芸人プロレスごっこ王4アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/19〜02/21
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか本来の意味のプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が、ごくごく普通に金棒を持って姿を現す。
「前回鎌倉だった理由は知ってのとおりだが、今回はお台場な!」
「えーっ! 鎌倉どころの騒ぎじゃ‥‥サー、イエッサー!」
その理由とはもちろんロケ費削減問題だったが、あまりに露骨なもはやロケとも言いづらい場所に、スタッフに不満の声が蔓延する。
が、えらい人が金棒のグリップの感触を確認してみせただけで、一瞬で静まり返るのは言うまでもない。
「そうだッ! 理由が前回同様なのは、言うに及ばずッ! 圧倒的じゃないか、我が軍はッ!」
「それって、バラエティのノリでいう圧倒的ですよね? ぐぼはっ!」
せっかく静まったのに、余計な一言で結局金棒のフルスイングである。
「言っただろうが! こんなときこそ、内に目を向けずに外へ打って出るって。だから、国を開けなサーイ! と、お台場を砲台ごと粉砕するッ!」
「自国なんですけど‥‥サー、イエッサー!」
いつから黒船になったのか理解できなかったものの、とりあえず肯定の返事をしておくスタッフ。
こうして、網走、与那国島、鎌倉につづいてお台場と、これ以上の近場となるとどこへロケしに行くんだろう? と思いながらも、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第4戦がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・お台場(東京都港区、品川区、江東区)で収録を行います。この3区内ならOKなので、有明とか新木場とかでも構いません。
・『お台場』をテーマに試合をしなくてはなりません。『お台場』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・この世界にCXは存在しません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、先の見通しが立たないくらい先のことです。
・とりあえず、序盤はポイントのインフレにはなりませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は避けた方がいいんじゃないでしょうか。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・前夜祭 01月29日 07:00〜
・節分SP 02月03日 00:30〜
・第1回 02月10日 08:00〜
・第2回 02月13日 07:00〜
・第3回 02月16日 07:00〜
●リプレイ本文
お台場ロケのハズであったが、なぜか乙女の部屋からスタートする本日のプロレスごっこ。その理由は、すべて阿野次のもじ(fa3092)にあった。
「むにゃむにゃ‥‥もう食べられないよ‥‥zzz‥‥」
ベタな寝言で分かるとおり、阿野次がまだ部屋で寝ていたからである。
「‥‥おはようございます‥‥」
そこへ、声を押し殺した葉桜リカコ(fa4396)が、ハンディを構えた磐津秋流(fa5271)を従えて現れる。気分は、すっかり寝起きドッキリである。
「こ、これは‥‥!?」
葉桜が磐津を呼び込むと、その先にはなぜか食べかけの白米が放置されていた。
「それでは、阿野次さん宅の朝ごはんに突撃したいと思います‥‥」
だが、そのまま口に放り込むわけではない葉桜。まずは赤いカップのきつねうどんを取り出すと、つづいてカセットコンロを取り出してお湯を沸かしはじめる。
「‥‥‥‥」
磐津が実にツッコミを入れたそうな顔をしているが、ADは黙して語らずという哲学の磐津なので、沸騰するまで黙々と待つしかない。
ピーッ! ケトルがやかしい音を立てる。
「むにゃむにゃ‥‥もう飲めないよ‥‥ホント飲めないんだってば‥‥zzz‥‥」
それでも、阿野次は目を覚まさない。その横では、磐津が葉桜に殴られていた。阿野次のお約束の寝言に対し、磐津の方が理不尽に怒られるお約束返しである。
そして5分待ち、普通にうどんを食べはじめる葉桜。
「‥‥‥‥」
相変わらず磐津が何か言いたそうな顔をしているが、心配無用。ちゃんと食べ終わったうどんの残り汁に、白米をようやく投入するのである。
パチッ! だが、ここに来て急に目を覚ます阿野次。だが、葉桜と磐津の姿に驚く阿野次ではない。彼女が真に驚くべきは、時計の指し示している時刻のみである。
「‥‥ヤバ! 今日のお台場の収録、忘れてた!」
どう考えても今現在目の前で収録が行われているのだが、そんなコトは気にも留めない大物っぷり。大物なので、まずは朝食の準備である。
目の前には、慌てて後ずさりした葉桜が置いたうどん残り汁ご飯があったのだが、白米は白米のまま食べるからおいしいのだというこだわりの阿野次はまったく見向きもせず、当たり前のようにセットしてあった炊飯ジャーへと手を伸ばす。
と、ここで着替えのため、磐津だけが普通に追い出される。
「細っ!」
中から葉桜の簡単の声が聞こえてくるが、磐津は肝心のところだけお預けである。
「遅れる〜!」
そうして飛び出してきた阿野次は、炊飯ジャーとかは一切関係なく、何をふざけているのかこんがり焼けたトーストを口にくわえていた。
「‥‥‥‥」
それでも、磐津はツッコミを入れない。ただ、葉桜と二人で阿野次の後を追うのみである。
『僕は今、猛烈に感謝しています。アーメン! いや、エイメン! むしろ、イエメンに移住したいくらいの気持ちで一杯です。時代は今、アフリカですよ!』
「サトルくん、イエメンはアラビア半島で、ギリギリアフリカじゃないよう‥‥」
部屋の主である阿野次のいなくなった乙女の部屋へ、入れ替わりひょっこりとサトル・エンフィールド(fa2824)とヨシュア・ルーン(fa3577)が現れていた。
『そんな解説はいりません! ダイブトゥーヘブンですよ!』
そう言って、早速まだ阿野次のぬくもりの残るベッドへ飛び込むサトル。
「僕はイヤだよ! 僕はまだ小学生なんだ! ヨゴレた大人の階段は、サトルくんだけ上ればいいじゃない! どうせ、もうオヤジ臭いんだから」
すでにくんくんと残り香を嗅いでいるサトルを、冷ややかに見つめるヨシュア。だが、すでに別世界に旅立ってしまっているサトルは、そんなヨシュアを気にはしない。
一方、ロケ先には収録直前の喧騒があった。
「お盆と暮れ、腐女子な方には赤某某のGWも添えて。それは嗜好が不自由な方々が集う場所。だからこそ、すべてから解き放たれて、自由になれる場所でもあるのです、ガムテで!」
ガムテは関係ないだろうと今さら言ったところで、どうにもならない。だって、古河甚五郎(fa3135)なのだから。
「消火栓の周囲は立ち入り禁止なのです。この、赤のガムテで!」
お、ガムテが関係してきたぞ、というところへ、いつの間にか戻ってきていた磐津がプラカードを持ってやってくる。
「‥‥‥‥?」
しかも、お色直しを済ませてゾンビの格好をしている磐津。ODAIBA→BAIO ADということで、ゾンビというわけだ。バイオはBIOだろという話もあるが、ローマ字を使いたいオジサン世代なのである。とはいえ、腐った白濁液をドクドクゾンビとかはやらないのである。
ちなみに、同じく戻ってきている葉桜は、やはり戻ってきていた放送席のヨシュアの隣で、またもきつねうどんを食べてしまっている。
「は〜、仕事のあとの一杯は格別です〜」
しかも、すでにやり遂げた顔までしてしまっている。
残すサトルはナニをしているのか? 天界の歓迎を振りほどくことができず、未だに現れないだけの話である。
そんなことよりも、プラカードである。そこには『ここは最後尾ではありません』と書かれていた。プロレスごっこは基本無観客なのだが、なんのための札なのか?
「東館と西館とガレリアとアトリウムと駐車場と待機列、これらをすべてバミるのです! 『Ohバミ場』というわけですよ‥‥って、苦しいですね。むしろ『ヲタ囲罵』の方がいいのかもしれません‥‥くっくっく」
ヲタを罵りながら囲い込む画を想像し、周囲そっちのけで一人悦に入っている古河。そう、ここは有明のコンベンションセンター‥‥と見せかけておいて、レインボーブリッジであった。
レインボーブリッジで何をやってるんだということはさておき、さらにお台場側のたもとでは、あずさ&お兄さん(fa2132)が出店を開いていた。
「『お台場』の名は、元々『砲台場』に由来するとの説が有名ですが、本当は『王醍羽(おう・だいは)』という華僑に由来しているのです。王醍羽は東京都江東区生まれ。各地のお祭りなどを巡っては色々な物を売り歩くことを生業としており、葛飾出身の業界一の有名人にも匹敵するということから『江東の寅』の異名をとり、広島県呉市を拠点として広くその名をとどろかせたといいます。晩年は生まれ育った江東区へ戻り、ひっそりと暮らしていましたが、かの東京ゴミ戦争の際に高層より崩落してきたゴミの下敷きとなり、無念の最期を遂げたといわれています。なお現在、ゴミの再資源化をリサイクルというのは、東京ゴミ戦争の際に友人の李が自転車操業で王を支えたことに由来するそうです。以上、『マンガでよく分からない日本の歴史(寺根津書房刊)』より」
長々としたあずさの説明がつづいたが、ようは醍羽の伝説、つまりテキ屋に挑むというだけの話である。
「ささ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! プロレスごっこグッズの叩き売りだよっ!」
こうして並べられた品物は、勝手に編集したプロレスごっこ海賊版DVDやら、勝手に持ち出したえらい人の鉄パイプやら、どこかで見覚えのあるノートパソコンやら、怪しげなものばかりであった。
「ああっ、僕のノートパソコンが! Vistaを入れたばかりのノートパソコンが!」
気づいたヨシュアが悲鳴を上げるが、幸いにして通行人全員が遠巻きに知らんぷりをして関わらないようにしていたので、事なきを得た。
そんないつも短命なヨシュアのノートパソコンのことよりも、忙しく働くあずさは気づいていなかったが、お兄さんの姿が見えない方が問題である。
「お台場→Ohダイバー、というコトで、ダイバー服を着て戦うのじゃ!」
古河の隣には、DarkUnicorn(fa3622)が来ていた。が、言葉とは裏腹にダイバー服を着ていない。
「慌てるでない。まずはダミー人形からなのじゃ!」
そう言ってDarkUnicornが取り出したのは、お兄さんだった。いつの間にか、こんなところに連れて来られていたのである。
「番組放送上の安全も考慮し、まずはお兄さんで威力を確認なのじゃ!」
威力とか言っている時点でお兄さんの末路は見えている気もするが、そのまま自由落下し、風に流されて見えなくなる。
「やはりキケンなのじゃ! ダイバー→海人→海女さんと、もう一捻りしておくのじゃ!」
尊い犠牲はさっくり忘れて、突然生着替えをはじめるDarkUnicorn。といっても、上着を脱いで海女Tシャツにゴスロリフンドシという姿になっただけである。
「というわけで、古河もダイバー服を着るのじゃ、ガムテで!」
「そんなムチャな‥‥と言いつつも、ガムテでと言われたら、引き下がれないじゃないですか」
突然DarkUnicornに振られた古河だったが、すっかり乗り気になってしまい、ガムテをバンジーのロープに見立て、早くも落下していく。
「うわーっ! これが伝説の白ラベル、サークルの落ち方ですか。しかし、大丈夫です、ガムテで!」
ブチッ! 当然のことながら、ガムテが支え切れるハズがなかった。ノーロープバンジーというか、ただのパラシュートなしのベースジャンプである。
ちょうどその際、ゆりかもめに乗った、未だにパンをくわえたままの阿野次が見切れた気がしたが、止めるわけにはいかないのでそのままスルーである。
「‥‥ふむ、やはりOh代理は苦しかったようじゃの」
しみじみ呟くDarkUnicorn。一応、すぐに救出に向かったのがわずかに残された人の心である。
「待たせたな〜。でも、私が来たからにはもう大丈夫☆」
一方、まったく繁盛しないあずさの出店だったが、そこへ阿野次が到着する。といっても、何かを買ってくれるというわけでもない。
「というわけで、聞くがよい。EDは『世界で一番GOKKO(遅刻じゃけんVER)』なのだよ!」
単に、勝手に店じまいにしてくれるだけの話である。
「(一千! 一万! 一京! 一垓! 一正! 一極! GO☆GO☆KKO☆)
子供のころ 描いた落書きは (YES!)
いつでもはじまる 冒険のはじまり♪ 」
ちなみに『YES!』という合いの手は、密かに阿野次をストーキングして戻ってきたサトルの手によるものである。
「 ありったけのオヒサマ 吸いこんだお布団に
飛び込みレーシングスカイ♪ そんなGOKKOGOKKOでもいいでしょ♪ 」
そしてサトルはといえば、収録中にも辛抱たまらず写メを撮り出して、磐津につまみ出されているところである。
『これは歴史の証人として、実況として伝えなくては‥‥』
「‥‥‥‥」
だが曲はつづき、ここで阿野次のしゃべりが挟まれる。
「例え寝坊しても、くじけるな! あきらめるな! 始業30分経った後でも、動じず席に座るような鋼鉄の意思が、上司の目をごまかす最良の武器なのだから〜」
こうして、このまま終わるかに思えた次の瞬間、
「ふぅ、あぶないところだった‥‥」
ギリギリのところでえらい人がやって来た。よって、久々の順位発表となる。
1位 阿野次のもじ 7
2位 あずさ&お兄さんのお兄さん 3
3位 DarkUnicorn 1
「第3回のランキング、忘れていたわけではない、ないんじゃよ‥‥」
言い訳がましく言い残して、去っていくえらい人。結局、第3回のランキングは未だナゾのまま、今回の結果のみが伝えられた。
「はい。以上、葉桜からの突撃リポートは終了で〜す☆」
そして阿野次の曲をバックに、葉桜がかなり強引にシメたところで、放送終了となるのであった。