。横には、ナース服姿のパトリシア(fa3800)が、巨大注射器を持って控えている。極彩色の液体がすでに注入してあったが、常盤の大事の前では小事に過ぎない。
「ああ、今日は平均年齢が高いですね。ハロウィンってマッチョ祭りでしたっけ? 美青年×美少年を生で拝んで極めたかったのに‥‥あ、別にリーマンBLでもいいんですけど‥‥」
 タメ息を吐くパトリシア。すでに仕事にやる気のない腐女子ナースとなっていた。腐女子モードなので、ハロウィンといえば国家が認めた全世界規模のコスプレの日であり、ナース服なのであった。ハロウィンのコスプレとも、腐女子のコスプレともずれて、風俗風味のコスプレになっている気がしてならないが。
 しかし、そんなパトリシアには関係なく、太田はすでに常盤の診察にとりかかっている。
「悪いのはどこじゃ? 頭じゃな!」
 一瞬で診察結果を出す太田。もっとも、極めて正しい診察といわねばなるまい。
「まー、ムダにデカい図体しているようじゃから、血行をよくするために注射を打っておくかの?」
「えー? 私が打つんですかー?」
 本当に打つことになるとは思っていなかったパトリシアがイヤがるが、肝心の常盤が乗り気になってしまっていた。
「早くしてくれ! いや、極太というのには心惹かれるものがあるが‥‥先っちょが針で細いのがなぁ」
 常盤は極彩色の液体を一切無視し、針の方にだけ文句をつけると取り除いてしまう。
「バッチコーイ!」
 そして尻を向け、自ら尻を叩いて挑発する常盤。
『‥‥あ! うん、よーし、どっちもがんばれー』
 カボチャも食べ飽きたのか、思い出したかのように蕪木が実況に復活すると、勝手な応援を飛ばしている。
「え? 『俺が隠れちゃうじゃないか』だって? 心配するな。ところてんってあるだろ? 心太と書くとかそういうことじゃなくて、天突き突いて細長くする工程から、後ろから突かれて発射‥‥ぐはっ!」
 常盤のディックとの勝手な会話が益々ヒートアップする中、雪ダルマの着ぐるみの阿野次のもじ(fa3092)が飛び込んできて、消火器をぶちまけてしまう。
「Trick or treat! むしろ、Dead or alive? 欧州だと、この時期火事が多いんだよね〜☆ ということで火消しのいっちゃんが飛んで来ましたよ?」
 とはいえ、真っ白く前のめりに倒れている常盤からの返事はない。ということは、阿野次は止まらないということでもある。
「そして極限へ‥‥絶対零度を極めろ♪ 悪い子はいねーがー?」
「なんで私なんですかー?」
 消火器を撒き散らしながら、今度はパトリシアを追い立てていく。
『もう、なんで一気に行かんのや!?』
「いや、そう言われてもな‥‥」
 一方、太田は蕪木に説教を食らっていた。デカい男には敵意むき出しでも、女性には中々強気になれない太田。
「むむ‥‥長身の姉さんの対応には困るのう‥‥いや、考え方を変えるんじゃ! わしの苦しみを子どもの代にまで残しちゃならん。ならば、デカい女性との方が遺伝的に‥‥」
『急にブツブツ言いはじめて、どうしたんや?』
「‥‥というわけで、早速子作りに励むのじゃ! コウノトリに合図を送りまくるのじゃ!」
 極論に達した太田が、蕪木に飛びつく。が、蕪木はリアクションする以前に、つい反射的にハンマーパンチで太田を床に叩きつけてしまう。
『‥‥さあ、盛り上がってきたでー!』
 失神する太田を無視し、勝手に盛り上がったことにして実況に戻ってしまう蕪木。
 こうして、常盤と太田が脱落した中、阿野次は相変わらずパトリシアを追い回していた。普通、こういう混沌状態になったらえらい人が現れてムリヤリまとめてしまうのだが、ハロウィンの無礼講だからか、一向に現れる気配はない。
 ならば、誰が止めるのか? この事態の諸悪の根源のくせに、阿野次が止めるのである。
「ゲージは満タン! ついに出るか‥‥シンデレラが‥‥死んでれらっ!」
 ひゅーぴきん! という音がしたかどうかは分からないが、一気に寒気団が流れ込んできたのを感じずにはいられない。阿野次のせいで何もかもが止まったのは確かだった。時間までもが。
 だが、阿野次はなおも手を緩めない。
「隣のカコイに塀ができたんだってね‥‥ウォール!」
 しばしの空白期間の後、時はようやく動き出した。外部の力によって。
「お荷物でーす。ハンコお願いします」
「おおう! 寒さのあまり、クール便が到着しちゃったね☆」
 3つのダンボールが運び込まれてくる。南極からの産地直送であるのは言うまでもない。
 ドーン! そのうちの一つから、ミゲールが元気よく飛び出してくる。
「ようやく新鮮な空気‥‥うごっ!」
「ドーンにはドーン☆」
 だが、ちょうどミゲールが立ち上がった顔面を、阿野次が空になった消火器でぶん殴ってしまっていた。とはいえ、殴り系アイドルのとっさの反射のようなものだから、ミゲールにはあきらめてもらうしかない。
 こうして3人ほどKOされたところで、ようやくえらい人登場である。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見でポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 ドワーフ太田 1極
 2位 パトリシア 1載
 3位 グリモア 1正
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ‥‥」
 えらい人が去っていくと、今度はグリモアがダンボールから飛び出してくる。ミゲールとは違い、阿野次の注意が一瞬えらい人に向いていたので、こちらは無事である。
 が、クール便で新鮮な打たれすぎ状態のまま送られてきたので、殴られるまでもなくグリモアはおかしかった。
「Trick or treat‥‥お菓子くれなきゃいたずらするぞって、普段女の子に言ったら速攻で警察が飛んできそうな犯罪めいたセリフを堂々と叫べるステキ記念日! ありがとうジャック。ならば、魂よ叫べ! のもじちゃん、パトリシアちゃん、お菓子くれなきゃイタズラするぞー♪」
 かじかむ手をそれでもワキワキさせながら、阿野次とパトリシアににじり寄っていくグリモア。もちろん、阿野次とパトリシアの反撃はここからである。
 ミゲールのように一撃で済ませてもらえず、二人がかりでボッコンボコンである。これでまた、グリモアの打たれすぎの症状が進行してしまう。
 そんなグリモアはさておき、残る一つのダンボールはピクリともしない。死んでいるのか? はたまた、実はダンボールの中身は空で、犬神自身は置き去りにされて南極ごっこ物語を継続中のままなかの? って、その場合置き去りにされるのって、グリモアの方なんじゃね?
 疑問は尽きないが、ナゾはナゾのまま、放送時間終了となるのであった。