芸人プロレスごっこ王2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/13〜02/15
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が、ダーツではなくやっぱり金棒を手に姿を現す。
「さて、北海道は網走からスタートした日本縦断シリーズ。今回は若干南下して沖ノ鳥島で行おうと思う!」
「いきなり最南端じゃないですかっ!?」
いつの間にかダーツで穴だらけになっていた日本地図ボードをバンバン叩きながら、文句を言うスタッフ。無論、えらい人も引き下がりはしない。
「バカヤロウ! いつ終わってもいいように、とりあえず北と南の端は押さえておくんだよ!」
「これはこれは‥‥そんな危機管理、えらい人じゃありませんよ!」
なんだかんだ言いつつもえらい人の傍若無人っぷりに魅かれてついて来たスタッフは、フルスイングを捨ててバントをしでかすような様に大号泣である。
「いいだろうが‥‥番組の金で、とりあえず北海道と沖縄に行っておきたい年ごろなんだよ!」
「えっ? 沖ノ鳥島は東京都ですけど‥‥」
「ふんぬっ!」
思わずツッコミを入れたスタッフを、金棒のフルスイングでお星さまにするえらい人。蘇ったスイングに、残るスタッフは拍手喝采である。
「‥‥というわけで、尊い犠牲の上で、日本と沖縄の最西端の与那国島になったわけだが‥‥なにか問題でも?」
「サー、ノーサー!」
蘇りしえらい人に、スタッフ一同直立不動で応じる。
こうして、北海道につづくは沖縄と、寒暖差を気にせずに第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第2戦がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・沖縄県は与那国島で収録を行います。
・『与那国島』をテーマに試合をしなくてはなりません。『与那国島』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・海上、海中を利用しても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、先の見通しが立たないくらい先のことです。
・とりあえず、序盤はポイントのインフレにはなりませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はそれなりに避けましょう。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・XmasSP 12月25日 07:00〜
・新春SP 01月01日 07:00〜
・前夜祭 01月29日 07:00〜
・節分SP 02月03日 00:30〜
・第1回 02月10日 08:00〜
●リプレイ本文
『みんなー! 琉球はいいところだぞー。僕たちは来ている、君たちは来ていない。勝ち組、負け組の歴然たる差だね☆』
陽気にハイテンションなサトル・エンフィールド(fa2824)の実況どおり、本日のプロレスごっこは沖縄県与那国島にやって来ている。
なお、勝ち組は自費で沖縄旅行、負け組はTVで行った気になる、そしてボロ負け組はプロレスごっこで強制連行であるのは、現代の格差社会において今さら言うまでもない。
『さあ、今回の選手はみな謎に包まれています。なぜか? 女性が一人しかいないので、どうでもいいからです! ああ、こんな悲しい戦いがかつてあったでしょうか!?』
悲嘆に暮れるサトルの様子とは裏腹に、ヨシュア・ルーン(fa3577)は冷静にサトルを観察していた。
「あんな空元気を出して‥‥女性がDarkUnicorn(fa3622)さんしかいないわけで、自分以外全員が女性になりますようにって念を込めてるみたいですが‥‥ムダムダムダぁ! でしょ」
サトルをあっさり斬って捨てるヨシュア。
「大体、女性しかいなければ自分がモテると思い込んでいるコトが、大きな勘違いですよね‥‥」
サトルが本当にそんな念を送っているかは分からないが、少なくともヨシュアは女性用ワンピース水着を着ている。
「だから、むしろ自分が女性になれ! と。そうすれば、モテモテですよ」
どう考えてもヨシュアの方がより大きな勘違いをしていたが、唯一の本物の女性であるDarkUnicornはといえば、より幼女趣味にスク水である。胸には『ひのと』と書かれ、頭にはどんな格好でも忘れないウサミミをアクセントに。
そして、砂山を作って遊んでいた。いや、ただ遊んでいるわけではない。今回のネタをどうしようかと、悩んでいたところである。
「与那国→沖縄→海→基地→V字滑走路→スリングショットの水着→収める胸がない→ヤンキーゴーホーム‥‥ムムッ!」
勝手な連想で、怒りだけを募らせていくDarkUnicorn。そこへ、フラフラの百鬼レイ(fa4361)がやって来る。白衣を着て、医者を演じているつもりのようだ。
到着して随分経つが、なぜか乗り物酔いの状態が続行している百鬼。無論、それはただ打たれすぎの皮をかぶったエロ狼を演じているに過ぎない。現に、他の男性出演者には目もくれず、一直線でDarkUnicornのトコロへ来た。
「はーい、胸の音聞きますから、胸出してくださ〜い☆」
百鬼は急にハキハキとしゃべり出すと、つい流されてDarkUnicornが胸を出すのを待つまでもなく、ひょいと胸元の水着を引っ張って覗き込む。
「〜ッ!?」
「えーと、別に着やせするタイプではなくそのまんま、と‥‥ぐはっ!」
最低Cカップ以上でないとまったく反応できないというオッパイ星人の百鬼が、残念そうにカルテに何やら書き込もうとしたところで、悲鳴が上がった。
百鬼がついに怒りの鉄拳を食らったからではない。それよりも早く、タケシ本郷(fa1790)が飛び込んできて、吹っ飛ばされてしまったのだ。
そんな本郷はレフェリーとしての参加だったのだが、打たれすぎの進行により、ここが本物のプロレスのリングだと思ってしまっていた。
「〜ッ!?」
というわけで、本郷が百鬼同様に水着の中を覗き込むのは無論のこと、さらにペタペタと身体を触りまくりである。ごっこではなく厳密なプロレスルールのレフェリーチェックなので、凶器の持ち込みがないかのボディチェックも厳しいのだ。
「うむ、凶器はないようだ‥‥凶器になりようもないか‥‥ぐぼはっ!」
黙って聞いていればと、ついにDarkUnicornが動く。仕込みビーチパラソルから、鉄塊のような馬斬包丁を抜き放つと、それをブンブン振り回す。
「Oh my fuckin’ God! Suck! Damn it!」
沖縄方言で文句を言おうとしていたDarkUnicornだが、気づけばなぜか海兵隊ご用達のスラングバリバリの罵詈雑言を浴びせていた。
「はーい、口を大きく開けて〜。ハイ、じゃあベロ出して〜」
そんな隙に、百鬼は今度はヨシュアの診察をしていた。先程の本郷のタックルの衝撃で、女性用水着さえ着用していれば女性とみなせる域に達してしまったようだ。
「じゃあ、これをくわえ‥‥ぐはっ!」
だが、またも本郷に吹き飛ばされる百鬼。今度はタックルではなく、単にDarkUnicornから逃げてきてぶつかっただけであるが。
「〜ッ!? 凶器を持っている!」
本郷の目がキランと光ったかと思うと、鋭くヨシュアの股間を握り締めていた。
「今はまだ凶器じゃないとごまかせるかもしれない。だが、数年後には確実に女泣かせの凶暴なシロモノになる! ほら、確認してみた方がいい」
追ってきたDarkUnicornに、ヨシュアのを握れと強要する本郷。お子ちゃまなら平気なDarkUnicornとはいえ、さすがにこういう形で触れるほどヨゴレ切ってはいない。
「だが! 俺もまだまだ現役、現役なのだよッ!」
もはやDarkUnicornに興味はないと、今度は自分のモノをヨシュアに握らせる本郷。
DarkUnicornはその光景にクルリと背を向け、サトルの横に座る。
『やっぱり、悲しい結末になっちゃいましたね‥‥』
「キーマー、彼〜じゃ!」
別に本郷が毛深かったというわけではない。単に、キーマカレーが食べたくなっただけのことである。
そんなほのぼのとした海辺の様子とは異なり、水中戦は熾烈を極めていた。
まずは、ADの磐津秋流(fa5271)だ。間違って潮に流されて国境を侵してしまわないよう、SGGD──スーパーグレートゴールダイバーになっていたのである。
しかし何が一番スゴいかといえば、水中戦なのに水中にいないのである。
「‥‥ッ?」
セスナに乗って上空2千メートルまで来てしまったところで、ようやく何かおかしいことに気づく磐津。
「‥‥ッ!」
ついに、磐津が手違いでスキューバダイビングがスカイダイビングになっていることに気づく。装備を身につけている段階で気づけという話であるが、来てしまったものはしょうがない。
無論、ADにインストラクターとタンデムという金をかけるマネはしない。そのまま大空へと放り投げられるのみである。
「‥‥ッ!?」
それでも悲鳴一つ漏らさなかったが、順調に流されていく磐津。潮には流されずとも、風には流されるのである。
だが、SGGKがボールごとゴールに押し込まれることが許されないように、SGGDである磐津も自分が国境侵犯をしてしまうことはしないだろう‥‥という希望的観測のもと、普通に飛行場に引き上げていく残りのスタッフたち。
そんな磐津はさておき、今度こそホントに水中戦となるのか? ちゃんとスキューバダイビングの格好をしているこちらは、白海龍(fa4120)である。
「与那国といえば、ダイビングデス! そしてダイビングといえば、ハンマーヘッドシャークデース!」
ダイビングといえばスカイダイビングの磐津の例もあるが、こちらはなぜかロープで吊るされていた。
『さあ、日本最西端で歴史に残る戦いがはじまろうとしています! 何の歴史かって? 自分史にだよ! 決まっているじゃないか』
「うむ、チバリヨーなのじゃ」
他人事だけに、ようやくちゃんとした解説をするDarkUnicorn。解説芸人のヨシュアはといえば、本郷の執拗なまでのレフェリーチェックがつづいていた。
「‥‥って、なんでぶら下げられているデースカー?」
だが、当の本人はそれどころではない。さらに運び込まれる釣鐘。
『人の頭が釣鐘に挑む! さあ、これであなたも歴史の証言者だ!』
白海龍がハンマーヘッドなどと言うから、白海龍の頭がハンマーということになってしまったのである。
「鐘を突くのは、ハンマー言いマセン。撞木といいマス‥‥って、シュモクザメでいいんじゃねーかデース!」
文句を言ってたハズが、一人納得してしまう白海龍。こうなったら、もう突くしかなくなる。
「柿食えば、鐘が鳴るなり、4792‥‥あ、2はじと濁らせるのが粋というものですよ」
鐘を突く役として、バッカス和木田(fa5256)が意気揚々と入ってくる。
『ああ、人はシュモクザメという大自然の脅威の前では、無力に脳漿をぶちまけるしかないのでしょうか?』
「ヤナワラバー、ゴルドバーじゃ」
どう考えても人の力だったが、あくまでも大自然と言い張るサトル。DarkUnicornもまったく関係のない解説どころか、言葉通りに悪童に指示して金塊のハリボテを運び出させているほどである。
「ノ〜! これは戦いではない、一方的な虐殺でゴザール!」
だが、白海龍に救いの天使は舞い降りた。なんとかパラシュートを広げた磐津が、降下してきたのである。
「‥‥ッ!」
ゴーン! 鈍くも趣のある音が響き渡る。磐津の見事なダイビングヘッドで、自殺点である。むしろサドンデスである。
「見えた、見えましたよ! 4792が、見えた大陸、コロンブス!」
その衝撃に、どんなヴィジョンが見えたのか? 和木田は意味不明の言葉を残し、白海龍からスキューバの装備を引っぺがして、そのまま海へと走っていく。
和木田も去って、これでようやく助かったかに思えた白海龍だったが、入れ替わるように百鬼がやって来る。
「この患者は! 手の施しようのない打たれすぎ症候群‥‥だが、自分の手にかかれば‥‥」
相変わらず医者キャラ続行中の百鬼。だが、トキというよりはアミバの目をしている。
「高等テクの吊るしの上、吊るされたままのオペですか‥‥しかし、自分もマムシのナッキーと呼ばれた男。やっちゃいますよ!」
百鬼は蛇獣人だったが、獣化後はサンゴヘビなので、マムシは本当に何の関係もない。まあ、獣人ですとは言えないので、どちらにしろ関係ないのだが。
「最初はちょっと痛いかもしれませんが、すぐに気持ちよくなりますからね〜」
「ンー! ンー!」
鋭く亀甲縛りを開始する百鬼。すでに猿ぐつわを噛ませてあるので、白海龍は何も言えない。
そして、やり遂げた医者の顔をする百鬼。だが、そこへ本郷が三度駆け込んでくる。
「ロープは反則だ! というわけで、凶器というものはどれだけキケンか勉強するために、本物の凶器を触って確認するのだッ!」
本郷が百鬼に指差した凶器とは、やはりヨシュアであった。すでにヨシュアはシクシク泣いていたが、構わず強要する本郷。
おかげで、肝心の縛られた白海龍はといえば、無事に放置プレイに突入である。
一方、海に入った和木田はといえば、海底階段を目指していた。
「見えた、見えましたよ! 周囲数百メートルにおよぶ巨大石‥‥これが先ごっこ文明時代の遺跡なのですね」
思わず見入ってしまう和木田。ボンベの残量を確認したりはしない。
そんな和木田はさておき、陸ではすっかり日焼けしたえらい人が登場し、順位発表である。
1位 白海龍 7
2位 百鬼レイ 3
3位 磐津秋流 1
「あっ! なのじゃ」
そのままえらい人は退場していくが、DarkUnicornが何かに気づいて声を上げる。
「そうじゃった! 沖縄に来た証に、たっぷり日焼けして帰るんじゃった。というわけで、サンオイルを塗ってくれなのじゃ!」
こうして、サトルはDarkUnicornの肌にオイルを塗りたくるという役得にありついた。対して、ヨシュアは本郷の百鬼向け凶器講習に駆り出されたままである。
そして、釣鐘の横に倒れる磐津とその横に吊るされた白海龍は、絶賛放置プレイ中なのでスルーとして、問題は海に消えたままの和木田である。
「4792作ろう、鎌倉幕府! この遺跡の年代を特定しましたところ、一部の地層は中世時代のものと判りました。中世、鎌倉幕府が開かれてます。つまりここが義経の…え? 4792にしようと義満南北統一!? ああ、ここは一休さんと将軍様のとんち比べの‥‥」
とりあえず、末尾が92年の出来事がすべて終わるまで、戻ってきそうにもなかった。
そのせいか、すでに撤収準備に入っていたが、誰も帰ると伝えに行こうとはしなかったという。