寒さ冷たさも彼岸までアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/04〜02/06
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●本文
「いや〜、暦の上では立春とは言え、春とは名ばかりとはこのことですねー」
これから寒さも本番へと向かっていく中、外出先から戻ってきた後輩がコートを脱ぎながら、スタッフルームに入ってきた。そこへ、暖房ガンガンでむしろ汗だくの先輩が口を開く。
「あのな、寒さ冷たさも彼岸までといってだな‥‥」
「え? 彼岸? 春分じゃなくて立春なだけですから、彼岸じゃないですよ‥‥ぐはっ!」
ボカッ! 普通に誤りを訂正する後輩を、先輩が鉄拳制裁で黙らせた。
「うるせー、このヤロウ! エッジを走るには、春分じゃ遅いんだよ! 立春でギリギリ間に合うくらいなんだよ!!」
殴ってごまかす先輩。こうなったら、この勢いに乗っかって番組をでっち上げ、ごまかし抜くしかない。
「というわけで、暖かい春の日差しの中、寒中水泳大会をするわけだが‥‥」
「‥‥暖かい春の日差しと言いつつ、しっかり寒中水泳って言い切っちゃってますけど‥‥」
こうして、春を先取り過ぎてただの寒中水泳になってしまった企画が、スタートするのであった。
企画内容:
極寒の中、暖かいという体で水泳をします。その際のリアクションのおもしろさを競い合います。
泳ぐ以外でも、水関係のものなら何をやっても構いません。
海でやるかプールでやるか、はたまた氷の張った湖でやるか。意見は募集しますが、最終的には先輩の独断で決まります。
ポロリ等は放送できる範囲内で。ある程度はモザイクで対処しますが、あまり見苦しいと全面カットになるかもしれません。
必要な物、装置、設備等は、指示があればすべて番組で用意します(現実的な範囲内であれば)。
いかに暖かい、暑い、むしろ熱いフリをしていられるか等のリアクションを総合的に見て、一番おもしろく説得力があったと判断された人が優勝となり、優勝賞金10万円が贈られます。
その他細かいルールは、スタッフがルールブックです。
過去の放送スケジュール:
・辛さ臭さも彼岸まで 08月14日 7:00〜
・暑さ熱さも彼岸まで 09月23日 7:00〜
・冬至だろうと彼岸まで 12月22日 7:00〜
●リプレイ本文
寒中水泳大会となった、本日の寒さ冷たさも彼岸まで。水泳というならば、泳ぐ場所が必要になるわけだが、その舞台はプールと決まった。
荒波打ち寄せる雪の海でもなく、ワカサギを釣りたくなるような氷の湖でもなく、ごく普通に屋外プールである。
波にさらわれるといけないから? それもある。氷に穴を掘るのが面倒くさいから? それもある。だが本当の理由は、ダイバースーツに酸素ボンベという姿で、はやる気持ちを抑えられず、すでに水中でスタンバイしているある人物のせいであった。
そう、水中カメラマンとなった鶸檜皮(fa2614)が、水の透明度を重視したからだ。
「ヤラセで潰れた番組を、今までいくつも見てきた‥‥が、俺はヤラセではない自然なポロリを撮る! 俺は‥‥俺にしかできない仕事をやるだけだ!」
より自然なポロリ、つまりはクリアなエロ映像のためには、澄んだ水のプールを! そんなスケベ魂‥‥もとい、カメラマン魂が原因だった。
「予備のボンベは十分だ‥‥あと10時間は戦える‥‥」
鶸をここまで駆り立てるものは何なのか? というわけで、被写体となる出場者、中でも女性陣が入場である。
「ハォ!」
まずは177cmの長身に、それ以上の豊満バディの竜華(fa1294)だ。
そして、それを包み込むは赤いラバーのワイヤービキニ、DESの2006夏モデル、クウィーンワイルドである。
とはいえ、今はすでに2007冬なので、2007夏モデルでなければいけないお年ごろ。というわけで、若干の改造を施してある。
改造といっても、改造制服よろしく裏地に刺繍とかではない。チューブトップに改造してあるのだ。よりポロリしやすくなり、鶸的にも自然の範疇に入る、大変すばらしい改造である。むしろ、改善、改良というべきなのである。
「今日は、海でグラビア撮影かー」
つづいて登場は、灼熱の砂浜といった体で登場のMAKOTO(fa0295)だ。
こちらはワンピース、といっても過激にスリングショットである。110Jのけしからんバストが、ちょっと左右にブレようものならポロリといきそうで、鶸も大絶賛である。
「グラビアアイドルらしく、精一杯がんばりまーす♪」
そして、過激な方向へも一周してしまったのか、ロリ系巨乳の魅力を最大限に引き出すのはスクール水着しかないと、甲斐大地(fa3635)が旧スク水で推参である。
MAKOTOをも上回るKでありながら、スクール水着の中にムリに押し込まれている様など、いつ世紀末救世主のように弾け飛ぶんじゃないかと気が気でなく、これまた鶸も大満足である。
「今回集まったメンツの中では、一番似合いそうだから‥‥って、なんじゃそりゃ!」
最後に、同じくスクール水着での登場はTyrantess(fa3596)だ。胸に『2−Z たいらんてす』と入っているあたり、押さえるところを押さえている。
童顔に加え、一般的サイズながらもよく引き締まった体型と、オッパイ星人ならいざ知らず、本物のマニアにはスク水を着ているのによりリアリティの高いTyrantessの方がたまらないというものである。
それに、普段の露出の激しいコスチュームに比べて、中途半端に隠しまくっている方が比較の想像力が働き、鶸も昇天間違いなしというものである。
‥‥と、男性のリアクション代表として鶸ばかり取り上げられてしまっているが、他の男性陣は何をしているというのか? 中坊並みに、体育座りのまま動けなくなっているとでもいうのか?
残念ながら、そんなものに動じる男性陣ではなかったのだ。とはいえ、ウホッやアッーというわけでもない。
「ハーッハッハッハ!」
まずは遠くから、ランナーズハイの笑い声が聞こえてくる。
「むぁいど! 総合格闘野郎のミゲール・イグレシアス(fa2671)やでー!」
ブーメランパンツ一丁で、プールサイドを駆けずり回っているミゲールの姿があった。すでに全身から湯気を立て、ウォーミングアップの域を超えた暑苦しさを演出している。
「フッ‥‥優れたアスリートは、一日一善よりも一日一万kcal! だが、ワイは一日10万kcalを摂取してるんや!」
給水代わりに、ガムシロップのジョッキを飲み干すミゲール。どう考えても早死にするカロリーの使い方だが、ランナーズハイになっているので、気づけない。
「まともな思考回路ではついていけないと、ヘッドバンギングして臨んだのだが‥‥やはり、この番組の出演者はリアルに一筋縄ではいかないようだな」
鶸がミゲールの打たれすぎっぷりに嫉妬していたが、すぐさま事態は大きく動いた。
ルツーン! 足を滑らせたミゲールが、後頭部からプールサイドに叩きつけられる。
プールサイドを走ってはいけないという決まりがナゼあるのか? それを、身をもって示してみせたのだ。
が、大惨事なので、一瞬でモザイクのかかった赤っぽい物体に変身のミゲール。それがミゲールを見た最後だったが、記録よりも記憶に残る暑苦しさは残せた。
「俺たち、暑ければ汗を流すじゃない。だから、汗を流していれば、暑く熱く見えるんじゃない?」
そこへ、変に汗をかいた上野公八(fa3871)が入ってくる。
「でも! 激しい運動をするだとかは、暑いときに激しい運動をしたくない人がほとんどの世の中だから、没に決まってるじゃなーい!」
ミゲールを真っ向から否定しちゃう上野。実際、ミゲールは熱いどころか冷たい亡骸になっているので──いや、実際には死んでないが──あながち間違いともいえない。
それよりも、気になるのは上野のかいている変な汗である。
「暑いときこそ冷や汗? そんなモノ、将来の夢を語った卒業文集の朗読とか、昔書いたエロい落書きを大量印刷とか、その程度で簡単に流せますよ! 真にクールな汗というのは‥‥」
そう言って上野が取り出したのは、ミントのタブレットだった。この後につづく内容が商品のイメージダウンとなるので、なんだか分からないようにモザイクがかかっているが。
「ええ、たった今、アナリスクを嗜んでおりまして‥‥」
アナリスクとは、数年前に開発された、エチケットタブレットを口ではないところから摂取する手法である。現在は一部愛好家を除いて廃れたとされているが、上野は現役バリバリのようだ。
ただでさえ変なトコがスースーするのに、その上その姿が公共の電波に乗ると考えたら‥‥それだけで、静かに燃える興奮の炎が、余計に変な汗を流してくれるというものである。
「暑いときこそ、この清涼感が‥‥」
これには女性陣ドン引きであるが、男性の好感度は気になっても、女性の好感度などどうでもいい上野なので、一人別世界へ旅立ってしまっている。
「‥‥どーれ、今の水温は‥‥」
空気を変えるために、Tyrantessがプールの水に近づいていき、足をそっと伸ばす。
「熱っ!」
すぐさま熱湯風呂かのように、つま先が触れただけで飛び上がるTyrantess。冷たすぎると逆に熱く感じるが、ここでは純粋に熱いと主張しているのである。
「熱いよ! 少しうめろよ!」
リアクション芸人バリの対応をするTyrantess。早速、巨大な氷が群れをなして運び込まれてくる。
「‥‥少しはうまったかな?」
「じゃあ、ボクが行きまーす!」
氷の浮かぶプールに、甲斐が飛び込んでいく。ようやくの獲物に、すっと鶸が近寄ってくる。
「あっ、おい!」
自分で氷を投入しておきながら、そこまで無用心だと逆に心配になるTyrantess。
が、心配無用だった。次の瞬間には、甲斐はもう上がってきていた。
「ガクガク‥‥はぁ〜♪ ココアがおいしいですよね〜、生き返ります〜」
そして、ガマンは心身ともによくないと、すっかり本当は冬だというコトを隠そうともしなくなり、厚着にホットココアという甲斐。
「はーっはっはっは! とーうっ!」
そこへ、再び高笑いが聞こえてくる。といっても、ミゲールの怨霊ではない。今度は高柳徹平(fa5394)が、走らずに飛び込んだだけのことである。
アホの子のように笑いつづけながら、ムダにキレイなクロールで泳ぎまくる。
「いい湯だな? って、寒そうに見えるんだが‥‥」
そんな高柳に、Tyrantessがインタビューを試みる。
「‥‥寒くないですよ? 俺を寒がらせたら大したもんだ」
そう言って指を振る高柳だったが、そのわりにはガクガクブルブルと震えている。
が、次の瞬間、ブルブルがブクブクに変わる。そう、力尽きて溺れだしたのである。
「これは‥‥イカーン!」
慌てて鶸が救出に向かい、高柳を引き上げた。
「‥‥ん? くはっ! ゲホゲホ‥‥」
しばしの後、高柳がプールサイドで目を覚ます。その傍らにいた命の恩人は鶸ではなく、甲斐に変わっていた。
「人工呼吸、しておいたよ‥‥」
「えっ!?」
甲斐の言葉に、思わずポッとなる高柳。だが、甲斐はまだ言い終えていなかった。
「彼が!」
そういって紹介されたのは、上野だった。そのまま、甲斐は去っていってしまう。対して、今度は逆に上野がポッとなっている始末。
「ゲホゲホ‥‥なぜ赤くなるっ!」
「まだ本調子じゃないようですね‥‥」
高柳が、先程とは違う質でむせる。が、とにかくむせていることに勝手な理由をつける上野。
「汗をかいた方がいいですね。よし、一緒に変な汗をかこう!」
「あれだけは‥‥いや〜ッ!」
高柳の断末魔がこだましたが、肝心のカメラを持った鶸は別のところにいたので、誰も助けに来なければ、誰も見てもいない。
そんな鶸は、MAKOTOの南国グラビア撮影風味を手伝っていた。水中で10時間以上戦えるハズだったのに、あっさり地上に出てきている。
「揺らすのって、こんなカンジでいいのかな?」
「縦のみじゃなく、左右にも振ってみようか!」
どこまでがナチュラルなのか、基準は鶸のみぞ知る世界になっていたが、とにかくMAKOTOを激撮している。
「きゃーっ! 全力で体を動かしてれば、寒さも少しはマシでしょって思って、流れるプールの流れに逆らって泳いでいたら、水着が流れていっちゃった‥‥」
そこへ、いかにもわざとらしい説明的な棒読みで、竜華が悲鳴を上げる。
「なんだって!?」
今度は、流れるプールに飛び込む鶸。エロスを撮るためなら、水陸両用への早変わりも自在である。
「ああ! 持っていた入浴剤が‥‥」
だが、竜華がナゼ持っていたか分からない入浴剤をぶちまけてしまい、煙幕のように張られてしまう。
「ふっ‥‥入浴剤が晴れるまで、じっと息をコロす! 思い出すなぁ‥‥レジスタンスとして戦っていた昨夜の夢を‥‥」
しかし、そんなレジスタンスもタオル投入であっさり制圧されてしまった。すでに、竜華の胸にはタオルが巻かれてしまっている。
「‥‥で、キミはどこへ行ってるのかな?」
そして、潰されたレジスタンスの末路は拷問である。撮影をほっぽり出されたMAKOTOが、指をポキポキ鳴らして待ち構えていた。プールサイドがリングサイドに変わるのは、もはや時間の問題だ。
「‥‥さーて、男どもはロクなのいないし、今回のターゲットは女子だな!」
そんな中、いい男かいい女を物色していた男女問わずのTyrantessが、狙いを女子に絞っていた。
「とりあえず人目のない場所を‥‥って、このトラックの中なんかちょうどよさそうだな‥‥あっ!」
そして、連れ込む場所の物色に移って、トラックの荷台に入り込む。が、バタンと閉められてしまった。
そう、自分がプールに大量に入れさせた氷を運んできた冷凍車である。役割を終え、これから帰ろうというところへ、ちょうど都合よくTyrantessが入り込んでしまったというわけだ。
こうして、優勝はカメラなしの冷凍車でどこかへと旅立ってしまったTyrantessになり、賞金10万円が贈られた。
が、戻ってくる際のタクシー代が自腹だったので、せっかくの賞金も半分に目減りしてしまったという。