プロレスごっこ新春SPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/01〜01/03

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへ、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「一年の計は元旦にあり! というわけで、元日の朝っぱらからプロレスごっこを垂れ流すのは、もはや必然!」
 クリスマスのときも必然とか言われた気のするスタッフだったが、えらい人にかかっては365日いつでも必然なので、もはや反論しようともしない。
「というわけで、がんばって年末に収録すればいいじゃない! ああ、えらい人はえらいので、早めの仕事納めになるのは言うまでもない!」
 そうとだけ言い残し、さっさと帰宅してしまうえらい人。
「サー、イエッサー!」
 しかし、えらい人の背中を見送りながら、スタッフ一同快諾である。
 といっても、別に打たれすぎなわけではない。単に、えらい人がいないところで仕事ができるのがうれしいだけである。
「いやー、久々に伸び伸びとできそうだな‥‥」
「まったくだ‥‥」
 スタッフ間でそんな会話が交わされるが、別に出場者はいつもどおりやるだけで関係のない話ではある。
 こうして、特に何が変わるというところもなく、プロレスごっこ王の2007年一発目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・新年とか正月といった、『1月1日』から連想されるテーマで試合をしなくてはなりません。連想できないこともないテーマであれば、どんなに遠くても構いません。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第26回 12月04日 07:00〜
・第27回 12月07日 07:00〜
・第28回 12月11日 07:30〜
・第29回 12月19日 07:00〜
・XmasSP 12月25日 07:00〜

●今回の参加者

 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「あけましておめでとうございます!」
 いきなり放送席に乱入したパトリシア(fa3800)が、サトル・エンフィールド(fa2824)のマイクを奪っての挨拶からはじまる、本年一発目のプロレスごっこ。
 しかし、パトリシアはそれだけで何もかもやり遂げたのか、そのまま初夢を見にかかる。すなわち、ヨシュア・ルーン(fa3577)の膝枕で寝てしまったのである。収録開始時は初夢以前に除夜の鐘前だとかいうことは、気にしてはいけない。
「サトルくん、どうしよう‥‥」
『くっ、うらやましいヤツめ! だが、このサトル・エンフィールド、それしきのことでは膨張させたりはしないッ! ということで、動くな! 息するな! 実況も解説もするなッ!』
 よく分からない放送席の状況はさておき、一方のリング上には今回の出場者一同が勢ぞろいしていた。
 まずは片側に女性陣、竜華(fa1294)と草壁蛍(fa3072)が何やらガウンを着て立っている。一体ガウンの下はどうなっているのか? 披露のときはいつなのか? そちらにばかり頭が行ってしまって、草壁が血塗れのホッケーマスクをしていることなど、まるで気にならない。
 もう片側には男性陣、ミゲール・イグレシアス(fa2671)と犬神一子(fa4044)がマッチョフェロモンムンムンの和服姿で立っていた。和服は和服でも、犬神などフンドシ一丁だったが、まあ正月だしねということでスルーである。
 そして、中央には両翼を従える形であずさ&お兄さん(fa2132)が鎮座している。
『隊長より、新年一発目の挨拶です!』
「そうそう、おいしいとこだけもってき隊の隊長としては、年始のご挨拶という好機を逃すわけには‥‥って、この隊まだあったんだ? 違うよ、えらい人のいぬ間のプロレスごっこ一座の座長だってば!」
 羽織袴のお兄さんを抱えた、桜色の着物に日本髪のヅラをつけたあずさが、鋭くサトルにツッコミを入れる。
『違いはどうでもいいような気もしますが‥‥座長の挨拶です!』
「テレビの前のみなさん、あけましておめでとうございます! 今年もプロレスごっこ、ならびにTOMITVの各番組を、どうぞよろしくお願い申し上げます!」
 三つ指ついての挨拶を決めたかに見えたあずさだったが、なにやらプンプン怒っている。
「もう! 『お願い〜』からみんなで一斉に声をそろえて、ちゃんと頭を下げるように言ったじゃん! こうなったら、修正してやるッ! 今、スターリン体制下並みの粛清の嵐が‥‥」
 そんなあずさをドーンと仁王立ちして見下ろしていたのが、フンドシ一丁の犬神である。ウォーミングアップ十分で、バンプアップした肉体からは湯気すら立ち上っている。
「正月といえば日本の心、フンドシ! 今年一年を乗り切るためにも、フンドシを締めなおしておかねばな‥‥何? フンドシを締めてないだとッ!?」
 このままの勢いだとフンドシをつけさせられかねないので、先程までの勢いはどこへやら、あずさがそそくさと避難していく。もちろん、逃げる先はサトルの膝枕の上である。変にヨシュア&パトリシアにライバル心を燃やしているのである。
「今年もよろしくねっ、サトルくん☆」
『‥‥動物は危険が迫ったりケガしたりすると、副腎髄質という内臓器からアドレナリンという物質を分泌、体を緊張させるッ! だがしかし‥‥このサトル・エンフィールドの緊張は‥‥』
 ヨシュアにつづき、サトルの実況がままならなくなってきたところで、リング上ではすでにミゲールが犬神の餌食になっていた。
「ふむふむ、餅つきは紋付袴姿やなくて、半裸でフンドシなんやね?」
「そのとおりッ!」
 餅つきセットと、フンドシのマッチョが二人。気づけば、犬神も餅をこねる気満々である。
「むうりゃー!」
「そりゃー!」
「ねいりゃー!」
 マッチョな汗が飛び散るフェロモン系餅つきがはじまってしまった。もちろん、男性スタッフ一同、年またぎでそんな映像を撮りたいわけではないので、サクっと映像が花道に切り替わる。
 すると、そこへガウンを脱ぎ捨てた竜華が入ってくる。
「ハォ! 日本の正月といえば、ポロリよね‥‥じゃなかった、ドキッ水着だらけの運動会よね!」
 つい本音で目的と手段が逆転しかけたが、とにかくビキニ姿で現れる竜華。
 たわわな胸はさておき、問題は下である。処理が大変とかいうレベルではなく、全面剃らないとどうにもならないレベルのローライズリオボトムのビキニである。発注の段階ではただのリオボトムだったのだが、えらい人が帰り際にローライズと加えておいたらしい。
 そして、温水の張られた子ども用ゴムプールが運び込まれてくる。と、突然ポップでキュートな音楽が流れてくる。ムチャの国のプリンセスのテーマだ。
 桜梅を着崩した草壁が、相変わらずホッケーマスクをしたままチェーンソーを振り回して入ってくる。そして、その桜梅こそガウンだとばかりに放り投げると、竜華に負けず劣らずのバディが披露される。
 竜華が水着なら、草壁は下着だ。それも、革製のセクシー下着姿である。竜華同様、えらい人が置き土産とばかりに、勝手な発注をかけておいてくれたのだ。
「みんな〜、あけましておめでと〜☆ 今年もたくさんのムチャ力を集めて、今年こそ光り輝くクイーンに還り咲いて見せるから♪」
 だが、すでに草壁は返り咲いていた。プリンセスとしては大胆すぎる衣装ゆえ、女王様にレベルアップを果たしていたのだ。
「え? クイーンじゃなくて、女王様? え? このムチを持て?」
 いつしかホッケーマスクが羽仮面になっていたが、むしろ不思議な力が湧いてくるようだった。
「よく分からないけど‥‥お正月のムチャ力を回収すべく、書き初め行っくぞ〜♪」
 キャラはプリンセスのままで、竜華のプールに墨汁をドバドバと注ぎはじめてしまう草壁。
「なるほど‥‥黒く染まりながら、くんずほぐれつというわけね!」
 勝手な解釈をする竜華だが、草壁は書初めがしたいだけである。まあ、行き着く先は竜華の解釈で間違ってはいないが。それがムチャ流ゆえ。
 だが、さらに音楽が変わる。フンドシにされるくらいなら、先に着替えてしまえのあずさが、いつの間にかサトルを解放しての登場である。
 前の二人と異なり、おとなしくワンピースの水着で登場のあずさである。若干モリマン気味なのは、乙女の秘密なので気にしてはいけない。
『‥‥やれやれ。あやうく子どもの千年王国に旅立ち、中二病になってしまうところでしたが‥‥前回ランキング2位の僕を止めることはできませんでした‥‥ん?』
「ごるごんぞーら、ぞーら、ぞーら‥‥」
 立ち直ったサトルに、意味不明ソングで割って入ってくるヨシュア。
『もう不可思議のテーマは終わったんだよ、ヨシュアくん‥‥キミの中の時計は、止まってしまったままなんだね‥‥』
「もっつあられーら、れーら、れーら‥‥」
 だが、サトルの哀れみもものともせず、ナゾに実況妨害に走るヨシュア。サトルが腕力にものを言わせて止めようにも、パトリシアに余波が及びそうでできないでいる。
「ヨーロッパならバカウケ間違いなし! それがッ! このッ! チーズの歌ッ!!」
『‥‥打つまでもなく、打たれすぎだったんだね。かわいそうに、ううっ‥‥』
「僕はおそろしいんだ、サトルくんッ! 何がおそろしいって、打たれすぎが快感に変わっているんだよッ!」
 サトルの哀れみに、しっかりノッてしまうヨシュア。
『せめて‥‥せめて、いい夢見ろよ! おっと、しかし視聴者の方々には今年最初の悪夢を見てもらわねばなりません!』
 再び、映像が同じくリング上の餅つき大会の方にズームされる。相変わらず、ミゲールと犬神が餅に劣らぬ湯気を立てながら、高速餅つきを展開していた。
「おおっと!」
 だが、急に不自然なまでによろけるミゲール。よろけた先では、水泳大会が行われている。
「きゃっ!」
 杵についた餅が、竜華の胸に当たる。そして、杵はそのままブラを引っぺがしていく。そう、宣言どおりのポロリである。
「ふっ‥‥餅つきの真の狙いがポロリやハラリだったとは、お釈迦様でも気がつくめえ!」
 ミゲールが手にしていたのは餅どころではなく、きっちり粘着にかえられていたのだ!
「落とし玉バスター!」
 だが流れ上、次は竜華の反撃の番である。それが、この落とし玉バスター。キン肉バスターとかブレーンバスターとかいったプロレスのワザとは一切関係なく、プロレスごっこらしく名前まんまの玉砕きである。それも、にこやかに。
「〜ッ!?」
 声なき叫びを上げ、ミゲールが悶絶する。
「ふふ‥‥天国という味付けの地獄行きフルコースを堪能してね☆」
 そのまま、身体を密着させるワザへと移行する竜華。これにて昇天間違いなしのミゲールである。
 そんな状況に、すでにあずさは再びサトルの横に避難してしまっている。が、草壁は逃げる様子はまるでない。
「‥‥なーるほど☆ そーゆー大会だったのね!」
 竜華とミゲールのやりとりを見ていた草壁が、確実に勘違いであろう大会趣旨に気づく。
「書初めじゃなくて、ムチを打ち初めだったなんて‥‥だから、半裸のマッチョが用意されていたわけね!」
 犬神ににじり寄る草壁。ミゲール倒れし今、犬神は後ずさりするのみである。
「違う、違うんだ。ただフンドシのよさを分かってもらおうと‥‥ええい、御免!」
 草壁にフンドシを着ける犬神。さすがに下着を脱がせてからでは放送できなくなるので、下着の上からである。もっとも、逆に露出度が落ちるので、スタッフ一同大ブーイングであるが。
「‥‥? ああ、ひめはじめってコトね!」
「え? それはマズいぞ! 放送できなくなるぞ! いや、拒む気はないが‥‥」
「漢字で書くなら、飛馬はじめ‥‥それは、乗馬初めの日。何がいけないのかしら、ね?」
「くっ、そう来たか!」
 気づけば、草壁のムチが競馬用のとっても痛いムチに取り替えられている。
「ヒヒーン!」
「もっといい声でいななきなさい!」
 その様子を鑑賞しながら、すでにやり遂げた竜華は、真っ黒なプールにつかりながらトロピカルジュースを飲んでいた。ミゲールをグラスを置くテーブルにして。
 こうして、別に紅白で競い合っているわけでもなんでもないのだが、紅組の圧勝で今年の幕は上がるのであった。