ムチャキングアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/09〜03/11
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「やりました! ついに開発に成功しましたよ!」
「ん? 何がどうしたって?」
「ピッチングマシンの開発に成功したんですよ!」
「なんだって! なんとかWBCに間に合ったな! よくやったぞ!」
ピッチングマシンなど珍しいものではないが、なにやら喜んでいる二人。一体なんだというのだろう?
「で、何キロ出るようになった?」
「300キロの大台に乗りました!」
「ぶふぅ‥‥死人が出そうだな!」
「従来のピッチングマシンは、バネや回転するドラムを使うからスピードが出ないんです。そこで、今回は火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射することに成功しました」
「リアクションできるレベルを超えているな‥‥ククク」
物騒な会話はさておき、こうしてWBC便乗企画がスタートした。
無謀王決定! ムチャキング
『300キロの超スピードボールをキャッチせよ! キャッチ出来たら10万円!』
ムチャキング選出は、採点によってなされます。
・無謀点:いかにムチャな捕球の仕方に挑戦するかで点が変わります。
・キャッチ点:捕球で満点、かすったりしても若干の点は入ります。
・芸術点:リアクションのおもしろさによっても点が入ります。
無謀点30点、他各10点の計50点満点で採点されます。
事前に用意される小道具
・軟式用グローブ
・ファーストミット
・キャッチャーミット
・キーパーグローブ
・競輪用ヘルメット
・ニット帽
これ以外にも、大概のものは用意されます。持ち込みも可能です。
注意点
・流血したら、捕れても0点になります。もちろん、死んでも0点です。
・骨折などの怪我は、ガマンすればOKです。但し、治療費は自己負担で。
・キャッチ出来たら10万円とありますが、正確には点数が一番高くてムチャキングに選出された人に10万円です。逆に、捕球できなかった場合でも、点数が一番高ければ10万円です。
●リプレイ本文
『ついにこの日がやって参りました。ムチャキングの名を我が物にしようと、荒くれ者6名が集結、笑い抜きの真剣勝負が繰り広げられます! 実況はわたくし、河辺野一(fa0892)でお送りします』
マウンド上には、すでにピッチングマシンが設置されている。
『さあ、この番組のためだけに開発されたピッチングマシンは、実に時速300キロ超を計測! 新幹線500系にも匹敵するボールが、投捕間18.44メートルをわずか0.2秒強で突き抜けますッ!』
ホームベース上に、発泡スチロール製のダミー人形が運び込まれる。
『そんな球を生身で受けようというのですから、考えた人もやる人もバカ以外の何ものでもありません! まずはダミー人形でのデモンストレーションをご覧ください!』
轟音と共に、球が発射される。次の瞬間、まずダミー人形の胸に風穴が空き、やや遅れて首と足首が折れる。
『出たァァーッ! これが質量×速度の二乗の破壊力!! ぽっかりと風穴を空け、大空へ羽ばたきました!』
普通なら壊れやすいダミー人形で恐怖心を煽ったところで終わりだが、これで終わらないのがこの企画である。矢沢きゃおる(fa2868)が、アイスホッケーのゴーリー用プロテクター一式を装着して登場した。
「TOMITVが開発致しました、この世界最速のピッチングマシン。その破壊力を‥‥おわっ!」
本能的に、身体がどうしても避けてしまう。硬質ゴムのパックを一身に受けるプロテクターならば、ゴムの芯に糸を巻き、さらに牛皮で覆われた硬球程度、何を恐れようか。とはいえ、かすった際に、肩のプロテクターの端が砕け飛んでいる。パックにしろ硬球にしろ、当たり所が悪ければどちらにしろ死ぬのである。
『きゃおるが、恐怖しているッ!‥‥いや、なおも向かっていきます。これぞAD魂、涙なしには語れませんッ!』
「その破壊力を私、ADの矢沢きゃおるが身をもって皆様にお伝え‥‥ぐぼぁッ!!」
きゃおるが、今度こそ真正面から受け止める。悲鳴と一緒に吹き飛んでしまう。
安否が気遣われたが、痛む身体をさすりながら起き上がる。
「死球でテイクワンベースっスね?」
『さすがきゃおる! ランナーに意味などないのに、平然と一塁に向かって走り出すッ! そこにシビれる! あこがれるゥ〜!』
さて、いよいよ本番。有名スポ根バレーボールアニメのテーマをバックに、モヒカン(fa2944)が入ってくる。身の丈2メートルの大男だろうと、もちろん衣装は体操服にブルマ。ブルマは当然紺色で、体操服の裾はブルマに入れるマニアックなこだわりようである。
「ふんぬっ!」
『最初の挑戦者、モヒカン選手。ホームベース上で気合い一発、明らかに筋肉が膨れ上がった!』
気合いや血流では説明不能なまでに膨れ上がる筋肉。とはいえ、世紀末覇王のように体操服が破れ飛ぶことはない。
「だって、女の子だもん」
ということで、ギリギリ大丈夫なサイズを選んできたようである。
『轟音一発‥‥レシーブだぁッ!』
唸りを上げるボールを受け止め、明らかに人体が破壊される音が響いたが、本人がやめない限りはゲームセットではない。
『そして、自らトス。さあ、そしてアタックだっ!』
ピッチングマシン撃破を狙って繰り出されたスパイクは、わずかにマウンド手前に突き刺さる。
「くっ‥‥外れ‥‥ガクッ」
『モヒカン選手、ダウンっ! アンパイアがカウントを‥‥いや、止めた。試合を止めました。モヒカン選手、そのまま担架で運ばれていきます。負傷退場のため、残念ながら0点となります!』
なおその隙に、きゃおるが二塁を陥れていた。無論、捕手も二塁手もいない。
「バッチコーイ! しまっていくっスよー!」
そして言うまでもまく、一介の走者であって守備をしているわけではない。
『つづいて登場は、ルーファス=アレクセイ(fa1511)選手。忍者のような黒装束での登場だぁッ!』
「無謀であればあるほど、いいんだよね? なら、マシンからの2分の1の距離でキャッチするよ♪」
そう言って、マウンドに向かって歩きはじめるルーファス。
『あーっと、まだ誰も捕球できていないのに、一気に勝負にいったぁ! 薄っぺらい黒装束だけで大丈夫なのか? 不幸な事故が起きないか、心配です‥‥さあ、発射です』
「忍法微塵隠れー!」
ドカーンと豪快な音がする。見れば、ルーファスのいた投捕間の中間地点で爆発が起き、煙がもうもうと立ち込めている。
「捕った、捕ったよー!」
煙が晴れてくると、ルーファスがボールを持って飛び跳ねて喜んでいる。しかし、豪快な火薬の音はしたものの、捕球の際の乾いた音がまったく聞こえこなかった。
『しかし、何があったのか? スーパースローカメラの映像で確認してみましょう‥‥スローでも煙でよく分かりません‥‥』
「だから、捕ったんだってば!」
ルーファスがボールを持ってアピールするが、なおも審議はつづく。
『今度は、ピッチングマシンのスーパースローを見てみましょう‥‥おや、火薬が爆発してませんね。っと、手が伸びてきてボールを抜き取った! あー、これは仕込んでましたね、反則です!』
「やー、それが忍びの技だからね♪ 痛いのも辛いのもイヤじゃん?」
投げやり気味に捨て台詞を残して去っていくルーファス。その隙にきゃおるが三盗を試みていたが、反則行為中の出来事ということで二塁に戻される。
『つづけて退場者が出てしまいましたが‥‥さあ、七枷伏姫(fa2830)選手、バッターとしての挑戦となります。しかし、木刀の女剣士というよりは、甲冑に兜、面頬の完全武装でリビングアーマーの様相を呈してます!』
数球をじっと見送る七枷。きゃおるのリーリーの声だけムダに響いている。
「見切ったでござる」
わずかに覗く糸目がカッと見開いた。
『七枷選手、なんとホームベース上に立って、居合いの構えだ‥‥打ったぁ!』
木刀は確かに球を捕らえたが、木刀の方が耐え切れずに砕け散る。球の勢いはそれでも死なず、七枷を吹き飛ばす。
起き上がったときには甲冑がべこりとへこんでいたが、七枷自身は無傷である。
『無謀点10点、キャッチ点が5点、芸術点が木刀の砕け散る様が派手で美しいということで、9点と高得点が出ました! 合計24点で、当然トップに立ちました!』
『今度も剣士、それも仕置人の闇黒慈夜光(fa2775)選手です!』
「一撃必殺、一刀両断。一球ですべてを決しやす」
球を見送って目を慣らそうともせず、いきなりバッターボックスで構えに入った。
「南無三‥‥珂ぁぁぁっ!!」
球が発射されるやいなや、胴薙ぎ一閃。しかし球はそのままの勢いで飛んでいき、前方へ飛んだのはくるくると回る折れた剣先だけだった。そして、そのまま剣先が二塁ベース付近に突き刺さる。
「へっへ、またまたやらせていただきましたァン!」
三盗を決めてガッツポーズのきゃおる。二塁に残っていればおいしい画になったのに、と誰もが思わずにはいられない。
『無謀点は、防具がないにもかかわらず模造刀を振り回したということで13点、キャッチ点5点、芸術点5点‥‥合計23点! 残念ながらわずかに及びませんでした。折れた剣先がきゃおる選手に見事刺さっていれば芸術点の満点も考えられただけに、実に勿体ない。運がありませんでした!』
そんな一切の何事にも動じず、黙々とネクストサークルで素振りを繰り返していたたまた(fa3162)が、バッターボックスに向かう。結局、捕手よりも打者の方が多いことになる気がするが、気にしないでおこう。
『さあ、満を持して登場のたまた選手、その手にはバイオリンがしっかりと握り締められています!』
案の定、バイオリンをバットのように構えるたまた。
『ジャストミート! そして、木っ端微塵だぁ!』
壊れるのは織り込み済みで、壊れたバイオリンでボールをボコる予定だったのだが、ここまで見事に粉々になるとは思っていなかったので、orzとただガックリするしかない。
『無謀点12点、キャッチ点5点、バイオリンが自腹ということで芸術点6点‥‥合計23点! 残念ながら2位タイです‥‥おや?』
全選手終了かと思いきや、きゃおるが猛然とホームに突っ込んでくる。
『あーっと、ここできゃおる選手ホームスチールだッ!』
「ホーームインッ!! ついでに10万円もイタダキっス‥‥ガクッ」
最初の怪我を気力でこらえていたが、ホームインと同時に緊張感が途切れたか、力尽きるきゃおる。
転がっているボールを、やけになって三塁方向めがけて投げるたまた。そこへ、退場のはずのルーファスが入ってきてキャッチ、ベースをタッチする。
『タッチアップではなく、ホームスチールなのですが‥‥あーっと、捕球より離塁が早かったとアウトが宣告されました! さすがはWBC便乗企画、余計なトコだけマネてますッ! まぁ、どちらにしろ負傷退場で0点に変わりはありませんが‥‥』
そして、表彰式。想像以上に盛り上がったので、特別表彰が用意された。
『モヒカン選手ときゃおる選手には、敢闘賞として5万円が送られます。まあ、敢闘賞というよりは、見舞金のような形になってしまいましたが‥‥』
表彰式に、彼らの姿はない。
『そしてそして、優勝は堂々の24点獲得、七枷伏姫選手です!』
「ありがとうございます」
賞金を掲げる七枷。
『お別れの時間になってしまいましたが‥‥え? なになに‥‥えー、番組の最後ですが、視聴者の、そして何より出場者のみなさんにうれしいお知らせがあります!! 次回、よりパワーアップしたピッチングマシンでお会いしましょう! とのことです。では、さようなら!』