リフォームでランナーアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
牛山ひろかず
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
0.7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
12/21〜12/23
|
●本文
登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)
TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、すべての発端であった。
その後、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームをしたり、上司Bの愛車を改造してみたり、ディレクター宅でフットサルをしてみたり、上司Aの屋敷で三角ベースをしてみたり、再びディレクター宅にメチャクチャなリフォームをしてみたり、そのディレクター宅を海に沈めて人工漁礁としてみたり、新たなディレクター宅で全裸だるまさんがころんだをしてみたり、PSF連動でラグビーをしてみたり、上司Aの屋敷に雪を撒いて遊んだり。
そんなわけで、すでに10回もムダな破壊工作をしてきているのであった。
そして、11回目がはじまる──
上司Aがディレクターに近づいていく。ディレクターは逃げていく。
「なぜ逃げる!?」
「そりゃ、逃げるでしょ!」
前回上司A宅でやったので、今回はディレクター宅の番だと、ここ2ヶ月ほどずっとビクビクしていたのである。そこへ上司Aが向かってくるとあれば、逃げるのも無理からぬことだ。
「まあ、逃げようが逃げまいが、結果は同じわけだが‥‥自分がいないときに勝手に家を使われるのと、いるときに使われるの、どっちがいい?」
「どっちもイヤに決まってるじゃないですか!」
「そんなのは分かってるよ。で、秋のウインタースポーツから2ヶ月、冬といってもいい時期になったわけだが‥‥冬のスポーツといえば?」
「えーっと、スキーとかスノボとか言うとヒドい目に遭うから‥‥体育の授業の長距離走とかっスかね?」
「よし、それで行こうか」
「行くって‥‥何を? いや、大体分かりますけども‥‥」
「走るんだよ、お前ん家の中だけを、延々とな」
「地味ですけど‥‥って、地味に終わる番組じゃないんだよなぁ‥‥」
最後には、結局頭を抱えるだけのディレクター。唯一の救いは、いつ来るか分からないものに怯える必要がなくなったということだけであろうか。
こうして、ディレクター宅をただ走り回るだけという、一見地味な企画がスタートすることとなった。
企画内容:
8名までの精鋭が、各自思い思いに家の中を走り回ります。車やバイクを使わず、自力で走ってください。
走りつづけてさえいれば、その間に何をしようと勝手であります。
給水地点等は、現地で勝手に用意してください。
何か道具が必要であれば、番組で用意されます。無論、持ち込みも可能です。
走った距離、タイムを競うものではありません。ディレクターの殺意を一番向けられるような走りをするほど、勝ちに近づきます。最終的には、上司Aが画的なおもしろさを加味して優勝者を決定します。
優勝者には、賞金10万円とディレクターの殺意が授与されます。
それ以外のルールは、上司Aが適宜ルールブックとなります。
ケガ、病気は自己責任で(治療費は出ません)。
過去の放送スケジュール(最近5回分):
・リフォームで新築が廃墟 7月5日 07:00〜
・リフォームで新築が水没 7月17日 09:30〜
・リフォームでトイレ使用 8月10日 07:00〜
・【PSF】リフォーム闘球 9月17日 07:00〜
・リフォームでウィンター 10月17日 07:00〜
●リプレイ本文
ディレクター宅の門の前では、6人の精鋭がスタートの刻を今か今かと待ち構えている。ん? 2人足りない?
一人は湯ノ花ゆくる(fa0640)。スターターとして立っていたからだ。やたらとゴツい拳銃を持っているのが、不安をかき立てる。見る獣人が見れば、どうやら本物のSSXスレッジハンマーであると分かるが、とりあえずここはスルーである。
残る一人はパイロ・シルヴァン(fa1772)。こちらはすでに、走りはじめてしまっている。タンクトップ、短パン、ランニングシューズのショタ3点セットで挑む彼は、大勢の人に追い回されていた。
といっても、追い回す側がショタなお姉さま方というわけではない。単に周辺住民の方々である。
というのも、イギリスの女王のわがままで42.195kmになったのなら、こちらもディレクターのわがままで42.195km分の土地を確保せねばということで、パイロは周辺の土地の買いに走ったのだ。
しかし買収がうまくいかずに立ち退いてもらえず、パイロが強行に地上げ行為に走ってしまったため‥‥こうして、恨まれて追われているというわけである。
そんな大変微笑ましいのどかな空気の中、ついにスタートの刻がやって来た。
なお、選手紹介も兼ねて、時差式でスタートを切る。距離や時間を競うものではないので、順番はまったく関係ない。まあ、コース内に色々と仕かけるなら、早い方が有利なのかもしれないが。
ドゴーン! 号砲一発、リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)がスタートを切る。
スレッジハンマーを天高く撃った反動で、獣化してない湯ノ花が地面に叩きつけられていたが、すでにカメラは最初のランナーであるリーゼロッテを追っているので問題はない。
だが、リーゼロッテは玄関のところで立ち止まると、それ以上中に入っていこうとはしない。そう、彼女は突撃リポーター。家に突撃するよりも、人に突撃しなくては意味がないと、ちゃんと突撃リポーターの本分を分かっているのだ。無論、違った意味で家に突撃する気は満々であるが、それは後回しである。
『‥‥さぁ、今回もやってまいりましたディレクターの家。正直リフォームするたびに壊されるんだから、いっそそのまま壊れた状態のままにして住めば良いのにとも思ってしまいます。ひょっとしたら、壊して欲しいからわざわざリフォームしている。そんな感じさえしてまいります‥‥ディレクターはマゾなのでしょうか』
リーゼロッテが勝手な紹介をして、次のランナーが来るまでの時間を埋めている。
ドゴーン! つづいて、あずさ&お兄さん(fa2132)が走り出す。相変わらずどう考えてもスターターの空砲ではないが、バラエティとはそういうものだと流される。
「ディレクターさーん! 家の破壊を阻止するため、先回りして家中トラップだらけにしておくよー!」
『さあ、最初のランナーであるあずささんがやって来ました。それでは、一緒に行ってリポートしてみたいと思います!』
あずさと一緒に、家の中に入っていくリーゼロッテ。玄関のドアが閉められた瞬間、なにやらトンカン音が聞こえてくる。
『ほうほう、そう来ますか。では、私も‥‥』
あずさが何をしているかはリーゼロッテの音声からしか伝わってこないが、確実にディレクターにとってよくないことが起きているようである。
ドゴーン! そんな間にも、次の竜華(fa1294)がスタートを切る‥‥いや、切らない。
「ハォ! この時期なら、サンタ服よね〜」
そんなコトを言うと、突然その場でセパレートタイプのミニスカサンタ服に生着替えをはじめてしまう竜華。最初から着替えて挑めばいいのに、そうせずにディレクターの目を釘づけにさせる。
いや、ディレクターだけではない。パイロを追っていた住民の方々も、男性陣だけは走るのをやめて鑑賞に夢中である。
カメラ位置が動かないので、湯ノ花の銃のフォローに『オモチャの銃です。大人のオモチャを演出するため、派手な音とリアクションになっています』のスーパーが入るが、本当の大人は竜華でそれどころではない。
「じゃ、行ってくるね!」
しかし夢のような一時は終わり、走り出す竜華。
ガシャーン! 次の瞬間、竜華は玄関ではなく窓ガラスを突き破って入っていった。
「だって、サンタだし!」
意味不明なその言葉を最後に、あずさとは別のトンカンという不吉な音が聞こえてくる。
ドゴーン! そして、ミゲール・イグレシアス(fa2671)もスタートを切る‥‥いや、やっぱり切らない。
「むぁいどー! はっはっはー。メリィ、クリィスマース‥‥巻き舌やでー!」
マッチョな大男のサンタコス。しかも、リアル志向のクマの着ぐるみという名の獣化の上からである。
それだけで観衆のテンションはガタ落ちなのに、竜華にライバル心を燃やしたミゲールが生着替えをはじめてしまう。しかも、一旦脱いでから、またその服を着なおすという意味のない暴挙!
周辺住民の男性陣は、再びパイロを追いはじめる。無論、入れ替わり女性陣が集まってくることもない。
「はっはっはー、みんなテレ屋さんやねー。ほーら、ディレクターさんはよく見るんやでー!」
逃げ場のないディレクターの目の前で、延々とポージングを繰り返すミゲール。
「どうや? このファニーさはどうや?」
ドゴーン! 本来は白海龍(fa4120)への号砲だったのだが、それキッカケで走り出してしまうミゲール。
ようやくディレクターは解放されたと思いきや、一難去ってまた一難。白海龍登場である。とはいえ、こちらは着替えたりはしない。
ただ、最初からマッチョ系力士バディに女子体操服なだけである。カメラの向こうから『なぜ湯ノ花は水平発射をしないのだ!』という声が聞こえてきそうな勢いである。
そして、ミゲール同様白海龍もディレクターに見せつけてくる。しかも鬱陶しいことに、白海龍は若干テレて頬を染めるというなりきり度である。
「このゼッケン、どうデスかー? そそるヨネー!?」
そう言って見せるゼッケンの前には『はっかい』、後ろには『脱がしちゃイヤ』と丸文字にハートマークつきで書いてあり、コメント不能である。
ドゴーン! 本来は七枷伏姫(fa2830)への号砲であるが、それでも前の白海龍が走り出さない。
シュパッ! 突然、ゼッケンがハラリと斬り落とされる。現れたのは、前二人とはキケンの方向性の違う、ポン刀を持った七枷であった。
「イヤ〜ン!」
ゼッケンのみを切られたにも関わらず、服をビリビリにされたかのような悲鳴を上げて家に逃げ込む白海龍。
「またツマランものを斬ってしまった‥‥」
これで銃刀法の銃と刀の両方が勢ぞろいであるが、『私有地なので、シートベルトはしていません』という関係のないスーパーを入れて、必死にごまかすスタッフ。
そんな裏方の苦労など知ったことかと、スタスタと家の中に入っていこうとする七枷。
「ああ、そういえば聞き忘れていたでござる」
しかし急に立ち止まると、振り返りもせずにディレクターに問いかける。
「走り回るのは構わんが、別に斬ってしまっても構わんでござろう?」
疑問形でありながら、答えを聞く気はまるでなく、今度こそそのままスタスタと家の中に入っていってしまう七枷。
ドゴーン! そして、最後の号砲である。散々家の周りを逃げ惑っていたパイロが、ようやく家の中へと突入していく。
「逃げたぞ! 追え!」
もちろん、周辺住民のみなさんも、ディレクター宅だろうと突入していくのは言うまでもない。
「わーっ!」
しかし、すぐに玄関から悲鳴が上がる。ようやくカメラが入ると、壁には『裏射責髏手参上!』とスプレーで書き殴ってあった。そして、床にはあずさの仕かけた玄関マット風落とし穴に、パイロを除く全員がハマってしまっていた。
「ディレクターさーん! 家の破壊を阻止しましたよー!」
あずさが喜んでディレクターに手を振っている。これにより、ディレクター近所づきあいが相当悪化したという。
一方、なんとか全員分を撃ち終えた湯ノ花は、ルーズショルダー気味の肩をメロンパンでアイシングしていた。
そして、家の中のランナーたちはといえば、ゴールなきマラソンゆえに思い思いの場所を走っていた。
「悪い子はいねぇがぁ? 袋に詰めちゃうデー?」
『ミゲールさん、これはナマハゲですね?』
「どっからどう見ても、サンタさんやないか!」
いつの間に着替えたのか、ナマハゲサンタになっていたミゲールに、インタビューを試みるリーゼロッテ。
しかし、ミゲールはナマハゲでもサンタでもなかった。
「ちっ、しけてやがるのう!」
金目のモノを、端から袋の中に放り込んでいるミゲール。そう、ただの火事場泥棒である。一応、ADへのプレゼント集めという名目はあったものの。
チュドーン! バチが当たったのか、突然袋が爆発する。
『こ、これは一体‥‥!?』
「こんなこともあろうかと、壊れやすそうなもの、高価そうなものに、火薬を仕込んでおいたんだよ! 壺とか花瓶とかパソコンとかね!」
そこへ、あずさが現れて解説する。しかし、全部木っ端微塵になってしまったのは言うまでもない。
「ほう、ナマハゲの丸焼きとな! 試し斬りにもってこいでござる!」
そこへ七枷もやってくると、日本刀を抜き放ってミゲールに飛びかかろうとする。さすがに、あずさとリーゼロッテが止めに入る。
「逃げてー!」
しかし、ダメージが大きくてミゲールは動けない。
そんなころ、白海龍は地道にドスドスと走っていた。
「大和撫子の伝統芸、ブリッコ走りというモノだそうデスヨ?」
そう言って内股に走る白海龍は、単に股ずれしたオッサンにしか見えない。だが、中身は恋する乙女なので、寝転がっているミゲール先輩を発見し大興奮である。
しかし、そのまま駆け寄ることもできない内気な白海龍は、柱の影に隠れて様子を見守る。
「きゃっ! 先輩がアブナイデース!」
どうやらそのミゲール先輩が七枷に斬られかかっていると知ると、勇気を振り絞って飛び出す‥‥ことはできず、その場でおまじないに柱に鉄砲をはじめ、ミゲールの無事を祈り出す白海龍。
「ん、地震でござるか? しかし、真のサムライたるもの、いかなる足場でも力を発揮できねば‥‥」
それでも止めようとはしない七枷。ついに、白海龍が柱を吹き飛ばしてしまう。
「むむ、素手で柱を吹き飛ばすとな? 拙者も負けてられんでござる!」
変なライバル心を出し、ミゲールのコトなど忘れて柱や壁を斬りつけはじめる七枷。これであずさとリーゼロッテもホッと一息である。
『ふぅ‥‥おかげで、ノドがカラカラだよ』
「そんなコトもあろうかと、私が走る給水所になってたんだよ!」
『あ、本当ですね』
頭に蛇口を装着したあずさに、今ごろになって気づく敏腕リポーターのリーゼロッテ。思わず蛇口をひねると、炭酸を抜いたコーラが出てくる。
「まだまだだよ! ほら、パイロくんも食べなよ!」
つづいて、タッパーに詰め込まれてあったおじやなど、偏ったアスリート像による栄養補給食品満載で垂れ流しである。
「うへー、なんて罰ゲーム‥‥いやいや、おいしそうですね!」
ちょうど通りかかってしまったパイロが、ムリヤリ引きずりこまれていく。ミゲールの丸焼きを足踏みしながらの、立食パーティー状態である。
が、そんな一時が長くつづくハズもなかった。目の前では、白海龍と七枷が暴れまわっているのである。早くも、家が崩れはじめていた。
「わー、逃げろー!」
しかし、まったく無事な一角があった。そこには『封印の間』と書かれた部屋が、いつの間にか出来上がっていた。
中は、高級クラブという様相だった。今度はサンタバニーとなった竜華と、メロンパンバニーとなった湯ノ花に挟まれ、ディレクターが大変ご満悦であった。
ディレクターがシガーをかざすと、竜華が胸の谷間からライターを取り出し、火をつけている。おかげで、周囲がどうなっているかまったく気にもしようとしないディレクター。
「ディレクター‥‥さん‥‥メロンパン‥‥ドリル‥‥頼んでも‥‥いいですか?」
「おう、ガンガン注文しちゃってー」
すっかり調子に乗っているディレクター。と、メロンパンで作られたドリルアームが運び込まれてくる。
運んできたのは、ディレクターの奥さんである。そして、湯ノ花の隣に座る。
「私もいただいて、いいかしら?」
「おう、飲んじゃえ、飲んじゃえ」
「えー?」
ディレクターに胸を押し当てていた竜華も、その様子に呆然である。
平然と飲みはじめる奥さん。やはりどこかおかしくないと、毎回マイホームを壊される番組プロデューサーの妻など、やってられないのである。
そんな間にも、家は今にも崩れ落ちそうである。白海龍と七枷は暴れるのに忙しかったが、パイロ、あずさにリーゼロッテがミゲールを担いで飛び出してくる。
『今、我々の目の前で‥‥崩落しました!』
リーゼロッテが言うまでもなく、家は跡形もなく崩れ落ちた。
「家は崩れても、家族の絆は崩れないのね‥‥」
砂煙の中、竜華がいいコトを言ってシメ、番組は終わるのであった。なお、その名言により、竜華に賞金10万円が贈られた。