芸人プロレスごっこ王5アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/22〜02/25
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか本来の意味のプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が、初心に返ってかダーツを持って姿を現す。
「よーし、地図を出せー!」
「はいっ!」
しかし、出されたのは当初の日本地図ではなく、TOMITVの局内見取り図であった。
「よーし、行くぞ!」
「‥‥うぉーっ!!」
えらい人がロケ先を決めるべくダーツを構えたところで、スタッフの一人が吠えた。
「情けないっスよ、えらい人ともあろうものが‥‥これでいいんスか!?」
見れば、号泣しているではないか。えらい人のスケールに魅かれてここまで来たのに、それが平然と小ぢんまりとしたマップにダーツを刺そうとしているのが、どうしても許せなかったのだ。
「‥‥そうだったな」
それに心打たれたか、えらい人がダーツを構えていた手をダランと下ろす。
「じゃあ!」
スタッフの顔が、一瞬で輝きを取り戻す。
「ああ、今回は海外ロケだ!」
「ええっ!?」
極端な大盤振る舞いっぷりに、逆に心配になるスタッフ一同。だが、けしかけたのもスタッフゆえ、文句は言えない。
「マカオへ行くぞ! 制作費も稼げて、まさに言うコトなし!」
「稼ぐというのは‥‥やっぱりカジノですか?」
えらい人のさらなる衝撃情報に、聞き返さずにはいられなかった。馬で蔵は建たないのである。馬じゃなくてバカラだし、ルーレットだしと言われるのがオチであるが、それでも言わずにはいられなかった。
「だって、日本に合法的なカジノはないだろ? 非合法なのを放送する気か? この犯罪者どもめ」
「いや、そういう問題では‥‥サー、イエッサー!」
やはり、えらい人には日本は小さすぎた。それだけでいいじゃないかと、先程とは違った質の号泣で最敬礼をするスタッフたち。
網走、与那国島、鎌倉、お台場につづいてマカオと、聞いただけで破滅へ一直線と分かるようなロケ地の変遷だったが、それでも第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第5戦がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・中華人民共和国マカオ特別行政区で収録を行います。
・『マカオ』をテーマに試合をしなくてはなりません。『マカオ』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、4月くらいを予定しております。
・とりあえず、序盤はポイントのインフレにはなりませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。海外とはいえ、死亡、怪我、流血、発砲は避けた方がいい気がします。
ランキング(第1回分まで)
1位 DarkUnicorn(fa3622) 7pt
2位 竜華(fa1294) 3pt
3位 月見里神楽(fa2122) 1pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・節分SP 02月03日 00:30〜
・第1回 02月10日 08:00〜
・第2回 02月13日 07:00〜
・第3回 02月16日 07:00〜
・第4回 02月19日 07:00〜
●リプレイ本文
1 1 チェダー千田(fa0427) 牡38 ムチャジャッカー
2 2 犬神一子(fa4044) 牡49 それでも裏方
3 3 百鬼レイ(fa4361) 牡16 バラエティ慣れしすぎの俳優
4 4 伊藤達朗(fa5367) 牡31 大部屋俳優
5 5 サトル・エンフィールド(fa2824) 牡13 実況芸人
6 6 ヨシュア・ルーン(fa3577) 牡11 解説芸人
7 7 あずさ(あずさ&お兄さん(fa2132)) セン?18 ウェスタキャスト
7 8 お兄さん(あずさ&お兄さん) ヒ・ミ・ツ ボッシュート
8 9 DarkUnicorn(fa3622) 牝21 お色気ヨゴレお姉さん
8 10 プロレスごっこの一番えらい人 不明 偉人
なぜか馬柱からはじまる本日のプロレスごっこ。それは、ここがギャンブルの都マカオだからだ。
「なんといっても海外ですから、これでみんなの実年齢が丸わかりな訳ですよ‥‥フフフ」
なお、この馬柱はヨシュアが勝手にパスポートを覗き込んで収集した個人情報を元に、製作されたものである。それでも分からない部分があるのはさておき。
そこへ、女性用衣装を着せられたお兄さんが、いきなりどこかへと落下していく。
「そう、マカオを反対から読めばオカマですからね! だから、今回はオカマコンテスト! というよりは、女装癖の人たちが集まっているんですけど。でも、これでDarkUnicornさんしか女の人がいないと思っていたサトルくんも大喜びだね☆」
『んなわけあるか!』
サトルが飛び込みざま、ヨシュアにジャンピングニーを放つ。そういうサトルも、巫女の格好をしているのだが。
『これは、えらい人の勝率を上げるべく、隣でスロットを回しているだけなんです。出なくても、悪いのはぼくじゃない。えらい人なんだよ!』
サトルが金ではなく願をかけているだけだとスロットを回す。無論、自腹を切ったりするマネはしない。えらい人同様、番組制作費で増やそうというのである。
そしてサトルの横では、すでに険しい顔のえらい人がスロットを回しまくっていた。無論、出る気配はまるでない。
しかしサトルと反対側の席では、すでにチェダーが目を回していた。
「マカオ料理に中国料理、ポルトガル料理も捨てがたい‥‥ええい、全部持ってこーい!」
スロットの愛称『ハングリー・タイガー』を文字通りに解釈し、負けじと飢えているチェダー。スロットのようにコインを飲み込むのではなく、ちゃんとした食事を食べるだけではあるが。
「くっ、まだ飲むつもり? その貪欲さがアダになると知れ!」
えらい人のスロットマシンを恨めしげに見つめるチェダー。すでにかなりの量を食べているが、ムチャジャッカーだけにすべて胃の中にジャックポットとして蓄えられているのである。どちらもやがて一気に放出されるのだが、えらい人の大当たりより先にチェダーがリバースしたら負けという、大変キケンな試合なのである。
「はい、ドーモ☆ 審査委員長の百鬼です、どーぞよろしくネ☆」
が、そんなチェダーの食いっぷりとは関係なく、百鬼が入ってくる。
『‥‥‥‥』
「え? 何の審査ですか?」
サトルがスロットに熱中してしまっているので、仕方なくヨシュアが応対する。
「さっき、おたくが自分で言ってたじゃないですか、オカマコンテストだって。そこで、『えらい人杯争奪! 第一回“オカマ”グランプリ』ですよ! F3マカオGPのパクリですよ! 女性があまりにも少ないから、ヤケを起こしたワケではありませんよ?」
「サトルくん同様、起こしているようにしか見えませんが‥‥おや?」
二人の目の前の、その貴重な唯一の女性であるDarkUnicornのところへ、あずさが近寄ってくる。
「君のそのメロンパンのように真ん丸な瞳に‥‥ん?」
シルクハットにタキシード、蝶ネクタイでビシッとキメた男装の美少女といった風のあずさが、DarkUnicornに話しかけている。マカオだけに、真顔で口説いているようだ。
だが、DarkUnicornは真顔を通り越して、真剣な眼差しで見つめ返すのみである。いや、マカオ→真顔→真剣と来ていたが、DarkUnicornはその真剣すらも突破してしまっていた。
「よいところに来たの。真剣衰弱で勝負じゃ!」
いきなり、あずさに勝負を吹っかけるDarkUnicorn。
それも、神経衰弱ではない。真剣衰弱である。だから、用意されるものはカードではなく、真剣と模造刀なのである。
「すいません、妹さんと勘違いしてました‥‥」
あまりの剣幕にあずさが逃げようとするが、ガッと腕をつかまれてしまう。
「真剣衰弱とは、鞘に収められシャッフルされた9本の模造刀と1本の真剣の中から、お互い交互に1本づつ選び、斬り合っていく命がけのギャンブルなのじゃ! マル暴な人たちの間でブームになったこともあるというのじゃ!」
これとは別に、抜き身の刀と鞘が合うかどうか? という大人の遊びもあるのだが、女性が当のDarkUnicornただ一人なので、言わないコトにしている。間違ってしようものなら、○人斬りとか別の話になってしまう。
「こんなキケンなギャンブル、国内ではできぬからの。とはいえ、今回は番組。命の代わりに互いの服を斬り合っていくのじゃ。負ければ、恥ずかしい姿を晒すことになるのじゃ!」
脱ぎ慣れているDarkUnicornに対し、あずさにとっては、下着まで切られてしまうとモリマンとの言い訳もムリになり正体がバレてしまう、大変キケンな試合である。
「ぬぅ、あれこそロシアンルーレットのマカオ版、マカデミアナッツのチョコや!」
呆然と見つめる放送席へ突然、空席の解説席を埋めるべく伊藤が入ってくる。
「‥‥し、知っているのか、伊藤ーッ!?」
おかげで、思わずヨシュアが乗っかってしまう。
「うむ。そもそも、マカオゆーたらあれでっしゃろ? ついこの間大騒ぎしてました、菓子業界の陰謀いうあの行事に必須の、チョコレートの材料の‥‥」
伊藤がそこで『それはカカオや!』のツッコミ待ちをするが、百鬼とヨシュアは真剣に聞き入ってしまっている。おかげで、伊藤は引っ込みがつかなくなる。
「つまり、こういうことやッ!」
逆ギレで、なぜかチェダーのところにウェイターとして駆けつける伊藤。
「ぐふっ‥‥なんか、急に甘ったるくなってきた気が‥‥まだ当たらないのかよ!?」
すでに味覚すらも麻痺しかかっていたチェダーは気づいていなかったが、伊藤がチョコレート料理ばかり運んできていたのだ。
「食べ物という尊厳を踏みにじらな、勝ったコトにならへん‥‥そう思っていた時期がありました」
語り出す伊藤の横には、チョコの家があった。売れ残りのバレンタインのチョコを組み上げ、掘っ立て小屋に仕上げる‥‥チョコと戦い、そして伊藤が勝ったハズだった。
だが、伊藤は気づいてしまった。やはり、食べてもらわない限りは決着はつかないのだ、と。
『‥‥スロットなんかより、バレンタインのチョコをだれがどれだけもらったか、早くカルチョをしたいところです‥‥って、チェダーさんの圧勝って何!?』
あまりに出ないスロットに飽きたのか、そこへサトルが戻ってくる。だが、すでにチェダーがぶっちぎりで、しかも今なお記録を伸ばしている始末である。
「うぅ、あまり大っぴらには言えないんですが‥‥もっと確実な『カジノ』を知ってましてね。小金井市梶野町という‥‥ダメ?」
「ダメ」
チェダーがなんとか東京に逃げ帰ろうとしたが、伊藤に押さえつけられていて食べつづけるしかない。なお、チョコの家は、まだ屋根すらなくなってもいない。
「はーっ!」
一方、真剣衰弱の方である。あずさがようやくやるしかないと意を決すると、DarkUnicornに向かって剣を振るう。
「〜ッ! やりすぎなのじゃ!」
バサッ! ハラリ‥‥あずさは加減が分からずにザックリいってしまい、大惨事である。
大惨事といっても、本当に身体を斬られてしまったとかではないのだが、顔に傷を書き、半分白髪で黒マント、片手に毒々しいキノコを持った医者が駆けつけてくる。
それまで役作りのためかずーっとブラックジャックをやっていた犬神が、ついに立ち上がったのだ。
「被り芸人の下半身すらも5億で治す、ドクターKとは俺のことだ」
ドクターKのKは一子(カズシ)の頭文字をとってKなので、三振をとったり、枕にスーパーがついたりはしない。
「なるほど‥‥確かにこれは重傷だ‥‥」
DarkUnicornの胸を、ペタペタと触診する犬神。
「これは‥‥10億はかかるな‥‥」
「かぶり芸人以下にするななのじゃ!」
例によって、DarkUnicornブチギレである。片手で胸を押さえ、もう片手で股間を押さえ、残る片手で剣を振り回す。どういう原理でできているのかは永遠のナゾであるが、とにかく犬神がザクザクである。
そんな微笑ましくも前かがみな光景を、放送席のサトルとヨシュアは食い入るように見つめていたが、百鬼はすっかり覚めてしまっていた。
「オカマグランプリに、裸の女性も男装の麗人も必要ありません! その証拠に、自分の股間の玉石、マカオ豆がまったくふくらみません。見るべきは、ああいうのです!」
そう言って、チェダーを見やる百鬼。だが、ただでさえ似合わない女装に食べすぎで顔を真っ青にしている様など見ていられないので、一瞬でいなかったコトになる。
「‥‥間違えました。見るべきは‥‥」
今度は傍らの巫女なサトルを見やるが、百鬼は洋服でないとダメな口なのか、他のターゲットを探しはじめる。
「いやいや‥‥ああいうのです!」
百鬼がすっかり手持ち無沙汰となったあずさのところへ駆け寄ると、オカマに仕上げるべくタキシードの上から、女性用の服を着せてしまう。
実際には、心は女、身体は中性的ながらも男な美少年が、美少女として男装しているところを、さらにオカマっぽい女装をさせてみました、という大変複雑怪奇なコトになるのだが、そんなコトは誰も分からない。
「そうだね、やっぱりこっちの格好で迫った方がいいよね!」
だが、あずさは女に戻ったのをこれ幸いにと、放送席のサトルとヨシュアのところへ、ナンパに出かけてしまう。
そこへ、密かに着替えの終わったDarkUnicornが戻ってくる。バニードレス姿だが、その辺のバニーガールから強奪したのではないことを祈るしかない。
その一方で、モザイク越しでよく分からないが、犬神が血溜まりに沈んでいるようにも見える。が、これは医者の不養生というだけのこととスルーされる。
「ムム‥‥ゲロロロロ‥‥」
この俺の目の前でモザイクだとぅ!? と、そちらに気を向けてしまったのがいけなかった。堪えきれなくなったチェダーが、ついにジャックポット獲得である。
「モザイクと聞いて、ついカッとなった。後悔はない。今も反省はしていない」
再び大惨事だが、チェダー自身は念願のモザイクを手に入れた高揚感と、リバース後の変な心地よさに浸ってしまっていた。
そんな喧騒とはよそに、放送席ではサトルとヨシュアがあずさと談笑してしまっていた。おかげで、百鬼はすっかり蚊帳の外ですねてしまっている。
そこで、百鬼はオカマGPのことも忘れ、あずさに負けじとバニーなDarkUnicornに普通に声をかけていた。
「あわびのマカオ豆がじゅんとしちゃうって!? それはいけない。見てあげ‥‥ぐはっ!」
言っている内容は、普通ではなかったが。おかげで、真剣衰弱関係なしに、真剣のエジキとなる百鬼。
「これが、これがッ! プロレスごっこなんやな‥‥」
犬神に百鬼、チェダーが色違いながらも水溜り状のものに沈み、残る一人は赤専用水溜り製造マッシーンのバニーガール。それらを前にしながら、少年少女のたわいない会話をしている放送席の三人。
「わいも負けてられん!」
ボカッ! だが、いきなり殴られる伊藤。見れば、未だ女神から見放され、ただひたすらにスロットを回しつづけるえらい人の八つ当たりであった。
いや、一応用があったようだ。なにやら紙切れを手渡される。
「んーと‥‥」
1位 百鬼レイ 7
2位 伊藤達朗 3
3位 犬神一子 1
「‥‥やって! で、わいがシメんの?」
どうしていいか分からないものの、ポイントをもらってしまった手前なんとかしなければと、とりあえずチェダーの食べ切れなかったチョコをかぶって、色違いの黒い水溜りに沈んでみる伊藤。
それが功を奏したかどうかは別として、無事次回が放送されるメドも立たぬまま、放送時間終了となるのであった。