ダジャレに命を懸け足アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/31〜02/02
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●本文
TOMITVの廊下。ムダにアツい上司が、すれ違った部下に声をかけた。
「ん? なんで首にコルセットなんかしてるんだ?」
見れば、部下は交通事故後か何かのように、首を固定した姿で歩いていた。とはいえ、それは前回の収録前に上司が急に立ち止まった部下に豪腕ラリアットを叩き込んだせいであるのだが。
「どーれ、この俺様が揉み解してくれよう‥‥」
ムダにアツい上司だけあって、過去は振り返らない。自分がした仕打ちであるにも関わらず、まったく知らぬ体でにじり寄る。
「ヒィッ!」
恐怖のあまり、部下が必死の形相で走り出す。となれば、狩りの時間がはじまってしまい、ムダにアツく追い立てるしかない。
「フッフッフ、もう後がないぞ‥‥」
気づけば、部下は屋上の縁に追い詰められていた。しかも、今日に限ってなぜかフェンスがない。
「ココアでか‥‥」
「‥‥?」
ここまでかと言いたいところだったのだが、ここはきっちりダジャレを組み込む部下。だが、肝心の上司が気づいていない。
「さあ‥‥これで終わりだッ!」
「ん? こんなところにココアが‥‥」
急にかがみ、小道具として置いてあってココアを取ろうとする部下。そのせいで、目標を失った上司が屋上から転落していく。
「OhNo!」
なぜか英語でショックを受ける部下。ココアではなく斧を手に持っているあたりに、本当にショックを受けている程がうかがえるというものである。
「‥‥しかし、走って疲れたな。もう駆けるのは当分いいや‥‥ん? 駆ける、懸ける‥‥コレだッ!」
上司のコトは忘れ、急に何かに気づく部下。
こうして、上司の安否は不明のまま、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第9弾がスタートするのであった。
『命を懸ければ、ダジャレも駆け出す』
ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
例:『布団が吹っ飛んだ』
干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
例:『OhNo!(斧)』
イラストがその収録例。ムダにアツい上司でなくとも、斧で頭蓋骨をカチ割りたい衝動に駆られるコト間違いなしです。
その他注意点
・今回は、走りながらダジャレを言わなければなりません。ただし、非行に走る、食欲に走る等、『走る』という語に関係している行為をしていれば、実際に駆ける必要はありません。
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。
過去の放送(最近5回分)
・ダジャレに命を懸けそば 06月26日 07:00〜
・ダジャレに命をぶっ懸け 07月17日 08:30〜
・ダジャレに命をふり懸け 08月09日 07:00〜
・ダジャレに命を懸けない 09月30日 07:00〜
・ダジャレに命を懸け落ち 12月08日 07:00〜
●リプレイ本文
「よくぞ集まってくれた、三流ダジャレ芸人どもよ! では諸君、採点係の自分をがっかりさせてくれるような、三流らしいダジャレを垂れ流してくれたまえ!」
スタジオに、いきなりタケシ本郷(fa1790)が仰々しく登場して、開会を宣言する。『がっかり』と『係』でさりげなくダジャレを折り込むナイス開会宣言のつもりだったのだが、残念ながら誰も聞いていなかった。
もっとも、別にサブいから聞いていないとかではない。単に、出演者は全員別の場所にいただけのことだ。というわけで、いきなり舞台が切り替わる。
競馬場正門前──『走る』がテーマだけあって、だったらムダに寒風の中外を走ってやろうという輩が多いのである。別に競馬場内を走るわけではなく、単にマラソンのスタート地点なだけではあるが。
「‥‥校長、絶好調。おかげで、話が長いのじゃ!」
画面が切り替わりざま、早速DarkUnicorn(fa3622)がダジャレで、長かった校長の話が終わった体にする。無論、校長などいない。
そんな打たれすぎていないと見えない校長が朝礼台ではなくリングを下りていくと、入れ替わり佐渡川ススム(fa3134)が上がってきた。
「ついにはじまったゼ! プロレスごっこ王決定トーナメント、2ndすウぃーずんっ!!」
ムダに巻き舌のよく分からないテンションで、マイク片手に勝手なことを抜かしまくる佐渡川。ついでに、猿の着ぐるみという名の半獣化の格好も、意味が分からない。
「赤コーナー、現プロレスごっこ王、マリアーノ・ファリアス(fa2539)! 青コーナー、元ムチャジャック、現ムチャキング、チェダー千田(fa0427)!」
といっても、マリアーノもチェダーも突然呼ばれて上がってこれるわけがない。まだ控え室で待機中である。
が、佐渡川はそんなことも織り込み済みとばかりに、勝手に話をつづけていく。
「しかも、タダの試合じゃあない! 負けた場合は、芸能人の命ともいえる職業を相手に奪われるという『職業賭けデスマッチ』だッ! そして、勝った方にはムチャキングとプロレスごっこ王をかけ合わせた『ムチャプロレスごっこ王と書いてキングと読む』の称号が‥‥長いので、略して『ヨゴレ芸人』が授与されるッ!」
そして、放送席に下りていくと、実況を開始する佐渡川。
『プロレスごっこ王×ムチャキングのバトルがはじまるゼ!』
『駆ける』と『×(かける)』をかけた、佐渡川渾身のダジャレ。途中一切の妨害もなく、めずらしく決まったと思った。
もはや、このダジャレは佐渡川の手を離れた。後は、両者の入場を待つのみだ。
だが、佐渡川は重要なコトを忘れていた。それは、上野公八(fa3871)の存在である。
腐女子界では、『×』はカップリングの表記法である。×の前にあるのが攻、後にあるのが受‥‥つまりは、現状ではマリアーノ攻のチェダー受と読み取れる。
だが、どちらが攻で受なのか? 数々のカップリングがそれを巡って宗教紛争並みの対立を繰り広げてきたことは、歴史が証明している。
そう、マリアーノ×チェダーとチェダー×マリアーノの間には、決して超えられぬ壁が、チェダーが超チェダーになっても超えられない壁が、立ちはだかっているのだ。
だが、それを唯一超越できる存在が上野だった。上野は腐女子ではないが、リアルにハードゲイなので問題はない。そして、上野の前では男子みな総受となってしまうのである。
そういうわけで、リングに上がったのはマリアーノとチェダーではなく、上野だった。
「それでは‥‥校内マラソン大会の出場者は、ゼッケンの代わりにこの尻尾をつけてくださーい!」
上野が再び校内マラソン大会の設定に戻って説明をはじめる。無論、体育の先生の格好をしているわけがない。鬼の角を股間に装着し、それを金棒のように振り回す、大変キケンな男となっていた。
もっとも、それは尻尾争奪の鬼ごっこをするための前フリでしかないのだが、問題は取り出したる尻尾の装着部がどう考えてもアナルプラグにしか見えないことである。
なので、むしろ何も見えなかったことにして、なかったことにしようとする一同。
が、果敢にもTyrantess(fa3596)がリングに上がっていく。
「そうそう、普通に走るとかかったりーんで、乱行に走るとかそっち路線で行くか‥‥って、できるかッ!」
尻尾をマットに叩きつけるTyrantess。が、上野は極めて落ち着いていた。
「ダジャレに命を駆けず、男に走るだけなんで‥‥尻について知り尽くしているだけに、男の尻しか追いかけないので、ノンビリしててください」
「ん? あー、そうなのか? じゃ、オモシロそうだから、放っておくゼ」
上野のダジャレ満載の言い訳に、さっくり引き下がるTyrantess。別におもしろおかしければなんでもいいので、Tyrantessに食い下がる理由はない。
「えっ! 淫行に走るだって?」
とそこへ、Tyrantessの言葉を微妙に間違えながらも、鋭く淫語を拾って登場のチェダー。
「はいよ!」
「えっ?」
そんなチェダーに、Tyrantessが尻尾を手渡す。
「ふんっ!」
「ぐはっ!」
まだ装着もしていチェダーに、男に走るのに先走った上野が高速タックルを決めてしまう。
『‥‥えーと、結果はマリアーノ×チェダーかと思いきや、上野×チェダーがはじまってしまうだから‥‥親の総取りということで!』
いつの間にか放送席でトトカルチョをやっていた佐渡川が、ついつい大声を上げてしまう。
『‥‥あ! 命は懸けても、お金は賭けてませんから、法的にはなんにも問題ないですよ!』
カメラに気づいて慌ててフォローする佐渡川の放送席の回りを、DarkUnicornがなぜかガソリンを撒きはじめていた。
「火事のカジノなのじゃ! まさに鉄火場なのじゃ!」
そして、ダジャレのためならば、なんのためらいもなく点火である。
『猿は去る、猿は去るのだよ! 去らねばならん‥‥うわぁ!』
ようやく猿の着ぐるみの意味が分かったところで放送席は炎と黒煙に包まれ、やがて佐渡川の声は聞こえなくなった。
こうして、大変微笑ましいオープニングセレモニーが終わったところで、ようやくマラソン大会のスタートである。
パーン! 号砲一発、よろよろと控え室から出てきたマリアーノが、いきなり寝込む。
「走る、走るヨ、寒気が走ルヨ‥‥」
中々登場しないと思ったら、風邪で控え室からロクに出てこれない状態だったのだ。バカは風邪をひかなくても、プロレスごっこ王まで上りつめると風邪をひくというコトを身をもって証明すべく、本当に風邪をひいてみせた剛の者である。
「咳を塞き止め‥‥これで走れるヨ!」
ムリに咳をガマンして起き上がると、カメラに向かって弱々しく笑って今度こそ走り出すマリアーノ。
「のワッ!」
だが、最初の曲がり角でいきなり転倒である。別に、風邪で弱っているせいではない。
「コーナーだけに、通り抜けるのがコーナー(困難)っつーことだ」
そのダジャレのために、Tyrantessがパチンコ玉を大量にばら撒いていたのだ。
「玉ったもんじゃない? そりゃ玉Runね!」
「アー、風邪が悪化しちゃったよ。熱が‥‥こう額をぴたっとやって、計ってくれるようにお願いひたい!」
だが、マリアーノはまったくくじけることなく、むしろTyrantess登場に喜んだように近寄っていく。
「のワッ!」
またしても転倒するマリアーノ。今度はワイヤーが張ってあった。
「コーナーだけに、こーなーったんじゃねーの? と言いつつ、仕かけたんはワイやー! わ、イヤーなとこにワイヤーがあるっつーことじゃね?」
Tyrantessがケラケラ喜んでいるが、これで完全にマリアーノのドM魂に火が点いてしまった。
「頭痛がネ、ずつうっとヒドかったんだけどネ‥‥でも、今は胸が痛いヨ!」
「知らんなー? ランナーの気持ちなんかわからんなー?」
Tyrantessがつれなく扱うが、余計にマリアーノの熱は上がるばかり。完全にオーバーヒートである。
一方、先頭を快調に飛ばすのはDarkUnicornだった。早くも、なぜかコースに設定されたオカマバーに入っていく。
「夏のスイカが、なつかしいのじゃ!」
番組制作費だけに、気にせず高いフルーツを注文する。ダジャレになっているだけに、スタッフも文句は言えない。
「オカマには、お構いなしじゃ」
だがそれなのに、踏み倒して去っていこうとするDarkUnicorn。そこへ、ようやく上野の魔の手から逃げ切ったチェダーが追いついてくる。
「あいつだけ抱けー、なのじゃ!」
コレ幸いとばかりに、チェダーを指差し去っていくDarkUnicorn。
対するチェダーは、前門のオカマバー、後門の上野である。しかし、本当にピンチなのはチェダーの肛門だったが。
「これでお主もカマの仲間入りなのじゃ」
DarkUnicornがきっちりダジャレで捨てゼリフを残して去っていったと同時に、上野が追いついてしまう。
「ゲイバー? ついにこの芸が身を助けるトキが!」
「走る前に、恥じることを覚えろ!」
チェダーの抗議むなしく、見苦しい映像が繰り広げられる。芸が身を助けてカメラを引きつけるどころか、ゲイが身を滅ぼしカメラが遠ざかっていってしまったが、もはや上野にそんなコトは関係ない。
「ああっ! 出番がはしる〜!」
このピンチにあってさえ、チェダーは『はしょられる』の『ょられ』を抜いて『はしる』にするという苦しいダジャレを続行していたが、映像は本当に端折られてしまった。
空白の数分の後、ひん剥かれた状態のチェダーが店から飛び出してくる。
「ウケる、超ウケる〜、超チェダー!」
道行く女子高生に笑われるが、チェダーはそれどころではない。が、ツッコミを入れる余裕は捨て切れていなかった。
「超チェダーの超って何だよ!? 俺は何も超えてねぇよ!」
そうは言ったものの、男としての何かを超えてしまっていたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。ただ唯一はいていたトランクスがハート柄なのが、妙に痛々しかった。
こうして後続を大きく引き離したDarkUnicornだったが、汗だくでランナーズハイの状態になっていた。
「ステテコ、脱ぎ捨ててこうかの‥‥」
そう言って、どんどん服を脱ぎ捨てDarkUnicorn。あっという間にさらしにゴスロリふんどしというあられもない姿になってしまうが、ハイになっててお構いなしである。
「正義に走るタケシ本郷、脱水症状を救うべく参上!」
ゴール地点のスタジオから逆走してきた本郷が、ホースを持って現れた。すかさず、DarkUnicornに向けて放水を開始する。
「ダジャレのためには多大な犠牲も厭わないのが、レフェリーたるこの俺だッ!」
なんのレフェリーかはともかく、多大な犠牲とは何か? DarkUnicornのさらしとふんどしが濡れて透け、危険領域に突入してしまっていることだ。
「スタート地点が競馬場じゃったの‥‥そうか、これは『恥じれ、人間ども』じゃったな?」
大ヒット番組『走れ、人間ども』にかけたダジャレを放つDarkUnicorn。多大な犠牲と引き換えに得たこのダジャレに、それだけの価値はあったのか?
「まだまだ現役!」
少なくとも、本郷にそう言わしめ、前かがみになって並走できなくするだけの価値はあったようだ。
結局ランナーズハイなままのDarkUnicornは、そのままの格好でゴールまで来てしまった。
だがゴール目前、チーズでできたバラが一輪、DarkUnicornの前の地面に突き刺さった。
「‥‥はっ! 何者じゃっ!?」
「ネズミ仮面でチュウ!」
ゴールの裏から現れたのは、ふんどし一丁でネズミの覆面をかぶった変質者‥‥もとい、今の今まで出番をうかがっていた犬神一子(fa4044)である。
「今年の干支ネタなどもう古い。先走って、来年の干支をネタにしてやったぞ!」
そこへ、表彰式に間に合うようにと車に乗せられたチェダーに上野、マリアーノにTyrantess、そして本郷の5人が到着した。佐渡川の姿はなかったが、スタートとゴールで人数が違うことなどよくあることなので、まったく気にされない。
「これはみなさん、おそろいのようで。誰が言ったか知らないが、『命を懸ければ、ダジャレも駆け出す』ってことで、みなさんには右往左往走り惑ってもらいます」
「は?」
ポカーンとする5人と、ハイで完全にイッてしまっているDarkUnicorn。止める間もなく、ポチっとスイッチを押す犬神。
「うらぁ! ミジンコが木っ端みじんこ!」
ドーン! ボーン! スイッチというよりもそのダジャレきっかけで、ゴールのセットが次々と爆破されていく。
「みなさん、なかなかの逃げざまで。まさにゴキブリの動きぶり!」
拍手をしながら、大喜びの犬神。だが、大切なコトを忘れていた。なぜか、クマを仕込んでおいたコトである。
「クマが逃げ出して、くまった!」
犬神がまったく困っていないように棒読みし、阿鼻叫喚の地獄絵図が完成である。
「賞金は、どうしようきん?」
そして、優勝賞金10万円を一応困ったように持つ犬神。無論、答えられる状態にある者がないことが分かった上での質問である。
こうして、混乱のままにお別れというベタな終わり方になったので、10万円はそのまま犬神のポケットに入っていったという。