お受験の落ち方アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/13〜12/15

●本文

 階段落ち──その名のとおり、階段を転げ落ちることである。土方歳三役の銀ちゃんの階段落ちはあまりに有名である。
 エスカレーター落ち──その名のとおり、エスカレーターを転げ落ちることである。より金属的に鋭角なエスカレーターは、階段落ちの危険度の比ではない。
 そんな番組を作ってきたにも関わらず、今回はいきなりお受験の落ち方、サクラチルである。
「‥‥いや、まあ別に階段がお受験でもいいんですけどね」
 先輩の出した企画書に、相変わらず後輩がダメ出しをしている、とある日の会議室。
「ただ、そもそもこのシーズンに落ちるだの滑るだのは禁句だというのに、未履修だのなんだのある昨今に、随分とまたストレートに来たなぁ‥‥って思うわけですよ」
 黙って聞いていた先輩であるが、もちろん先輩たるものが引き下がろうハズもない。
「言いにくいコトをあえて突きつける、それが放送に携わる人間の使命ってもんじゃねーのか?」
「そうなのかもしれませんが‥‥この場合、確実にあざ笑う方向性ですよね?」
「それが何か? 低俗番組ってのは、そういうもんだろう!?」
「いや‥‥低俗番組って自覚しているんだったら、もう何も言うコトはないです‥‥」
 後輩が確実にあきらめたところで、落ちモノシリーズ第3弾『お受験の落ち方』がはじまるのであった。

『お受験の落ち方』
 受験の面接会場セットが組まれています。おもしろおかしく面接に落ちてください。
 受験者のイスの後方には、なぜか10mの階段が組まれています。有意義に活用してください。
 多少ならば、セットに手を加えることも可能です。
 一番おもしろかったと判断された優勝者に、賞金10万円が授与されます。

その他注意点
・流血、怪我OKです。但し、治療費は自己負担です。
・重傷、重体、死亡はNGです。死者がでると、番組がなくなってしまいます。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

過去の放送スケジュール
・階段の落ち方 4月27日 02:00〜
・エスカレーターの落ち方 5月31日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)
 fa4287 帯刀橘(8歳・♂・蝙蝠)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 なぜかスタジオの高いところに設置された、本日のメインとなる面接会場。とはいっても、バカとハードボイルドとフラグマニアと打たれすぎと(以下略)は高いところが好きだからというわけではなく、単に本当のメインである階段を設置する都合によるだけである。
 そんなわけで、すでに面接会場には本日の試験官がスタンバっている。本日はグループ面接ということで、試験官も2名と複数だ。
 まず一人は、屋内でもトレンチコートは欠かせない、片倉神無(fa3678)37歳だ。
 そしてもう一人は、帯刀橘(fa4287)11歳である。随分とお若いようだが、そのくらいの年齢で中学の担任を受け持ち、しかも魔法まで使ったりする先生がいるコトを考えれば、帯刀が試験官をやるコトくらい至ってマトモ‥‥と言えるのかもしれない。
 というわけで、試験官は、試験管というより三角フラスコとメスシリンダー、といった組み合わせである‥‥どう違うのか分からないが。
 それはさておき、そんな二人の目の前では、MAKOTO(fa0295)が大道具の仕事を完了させていた。これで準備万端である。いよいよ、緊張の面接がはじまる。
 ドアの前では、ノックする前から早くも落ち込んでいる森里時雨(fa2002)が立っていた。
 森里は美少女との出会いを信じ、カメラも回っていないのに家からパンをくわえてやって来ていたのだ。しかし、すべての曲がり角はおそろしいまでにスムーズで、遅刻ネタすらできないほどだった。
 それでも、いつかは美少女とぶつかって恋になると信じ、あわよくば大人の階段を駆け上がることまで想像していたものの、まったく何事もなく順調に面接の13階段を上り切ってしまい、途方に暮れていた。
「お遊戯試験では、このサバのお面をかぶって、ニコやかに魚人役を務め上げてみせるっス‥‥っと、手が滑ったぁ!」
 わざとらしいまでに手を滑らせて、サバのお面を階段に落としてしまう森里。これこそ階段落ちならぬサバ落ちだと一人ニヤニヤしたのも束の間、ようやく中へ入っていく。
 つづいて登場したのは、森里同様に受験生役の桃音(fa4619)だ。黒のセーラー服に、ちょうど膝上丈のスカート。髪も両サイドで2つしばり。コンタクトをした上から度なしのメガネをしてと、森里が型外れな受験生なら、桃音は型どおりの受験生像である。
「失礼しまぁ‥‥ずっ!」
 ノックして入った瞬間、何もないところで転ぶ特技を披露する桃音。すでに着席していた森里の後頭部に、頭から突っ込んでいく。
「ぐはっ! 出会いは突然、強烈にーッ!」
 歓喜の声を上げる森里だったが、折角の相手が誰かも確認できぬまま、前のめりに失神してしまう。
 一方の桃音は、額を押さえつつもムクっと起き上がり、そのまま元気に挨拶する。
「よろしくお願いします!」
「声が小さいっ!」
 面接自体はまだはじまっておらず、本来ならば桃音が着席して次の人が入ってくるところだったが、試験官の帯刀が暴走を開始する。自分より次に背の低い桃音に目をつけた、というわけだ。
「よろしくお願いします!!」
「もっと!」
 負けじと声を張り上げる桃音、一歩も退かない帯刀。勝ち負けが何かは分からないものの、激しい攻防がつづく。
「よろしくお願いします!!!」
「なんでも扱っている店を宣伝するときは?」
「よろず屋をお願いします!!」
「‥‥座ってよろしい」
 そのやりとりに納得したのか、着席を促す帯刀。桃音も座るが、その横の森里は依然、失神KO中である。
 以上で大学受験の部が終わり、ここからは就職試験の部である。それらを同時に面接するってどうよ? と思われるかもしれないが、後々もっとヒドいのも加わってくるので、ここは暖かい目で見守って欲しい。
 コンコン。というわけで、つづいてノックして入ってきたのは、小峯吉淑(fa3822)だった。
「よろしくお願いします!」
 元気よくハキハキとした挨拶の小峯。髪は染めず跳ねさせず、白のシャツに三つボタンスーツ。歯は白くキラリと輝き、靴は黒檀のように磨かれ、輝く瞳には若さゆえの夢と希望だけが満ち溢れ、全身からは清潔感と石けんの香りが漂う、一昔前の好青年スタイルである。
 そして、無難に着席してみせる小峯。なぜか間を空け、森里の反対側の一番端の席に着席したが、今はまだフリの段階だと言わんばかりである。
 コンコン。つづいて、MAKOTOが入ってくる。爆乳をムリに押し込めたブラウスに、やたらとピッチリとしたタイトスカート。まるでオフィスもののAVのようだ。
 そんなMAKOTOは、先程なにやらセッティングしていた席に着く。
 そして最後に、来てはいけないタイプの変態の部である。
 コンコン。佐渡川ススム(fa3134)が入ってくる。必勝と書かれたハチマキ‥‥それはいい。マスクとマフラーで顔を隠し気味‥‥それもいい。水色を基調とする涼しげなワンピース‥‥ギリギリOKとしよう。だが、濃いメークで女装した顔や、ムダ毛の処理されてないスネは、いかんともしがたかった。
「‥‥えーと、女性の方ですよね?」
 ギリギリのところで吐き気を耐えた片倉が、一応確認してみる。
「あら? 他に何に見えて? 娘の代わりに女装して面接を受けに来た超過保護な父親に扮した変態‥‥にでも見えるのかしら?」
「そうとしか見えないのだが‥‥くっ、着席して!」
 そろそろガマンの限界だったが、そのときドアがノックされる。いや、今までのコンコンという軽い音とは違い、ゴンゴンという重い音である。
 ドアの反対側では、湯ノ花ゆくる(fa0640)が合格祈願のため、お百度参りで藁人形を打ちつけていたのだ。
 お百度参りではなく、丑の刻参りではないか? という気がしてくるが、湯ノ花は森里同様にリアルでは現役受験生なのだ。だから、森里が受験戦争に打たれすぎになっているように、湯ノ花もまた打たれすぎなのである。まあ、打たれすぎの本当の理由に受験はないのだが。
 しかし、湯ノ花の藁人形は誰に対する呪いなのであろうか? ゴンゴンと音がする度に、片倉が『グハッ!』と悲鳴を上げているが、演技なのか本当に効いてしまっているのか、判断に苦しむところである。
 片倉がそんな状態なので、佐渡川も普通に着席するコトができた。なお、湯ノ花はお百度参りが終わるまで入室できないので、これで全員揃ったことになる。なーに、湯ノ花もあと、たったの99往復である。
「いてて‥‥と言いたいところだが、ハードボイルドは肉体的痛み程度では声を上げない。というわけで、早速最初の質問へと行こうか。まず、志望動機を‥‥」
「はい! はいっ!」
 片倉が言うやいなや、一斉に元気よく手を挙げる一同。順番に答えるのではなく、なぜか挙手で早い者勝ちである。
「じゃあ‥‥小峯くん、答えてくれたまえ」
「はい! 自分の能力を発揮し、さらに伸ばすコトが可能なのは御社しかないと考えました!」
 相変わらず偉そうなキャラの帯刀に、マニュアルキャラの小峯。なんの面白みもないので、帯刀がムチャブリを開始する。
「では、全体攻撃爆裂魔法が使えるということだね? 使えるとして、どんなメリットがあるのか?」
「いえ、残念ながら、今はまだ‥‥しかし、必ずお応えしてみせます!」
 相変わらずマニュアルどおりに、そつなく答える小峯。これには帯刀、激怒である。
「そんな答えは求めていない。佐渡川くん、見本を見せてあげたまえ‥‥えらい人とえろい人、どう違うのか?」
「あれ? 美人試験官の面接を、個室で受けるんじゃなかったのかっ!? なんだ、このおっちゃんとちみっ子はっ! チェンジだ! 交代を要求するー‥‥じゃない、要求しますわよ!」
 散々言いたい放題言った後、慌ててキャラを思い出し、最後だけ口調を戻す佐渡川。
「そうそう、こういう風に質問には答えずに、違う方向へ‥‥って、ちゃんと答えんか!」
 帯刀も思わずノッてしまうが、慌てて否定する。
「えー、えらい人は鉄パイプを振るう人ですが、えろい人は肉のパイプを振るうというか、むしろパイプをカットというか‥‥誰だ! 袋詰めのマッチ棒とか言うヤツはーッ!?」
「誰も言っておらん!」
 それまで黙って聞いていた片倉が一喝すると、それキッカケで照明が暗くなり、取調室セットが運び込まれてくる。
「おまえがやったんだろ!」
 佐渡川の顔に、電気スタンドを押し当てる片倉。面接官から刑事に早変わりである。
「痴漢にセクハラ、猥褻物陳列未遂‥‥容疑は挙がっているんだ!」
「まだしてませんよ! むしろ、これからするのです!」
 佐渡川のセリフキッカケで、また照明が明るくなる。その中を、佐渡川がMAKOTOへダイブしていく。
「え? 特技ですか? 拳で人間の鼻骨が砕けます!」
 聞かれてもいないコトに答え、MAKOTOが飛んでくる佐渡川に裏拳を決める。さらに、持っていたスイッチをポチっと押す。
 MAKOTOの席の前に穴が開き、そこへ佐渡川が落ちていく。MAKOTOが仕込んでいたのは、悪の秘密組織で誰かが消されるときに使われそうな仕組みであった。
 まあ、そういう場合は底も見えぬ垂直の穴を用意するのが普通だが、こちらは滑り台のように斜面になっていて、その先が階段に直通しているわけだが。
 というわけで、階段を転げ落ちていく佐渡川。途中、湯ノ花がすれ違うが、ひょいとあっさり避けられてしまい、見事に地獄まで一直線であった。
「まだだ、まだ終わらんよ‥‥ガクッ!」
 やり遂げた男の顔で、息絶える佐渡川。しかし、湯ノ花は青ざめていた。
「人に‥‥見られて‥‥しまいました‥‥また‥‥最初から‥‥やりなおし‥‥です‥‥」
 無論、佐渡川の容態を心配していたわけではない。丑の刻参りの心配のみである。
「大丈夫‥‥です‥‥見られて‥‥ません。息の根が‥‥止まっています‥‥から‥‥」
 物騒な確認をすると、再びお百度参りに復帰する湯ノ花。
 一方、面接会場では何事もなかったかのように面接が再開されていた。
「えー、森里くんとか言ったかな? 調べに挙がってるだけでも、出席日数不足、取得単位不足、自己認識能力欠如、短小、ヘタレ‥‥最近は、女子ともまともに会話したことがないというじゃないか?」
 一方的に片倉に攻め立てられる森里だったが、ここで引き下がる気はない。
「ちゃんと女子ともつき合っています‥‥ギャルゲーの中で。無事18を迎えましたし、18禁のエロゲも問題ありません! ムッツリなヨゴレ中年みてぇなハードコアとは違うのだよ!」
「ハードボイルドな! 英語力も欠如、と‥‥」
 さっくり採点していく片倉。いつの間にか佐渡川が戻ってくると、森里の肩をポンと叩く。
「面接に落ちてもいいじゃない。まだこっちの試験が待ってるよ‥‥ようこそ、ヨゴレ試験会場へ」
「そんな試験、受けたく‥‥うわぁ‥‥」
 抵抗する森里だったが、結局佐渡川と一緒に二人重なりあって、再び穴の中へ消えていった。
「‥‥えー、次はMAKOTOくんか」
「はい。あっ!」
 MAKOTOが、持っていた上着を床に落としてしまう。それを拾おうと前かがみになるが、ハードコアと言われた影響か、片倉まで前かがみになって、MAKOTOの胸を追ってしまう。
 ブチッ! しかし、ブラウスのボタンが胸に圧されて吹き飛び、片倉のエロ顔に直撃する。その反動で、後ろに吹っ飛ばずに前のめりに倒れ、穴の中へと落ちていく片倉。
 そして、階段を転げ落ちる片倉が最後に見たもの。
「ようこそ、ヨゴレの墓場へ!」
 そう言って手招きする、亡者のような佐渡川と森里の姿であったという。
 しかし、面接官はまだ帯刀がいるので問題ない。
「で、小峯くんだっけ? 我が社に敵はいないが、それでもいいのかね?」
 問題があるとしたら、マトモな質問が出なくなったコトくらいである。
「問題ありません。むしろ、僕が世界征服し、敵になってみせます!」
 そして、小峯もマトモではなくなっていた。
「うん、じゃあ飛び込んでおこうか」
 穴を指差す帯刀。小峯も躊躇なく飛び込む。そんな小峯が最後に見たもの。
「MAKOTOさんの空けた穴、略してMAKOTOの穴‥‥ハァハァ」
 それは、佐渡川が変な興奮をしている最悪のところであったという。
「えー、以上で面接を終わります。ありがとうございました」
 そして、帯刀がシメにかかる。最後のアピールと、桃音が大声を出して応える。
「ありがとうございましたっ!」
 しかし、お辞儀をした瞬間にコンタクトが落ちてしまう。
「目が、目がぁ〜」
 目を押さえながら、手探りでコンタクトを探す桃音。しかし、あったのは穴であった。
「あぁー‥‥」
 天空の城から落ちるように、消えていく桃音。佐渡川らの見苦しいものを見なくて済んだのが、唯一の救いか。
「ん? アレ?」
 唯一生き残ったMAKOTOがドアを開けようとするが、開かない。そう、湯ノ花が丑の刻参りを何度も往復するうちに、大量の五寸釘が打ち据えられすぎて、ドアが開かなくなってしまっていたのだ。
「どうしましょう‥‥?」
 面接官役が終わり、ただのチビっ子になってしまった帯刀が急に弱気になるが、MAKOTOがそれにニコっと笑ってみせる。
「僕の特技はなんだったかな?」
「あ、そうでした!」
 拳一つで、ドアを粉砕するMAKOTO。しかも、勢いあまって転落していくお約束も忘れない。
「えーと‥‥」
 こうして呆然とする帯刀だけが取り残され、番組も終了した。
 なお、カメラに映らないところで地道に往復を繰り返し、階段を一番使用した湯ノ花が優勝となり、賞金10万円をゲットした。