ムチャキング11WDaySPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/15〜02/17

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。話の内容は、スポーツイベント便乗チームにあって唯一スポーツと関係のなくなった企画、ムチャキングについてである。
「復活したムチャキングだが、復活を印象づけるためには、立てつづけにやっといた方がいいと思う」
「そうですね。一回だけやってまた間が空くと、今度こそ打ち切られたと思っちゃいますもんね」
「そこでだ。前回は熱湯風呂となったわけだが、今回はホワイトデーで行く!」
「えっ!? ホワイトデーは、3月14日ですよ? まだ大分先ですよ?」
 ホワイトデーだけでも企画内容はさっぱりなのだが、そんなことよりもまず日付がおかしいコトからツッコミを入れていくコトにした後輩。
「この目まぐるしい今の時代、1ヶ月も返事を待っていられるか? そんなに待たせるなんて、失礼じゃないか。かといって、その場で返事をするのも、脊髄反射のようでイカン。つまり、家に持ち帰って、一晩考えさせてください、というのがエチケット的に一番正しい」
「そういうもんですかねぇ‥‥で、ホワイトデーって具体的に何をやるんですか?」
 納得できたかどうかはともかく、本題の企画内容を尋ねる後輩。
「ホワイトデーで、相手に断りを入れる。つまり、断り方のムチャ度を競い合うのだ!」
「ムチャに断るって‥‥さっき、エチケットがどうこう言ったばっかじゃないですか!」
「人間、いつまでも純白でいられると思うなよ! 汚れちまってんだ、俺たちは!」
「まあ、ヨゴレだとは思いますけど‥‥」
 こうして、いかに異性の告白をムチャに断るかというムチャキングがはじまることとなった。

『今度こそムチャジャック決定戦? ムチャキング11』
 ホワイトデーに異性の告白を断る体で、その断り方のムチャ度を競い合います。
 男性、女性、その他、一切関係なく参加できます。同性から告白された体でも構いません。
 チョコレートを贈った側は、断る順番ではない他の参加者が行ってください。
 断りのムチャ度、しかし微笑ましさ(深刻ではない方がよい)、リアクション芸としてのあり方、それらのよしあしを競い合います。
 基本的にスタジオで収録しますが、ロケのVをスタジオで流すことも可能です。

事前に用意される小道具
・大概のものは用意されます。持ち込みも可です。

注意点
・死んではいけません、殺してもいけません、法は守りましょう。
・それ以外はご自由にどうぞ。でも、スタッフがルールブックです。

ムチャジャックの選出について
・優勝者には、職業としてムチャジャックを名乗る権利が与えられます。
・ムチャジャック選出は、スタッフの独断と偏見による判定で決まります。
・女性でもムチャジャックです。
・万が一、ムチャキング、ムチャ女王様が優勝した場合は、おもしろくなる方向で新たな職業が決まります。

現在の格付け
・ムチャキング :チェダー千田(fa0427)
・ムチャクイーン:草壁蛍(fa3072)(現ムチャ女王様)
・ムチャジャック:空位

過去の結果
・第1回 七枷伏姫(fa2830)が優勝(ノンタイトル戦)。
・第2回 夏姫・シュトラウス(fa0761)が優勝(ノンタイトル戦)。
・第3回 朱凰夜魅子(fa2609)が優勝(ノンタイトル戦)。
・第4回 佐渡川ススム(fa3134)が優勝(ノンタイトル戦)。
・第5回 Tyrantess(fa3596)が優勝(ノンタイトル戦)。
・第6回 チェダー千田(fa0427)がムチャジャック、草壁蛍(fa3072)がムチャクイーンを獲得。
・第7回 チェダー千田がムチャキングを獲得。
・第8回 チェダー千田がムチャキングを引き分け防衛。
・(【AoS】海プロごっこにて、草壁蛍がムチャプリンセスに降格)
・第9回 チェダー千田がムチャキングを防衛。
・(プロレスごっこ新春SPにて、草壁蛍がムチャ女王様に昇格)
・第10回 片倉神無(fa3678)がハードボイラーを獲得。

過去の放送スケジュール(最近5回分)
・ムチャキング6 06月18日 22:30〜
・ムチャキング7 07月17日 08:00〜
・ムチャキング8 08月08日 07:00〜
・ムチャキング9 10月07日 07:00〜
・ムチャキング10 02月07日 08:00〜

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa4729 キューレ・クリーク(25歳・♀・豹)
 fa4941 メルクサラート(24歳・♀・鷹)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

「フフ‥‥我が配下選抜に、よくぞこれだけ集まってくれた!」
 現ムチャキングのチェダー千田(fa0427)が現れると、チェダーのくせに偉そうに悠然と周囲を見下ろす。むしろキングが最底辺ともいえるのだが、そのへんは個人の価値観の問題なのだろうか?
「さあ、この俺に‥‥あ、はい。こちらへ、どうぞどうぞ」
 キング余裕の開会宣言ではじまるのかと思いきや、そのチェダーが急にヘコヘコしだし、羽曳野ハツ子(fa1032)へと場所を譲ってしまう。
「諸君、告白を断る‥‥という段階で、それはすでにムチャではない。ごめんなさいと言うだけなど、誰にでも可能。真のムチャファイターであるならば、ここは誰の告白であれ『断らない』のが正解ではないのか!?」
 早速、演説口調の開会宣言をはじめる羽曳野。
 それにしても、チェダーは何をやっているのか? 番組を前にして、羽曳野からチョコカレーをプレゼントされながら受け取らないというムチャをリアルにしてしまっていたので、すでに大変低姿勢なのである。
「今回告白された場合、恋人がいるにも関わらず、私はそれを断らない! この番組放映を彼に見られてしまうかもとか、そういうことも考えない! 今後、ちょっと困ったトライアングルができてしまうかもとか、そういうことも考えない! スタッフがうまいことオチをつけてくれるんじゃないかという、甘いことも考えない!」
 早くもムチャっぷりを全開披露の羽曳野。一体どうなるのかと、ついつい全員が聞き耳を立ててしまう。
「そういう先のことはすべて後回しにして、とりあえず今現在、ムチャな感じでいられればそれでよい! 年齢、性別、職業を問わず、すべての告白を受け入れる。当然、それによって生じる今後の人間関係の変化、および諸々の軋轢に関しては、自分で責任を取る!」
 羽曳野がご静聴ありがとうございましたとばかりに、マイクを叩きつけて壇を下りていく。そこへ、感極まったチェダーとZebra(fa3503)が殺到してくる。
「わしが先じゃ!」
「いや、わしの方が先じゃ!」
 1ヶ月ぶりの某塾の門の前並みの勢いだが、何がチェダーとZebraをそこまでヒートアップさせているのか? 『断らない』を勝手に脳内補完して、彼らの中では羽曳野は肉体関係を拒まないというコトになってしまっていたのだ。
「フフ、相変わらずだな、この二人は‥‥」
 そう言いながらも、女性であるキューレ・クリーク(fa4729)までもが、男性陣が殺到する中にわざわざ入ってきていた。悪キューレだけあって、男の加齢臭フェロモンで悪酔いする悪ノリであるが、ちゃんとカリビアンな船長の格好であるあたりはジャック魂を忘れていない。
 そして、唯一10代である雨宮慶(fa3658)は、そんな彼らをタメ息交じりに見つめていた。雨宮以外は四捨五入30以上ばかりと高齢化が進んでいるので、ヨゴレた大人たちばかりなのである。
 そんなことよりも、その喧騒にキューレまで加わっているというのに、残る男性陣は何をしているというのか?
「悪の秘密結社に属する者として、年齢が二桁に達したような人物は対象外だ!」
 遠巻きに喧騒を眺めている長瀬匠(fa5416)が、ボソリと呟く。今のご時勢、摘発されそうな趣味の人‥‥というわけではない。古くからの伝統にのっとり、悪のジャックは幼稚園のバスジャックと相場が決まっていると言いたいだけなのだ。
 だから、長瀬のセリフに児ポのニオイを嗅ぎとってしまうのは、それはあなたの心が汚れているからだ。純粋な悪とは、むしろ清らかですらあるのだ。
 というワケの分からない主張はさておき、こんなときこその混雑対応、ガムテープ職人の古河甚五郎(fa3135)の出番である。今からバミっても遅いんじゃ? という話もあるが、そんな小さなコトは気にしない。
「フラグマニアの方から来ました、プラグマニアの古河です。プラグといっても、バイクのプラグではありません。アナルプラ‥‥ぐはっ!」
 古河がガムテープではない何かを取り出そうとするが、混雑内のZebraに吹き飛ばされて事なきを得る。
「まさに、展示場駅のロータリーの痛車のごとしです。せめて、ローター入れてからの前貼りをガムテで‥‥ぐはっ!」
 今度こそちゃんとガムテを取り出す古河だったが、ピンク色の何かまで取り出そうとする始末。だが、先に羽曳野にお邪魔するのは俺だとばかりのチェダーの怨念が勝ったのか、またも混雑から押し出されて事なきを得る。
「ああ! やはり、自分一人ではヨゴレどもを捌き切れません! こうなったら、このモザイクガムテでモザイク芸人を一匹ずつおびき寄せてみましょう」
 一匹ずつも何も、モザイク芸人はチェダーしか生息が確認されていない。
「ふつつかものだけど‥‥どうぞよろしくね」
 そんな間にも、混雑の中央でついに三つ指をついて深々と礼をする羽曳野。
 だが、羽曳野が頭を上げたとき、そこには誰の姿も残っていなかった。
 一体、そのわずかな時間に何があったのか?
 まずはチェダーであるが、まんまと古河のモザイクガムテにおびき出されてしまっていた。
「ハッ!? 俺は何を?」
 チェダーが気づいたときには、すでに素っ裸にモザイクガムテをグルグル巻きという姿になっていた。
「別に遠慮しなくていいのですよ? サイズと粘着力は多種そろえていますから、さあお好きなものをお貼りください♪」
 まるでチョコの変わりのように、様々なモザイクガムテを並べる古河。思わず、ヨダレを垂らしそうになるチェダーだったが、必死の思いで耐えている。
「‥‥くっ、俺はヨゴレと結婚した身。君は光の当たる道を行け‥‥さらば!」
 すべての思いを断ち切って、古河とガムテに背を向けるチェダー。だが、どうしても身体がフラフラと吸い寄せられてしまう。
「駄菓子下肢! 二人は惹かれ合う。駄菓子下肢! 闘う運命」
 駄菓子下肢──逆接の接続詞を二つ並べて当て字にしたわけではない。うまい某の穴に通せるくらい細い粗末なモノ、という意味である。
 つまり、まだプラグマニア拡張の終わっていないチェダーでは、若干ムリヤリの格闘状態になってしまうという意味である、いい意味で。
「アッー‥‥」
 そのままチェダーが古河に暗がりに連れて行かれ、真っ先に脱落である。
 そして、Zebraのところにもメルクサラート(fa4941)がやって来ていた。こちらはちゃんと男女、しかもメルクサラートはお淑やかにチョコを差し出している。
「俺はこれから、この日本で彼と籍を入れるから、おつきあいはムリなんだ。そう、このマイスウィート☆チェダーちゃんがねッ‥‥って、いない!?」
 チェダーがいるからとメルクサラートを無下に断るZebraだったが、肝心のチェダーがカメラに収まっていないというか、収められないというか、すでに別の男の腕の中である。
 残念ながら男だらけのトライアングルが完成しないので、ここは鋭く雨宮を呼び寄せるZebra。
「‥‥なんですか?」
 雨宮が来ると同時に、上着を脱ぎ捨てるZebra。中から出てきたのは、セーラー服であった。
 もちろん、その下にはマッチョな男の肉体。どちらかといえば、海兵隊でほうれん草なセーラー服である。
 が、古きよき日本の女子中学生スタイルを演じ切れているとただ一人確信しているZebraは、両手でチョコを雨宮に差し出している。
「受け取ってくださいっ!」
 裏声で熱演するZebraだったが、雨宮は冷ややかな目でため息を吐くだけだった。
「身体にオイル塗りたくって、悦に入ってそうな人は嫌です! こういう本のネタになれるようになってから、出直してきてください!」
 表情だけは満面の笑みで、何やら本を投げつける雨宮。その本は男性同士が絡み合うものであったが、マッチョ系ではなく耽美系であった。
「ひっどぉーい! あたしのどこがそんな風に見えるのよぉー!」
 キャラ継続で、ヤケになって油を塗りたくるZebraだったが、そこへ雨宮がトドメの一撃を放つ。
「えーっと、いい見本かどうかは分からないけど、まずはあれで勉強してください」
 そう言って、Zebraを舞台袖に放り投げる雨宮。雨宮はチェダーと古河のところに投げたつもりだったが、手元が狂って小道具の山が置いてあるところに行ってしまった。
「あーん、待ってくださーい‥‥」
 それをメルクサラートが淑やかに追うが、小道具の中に拘束具が置いてあったことで事態は一変する。
「あら、こんなところに拘束具? それでは、仕切りなおして‥‥」
 拘束具をZebraに装着すると、メルクサラート自身も早着替え、一瞬でボンデージな女王様に変身である。
「Zebraさん。よろしければ、このハイヒール型のチョコをさし上げてもよろしくってよっ!」
 ピシッ! パシッ! 小気味よい乾いた音が響き渡る。衣装と同時に、メルクサラートの性格も完全に変わってしまっていた。
「マイスウィート☆チェダーちゃん‥‥この押し寄せる痛みという快楽に‥‥俺は、もう‥‥落ちてしまいそうだ‥‥」
 こうして、チェダーにつづいてZebraも脱落である。
「ついに、ジャック──占拠成功!? って、マズイわね‥‥」
 気づけば一人勝ち残ってしまったキューレだが、このままだと羽曳野とHしなくてはいけなくなってしまうと、慌てて逃げ出す。
 頭が悪キューレでも、今ここにある危機くらいは分かるのである。まあ、実際にはそんなことになるハズはないのだが、そのへんも頭が悪キューレのゆえんである。
 このように、羽曳野が頭を下げている一瞬にしてはあまりにも目まぐるしく起こりすぎだろうというツッコミも一切無視し、誰もいなくなってしまっていたのである。
 こうして羽曳野は孤高な存在、つまりはキングになってしまったのだ。
 だが、前キングのチェダーはそれどころではない。人間ドックでもないのに直腸触診を受ける気はないので、必死の抵抗である。
 こうして様々なカップリングが誕生する中、完全にポツンと取り残される形となった長瀬だが、別に他のカップリングがうらやましくは思えない。とはいえ、今は長瀬一人がカメラに抜かれている状態なので、なんとかしなくてはならない。
「幼稚園バスをジャックする悪役はいても、スクールバスをジャックする悪役は少ない‥‥ということは、私も悪役度を上げる、つまりは対象年齢を上げる苦渋の‥‥」
 そこへ、お色直しを済ませたキューレがやって来る。今度は、背中に『金槌』と刺繍された道着である。
「だって、ハンマーってジャックでしょ?」
 豆の木だろうと、カードのブラックだろうと、プロレス技のハマーだろうと、ジャックが入るならなんでも構わないのがムチャ界の掟。
「ロリペドヒーローは引っ込んでなさい!」
 そして、鋭く突き刺さる言葉が切り裂きジャックである。
「違う‥‥違うのに‥‥」
 案の定、長瀬の心は一言でズタズタである。
 こうして、スタジオはキューレによるジャック一色となった。つまりは、キューレがジャックになった瞬間だった。
 一方の舞台袖組では、メルクサラートとZebraが相変わらずだったが、それゆえにとても放送できる状態ではない。小道具の山が、実はそういう道具ばかりだったのだ。
 そしてもう一方の古河とチェダーだが、何が起こったのか、あるいは起きなかったのかはナゾのまま、とにかくつやつやの古河にすっかりやつれたチェダーが現れる。
「俺は‥‥キングを超え‥‥ムチャジョーカーを目指すのだ‥‥。こんなところで‥‥倒れるわけには‥‥いかんのだ‥‥」
 倒れながらも、なおも這いずって進むチェダー。すでにキングもジャックも決まり、行く先は分からないけれど‥‥チェダーはそのことを知らない。
「キングがないのなら、ジャックになればいいじゃない! それとも、かつての『お笑い芸人』まで二階級降格になる気かしら?」
 孤高のキングゆえの高みの見物となってしまっていた羽曳野が、キューレがジャックなのを知った上で、平然と言い放ちにやって来た。
「それがおいしいのなら!」
 よく分からないながらも、どこまで笑いに貪欲なんだという姿勢を見せるチェダー。
「でしたら、ジャックとジョーカーの合成怪人、ジャッカーがいいと思います!」
 他人事だけに、雨宮まで勝手なコトを言い出す。
「よっしゃ! 合成変質者、ムチャジャッカーになるよ!」
 チェダーがよろよろと立ち上がり、それに乗っかる。慢性的な打たれすぎに、突かれすぎまで加わったか、マトモな判断力は持ち合わせてないが、笑いへの嗅覚だけは残っていた。
「Jack+Joker、つまりはJack+er。まだまだ比較級と未熟者ではありますが、最上級目指してがんばるぞ!」
 チェダーのよく分からないキメポーズで、強引に番組はシメられるのであった。これには、心を折られながらも、長瀬も拍手で祝福だ。
 結局、ムチャキングに羽曳野、ムチャジャックにキューレという二人の勇者が誕生したものの、ムチャジャッカーという手の届かない領域にまで行ってしまったチェダーは知る由もない。
 まあ、気づいたところで、キング、ジャック、女王様3人とも女性だ、ハーレムだ、と悦べるくらいには打たれすぎたままなので、問題はない。
 ついでに言えば、メルクサラートとZebraも後半はずっと登場していなかったが、小道具の山は尽きることを知らなかったので、こちらも問題なかった。