新プロレスごっこ前夜祭アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/29〜01/31
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへ、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「初代プロレスごっこ王は決まったが、二代目をなんと呼ぶか‥‥それが問題だと思わないかね?」
何を言い出したかと思えば、二代目プロレスごっこ王の呼び名をどうするかである。別に『(二代目)プロレスごっこ王』でいいんじゃないかという話であるが、えらい人はそれで納得できるような器ではない。
「初代プロレスごっこ王も、もはや昨年のこと。今年は今年のプロレスごっこの風が吹くのだよ! だから、鉄パイプも持っていないだろう?」
「サー、イエッサー!」
その代わりに、節分にもまだ早いのに金棒を持っているじゃないかとツッコミたいのを必死に耐え、問答無用で力強く肯定の返事をするスタッフ一同。
下手にツッコミを入れたところで、ワケの分からないコトを聞かされつづけるのみなのは、火を見るよりも明らかである。そして、その金棒が使われてしまうことも。ならば、どうせやるしかないのだから、ダメージのないうちに黙って従うのみである。
「そうか、諸君らの意見はよく分かった。なので、今度は出場選手の意見を聞くべきだな!」
何をどう分かったのかさっぱり不明ながら、うんうん勝手にうなずくえらい人。
こうして、今度のプロレスごっこ王の呼び方をどうするかを決める、討論番組が収録される運びとなった。
注意:
・今回のプロレスごっこは、新シリーズのチャンピオンの称号(職業)をどうするか決める討論番組です。
・そのわりには、討論はリングの上でやるのですが。
・なお、称号(職業)は8文字以内でなければなりません。
・採用された方には、えらい人の気分次第でボーナスポイントが与えられるかもしれません。
・プロレスごっこは安全第一です。討論なのに死亡、怪我、流血といった事態は、なるべく避けましょう。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第27回 12月07日 07:00〜
・第28回 12月11日 07:30〜
・第29回 12月19日 07:00〜
・XmasSP 12月25日 07:00〜
・新春SP 01月01日 07:00〜
●リプレイ本文
『前夜祭といっても朝にやる、それがプロレスごっこ魂です。そういうわけで、新しい称号はどのようなものになるのでしょうか?』
普通にプロレスごっこの試合がはじまるかのように、サトル・エンフィールド(fa2824)の実況ではじまる本日の討論会。
「個人的には『TOMITVの朝の帝王』なんか、飾り窓の女っぽくていいと思ってます!」
そこへ、サトルの横に座る解説のヨシュア・ルーン(fa3577)が口を挟んでくる。
『‥‥僕の案では『プロレスごっこ神』や『僕らの勇者王』といったものが候補に挙がっています。きっと、それに相応しい人がそれに相応しい称号を得るのでしょう!』
解説っぽく自らの案を披露するヨシュアだったが、サトルは慈母もかくやという微笑でスルーし、自分の案を挙げる傍若無人ぷり。放送席におけるサトルは、スタッフミーティングにおけるえらい人と大差ない存在なのだ。
「サトルくん、ヒドいよ! 僕、小学六年生だからわかんなーい、ってつづけるところだったのに! でも、このくらいじゃ、へこたれませんよー。なんたって、しょせん対岸の火事ですからね!」
自分に変な称号がつかないと思って、大変大らかな心の持ち主になってしまっているヨシュア。放送席は、火の粉のかからない絶好のやじ馬スポット、それも砂被りという最高のスポットという認識である。
『リングサイドでは、なぜか高白百合(fa2431)選手が倒れていますが‥‥カメラはムダにスリットの深い烏丸りん(fa0829)さんに釘付けです!』
リングサイドでは高白が前のめりに倒れていて、ご丁寧に指先にはダイイングメッセージまで書かれていたのだが、そんなものは一切無視してリング上に注視である。
なぜなら、ラウンドガールとして登場した烏丸の格好が、わきの下あたりまで切れ込みが入り、さらには胸の谷間を見せるように穴の開いた魔改造チャイナドレスであったからだ。
烏丸は用意された衣装を拒めない体質についさっきなったところなので、超ミニスカナース服やら白いスクール水着やらが並べられた中から、一番手近にあったのを選んだだけのことである。
一応、烏丸は『超プロレス王9世』と書かれた意味不明のプラカードを掲げてリングを回り、さりげなく自分の案をアピールしていたのだが、己の持つ美肌のせいでそちらにはまったく注目が行っていない。
とそこへ、なぜか鬼のお面をかぶった古河甚五郎(fa3135)が走り込んでくる。
「ああ! 寝ぼうしてしまいました、ガムテで!」
プロレスごっこにおいてかぶるモノといったら別のモノだろうという説もあるが、寝ぼうならしょうがない。
だが、どうやったらガムテープで寝ぼうできるのか? 素人にはさっぱり分からないが、ガムテープで自分の身体をグルグル巻きにしてからでないと寝付けないとか、そういうディープな事情があるのかもしれないので、プライバシー保護の観点よりスルーである。
「すでにはじまっているのですね、新たな惨劇が! 初期メンテにはもう間に合いませんから、ひたすら補強工事を行うのみです、ガムテで!」
いきなりリングをガムテで補強していく古河。そのわりには、ガムテープで『プロレスごっこ王』と文字を作ってみたり、本当に補強しているのか疑わしくなってくる。
「はっ! えらい人が金棒を振るうということは、えろい人は金の棒ではなく金の玉を振るうということです。なるほど! そうだったのですね‥‥」
勝手に何かに気づいた古河が、『王』の字に何かを加えるべく、ガムテを一切れ貼ろうと振りかぶる。
「これは新たな称号への布石だったのです。新称号にして、プロレスごっこ王の続編に相応しい称号‥‥それは『プロレスごっこ玉』です‥‥あっ!」
だが、ついつい力みすぎてしまったか、手が滑って貼る場所がずれ、『王』が『生』になってしまう。
「はっ! いや、そうだったのですね。むしろ玉から中出‥‥って、朝っぱらからそんなコトはさせません!」
古河の妄想は尽きることを知らず、勝手に話をあさっての方向へと進めていく。
「そう、朝も早よからヌルヌルではいけません! というわけで、このガムテの粘着成分を混ぜたローションを‥‥あっ!」
力説のあまり、ローションの入った瓶を握り締めてしまう古河。おかげで、必要以上にドロリとした液体が、烏丸のチャイナドレスにかかってしまう。
「透明ではなく、白濁色にしておくんでした‥‥ではなく、早く着替えなければいけません、ガムテで!」
ボカッ! なおもヒートアップする古河に、烏丸がツッコミを入れる。いくら用意された服をなんでも着る体質とはいえ、ガムテはさすがに服ではない。
瀕死の古河が高白とは反対側のリングサイドに放り投げられる。古河は最後の力を振り絞り、ガムテでダイイングメッセージを記そうとした。だが、文字を完成させることができず、『プロレスごっこ工』の段階で力尽きてしまった。
一方、リング上には烏丸の替えの衣装が運び込まれてきた。そう、ナース服やらスク水やらである。
「なんでも着こなしてみましょう! でも、スクール水着だけは勘弁ねっ。勘弁なんだからねっ!」
と言いつつも、分かりやすいリアクション芸で白いスク水に手を伸ばす烏丸。そして、プロレスごっこ生だけに生着替えかと思いきや、控え室に戻っていってしまう。
入れ替わる形で、今度はモヒカン(fa2944)が食パンをくわえて走り込んでくる。
「寝坊してしまったのである!」
よっぽど急いで走ったせいか、自分の汗の臭いが気になってしまうモヒカン。ついつい、自分の身体を臭ってしまう。
「‥‥くっ、臭う! これが新年早々50になってしまった男の末路なのか? だが、加齢臭を気にしている時間がなかったのだ。ムム‥‥ならば『臭う!』でどうだ? プロレスごっこ王の第二弾で、2王と臭うをかけているのであるな!」
『僕には、血生臭いコトの方が耐えられません。というわけで、この難事件を解決しなくてはなりません!』
だが、放送席の二人はモヒカン渾身の案を聞いておらず、リングサイドの高白のところへ来ていた。
「サトルく‥‥いや、ボス! 迷宮入りです!」
『なんだって!? どうしてだ?』
刑事コントをはじめてしまうヨシュアとサトル。その隙に、モヒカンがさりげなく消臭スプレーを振りかけている。
「ボス、これを見てください!」
ダイイングメッセージの『えろい人』は一切無視し、ヨシュアが堂々と高白のスカートをめくり上げてしまう。パンツの鑑賞会、子どもにのみ許される特権をフル活用だ。
そして、それをカメラに収めるのは大人の特権である。というか、気づけばモヒカンも二人の後ろに立ってのぞき込んでいた。
『‥‥なるほど。これは確かに迷宮入りだ!』
三人ともうんうんうなずくが、彼らの視線がブレることはない。
ちなみに事件の真相は、高白が『ネーミング? ふっ、そんな分かり切ったことを聞くなんて、えろい人も落ちましたね! プロレスごっこの勝者にふさわしい称号は、プロレスごっこ王しかありません。まぁ、プロレスごっこ皇なんてもアリですけど』くらい言ってやろうと意気込んで出かけたはいいものの、えらい人はいてもえろい人はいないので、見つからないまま遭難してしまったというわけだ。
しかし、迷宮入り確定なので、それが明かされることはない。そして、サトルにヨシュア、モヒカンも高白のパンツという迷宮に入り込んでしまったので、当分脱出できそうにない。
ちょうどそんなところへ、着替えの終わった烏丸が戻ってくる。きっちり、白スク水を着て。
そして、その烏丸に従うものが。屈強な男どもに担がれた、水槽の神輿である。当然、奉られているのは、自称おいしいとこだけ持ってき隊副長助勤代理補佐見習いにして水槽王、ブルース・ガロン(fa2123)だ。
「俺、いつまでこんなコトをつづけていくんだろう‥‥?」
だが、なぜか体育座りのブルースはたそがれていた。
「フハハハ! 我こそはおいしいとこだけ持ってき隊平隊士預かり(以下略)のブルース・ガロンだ!」
だが、カメラを向けられた途端、蘇生するブルース。躁と鬱の差が中々に激しい。肩書きがさらに長くなっていてバッサリカットされるも、もはや気にしない。
「ん〜‥‥King of Professional WrestlingGOKKOなんてどうか? なに、Kingでは不満か。ならば、King of Kings and Lord of Lords The Professional WrestlingGOKKOでどうだ?」
リングインするやいなや、さっそく案を披露するブルースであったが、待っていたのは静寂のみが支配する世紀末覇王の世界であった。もちろん、救世主などいない。
「‥‥待て! 短いのがいいのか? なら、プ帝で!」
会話する相手など誰もいないのだが、編集でカットされそうな空気を感じ取ったブルースが慌てて短く言い直す。
だが、どうにもならなかった。烏丸が、淡々と『2R』と書かれたプラカードを掲げて、さらなるネタを要求している。
「‥‥分かった。お詫びに水槽芸を披露しよう」
パリーン! ブルースが水槽にぬるま湯を張りはじめたところ、いきなりガラス木っ端微塵に吹き飛ぶ。
別に、ガラスがぬるま湯に耐え切れなかったわけではない。阿野次のもじ(fa3092)参上で、飛び蹴りをかましていたからだ。
「ぬるーい、ぬるすぎるわ!」
「やっぱり、熱湯じゃないとダメなのか?」
バコーン! 不用意なコトを言ってしまったブルースが、阿野次にリング下へ蹴り落とされ、古河の横で死体の仲間入りをする。もっとも、ブルースの方にはダイイングメッセージを書く余裕はなかったが。
「‥‥言い方が悪かったわ。アマーい、認識がアマすぎる! 昨今の衛生管理くらいアマいわ、みんな!」
そんな阿野次は、なぜか白衣にメガネというベタな博士スタイルである。もっとも、阿野次がやるとマッドな女サイエンティストにしかならないが。しかも、マッドの方向性の違う。
「名前や体面? ううん、違う。重要なのは中身? ううん、それも違う。そう、重要なのは中から滲み出る威厳なのよ! これを見て」
よく分からないコトを言い出した阿野次が合図を出すと、今日に限って設置されていた巨大モニタに、やっぱりよく分からないデータのようなものが映し出される。
【GOKKO王者「轟輩斗」完成予定図】
HIT7,200
装甲1,200(黄金マント装備時1,500)
機動力60
武器
G−GOKKOキャノン HIT60 AT126 射程1−2
GOKKOハンマ鉄パイプ HIT80 AT140 射程−
Rパンチ HIT80 AT126 射程1−2
FINAL電気玉 HIT99 AT∞
そして、再び阿野次にカメラが戻ると、いつの間にかGハンマーにGマントなびかせて仁王立ちしている。Gは本来『ゴールデン』なのだが、ここでは『ごっこ』の略となるのは言うまでもない。
「公共電波に想いをのせて、届けデンパの赤信号、みんなで渡れば打たれすぎ! つまり、王を名乗るなら、やはりこのくらいのスペックもってもらわないと欲求不満の熱血必中!」
単位がないのでどういう数字なのかさっぱり分からないが、阿野次の中でだけ理解されているようなので、触らぬ神に祟りなしである。
「そしてGファイターたちは王を目指し、各地でプロレスごっこを繰り広げる。というわけで、いっちゃんの新曲『恋のシューティングEX』と『世界で一番GOKKO』を、同時に聞くのだゾ!」
さっそく阿野次が歌い狂いはじめるが、音声は一切流れない。なぜなら、えらい人が登場したからだ。
「I’m えらい人ーッ! 今回は独断と偏見で称号が決まるゼ!」
称号:プロレスごっこ王
「やっぱり目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ‥‥」
そうとだけ言い残し、颯爽と去っていくえらい人。
結局、何も変わらないのか? いや、変わる点が一つだけある。阿野次の何気ない一言のせいで、次回ランキング戦は地方巡業シリーズになることが決定してしまったのだ。