プロレスごっこ節分SPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/03〜02/05
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへ、プロレスごっこの一番えらい人が金棒を手に姿を現す。
「鬼は外? フフフ、ならば追い出してみよ!」
いや、姿を現すとさらりと言えるような生やさしいものではない。えらい人が金棒を振り回し乱入してきたものだから、早くもスタッフの間には被害者続出である。
「放送日が節分でも、打ち合わせの今日まで節分ぽさを出す必要はないので‥‥ぐぼはっ!」
逃げ惑いつつもなんとかツッコミを入れたスタッフの一人が、鋭く金棒のエジキとなる。
「‥‥花は桜木、男は岩鬼。やはり、クソボールはよく飛ぶのう!」
星になったスタッフを見上げつつも、今のスイングの感触を忘れないようにと、さらに金棒をブン回していくえらい人。通算53回目だけあって、スタッフがゴミのように扱われているが、別にそれは今にはじまった話ではない。
こうして、相変わらず下っ端スタッフにだけ過酷な労働環境のまま、プロレスごっこ王の節分スペシャルが2月3日になったと同時にスタートするのであった。
注意:
・節分などの『2月3日』から連想されるテーマで試合をしなくてはなりません。連想できないこともないテーマであれば、どんなに遠くても構いません。
・えらい人が鬼役で出演するわけではありません。
・2月上旬開始の告知されていたランキング戦とは一切関係ありません。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はできれば避けましょう。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第28回 12月11日 07:30〜
・第29回 12月19日 07:00〜
・XmasSP 12月25日 07:00〜
・新春SP 01月01日 07:00〜
・前夜祭 01月29日 07:00〜
●リプレイ本文
『本日2月3日は節分ですが、そんな最中に俳優見習から実況芸人に昇進したサトル・エンフィールド(fa2824)の実況でお送りします! 今日は気分がいいので、解説を紹介しておきましょう!』
「はい、同じく子役俳優から解説芸人に昇進したヨシュア・ルーン(fa3577)です。さて、節分ですが、そもそも節分というのは‥‥」
昇進か降格かよく分からないが、ともかくせっかく解説芸人となったヨシュアが解説に張り切ろうとするが、長くなりそうなのでいきなり編集でぶった切られる。
もっとも、サトルがヨシュアに振った瞬間には自身の実況を続行したので、実際にも長くはならなかったが。
『‥‥鬼の目にも雀の涙というわけで、本日はここ大阪特設リングより‥‥』
「サトルくん、何を言ってるんだよ。ここは新潟じゃないか!」
ぶった切られたコトよりも、場所にクレームをつけるヨシュア。東京の局内スタジオであるにも関わらず、なぜか場所を巡って醜い兄弟ゲンカを繰り広げる。
そんな、節分らしい鬼気迫る放送席はさておき、マリアーノ・ファリアス(fa2539)が入場してくる。節分ということとどうつながるのかナゾだが、御奉行様姿のレフェリーとして登場だ。
「ちょっと待ってください! あのコスチュームは‥‥手元のノートパソコンで検索してみましょう」
ケンカも早々に打ち切り、今度こそ解説芸人らしいコトができると、ムダに張り切ってしまうヨシュア。
「あれは江戸町奉行でしょうけど、北町なのか南町なのかが問題ですね‥‥ん? ええー!?」
手元のノートパソコンの画面に一瞬目を移し、すぐにマリアーノの姿に目を戻すヨシュア。が、ノートを二度見せずにはいられなかった。
ノートはノートでもノートパソコンが、ただの大学ノートに変わっていたのだ。
「ふむふむ、なるほど。こうすればよいのじゃな!」
見れば、DarkUnicorn(fa3622)が無人の観客席にドカっと座り込み、ヨシュアのノートパソコンでモバイルエロゲに精を出していた。
「うわぁーっ!?」
慌ててヨシュアが飛び出そうとするが、察したサトルが無言で取り押さえてしまう。そんな中、DarkUnicornが淡々と解説をはじめる。
「2月3日→節分→切ない気分の『おに』→一文字変更で、切ない気分の『あに』→切ない気分の兄を慰める日、となるわけじゃ!」
2文字のうちの1字をいじる時点でもはや別物なのだが、そんな小さなコトを気にするDarkUnicornではない。というか、ヨシュアが真に気にしているのは、年齢制限も気にせずにインストールしまくったエロゲの数々である。
「とはいえ、妹役など今までやったコトがないからのッ。こっそりヨシュアのノートパソコンで勉強させてもらったというわけなのじゃ! しっかし、『天使たちの午前様』『フィナーレ・ロリータ』『団地妻は電気ウナギの誘惑を見るか』って、随分とクラシカルなものを入れておるのう!」
クラシカルだと分かるDarkUnicornもどうかと思うが、それよりもこれで妹キャラの勉強になったのだろうか? 特に『天使たちの午前様』は、妹キャラと致してしまったらバッドエンドなんじゃ? という気がしてならなかったが、そこまで理解できるのがこの場にはヨシュアしかいないので、問題はない。
「それでも戦いは非情につづきます‥‥くはっ!」
なぜか喀血しながら、ヨシュアがすでにリングインしているマリアーノへと振る。
「‥‥南町だヨ! 南町以前に、なぜ奉行? なぜなら、自分は王であり、王といえば君主、つまり支配者でありルールブック! そう考えれば『王=ルールブック=レフェリー』と、すべてが一本の線でつながるんダネ?」
『‥‥それでも、奉行にはつながらないような気がしてなりませんが‥‥』
サトルがポカーンとする横では、ヤケになったヨシュアが新作エロゲのインストールに励んでいた。特に兄妹ものの。
「フフフ‥‥くしくも今日は大岡越前の日! リングの上で鮮やかに恵方巻を食べてコソ、プロレスごっこ王の面目躍如というモノ」
話はポンポン飛ぶし、色々勘違いして肩の桜吹雪を散らしてみたりと、やりたい放題のマリアーノ。これが前回ランキング1位と2位の差なのかと、サトルは歯軋りせずにはいられなかった。
「おにいちゃ〜ん☆ 朝ご飯はパンチングと碁盤、どっちがいい?」
そこへ、ついにキャラクターを完成させたDarkUnicornがリングに上がってくる。
「そうだナ‥‥」
「もう、そんな迷うことじゃないよ〜」
ボカッ! 碁盤でパンチを食らわせるDarkUnicorn。マリアーノの頭がマットに叩きつけられるが、すぐさまヨロヨロと起き上がる。
「はっはっは、ヒメは本当に気が早くて荒いなァ‥‥でも、今日は節分! この恵方巻の端と端から、一緒に食べていくんだゾ!」
「好き嫌いはダメだもんネッ☆ 分かったよ、お兄ちゃん!」
もはや、方角を一切気にしないただの太巻きだったが、エロパワーの前では恵方などあるだけ無意味というものである。
「ほーら、お食ベ‥‥」
そう言って、マリアーノは恵方巻を口でくわえず、己の股間に押し当てるというベタなセクハラをかます。
だが、DarkUnicornはヨシュアのエロゲで勉強済みである。エロゲの世界の妹キャラ(攻略可)になってしまっているので、慰め方もまんまストレートである。
よって、DarkUnicornも口ではなく腰を近寄せていくので、そろそろ放送コードギリギリである。
ガブッ! だが、そこへ飛び込んできたのは、マリアーノの王者っぷりに嫉妬したサトルだった。しかも恵方巻への目測を誤り、誤爆で本物の方の股間にかじりついていた。
「ウギャース!」
悶絶して転げ回るマリアーノ。と、そこへ冒険家の格好をした紗原馨(fa3652)がリングインしてくる。
「紗原です。今回もよろしくお願いしまーす♪ 2月3日にちなんで、冒険なカンジでーす☆」
チャレンジャーなので、よりによってこんな場面で登場である。
『‥‥えっと‥‥なぜ冒険なのか、分かりませんが‥‥』
この隙に、サトルはマットの上に横たわるマリアーノはなかったことにして、実況芸人の本分を果たすべく、さっさと放送席に戻っていってしまう。
「昭和41年に月に初めて人が立ったとか、長享2年に喜望峰にはじめて人が立ったとか、2月3日ってそういう冒険な日ですよね?」
ですよね? と言われても、サトルに分かるハズもない。こんなときこその解説とヨシュアを小突くが、エロゲインストール中で検索するコトもできず、使えないエロゲオタ状態になっていた。
ちなみに、喜望峰は欧州人として初なだけで、月面は無人軟着陸に初成功しただけで有人飛行ではないのだが、そんな都合の悪いコトはここではスルーである。ついでに、西暦でなく和暦なのも、うやむやにするための一環である。
「そんな冒険でのサバイバルに勝つべく、一撃よくハトをも倒すというこの豆鉄砲で‥‥」
冒険を通り越して戦場に近かったが、機関銃式の豆鉄砲を乱射しはじめる紗原。
「福は〜うち♪ 鬼は〜‥‥って、いたっけ?」
ふと疑問に思う紗原だったが、その隣ではDarkUnicornが、
「どいて、おにいちゃん!」
と言いながら、動かなくなったマリアーノにバッコンバッコン豆を叩きつけているので、気にしないコトにした。
「そんなへっぴり腰で、鬼が殺せるかっ!?」
そこへ、たまらず槇島色(fa0868)が飛び込んできた。軍帽に眼帯、手には乗馬用の鞭、ピチピチの軍服とミニスカートといういでたちから分かるように、鬼教官の、鬼軍曹の血が騒いでしまったのだ。
「鬼がいたっけだぁ? そんなコトを言う前に、鬼のコトをどれだけ知っているというのだ? よろしい、貴様らに鬼に関する知識を問おう‥‥全員、返事は!?」
「え? あ、はい!」
「はい、お姉さま!」
槇島に気圧されて、紗原が直立不動になる。DarkUnicornも、妹キャラ継続中なので、今度は槇島を姉に見立てている。
「違う! 返事はイエッサーのみだ。分かったか!?」
「サー、イエッサー!」
段々とスタッフミーティングにおけるえらい人のようになっていく槇島。
「最初の問題‥‥鬼門はどの方角だ!? 遅いっ! 正解は‥‥」
答える間も与えず、マリアーノへと近寄っていく槇島。
「正解は北東。より正確には、艮の方位だ!」
ぐったり倒れたままのマリアーノの口に恵方巻を突っ込み、そのまま艮の方位を向かせる。ちなみに、今年の恵方は壬の方位であるが、今ここでは鬼門重視である。
「というわけで、答えられなかった者はこのツノ付きアフロヅラをかぶるように。無論、拒否権はない!」
鬼と言っても、節分の鬼というよりは雷様のようなヅラが手渡される。紗原は不承不承かぶるが、DarkUnicornがなかなかかぶらない。
「ああん、お姉さま〜。恥辱プレイよりも、その鞭で強くぶってください〜」
マリアーノがダウンして女性陣だけになってしまい、特殊な妹キャラになってしまったようだ。そう、ヨシュアのパソコンには百合モノも入っていたのだ。
「くっ‥‥まあいい。次の問題、鬼の一般的な姿はツノに虎柄の腰巻き、その訳は!?」
攻撃力は高くても防御力は低いのか、あっさり引き下がって次の問題に逃げる槇島。
「正解は、鬼本人に直接聞いてみましょう。えっと、どうしてなんですか?」
そこへ、桃太郎コスの角倉雨神名(fa2640)が割って入ってきた。
桃太郎が引き連れているのは、犬でも猿でもキジでもなく、赤鬼と相場が決まっている。なので、赤鬼に扮したツァーリ(fa5193)が角倉にインタビューを受けるのは、自然な流れである。
「えっと、ロシアではウォッカの代用にサビ止め剤を飲むから、赤サビが体内に留まって赤鬼になるんだな!」
「そんなコトは、聞いておらんわっ!」
ピシッ! ついに槇島の鞭が一閃する。
「ああん、ヒメにもください〜」
が、DarkUnicornがすがり寄ってくるので、槇島もこれ以上強気には出られない。
「赤鬼をバカにするな! こちらの赤鬼は3倍早い!」
ツァーリの鬼の覆面の下の顔まで赤くなる。が、激怒してではない。照れである。速いではなく早いことから、ナニが早いのかはお察しください、というのが大人のマナーというものなのだ。
が、角倉にそんな深読みはできないのでさらりと流し、まさかりを抜き放つ。そう、剣ではなくまさかりである。昔話だけあって、うろ覚えで微妙に色々混ざっているのはお約束である。
「鬼さん、覚悟なのです!」
「ふっ‥‥ν赤鬼はダテじゃないッ!」
こうして、なぜギリシャ文字が入るのかはナゾのまま、角倉桃太郎とツァーリ赤鬼の殺陣がはじまる。
なお、槇島はすでにリングサイドでDarkUnicornに組み伏せられていた。DarkUnicorn的に、気の強そうな女鬼教官が、妹キャラの部下に骨抜きにされてしまうという設定になったようだ。
『人はなぜ、争うのでしょうか? 僕は悲しいです。ま、片方は鬼なので、神罰というコトですかね? 来世は、二人とも修羅道から帰ってくるんだよ〜』
そして、めずらしくサトルはエロに目を奪われずにリング上の出来事を追っていたが、きっちり突き放した実況をしていた。
「な、なんて強さなんだっ‥‥! こうなったら、奥の手の桃太郎印のお豆で‥‥って、お猿さんもキジさんも犬さんもいないっ!?」
ツァーリに押され気味の角倉が、救いを求めて周囲を見渡すが、誰もいない。
一応はマリアーノが猿獣人、ヨシュアが小鳥獣人だったが、マリアーノは生ける屍だったし、ヨシュアはエロゲに忙しかった。それ以前に、獣人ですと堂々とTVで流すわけにもいかない。
「はい、157粒ね」
そんな角倉の窮地に駆けつけたのは、紗原だった。チャレンジャーなので、戦いの空気を気にしない。そして、なぜか逆に角倉に豆を渡す。
「え? 年‥‥じゃないよね?」
「身長だよ〜♪ さ、そちらの赤鬼さんも‥‥えーと、300粒くらいかな?」
小首をかしげる角倉に明るく言うと、今度はツァーリの手にも山盛りに豆を載せる紗原。
「あの‥‥自分、そこまでデカくないんだけどな‥‥」
「赤鬼さんのは、体重ですよ〜♪」
さらっとヒドいコトを言う紗原。冒険というより暴言である。
「そんなに太ってないんだけど‥‥うわーん!」
ツァーリが泣いてしまったので、話が桃太郎ではじまり、途中武器のみ金太郎風味になり、泣いた赤鬼で終わるという、よく分からない展開になってしまった。
だが、紗原のチャレンジャー魂はとどまるところを知らない。さらにはリングサイドに下りて、槇島からDarkUnicornを引っぺがすと、DarkUnicornにも豆をおすそ分けである。
「はい、45粒ね?」
「ん? 体重なのかな?」
これからいよいよというときに‥‥と思いながらも、律儀に豆を受け取るDarkUnicorn。
「え? 何を言ってるんですか。年齢ですよ?」
「そんなに年を食っていないのじゃ! ふざけるななのじゃ!」
『DarkUnicorn選手、キャラが崩れたので敗北です!』
サトルが、こんなときだけ冷酷にジャッジする。
「口調から、てっきり若作りな方かと‥‥」
さらに追い討ちをかける紗原。もはや、DarkUnicornはガックリうなだれるしかなかった。
こうして、別にプロレスごっこには勝者も敗者もないのだが、節分SPに限っては紗原の圧勝で幕を閉じることとなった。