芸人プロレスごっこ王1アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
02/10〜02/12
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が、金棒ではなくダーツを手に姿を現す。
「いよいよ、いよいよだ! フフフ‥‥一度、やってみたかったんだよな!」
「何をやってみたかったんですか?」
なぜか笑いを堪えきれないえらい人。その不気味さに、スタッフも聞かずにはいられなかった。
「それは‥‥これだッ!」
えらい人の合図と共に、日本地図のボードが運び込まれてくる。
「行き先をダーツで決めるって、なんか売れてる番組みたいだろ? だから、一度やってみたかったんだよな!」
「はぁ、そうでございますか‥‥」
とりあえずは機嫌を損ねないように、曖昧に肯定の返事をしておくスタッフ。
ともかく、今回からはじまるランキング戦は地方巡業形式なので、その都度ダーツで開催地を決めようという魂胆らしい。
「行くぞ‥‥あっ、手が滑った!」
わざとらしいまでに手を滑らせて、スタッフの中へとダーツを投げ込むえらい人。
TVなら慌ててテロップを流さなくてはいけない行為だが、収録とは無関係だけにえらい人のみ爆笑して済まされる。
「今度こそ行くぞ‥‥よしっ! どこに刺さった?」
「えーと‥‥思いっきり太平洋ですが‥‥」
「そうか、じゃあ‥‥」
まさか、いきなりの洋上デスマッチか? と、スタッフの間に緊張が走る。
「知床半島でやるぞ!」
「はぁ!?」
「日本列島縦断を目指すなら、北は北海道からやるしかねーだろうが!」
「じゃあ、なんでダーツなんてやるんですか?」
「だから、やってみたかっただけだって言ってたろうが!」
えらい人イズム、健在である。だが、スタッフにはまだ引き下がれない理由があった。
「そ、そうですか‥‥でも! いくらえらい人でも、世界遺産はシャレにならないですよ!」
「そうか? じゃあ、網走あたりにしとくか」
あっさり折れるえらい人。ダーツができたので、もうどこでもよくなってるらしい。
こうして、相変わらずスタッフが振り回される中、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦が始動するのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・北海道は網走で収録を行います。
・『網走』をテーマに試合をしなくてはなりません。『網走』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、先の見通しが立たないくらい先のことです。
・とりあえず、序盤はポイントのインフレにはなりませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はなんとなく避けましょう。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第29回 12月19日 07:00〜
・XmasSP 12月25日 07:00〜
・新春SP 01月01日 07:00〜
・前夜祭 01月29日 07:00〜
・節分SP 02月03日 00:30〜
●リプレイ本文
『さあ、ついにはじまってしまいました、プロレスごっこ第2回カップ。別にカップがプレゼントされるわけではありません。むしろ、こういうことです!』
実況芸人の誇りをもって、実況をはじめるサトル・エンフィールド(fa2824)。
そんな放送席のモニタにはなぜか控え室の様子が映されており、着替え中の竜華(fa1294)と月見里神楽(fa2122)の胸を凝視しまくりで見比べているサトル。子どもだから分かんなーいと、このくらいは笑って許されると思っている。
『竜華さんの成熟バディ、まさに食べどき! しかし、まだ蕾の月見里さんも、早摘みの甘酸っぱさが‥‥おや、お二人の姿が見えませんが‥‥』
カップ間違いというエロオヤジ的小ボケを挟んだサトルだったが、そこへカメラの存在に気づいた竜華と月見里が駆け込んでくる。
「ハォ!」
挨拶代わりの鉄拳を、サトルの股間に叩き込む。だが、サトルはこんなこともあろうかとファウルカップを入れておいたので、無事である。
が、さらに月見里の攻撃ターンである。ナース服姿である月見里は、その格好に相応しく超巨大注射器を持っている。いや、注射器の針はキケンなので、針なしの浣腸器である。
『さあ、僕の命運やいかに!? ね、解説のヨシュア・ルーン(fa3577)さーん?』
「僕、この収録が終わったらVistaをインストールするんだ‥‥」
なんとか助かろうとするサトルに声をかけられたヨシュアだったが、なぜかノートパソコンを写真に見立てながら、まったくそ知らぬフリである。
なぜか? 実況芸人の名前どおりのサトルに対し、解説芸人であるヨシュアはといえば、放送席用カメラのケーブル持ちをさせられていた。
『解説芸人の称号がイヤなら、ケーブルでも持っていればいいじゃない』
ということで、自分の身の回りの雑用を遠まわしに強要し、どちらが上かをはっきりさせておきたかったようだ。
しかし、そんな状況を快しとしない人物が一人。それが、磐津秋流(fa5271)だ。とはいえ、別に兄弟ゲンカをプロレスごっこに持ち込むなとかいうわけではない。
「‥‥ッ!」
鋭く乱入した磐津が、無言でヨシュアのケーブルを取り上げる。そして、何食わぬ顔で代わりにケーブル持ちをはじめる。
雑用を他の人がやるなど、磐津のAD魂が許さないのだ。それ以前に、ケーブル持ちってカメラマンの領分なんじゃ? という気がしないでもないが、雑用こそがアイデンティティの磐津にとっては関係のない話である。
「‥‥‥‥」
磐津は、ダテに50前までDに昇進するコトを拒みつづけてはいないのである。拒んでいるのか、拒まれているのかはさておき。
そして肝心のヨシュアはといえば、無言で襲ってきた恐ろしいオッサンに、ただただプルプルと震えているコトしかできなかった。無事トラウマになったようで、何よりである。
一方のサトルはといえば、すでに声なき悲鳴を上げ終えていた。
『逆流する新感覚にギュルギュルいっておりますが‥‥大切なのはカップよりも、プレゼントされるものについてです! すばらしくも惨い称号『プロレスごっこ王』が‥‥うッ!』
なんとか前フリを終えると、サトルがそのまま駆け出したのは言うまでもない。
無論、目指すはトイレである。が、なぜか磐津がその後を追う。雑用はなんでもこなすとばかりに、力士の付人のように拭いてあげるつもりなのかどうかは分からない。
そんな実況も解説もいなくなった空白の時間を利用して、Vが流されることとなった。
収録前夜、なぜかえらい人に呼び出しを食らったTyrantess(fa3596)と百鬼レイ(fa4361)の姿が映る。
「諸君らが呼ばれたのは他でもない。今回の試合の件についてだが‥‥分かるな? って、そもそも神楽がこのセリフ言わされてるコトが分かんないんだけど」
えらい人に言わされている月見里が文句を言うと、すぐさまそれにTyrantessと百鬼も乗っかる。
「ったく、記念すべき新シリーズ1回目だっつーから、景気よくいってみっかと思ってたのによ! なんなんだよ、お礼参りかよ?」
「そうですよ。海の妖精、流氷の天使と呼ばれるクリオネを呼びつけるなんて‥‥頭を割って、触手で絡めて食べちゃいますよ!」
温泉上がりでまったりのTyrantessに対し、百鬼はクリオネ着ぐるみの最終チェックに忙しいところを呼び出されていた。
が、えらい人は構わず月見里に先をつづけさせる。
「はい、えーっと‥‥ごっこ律310条かぶり芸の罪により、島流しならぬ流氷流しの刑に処す!」
「流氷は、すでに流れているから流氷って言うんだろー?」
Tyrantessがすかさず文句を言うが、傍らの磐津が無言でアイマスクとヘッドフォンを手渡す。黙々とこなす作業っぷりに、ついつい受け取ってしまうTyrantess。
「やっぱり、超ベタすぎましたか‥‥」
一方、百鬼は大体の状況を理解してしまって、ガックリとうなだれていた。
そして、真夜中にも関わらず、どこかへと連行されていくTyrantessと百鬼。明日の試合を控える月見里は離脱し、連れて行くのは磐津ただ一人である。
そんな道中は特に何もないのでサックリカットで、実際には何時間も経っているが早くも何かツルツルする上に下ろされる。
「‥‥‥‥」
ハンディを構える磐津が促すと、アイマスクとヘッドフォントを外す二人。若干空が白みかけていたが、まぶしくもない。
ごっこ律何条が云々とか言ってたし、網走だけに刑務所か? と思いきや、目の前には掘っ立て小屋がポツンと建っているだけだった。
コンコン。ノックの音に、中にいた男が反応する。
「あー? 聞こえんなー?」
出てきたのはZebra(fa3503)。網走といえば刑務所だ、流氷だとベタかぶりしてしまったので、Tyrantessや百鬼よりも一足先に、特別監獄に隔離されてしまっていたのだ。
だが、Zebraはすでに寒さでおかしくなっており、牢名主を通り越して獄長になっていた。
「流氷との戦いに、俺ワクワクしてきたぞ!」
テンションのコロコロ変わるキケンなZebraの言葉に、Tyrantessと百鬼はようやく氷山の上にいるのだと気づく。
「なんだよー、三人もかぶったのかよー! おかげで、流氷をリングの上に持ってくるハズが、リングを流氷の上に持っていくハメになっちまったじゃねーか!」
「あー? 聞こえんなー? とうっ!」
Tyrantessの文句も聞かず、小さな氷山の上に飛び移るZebra。
「流氷の上で色々し、落水したり流されたりしなければ俺の勝ちだッ! というわけで、奇術師Zebraのマジックショー! まずはシルクハットからハトを‥‥って、クマーっ!?」
勝手に試合を開始するZebraだったが、シルクハットからハトどころか、流氷に乗ってホッキョクグマが流れ着いてしまったという設定の手違い。しかも、バラエティ的に爪を落としているクマでもない。
「ぐぼはっ!」
Zebraが豪快になぎ払われていたりしたが、それに火がついてしまったのが百鬼である。
「シロクマにばかり、おいしいところは持っていかせませんよ! 神秘のクリオネの舞い、見るが‥‥うわぁ!」
が、次の瞬間には鎮火である。というか、単に動きづらい着ぐるみでもつれて落ちただけの話である。落下中、海の男がライフジャケットを嫌う理由のよく分かった百鬼であった。
「ウサギが寂しすぎると死んでしまうように、クリオネは流氷がなくなると死んでしまうんですよー‥‥よー‥‥よー‥‥」
そのまま姿の見えなくなる百鬼。こうして、百鬼はオホーツクに消えた。あとは、東京湾で水死体で発見されるのを待つしかない。
「フフ、流氷上のセットの許可をとった上、野生動物と戦ってもいいなんて、ニホンも柔らかくなったもんだ‥‥って、柔らかすぎー!」
順調にZebraも海に叩き落され、早くも第2の殺人事件が起こってしまった。どちらかというと、ただの快楽自殺の気がしてならないが。
「やれやれ、やっとコレで落ち着いてメシが食える。網走といったら、アブラガニだもんな。そう、アブラガニだ! タラバじゃないぞ‥‥って、それ以前の問題じゃねーか!」
カメラを独り占めしたTyrantessがクッキングをはじめるが、食材であるカニは氷山の氷の中に埋め込まれていた。
ギターでガッツンガッツン氷を砕きにかかるが、当分カニにたどり着けそうにはない。
『‥‥ふぅ、恐るべしは医学の力。土石流どころか、鉄砲水のようでした‥‥』
Vが終わりかけたところへ、すっかり萎びたサトルがようやく戻ってきた。
「ったく、凍え死ぬかと思ったぜ‥‥」
放送席の横では、Tyrantessが湯船に浸かっていた。熱闘風呂用の透明の浴槽だったが、どう見えるかとか気にせず温まっている。
一応、『撮影のため、バスタオルを使用しております』のテロップが入るが、どう見てもモザイクにしか見えないのは気のせいか。
「えーん、痛いよー、おねーさーん」
Zebraも、クマの爪あとをナース服姿の月見里に見てもらっていたので──診てもらうのではなく、文字通り見せるだけであるが──もはやデレデレしているだけである。
「ところで、なんでナース服なの?」
「よくぞ聞いてくれました! 網走→あ走り→あ行が走る→あいうえお走る→あいが走る→白衣の天使、ということなんですよー」
二人が激戦の傷を癒している中、百鬼は水死体の体続行のまま水槽に浸けられたままだった。しかも、東京直行便用に磐津が黙々と梱包してしまっている。
「暴れ尻じゃーッ!」
しかし、その和んだ空気がいけなかったか。DarkUnicorn(fa3622)が乱入してくる。
いや、暴れ馬のように言っているが、どう見てもただの痴女闖入でしかない。なぜなら、尻丸出しのくノ一コスチュームだったからだ。
「網走→網ストッキングを履いて走る人→忍者というコトで、伝説の忍者網走仮面なのじゃ! 網ストッキングにウサミミはエロスのシルシ!」
ビシっとポーズをキメるDarkUnicorn。尻丸出しでキメられても困るのだが、そもそも尻丸出しの説明になっていない。
「あと、網走→あばしり→あばれしり→暴れ尻というワケなのじゃ! って、見せれば見せるほど強くなるなんて、馬仮面なのじゃ! 馬は馬でも、わしは一角獣なのじゃ!」
ついつい何の獣人であるか口走ってしまうDarkUnicornだったが、頭のキケンなお姉さんの電波なお言葉としてスルーされる。
『えー、最初の試合は竜華選手ですね?』
さすがのサトルも目が釘付けどころか目をそらす中、何事もなかったかのように竜華が入場してくる。
「網の中を走ると細分化できる。つまり網走とは‥‥えー、なんだって!?」
『えー、意訳すると網を大量使用した障害物競走ということのようです!』
勝手に驚く竜華のセリフを、どこをどうやったか解読してみせるサトル。なにはともあれ、競技開始である。
「えいっ!」
まずは無難に、普通に網の下をくぐる竜華。つづく跳び箱にも網がかぶせてあったが、普通に跳べばいいだけの話である。
そして、網タイツの置かれた着替えゾーンへと差しかかる。
『おや? 着替えゾーンなんかなかったハズですが‥‥』
「ああっ! それはわしのなのじゃ!」
上半身だけくノ一コスの、エロゲのくノ一状態になってしまっているDarkUnicornが悲鳴を上げる。こんなもん着てられるかと脱ぎ捨てたものを、竜華に着られてしまったのだ。
「網タイツ+バニーコートとは‥‥わしがやりたかったコトなのじゃ!」
だが、竜華は障害物競走中なので走り去ってしまっている。
「もうこれ以上救護活動もなさそうだし‥‥一足早いバレンタインに、チョコなどいかが♪」
その様子を眺めていた流氷組だったが、月見里がチョコレートを3つ差し出す。ZebraとTyrantessの分。残る1つは百鬼が梱包済みで食べられないので、磐津の分となってしまった。
「ふむ、これはアーモンドチョコだな!」
「おっ、バーボンが入っているじゃあないか」
TyrantessとZebraが普通においしく食べる中、磐津の様子だけがおかしい。
「‥‥‥‥ブフッ!」
悶絶しながらも、無言を貫き通す磐津。ここまで無言を貫き通すAD魂、さっぱり分からない。
「網走よりちょっとだけ北になるけど、ロシアンチョコとなっております♪ そちらは火を吹く激辛唐辛子味、大当たりでーす♪」
そう言いながらも、自分は優雅にチョコケーキを食べている月見里。
「‥‥AD=パシリ=あばしり、ガクッ」
そんな中、ついに言葉を発した磐津が力尽きた。
「でもほら、救護班がいるから安心でしょ?」
ニコリと微笑む月見里。だが、TyrantessとZebraは、悪徳医療の影を確かに見たという。
そして、まだつづいている障害物競走である。竜華の次の周回に向けて、DarkUnicornが新たな障害物を仕かけていた。ニポポ像ロデオマシーンである。
「けしからんのッ! これみよがしにカクカクしおって、なんたる破廉恥な奴じゃ!」
ロデオマシーンの座部にニポポ像をそびえ立たせた、大変けしからんマシーンであった。
「けしからんのはお前だッ!」
たまらずえらい人の飛び蹴りが炸裂する。そして、順位発表へとなだれ込んでごまかした。
1位 DarkUnicorn 7
2位 竜華 3
3位 月見里神楽 1
そのわりには、かぶらなかった人たちの間での露出度で順位が決まったような気がするのは、気のせいだろうか‥‥。