第26回プロレスごっこ王アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/04〜12/06
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、久々に芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「1ヶ月以上のご無沙汰だとか、そんなくだらん前置きは不要! なぜなら、今回のポイントは恒河沙っつーわけで、ついに一文字の世界から限定解除なのだからな! というわけで、1恒河沙、1極、1載となるわけだが‥‥」
「そのようなめでたき日を休養十分で迎えられることは大変喜ばしいことなのですが、テーマはどうするんですか? 恒河沙は、もはや恒河沙でしかないように思えるのですが‥‥」
スタッフの一人が挙手して質問する。えらい人も、まだ余裕をもって受け答えをする。
「見えないか? 目を閉じれば、遥かなるガンジスが‥‥」
目を閉じて、なぜか耳を澄ますえらい人。
「悪い薬をキメてるわけでもないので、見えませんが‥‥」
だが、それに調子にノッて答えたスタッフに、えらい人の態度が豹変する。
「バカヤロウ! 心の目を研ぎ澄まさんかい!」
一喝して、そのスタッフのチンを鉄パイプで打ち抜くえらい人。プロレスごっこのスタッフなどやっているとガラスのジョーになってしまうもので、スコーンと膝から崩れ落ちる。
「見えます‥‥見えますよ!」
打たれすぎの症状により、見えないものが見えるようになってしまうスタッフ。すでに、長期休養の意味がなくなっている。
「分かってくれたようで何よりだ。というわけで、恒河沙そのものがテーマで問題はないな?」
「まったくありません! サー、イエッサー!」
結局はスタッフ全員直立不動になって、休養明けのプロレスごっこがいつもどおりにはじまるのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・『恒河沙』をテーマに試合をしなくてはなりません。『恒河沙』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王は、ポイントで不可思議(10の64乗)を超える人が現れたくらいで決定の予定です(年内決着予定)。
・毎回上位総入れ替えのインフレですが、そういうバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。
ランキング(上位5名、プロレスごっこ王HalloweenSP分まで)
1位 ドワーフ太田 1極pt
2位 Zebra(fa3503) 1載8pt
3位 パトリシア(fa3800) 1載6pt
4位 グリモア(fa4713) 1正1澗1垓pt
5位 竜華(fa1294) 1正288pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第22回 10月15日 07:00〜
・第23回 10月19日 07:00〜
・第24回 10月24日 07:30〜
・第25回 10月28日 07:00〜
・HESP 10月31日 07:00〜
●リプレイ本文
「突然の休業宣言から1ヶ月ッ! 戦慄のプロレスごっこが、ここに復活だぁッ!」
解説のヨシュア・ルーン(fa3577)の実況ではじまるプロレスごっこ。言うまでもなく、実況役にはちゃんとサトル・エンフィールド(fa2824)がいる。ならば、なぜか? 別に放送席の実権をめぐるドロドロの闘争が繰り広げられているわけではない。単に、サトルがなぜか空手の型に忙しかったからだ。
『ハッ、ホッ‥‥ふぅ。この1ヶ月、海外修行に旅立ち、様々な体験をしてきました。中でも衝撃的だったのだが、石の上にいるカエルを殴っても石しか割れない呼吸法ですね』
そう言うと、ヨシュアの頭上に試し割りの板のように、B5ノートパソコンを置くサトル。当たり前のように、ヨシュアの私物である。
『プロレスごっこから離れても修練を怠らなかった証明に、これをヨシュアくんの頭の上に置いて、頭上から正拳でヨシュアくんを殴ってみましょう。ん? ノープロブレム! 医師無免許は持ってます‥‥ハーッ!』
言っているコトがそのままできるのであれば、ノートパソコンは無事でもヨシュアが脳漿をぶちまける気がしないでもない。
バキッ! だが、砕けたのはヨシュアの頭ではなく、その上に乗せたものだった。
『‥‥ハッ!? これはデジカム!?』
次の瞬間、何かがおかしいことに気づくサトル。どこをどうやったのか、ヨシュアはいつの間にかサトルの私物のデジタルビデオカメラにすり替えていたのである。
「‥‥ふふん♪ サトルくん、人を呪わば穴二つだよ‥‥アッー!」
ついに逆襲に成功したとばかり、勝利の余韻に浸るヨシュア。ガックリとうなだれ、前かがみに倒れ込むサトル。
バキッ! だが、床に置いてあったノートパソコンがサトルの膝で砕け散る。いくらVistaが近いとはいえ、ヨシュアはこんな形で買い換えるつもりはなかったのだが。
そう、穴は一つにしておくべきだった。穴二つでは、結局二人とも入るということなのである。
最初の試合がはじまる前から放送席は死屍累々となってしまったが、リング上ではレフェリーでありながらラウンドガールも務めるDarkUnicorn(fa3622)が、第一試合と書かれたプラカードを掲げて周回していた。
放送時間帯をあざ笑うかのような、朝っぱらから清々しいまでの超マイクロビキニの水着姿のDarkUnicorn。ウサミミも装着完了。最初はこんな娘ではなかったハズなのに、確実に露出狂への道を歩みつつある。が、幸せの形は人それぞれであるので、生暖かい目で視姦するのが礼儀というものである。
とはいえ、放送席のサトルとヨシュアはせっかくの状況も、惨劇の後で涙でくもって前が見えなくて意味がない。お子ちゃまには刺激が強すぎるとか、それどころの騒ぎではないのだ。
となれば、プロレスごっこが誇るエロ魔人、佐渡川ススム(fa3134)の出番となるのはもはや必然である。佐渡川の打たれすぎの頭の中では、視姦をするのは本当にHをするのと同じところまで昇華されているのだ!
「‥‥やはりたかだか1ヶ月の療養では、わしの治療術をもってしても、この打たれすぎを治すには不十分じゃったようじゃの‥‥いや、ダメじゃ! ここで諦めてはいかんのじゃ! そんなときは‥‥この打たれすぎ矯正ギブスを装着なのじゃ!」
哀れみを通り越した目で佐渡川を見るDarkUnicornが取り出したのは、アイマスクとヘッドフォンであった。なんの疑問も持たず、佐渡川はさっくり装着する。
「‥‥目隠しって、何されるか分からないからドキドキしますよね。うっ! イカン。ドキドキが高まりすぎて‥‥ハァハァ」
「まだ、手遅れではないのじゃ‥‥手遅れではないのじゃよ!」
涙ながらに、佐渡川の手を引っ張っていくDarkUnicorn。普段のDarkUnicornなら、すでにこの佐渡川にガマンできずにポン刀片手に暴れ回るところだが、恒河沙→ガンジス→ガンジーということで、非暴力キャラが徹底されている。
そんな間にリングには砂がまかれ、エディ・マカンダル(fa0016)が男女の差こそあれ、DarkUnicorn以上の露出度のブーメランパンツ一丁で、颯爽と登場である。
「恒河沙の意味が分からない‥‥だったら聞けばいいじゃない! ということで、聞いたところによれば、日本では古来から自然の恵みに感謝し、その恩恵をさらに受けるため、この時期に『寒中水泳』という年中行事を執り行うらしい。昔は日本の代表がアジアの源流であるガンジス川まで泳ぎに行っていたが、近年では諸事情により全国的にリングをガンジス川に見立ててそこで寒中水泳を模するように形骸化してしまったという‥‥」
コーナーポストに仁王立ちして、長々と解説するエディ。その間、ずっとブーメランパンツの見苦しい映像が抜かれつづけているが、むしろ誇らしげなエディを誰も止められない。
「フッ、幼少のみぎりを思い出すぜ!」
意味不明の言葉を呟いて、早速リングという名の大河に飛び込むエディ。リング内を所狭しと泳ぎまくるエディを、やっぱり誰も止められない。
って、なぜ止められないのか? レフェリーがいないからである。と、そのレフェリーであるDarkUnicornが、ようやく佐渡川のアイマスクとヘッドフォンを外す。
「‥‥今日を無事乗り越えられれば、立ち直ることもできるハズじゃ!」
リング上ではエディが快調に泳ぎつづけていたが、佐渡川の目にむさい男など目に入るハズもなかった。98%がDarkUnicornの女体、残る2%が砂のまかれたリングである。
「ああ、なるほど!」
と、佐渡川がそのシチュエーションに何かに気づいてしまったようだ。
「恒皮沙縛りということで、インダス河の砂を数えろってことですね?」
河も違えばかわの字も違うが、それが佐渡川のダンディズム。非暴力主義ゆえにツッコミも入れないDarkUnicornのリアクションすら、マゾ皮と呼ばれし佐渡川にとってはむしろ恍惚の瞬間である。
「いちにーハァハァ、さんしーハァハァ‥‥」
荒い息で砂を数え出す佐渡川。何に興奮しているのだが、すでによく分からない。
「ぐはっ! 足つったぁッ!」
突然、リング上から悲鳴が上がった。水もないリング上でムチャ泳ぎをしていたエディの肉体が、ついに悲鳴を上げたのである。
悶絶し、ゴロゴロとリングサイドに転落してくるエディ。そこにちょうどいたDarkUnicornが、見事に巻き込まれてしまう。
「いてて‥‥何事じゃ!?」
倒されて、すっかり砂まみれになったDarkUnicornが起き上がると、佐渡川はDarkUnicornの身体に付着した砂の数を数えていた。
「こ、これがジャパン文化の真骨頂‥‥大きい、あまりにも懐が大きいゼ!」
何を勘違いしたのか、エディも一緒になって砂を数えはじめる。
「あ、お客さん。お身体には触れないでください。触れていいのは砂だけですよ!」
エディに指導をする佐渡川。何の指導だかはナゾであるが、確実に特殊なプレイにしか見えない。
一方のDarkUnicornはすでに拳が震えていたが、ここで佐渡川の脳に衝撃を与えては元の木阿弥だと、恥辱プレイ状態をじっと耐えていた。
『‥‥ノートパソコンだけを破壊するつもりが、デジカムまで破壊できたのであれば、修行の成果が2倍だったということでしょう!』
「ヒドいよ、サトルくん‥‥また‥‥」
ようやく立ち直ったサトルが、実況を再開する。一方のヨシュアは、プロレスごっこで破壊されたパソコンが2台目ということもあって、まったく立ち直れていなかったが。
『おや? リング上が無人ですね‥‥ということで、えーと、はい。本日の第一試合、横田新子(fa0402)選手の入場だぁ!』
リング下の惨状を見るに勝手に編集点を作り、第一試合の体で横田を呼び寄せるサトル。もっとも、この放送を見れば分かるように、実際には何の編集もなされていなかったが。
「体重と体型を気にするすべての女性の敵よ、今日こそ因縁の対決に決着をつけます! 決して私が食べたいわけではありません!」
なにやら叫びながら、黄色い雨ガッパ姿で登場の横田。リング上を見れば、超巨大ケーキが運び込まれている。
『恒河沙→ガンジス川の砂→砂なら砂糖→砂糖を使った食べ物といえばケーキの法則にのっとり、超巨大ケーキと対戦する運びとなりました横田選手! 確実に食べる気満々ですッ!』
じっとケーキを睨みつける横田。不気味な緊張感が漂う。
と、おもむろに入刀すると、切り分けて小皿に盛り、普通に食べはじめる横田。威嚇云々ではなく、どう食べるか戦略を練っていただけのようである。
そのまま、ケーキを小さく切っては食べる映像がしばらくつづく。
「うっ‥‥クリームで気持ち悪いです。が! 食べ物に食われる前に食う! それが私のジャスティス!」
『言っているコトはカッコイイのかもしれないが、画が地味すぎるぅ〜!』
サトルがたまらずツッコミを入れたが、それにカチンときたのか、横田がついに暴挙に及ぶ。すなわち、なんのためにカッパを着て来たと思っているんだ、という戦法である。
『あーッ! ムチャしちゃいましたね‥‥』
頭からケーキの中に飛び込む横田。慌てて『特殊な食べ方をしておりますが、ケーキはムダなく食べております』のスーパーが流れる。
そんな間にも、ケーキから太い足が突き出てくると、シンクロナイズドスイミングがはじまる。エディじゃないんだから別に泳ぐ必要はないのだが、それが横田のジャスティスなのだから仕方がない。
しかし食べ物を粗末にした罰が当たったのか、単にクリーム地獄の中で息がもたなかったのか、カッパも脱げて全身クリームまみれになった横田が飛び出してくる。
「うわっ! おっと!」
そして、クリームに滑って生まれたての仔馬状態になり、そのままリングサイドに転落していく。
「ぐはっ! どこまで数えていたか、分からなくなった!」
うまい具合に、佐渡川とエディがDarkUnicornの身体に付着した砂の数を数えていたところに落ちたものだから、むしろ野獣の群れの中に羊を落としたようなものである。
「貧相な身体にも飽きてきたところよ、ブラザー!」
「まったくですな、兄弟! ふくよか過ぎるくらいが、ちょうどいいというものです」
エディと佐渡川が、いつの間にか分かり合った目で見つめ合う。と、DarkUnicornを放り投げ、横田の身体に移行する。
「しかし、砂まみれではなくクリームまみれの場合は、そうすればいいんだ? ブラザー」
「決まっているだろうが、兄弟! 舌で舐めるんだよ、舌で!」
「あーれー!」
佐渡川を巨大ケーキの中に放り込むオチを考えていた横田としては、まったく逆の立場に突入である。
「やれやれ‥‥なのじゃ。しかし‥‥ぶたれて喜ぶ佐渡川にとって、一切ぶたれなかったというのはざそかし地獄だったことじゃろう‥‥」
一方のDarkUnicornは、散々弄ばれた挙句に貧相呼ばわりであるが、非暴力主義にのっとった考えにたどりつき、拳の震えも止まって高みの見物である。
『おや? 相変わらずリング上が無人ですね‥‥ということで、えーと、はい。本日の第一試合、橘花(fa4865)選手、CRazy bone(fa4907)選手組の入場だぁ!』
「これが、これがッ! 黄泉の黙示録状態という境地ですか‥‥」
サトルがようやくノッてくる一方、立ち直れないヨシュアはよく分からない境地に達してしまっていた。
『CRazy bone選手、なにやら蜂獲り名人のような防護服を着ていますが‥‥そんなことよりも、いくらイタズラ好きの性格とはいえ、弟をプロレスごっこに連れてきてしまうとは、確実に度を越しています! あ、違う意味でのイタズラ好きということでしょうか?』
その言葉に、鋭く佐渡川が反応する。口の回りをクリームでべっとりさせたまま、シャボン液を橘花に手渡しにくる。
「ありがとう。じゃ、行くゼ!」
受け取った橘花が、早速試合を開始する。といっても、シャボン玉を作るだけだが。
『恒河沙=数量が無数‥‥つまり、シャボン玉を作っては割る、一人永久機関! 52秒を10セットで10の52乗だと言い張っております!」
黙々とこなしていく橘花。リング下では、佐渡川がシャボン玉と戯れる少年の画をつまみに、横田のクリームを舐めとるという最悪の状況である。
「はぁはぁ‥‥あと2セットだ‥‥」
すっかり息が上がってきた橘花だが、それが佐渡川を悦ばせているコトなど知る由もない。
しかしこの間、兄貴のCRazy boneは何をやっているのだろうか? 佐渡川と同じだったら、実の兄の分余計に変態なのだが。
が、さすがにそんなことはない。単に、持ってきていた巣箱の蓋を開けるのみである。
すると、無数のハエが飛び立つ。兄弟だけあって、恒河沙=無数の発想は同じだったようだ。もっとも、シャボン玉とハエでは大違いであるが。
そのハエに、橘花が割るハズのシャボン玉が次々につぶされていく。
「このバカ兄貴、何すんだよ!?」
「フッ‥‥所詮、この世は弱肉強食よ!」
完全防備の自分の周りにだけ殺虫剤をまき、そのまま逃げていくCRazy bone。
そして、ハエは出てもえらい人は出てこない。ただひっそりと、電光掲示板にランキングが表示されていた。
1位 横田新子 1恒河沙
2位 DarkUnicorn 1極
3位 CRazy bone 1載
こんな終わり方で、再開第一回目は幕を閉じるのであった。