ダジャレに命を懸け落ちアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/08〜12/10

●本文

 TOMITVの廊下。ムダにアツい上司が、すれ違った部下に声をかけた。
「おう! 久々に会ってみれば、随分と血色がいいじゃねーか。っつーことは、休養十分で、ダジャレを考える時間もたっぷりあったよな? よし、なんかダジャレ言ってみろ!」
 突然の不意打ちに、部下の顔が一拍遅れてサーっと白くなっていく。
 クルリ。突然踝を返すと、走り出す部下。どうやら、逃げるという選択肢を思いついてしまったらしい。
「おいおい、『とにかく捕まえろ!』をパクる企画はじめようっていうのかい?」
 もちろん、上司は追いかけてくる。満面の笑みを湛えて。
 クルリ。だが、突然部下は立ち止まって振り向いた。
「駆け落ちする私をお許しください‥‥というわけで、ダジャレに命を懸け落ちということでどうでしょうか‥‥ぐぼはっ!」
 しかし、そのままの勢いで走りつづける上司のラリアットが、部下の首に炸裂する。床に後頭部を叩きつけられ、ピクリとも動かなくなる部下。
「まったく、休んで使ってないと余計にサビつ‥‥おい! どうした!?」
 さすがに心配になった上司が部下の身体を揺するが、まったく反応がない。気づけば、周囲にギャラリーが集まりはじめている。
「‥‥ふっ、身をもって本当に命を懸けてしまう悪い例を示すとは‥‥やるじゃねーか!」
 すくっと立ち上がると、そういうことにして勝手に去っていく上司。ごまかせているのかどうか、よく分からない。
 ともあれ、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第8弾がスタートした。

『命を懸けても、命を落とすな!』

 ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
 各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
 例:『布団が吹っ飛んだ』
 干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
 例:『そうですか、ラストにカラスですか』
 イラストがその収録例。もっとも、今どき使えない黒いゴミ袋詰めで捨てられ、カラスについばまれる末路になること間違いなしですが。

その他注意点
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。

過去の放送(最近5回分)
・ダジャレに命を懸ければ 5月29日 07:00〜
・ダジャレに命を懸けそば 6月26日 07:00〜
・ダジャレに命をぶっ懸け 7月17日 08:30〜
・ダジャレに命をふり懸け 8月09日 07:00〜
・ダジャレに命を懸けない 9月30日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4120 白海龍(32歳・♂・竜)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa4878 ドワーフ太田(30歳・♂・犬)
 fa4942 ラマンドラ・アッシュ(45歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

「フッ‥‥ダジャレに命が崖落ちっスか! それは、受験どころか卒業も崖っぷちな俺への挑戦っスね! ってことで、俺は崖と戦います」
 順調にタイトルからして間違えている森里時雨(fa2002)。もっとも、大切な何かを間違いつづけてきたおかげで今日の森里があるわけなので、このくらいは誤差レベルでしかない。
 だから、間違えたまま本当に崖の前に来ていようとも、それは新たな出会いへの序曲に過ぎないのである。
「志士は子を戦塵の谷に突き落とすというっス。なので‥‥」
「はぶ‥‥あ‥‥ないす‥‥でーぃ‥‥とーふー♪」
 志士の格好をした森里がそこまで言いかけたところで、お誕生日を祝う歌を歌いながら湯ノ花ゆくる(fa0640)が入ってくる。
 やや遅れた形ではあるが、先月25日は森里の18歳の誕生日だったのである。18と言えば、18禁なんて言葉があるくらいに色々と解禁になったものも多いハズなのだが、残念なコトにまったくの無縁であるのは言うまでもない。
 そんなところへ、湯ノ花という女の子が祝ってくれるというのだから、手にしているのがケーキではなく豆腐なくらい、どうでもいいことだった。
「発破‥‥バスでー‥‥灯油ー♪」
 なおも湯ノ花の歌はつづき、それに合わせて廃車のバスが運び込まれてくる。面倒だからと、灯油ではなくタンクからそのまま軽油をかけてあるのはディーゼルの力であるが、それもどうでもいい。
「蜂‥‥ダースでー‥‥でぃあー‥‥森里さーんー♪」
 さらには蜂に12匹ほど刺されたが、森里は痛みでしか生きている証の分からない、大変キケンな香りのする男なので、アナフィラキシーショックすら気にしない。
「お誕生日‥‥おめでとう‥‥ございます♪ では‥‥主賓は‥‥バスの方へ‥‥どうぞ‥‥」
「え? ああ、ありがとう‥‥」
 よく分からないまま、バスに押し込められる森里。が、湯ノ花はしゃべり方からは想像もできないほどの素早さで、ガンガン進行していく。
「レモンの‥‥入れもんに入れた‥‥プレゼント‥‥です」
 チョコレートケーキを差し出す湯ノ花。火の点いたロウソクが刺してあるあたり、イヤな予感がしまくりであるが、湯ノ花の手作りケーキということで、まったく頭が回らない森里。
「ふーっ! では、おいし‥‥うっ! ケーキに計器が入って‥‥意外に胃がイタいっス‥‥」
 しかし、普通にロウソクの火は吹き消される。もっとも、その後のケーキの方にトラップがあったわけだが。
「急いで‥‥病院に‥‥行きましょう。あ‥‥バスのモーターが‥‥こわれてもーたー‥‥です☆」」
 アクセルを踏み込む湯ノ花だったが、そんなコトを言う始末。しかも、エンジンの様子を見ると湯ノ花が降りると同時に、なぜかバスから走って逃げ出してしまう。
「そろそろ‥‥遅れて‥‥発破バスでーが‥‥来るらしいです‥‥」
 その言葉を合図にするかのように、エンジンが火を吹いた。そして、爆発と共に森里もろともバスが炎に包まれる。
 次の瞬間、何事もなかったかのように普通にTOMITV正面玄関前の映像に切り替わる。まったく普通に、いつもどおりの落ち着いた光景である。
 と、そこへいきなり黒塗りのリムジンが横付けされる。一体何事かと騒然となる中、マッチョなオッサンが出てくる。とはいえ、なんのことはない。単に今回の出演者の一人、ラマンドラ・アッシュ(fa4942)なだけである。
「えらい人に査問委員会に呼び出されたんだが、委員会に行っていいんかい?」
 受付に行くなり、早速カマすラマンドラ。受付嬢が、やはりマッチョなオッサンであることには目もくれない。こちらは、若干若めの白海龍(fa4120)であった。
「ようこそ、1年ほどごぶサンタしてますデス! サンタデス!」
 しかも、白海龍はサンタクロースの格好をしている。ごぶさターン並みにサブいことになっているが、北国の人間であるサンタは気にしない。
「72時間クライ不眠不休の耐久で、泣きそうなくらい眠いデ〜ス。なぜかって? こちらのVをご覧クダサ〜イ!」
 いきなり巨大モニタに、プレゼントを自腹で買うための白海龍のバイト三昧な日々が映し出される。が、ラマンドラは関わり合いになっても損するだけと、すでに車のところに戻ってきていた。
 そのラマンドラの前を、なぜか甲冑を着込み、頭に矢を刺したグリモア(fa4713)が走りすぎていく。
「かけおち──ひそかに逃げて、ゆくえをくらますこと。特に武士が戦に負けて逃げること‥‥と、辞書に載ってたよ〜」
 自分で解説を入れながら、ドップラーで消えていくグリモア。やや遅れて、マリアーノ・ファリアス(fa2539)も走り込んでくる。落ち武者狩りかどうかは知らないが、グリモアを追っているようだ。
「あ、ちょうどいいところに車ガ!」
 勝手にリムジンに乗り込み、盗んだ車で走り出してしまうマリアーノ。
「‥‥ああ、代わりの車が来るまで待たんとな」
 ラマンドラがきっちりとダジャレでボヤきつつ、映像はグリモアとマリアーノ方を追いつづける。
 つい先程までTOMITV前だったのに、いつの間にか海沿いの入り組んだ崖に舞台は移っていた。遠く後方でバスが炎上している気がしないでもないが、とりあえずはスルーである。
 なぜ追いかけっこをしていたのかはナゾであるが、追い詰めたマリアーノが車から降りてくる。一方のグリモアも、もはや逃げられないと日本刀を抜き放って、構えていた。
「はーっ!」
「おっト! 刀か‥‥さすがに、今のは危なカタナ」
 すんでのところでかわしてみせるマリアーノ。ギリギリの割には、随分と余裕のある受け答えに聞こえてしまうが。
 しかしそこへ天の助けか、なぜかグリモアを助けに空手キッドたちが現れる。
「空手では、マリスには勝らてないヨ!」
 正拳一発で、一人をノックアウトしてしまうマリアーノ。たまらず他の一人がナイフを抜き、もう一人が青龍刀を抜くが、どちらも一撃伝説の餌食だ。
「思ったより、やるじゃないフか。え? 大剣の方が、大きいから強いっテ? それはかたよっタ意見だネ」
 マリアーノがそんなことをやっている隙に、グリモアは近くにあった丸太ん棒で崖に橋を架け、まだ逃げ延びようとしていた。
 一方のマリアーノは、早くも残り一人となっていた。が、マシンガンを取り出されて状況は一変する。
「銃だっテ!? いいさ、ガンガン来いやァ!」
 言われるまでもなく、乱射されるマシンガン。と、流れ弾がちょうど橋を渡ろうとしていたグリモアに当たってしまう。
「武士が駆け落ち中に、橋を架け落ち。しかし、実は亀オチーッ!?」
 ナゾの断末魔の叫びを残して、グリモアは海の藻屑と消えた。
 そんな間にも、マリアーノは弾切れになった残り一人にトドメを刺す。
「弾切れは偶然じゃナイ。たまたまに頼るようじゃ、まだまだだヨ」
 そうキメゼリフを残すマリアーノから、カメラは奥の炎上するバスへとズームしていく。
 さすがに火の手の収まってきたバスの中から、突然純白のウェディングドレスを着た女性が飛び出してくる。パトリシア(fa3800)だった。見れば、アフロヘアで黒コゲの森里の手を引いている。
「時雨さん! 駆け落ちしましょう!」
 が、そこへマッサージの準備をしていた湯ノ花が目に飛び込んでくる。
「‥‥ひどい! 信じてたのに‥‥」
 森里が手を引かれている状況すら理解していない中、勝手に勘違いの妄想を繰り広げるパトリシア。ナゾの三角関係が出来上がっていたようだ。
 パトリシアは怒りにまかせて森里を投げ捨てると、裸締めに移行する。
 さっぱり状況は分からなくとも、森里が苦しいコトに変わりはない。しばらくタップしていたが、あることに気づく。
「密着する胸が、気持ちよすぎ‥‥あれ、ないな?」
 ブチッ! 何かが切れる音がした。無論、パトリシアがキレて、スイッチの入ってしまった音だ。森里のタップしていた手が、ダランと落ちる。
「駆け落ちするハズが、スリーパーホールドを掛け、落ちちゃいました、テヘ☆」
 笑顔で言いつつも、森里が口から泡を吹いて完全に落ちても、なおも締める手を緩める気配はない。
 が、あっさりと映像は切り替わり、バスが大写しになる。そこに、ドワーフ太田(fa4878)が駆けつけてくれていたのだ。
 何かパーティーがあると聞きつけた太田は、バスの残り火でピザを焼いていた。軽油臭さがピザに移るが、自分で食べるワケではないので気にしない。
 というか、なんだかんだでモテモテの役どころの森里には、ちゃんとしたピザなどもったいないのだ。だったら代われと言われても、代わる気はないが。
 手馴れた様子で、次々にピザを焼いていく太田。その度に、出来上がったピザがドンドンと積み重ねていく。
「ピザの斜塔じゃ‥‥って、斜塔だけに傾いてきてしまったようじゃな」
「東尋坊で通せんぼ! 自殺はダメ! 絶対!」
 カメラの枠外で復活していた森里が、崩れそうなピザを支えに飛び込んでくる。ちなみにロケ地は東尋坊でもなんでもないが、気にしてはいけない。
 見事にピザの斜塔の倒壊を救った森里だが、その勢いで崖から転落してしまう。が、なんとか木の枝をつかまって難を逃れた。
「配当! 一発!」
 気合いを入れて上ろうとしたが、ポキっと枝が折れ、目の前で暴落していく株価のように、見事に真っ逆さまに落ちていく森里。その光景に、太田は最敬礼である。
「おぬしが命懸けで救ったピザ、決してムダにはせん。このピザたちを売って、ピザ御殿‥‥ピザシャトーを建ててみせるのじゃ!」
 太田が勝手な決意をしているところで、またも映像が切り替わる。再びTOMITV前だ。相変わらず、ラマンドラが代車を待っていたが、来る気配は一向にない。
「コンドルの電車は、混んどるからすかんし‥‥」
 そんなボヤキになぜかコンコルドの映像が挿入されたが、とにかく歩き出すラマンドラ。と、いきなり映像が商店街に切り替わる。
 その中に、商店街に不似合いな屋敷が立っていた。その前では、高そうな服を着てシガーをふかす、太田が立っていた。
「おかげさまで、屋敷が建つほど儲かったわい!」
 時系列がナゾだが、無事にピザのシャトーは建ったらしい。が、斜塔なシャトーであるので、早くも傾きかけている。というか、崩れた。
「崩壊? ああ、ほーかいほーかい‥‥」
 そんな大事件がありながら、ラマンドラは脇目も振らず、一直線に魚屋を目指していた。が、そんなラマンドラに太田がすがりついて来る。
「しばらく、泊めさせてもらえんかのう?」
「家はどこかって? 言えん」
 つれないラマンドラは太田を振りほどいて、そのまま魚屋に入る。
「このイクラ、おいくら? 土産物にしたいんスよ」
「らっしゃい!」
 出迎えた店員は、またもサンタ姿の白海龍であった。先程のVにあったとおり、色々なバイトに忙しいようだ。
 なお、店には亀の着ぐるみに入ったグリモアも並べてあったが、どうやらこれが亀オチということらしい。しかし、ラマンドラも白海龍も絡もうとはせず、グリモア自身も丸くなってじっとしているだけである。
「おっとイカン! 目次を見ていたら、もう9時!」
 何が目次なのかよく分からないが、そう言って去っていってしまうラマンドラ。残された白海龍は、悲嘆に暮れていた。
「歩合給なのに、全然売れマセ〜ン! これぞまさに、メリー・クルシミマ〜ス!」
 白海龍が渾身の一撃を放つが、むしろそれキッカケのように映像が切り替わる。
 崖班では、森里がゴキブリのような生命力で戻ってきていた。海に流されたおかげで、煤も洗い流され、アフロもストレートに逆戻りである。
 そして今は、お爺ちゃんように横たわり、湯ノ花のマッサージを受けていた。
「森里さんに‥‥オイルをかけて‥‥老いるマッサージ‥‥です」
 もちろん、マッサージオイルでも日焼けオイルでもなく、サラダオイルである。
 一方その横では、パトリシアが太田から買い占めたピザをヤケ食いしていた。って、どうぼったくればシャトーが建つのかはナゾであるが。
「ハッピ‥‥バースデー‥‥灯ー油ー♪」
 今度こそ灯油に浸したハッピを、寝息を立てる森里にかける湯ノ花。と、その湯ノ花がパトリシアを呼び寄せる。なにやらうなずくパトリシア。
「zzz‥‥ハッ! 俺の恋が燃え上がっている!?」
 熱さに目を覚ます森里。炎上する森里の前で、湯ノ花とパトリシアが番組の締めに手を振っている。そこへ太田、ラマンドラ、白海龍、グリモアの商店街組とマリアーノも合流し、全員が手を振る中映像が引きになっていく。
 こうして森里には忘れられないお誕生日パーティーとなったわけだが、このすばらしい体験をより忘れがたいものとするために優勝に祭り上げられ、賞金10万円が贈られた。
 また、森里の誕生日を覚えており、盛大に祝ってあげた湯ノ花に、技能賞として5万円が贈られた。