走れ、人間ども9アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/09〜12/11

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「いやー、ノドの病気は色々とコワいですね。というわけで、我々も走れるウチに走っておきましょうよ!」
「そうだな。今回は遠征競人といこうか!」
 後輩の言葉に、先輩が重々しくうなずく。
「え? 香港の国際レースに便乗して、ついに海外遠征ですか!?」
「海外とは言ってないな」
 先走って勝手に喜ぶ後輩の夢を、あっさり潰す先輩。
「宝塚にある競馬場まで遠征だ! 最近外回りコースが新設されたが、新しいものはとりあえず試走しておきたくなるのが、世の常というもの‥‥」
「えー! 2歳チャンプ決定戦に便乗するよりは遠くていいですけど‥‥やっぱ、香港の国際レースとかに便乗しておくのがいい気がしますが‥‥」
 海外旅行‥‥もとい海外出張を主張する後輩だが、先輩が首を縦に振ることはなかった。
 こうして、競馬と天気図は西高東低でも、競人に西高東低は一切関係ない中、関西地区での競馬場疾走企画がスタートすることとなった。

使用コース
・競馬場の芝1,600m外回りコースを使用。距離ハンデはなく、斤量(重さ、走りにくさ)によるハンデのみ。
・コース形態等は、仁川にある某競馬場にすべて準じます。

事前に用意される物
・大抵のものは用意されます。番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。(ハンデ代わりに)自分で実況しながら走ることも可能です。走らずに実況・解説だけでの参加も可能です。

ルール
・法に触れない限りは、何を使っても構いません。
・獣化は視聴者に気づかれない限りなら、いくらでも使って構いません。但し、その分ハンデが重くなります。
・優勝賞金5万円。敢闘賞10万円。敢闘賞の方が高くなりました。
・露骨にムチャな妨害は失格対象となります。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・走れ、人間ども3 6月11日 07:00〜
・叩かれろ、人間ども 7月02日 07:00〜
・【AoS】泳げ、人間くん 8月01日 07:00〜
・【PSF】走れ、人間ども 9月15日 07:00〜
・走れ、人間ども8 10月02日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0748 ビスタ・メーベルナッハ(15歳・♀・狐)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2396 海風 礼二郎(13歳・♂・蝙蝠)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa3871 上野公八(23歳・♂・犬)
 fa4035 尚武(20歳・♂・牛)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4832 那由他(37歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 海外の競馬場には行けなくても、日本国内の競馬場なら行ける、そんな微妙な制作費の当番組。単に毎回色々破壊しすぎで金使いすぎなだけなんじゃ‥‥という気がしてならないが、そういうところにだけは目をつむるという現代社会に便乗する硬派番組なのである。その硬派さゆえに、距離固定のハズが、距離ハンデ制に急遽変更になってしまっている。
 というわけで、今回ははじめて関東から飛び出して、関西にやって来ているわけだが、やることになんら変わりはない。
 なので、早速出走各人を紹介していこう。なお、内枠ほどハンデ距離が短いのは、いつものとおりである。
 1枠1番は、新設の外回りコースをまったく堪能できない、目の前にゴールの見える10m地点からのスタートとなる。
「おかえりなさいませ、ご主人様☆」
 しかし、声の主はネコミミメイドでもマッチョな兄貴、タケシ本郷(fa1790)だ。メイド服にはニーソックスと、勝手に絶対領域を作ってしまっているが、ターゲット層がどこにあるのかナゾである。
 そして、表面張力の限界に挑戦したココアの入ったマグカップをお盆に載せ、すでにスタンバイしている。
 そんなんで、ハンデたったそれだけかよ!? と言うなかれ。こぼしても構わず進んでいいわけではなく、少しでもこぼしたらスタート地点からやり直しなどという甘ったれたものでもなく、即失格という侠気‥‥もとい、メイド魂あふれる仕様なのである。
 しかも、メイド魂にあふれているので、その場でご主人様のお仕置きとなるのだ。後は、エロゲ仕様のお仕置きでないコトを祈ることしかできないという、見る者のみ恐怖に怯えるハメになるハンデ設定である。
 というわけで、そんなレースぶりも格好も全部無謀な本郷はさておき、ここからはちゃんと新設コースを活かしたスタート地点となる。
 一気に距離が空いて、外回りコース4コーナーの600m地点。ここに、女性陣が固まっていた。
 2枠2番は、那由他(fa4832)。いい年した女性が茜色のジャージ姿で、こんな時間から酒をあおっている。といっても、このレースの前祝いで祝杯を挙げているるはない。その答えは、那由他の飲んでいるもの──スピリタスにあった。
「クビ差粘ってれば、この新コースを英車アストンマーチンで颯爽とボンドカーばりに走れたのにっ! スピードよ、こんにちは? いたの?」
 ウオッカがギムレットのベースであるジンよりも強くということでウオッカであるならば、那由他はポーランドが誇る最強のウォッカ、スピリタスを飲むしかない。おかげで、すでに心は1944年9月のワルシャワに旅立ってしまっている。
 そんな飲んだくれと同じハンデの3枠3番は、ガラっと変わって水着姿のビスタ・メーベルナッハ(fa0748)だ。この寒い中、見ている方が寒くなるくらいの露出度で、2枠那由他の若作りと、本当の若さの違いを見せつけてしまっている。
「あえて夏をテーマに、参戦よ!」
 そう言うだけあって、手には浮き輪にシュノーケルを持ち、そして足には足ヒレ装着と着合いノリ十分である。
 そして、4枠4番もお色気担当で甲斐大地(fa3635)。こちらは、素直に冬で攻め、胸を強調したミニスカサンタでの登場である。
「精一杯、がんばりまーす♪」
 元気一杯にアピールする甲斐を、ビスタがじーっと見つめている。キャラのかぶるバディが憎いのか、暖かそうな衣装がうらやましいのか、あるいは両刀ゆえのアツい視線なのか、それは余人の知るところではない。
 だが、甲斐がビスタの視線に気づくことはない。なぜなら、本来は200mほど後方にいなければならない、緩やかな弧を描く3、4コーナー中間の800m地点スタートの5枠、6枠のトナカイ二頭がやって来てしまったからだ。
「引っ張るよりも乗られたい、赤鼻の麗人トナカイこと上野公八(fa3871)です」
 5枠5番の上野は、競馬場の所在地である宝塚市からの歌劇団発想で、男役の濃いメイクを決めていた。いや、元より上野は男であるが。それも、極上のドM牡トナカイだ。
 上野だけでも甲斐は引き気味なのに、そこへ6枠6番の尚武(fa4035)がトドメを刺しにやって来る。
「ボンデージトナカイでふぉー!」
 革とエナメルの露出度の高いトナカイ衣装で、腰を激しくピストンさせている。
「予算をケチられてのぅ‥‥」
 そう言って、角を見せる尚武。立派に枝分かれしたトナカイのそれではなく、鋭く一本に伸びた代用品であった。しかし、そんな角が実はコテカなあたり、確実にワザととしか思えない。
「はい! さっさと持ち場に戻る!」
 たまらずビスタが甲斐の前に割って入り、上野と尚武を追い払う。スタートも近づいていたこともあり、二人はしょげて戻っていく。
 そんな隙にも、ビスタはかばうフリしてさりげなく腰に手を回していたが、甲斐はその意図に気づかない。
「ちょっと寒いから、スタートまでこうやってくっついていさせて」
「え? あ、はい。どぞ」
 一方、追い払われた二頭は、今度は逆に那由他に捕獲されてしまっていた。
「ちょっと、あんたらも飲みなさいよ!」
 那由他が、順調に絡み酒モードに突入したようだ。二頭とも二十歳過ぎであることを確認すると、問答無用で口に押し当てて飲ませてしまう。
 上野は赤鼻どころか全身真っ赤になり、尚武もテンションがおかしくなって、腰を振らずにヘッドバンギングしはじめる、余計に酔いの回るキケンな状態になる。
「よーし、行ってこーい!」
 しかし、那由他は満足気に二頭をスタート地点に送り出す。
 そんな前方の喧騒をよそに、7枠7番は3コーナーの1,000m地点、コタツを背負った百鬼レイ(fa4361)だ。
「季節は冬、でも自分は寒いのが苦手です。最近はもうめっきり寒くなり、コタツなどが恋しくなってくる今日このごろ‥‥」
 どうやら、恋しさのあまりコタツと合体してしまったようだ。メチャクチャ厚着した上にコタツを背負い、さらにコタツ布団をかぶせてある。
 しかも、ちゃんとコタツに電気が入るよう、バッテリーやら何やらと、やたらと重装備である。これでハンデが1,000mっておかしくね? という話だが、密かに中で半獣化しているので問題はない。
 最後に大外8枠8番は1,600m地点、きっちり本来の外回りマイルの海風礼二郎(fa2396)である。脇には、子ども用の自転車が置かれている。
 唯一車輪を使うとはいえ、1マイルはハンデ重すぎないか? という諸兄に朗報です。一見するとただの小さな自転車にしか見えないが、実は後輪の上の荷台に一抱えほどあるダンボール箱が載せてあるのだ。このダンボール箱の中身こそ、海風礼二郎の秘密兵器なのだ! そう、名づけてロケット加速エンジンである。
 ついでに言えば、サドルも取り外してあり、ずっと立ちこぎしてないと未知の領域に目覚めかねない大変キケンな設定にもなっているのだが、一人隔離されたといってもいい距離とロケットの噴射がイヤな予感しか連想させないので、大事の前の小事にすぎない。
 以上出走8名の紹介も終わったところで、早速スタートである。各人、一斉にキレイなスタートを切る。
 キレイすぎて、上野は引っ張るハズの8頭のトナカイぬいぐるみの載ったソリを、尚武は馬を乗せた馬運車を、キレイサッパリ忘れてしまったくらいだ。トナカイ失格であります‥‥が、悪いのはすべて那由他のスピリタスである。
 そのため、スタートと同時に審議の青ランプが灯る‥‥いや、この出来事に対してのみ、審議のランプが灯ったわけではない。
 ゴール前では、慎重にスタートを切ったハズの本郷が、早くもズッコケていた。もちろん、盛大にココアをブチまけ、マグカップの中身は完全に空である。
「ああん、失敗、失敗。テヘっ☆」
 キモすぎる本郷だが、ドジっ娘メイドのキャラに入り込みすぎてしまったようだ。
「うぅん‥‥やっぱり、走りにくいわね‥‥」
 一方、ビスタは足ヒレに悪戦苦闘していた。たわわな胸を揺らせているハニーの甲斐は、すでに遥か前に行ってしまっている。ああ、並走して堪能したかっというのに。
「サンタすぁ〜ん! 乗ってぇ〜!」
 と、ビスタのすぐ後ろから、野太い声が聞こえてくる。サンタに置いていかれたシチュエーションのトナカイ、上野である。その横では、尚武も負けじと甲斐を追っている。
「きゃっ!」
 その声に驚いたのか、あるいはワザとか、ビスタが転倒してしまう。浮き輪を巻き込んで胸を押し付けながらでんぐり返し、そして着地はM字開脚風味である。
 そのビスタの横を、上野と尚武が追い越していく。が、上野だけはクルリと戻ってくると、ビスタのところに寄っていく。遠くのミニスカサンタより、近くの水着ギャル。しかも、そんなポーズ付きとあっては!
 一方、最後方からのスタートである海風は、息を切らせながらも順調に立ちこぎをつづけていた。早くも、一つ前を行く百鬼を射程に捉えかける。
「ちょっと早いですが‥‥隠されたまま終わる秘密兵器とは違うのですよ!」
 いつになく強気で、百鬼を一気にかわそうと、ポチっと秘密兵器のボタンを押す海風。
 とはいえ、所詮は海風の秘密兵器。ロケットエンジンといっても、十数本のロケット花火が一斉に発射されるだけのシロモノである。
 よって、一向にスピードの変わらない海風。しかし、なぜか一緒に積まれていた五尺玉に引火してしまう。
「え?」
 ドーン! 競馬場の芝の上に、キレイな花が咲いた。
「‥‥ムチャしやがりますなぁ‥‥しかし、燃えるゼ! バァーニィーング!!」
 後ろを振り返りながら勝手なコトを言っている百鬼だが、すでに自分も燃え上がっていることに気づいていない。
「なんだか知りませんが、急に自分も燃える闘魂になってきた気がしますよ?」
 無論、海風の爆発が燃え移ったわけではない。純粋に自家発火である。コタツのスイッチを入れたまま走っていれば、当然の結果というものである。
「‥‥ん? うわっ、何をするんですか!?」
 消火部隊がやって来ると、いきなり消化剤を吹き付けられる百鬼。新設された外回りの部分で、二人して見事に轟沈である。
 そして、残る那由他はその光景をつまみに、さらにスピリタスが進むというものであった。無論、飲めば飲むほど早くなるわけでもなんでもないので、後ろ二人が潰れた今、順調に最後方である。
 さて。先頭は押し出される形で甲斐である。後ろから入れ込み気味のエロトナカイ、尚武が追ってくるとあれば、反射的に必死に逃げるというものだ。しかも、甲斐が必死になればなるほど、その胸が揺れるわけで、スタッフ一同『尚武、グッジョブ!』状態である。
 一方の2番手グループは、いつの間にか上野がビスタをおぶって走り出していた。ビスタが当ててんのよ状態なので、上野が必要以上にがんばって走ってしまっている。
 しかし、先頭は甲斐。だが、ついに尚武が捕らえようとしている。
 ゴール前には、本郷が立っている。その場に立たされるという地味なお仕置きでホッと一息だったのだが、その横を二人が疾走したものだから、風で本郷のスカートがめくれ上がってしまう。
「オー! モーレツ!」
 本郷がやり遂げた男の顔をしている。メイドだから女の顔でなくてはいけないところにその顔はシャレにならないが、そんなゲテモノに構っている場合ではない。
 問題なのは、何を思ったか尚武が甲斐を差し切ってしまったことだ。
「え? だって、トナカイは前でサンタを引っ張るものじゃろう?」
 そう言いながら、なおも甲斐を載せて引っ張る野望を捨てずに追いつづける尚武。
「もうレース終わってるよ〜」
 そして、なおも逃げつづける甲斐。おかげで、ここだけスタミナ自慢コーナーになってしまっている。
 とそこへ、ビスタをおぶった上野もゴールする。おぶっていた分、上野が先着という形である。
 そして、最後に大いに遅れて千鳥足の那由他もゴールする。
『ただいまの競走は、スタート直後に6番尚武号と5番上野号がトナカイの仕事を忘れた件、1番本郷号が転倒してココアをこぼした件、ならびに第4コーナーで8番海風号が花火を水平発射した件、7番百鬼号がコタツのつけっ放しによる火災を起こした件について、併せて審議致します。お手持ちの勝人投票券は‥‥』
 審議放送が流れるが、那由他のゴール待ち時間に比べればあっさりと、着順が確定して表示された。
  1着 6 尚武
  2着 4 甲斐大地
  3着 5 上野公八
  4着 3 ビスタ・メーベルナッハ
  5着 2 那由他
  中止 8 海風礼二郎(自爆花火)
  中止 7 百鬼レイ(コタツ炎上)
  失格 1 タケシ本郷(覆水盆に返らず)
 問題となった1位入線の尚武と3位入線の上野であるが、レース直前にハンデがスピリタスに変更されたものとして、到達順位のとおり確定した。無論、それを強要した那由他もお咎めなしで5着のままである。
 また、スタート直後に転倒した本郷であるが、これは自分ルールに則り失格となった。まあ、1位入線とかではないので、最初から大勢に影響はなかったが。
 なお、競走中止となった海風と百鬼であるが、近くに尚武が置き去りにしてしまった馬運車があったコトが幸いしたのか、すぐさま無事に収容された模様である。まあ、ギャグ体質補正により、無傷でピンピンしているわけだが。
 こうして、優勝は尚武となり、賞金5万円が贈られた。
 また、外回りコースを使用した初GIに便乗した那由他が敢闘賞となり、賞金10万円が贈られた。