走れ、人間ども12アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/14〜04/16

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。なぜ毎回駆け込んでくるのかといえば、タイトルが『走れ、人間ども』だからなだけの話である。
「結局、ドバイロケはなしでしたね。ドバイに自腹で行ってもらって、純血アラブやサラブレッドに混じって人が走って、国際問題に発展することもなかったわけですが‥‥ちょと惜しかった気もしますけど」
「そんな悲しみに暮れるあなたに朗報が! ここで、満を持して障害レースの登場ですよ、と。グランドジャンプですよ、と」
 別に本気で惜しがってる風でもない後輩に対し、先輩が無意味に明るく励ましにかかる。
「はい!?」
「馬の跳ぶ障害とまったく同じものを使用。大いけ垣障害もそのまま採用ッ!」
「おお、いわゆる赤レンガですね!」
「もちろん、バンケットの上り下りも平然と繰り返させるッ!」
「心臓破りの丘バリに、スタミナを削る気満々ですね!」
「そして、10分以内に走り切らせるッ! 馬の倍もの時間を与えてやるこの親心ッ!」
「5,000mの世界記録が12分30秒を切れない中、平然と言い放つ先輩がステキすぎます!」
「過去最長の4,250m、ついにターフが血ヘドに染まる!」
「まさに人生のサンセットとでも言うべき光景ですね!」
 走るのは出演者というだけあって、一切反対する気配のない後輩。
「だが、それも通過点に過ぎないのだッ! いずれはグランドナショナル的なモノに挑戦したい! 本当の血ヘドを吐きながらつづけるマラソンを体現したいッ!」
「ちょうど時期が重なって、終わっちゃってるのが残念ですね。じゃあ、来年はそっちの方でいきましょう!」
 早くも来年の計画まで立て出す彼らを、止めるものは何もない。こうして、障害芝コース、しかも大障害コースを使用する競馬場疾走企画がスタートすることとなった。

使用コース・ハンデ
・競馬場の大障害芝4,250mコースを使用。
・コース形態等は、船橋にある某競馬場にすべて準じます。公営の方じゃないです。
・走り方が特殊な(遅そうな)場合のみ、ハンデとして距離が短縮される場合があります。
・なお、走りやすい陸上トラックでの5,000mの世界記録でも12分半強ですので、普通に素で走って10分を切ると怪しすぎますので、その辺は考えて走ってください。

事前に用意される物
・大抵のものは用意されます。番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。実況しながら走ったり、走らずに実況や解説だけでの参加も可能です。

ルール
・制限時間があります。4,250mを10分以内に走り抜けてください。
・自分の力のみで走る必要はありません。どんな動力を使っても構いません。
・法に触れない限りは、何を使っても構いません。たとえば自動車の場合、私有地内なので免許はなくても問題ありません。
・獣化は、視聴者に気づかれない限りにおいて、いくらでも使って構いません。ただし、獣化して走るだけだと、タイムでおかしいと気づかれてしまいます。
・優勝賞金2万円。敢闘賞10万円。勝利よりも目立つ、ウケる方重視となっています。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・【PSF】走れ、人間ども 9月15日 07:00〜
・走れ、人間ども8 10月02日 07:00〜
・走れ、人間ども9 12月09日 07:00〜
・走れ、人間ども10 12月24日 15:00〜
・走れ、人間ども11 2月18日 08:00〜

●今回の参加者

 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa3871 上野公八(23歳・♂・犬)
 fa4558 ランディ・ランドルフ(33歳・♀・豹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5442 瑛椰 翼(17歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 年末と春、年に二度しか開放されない大障害コースが、数少ない獲物を貪欲に飲み込もうと口を開けている。だが、今回は特別に馬ではなく、人が走る。使う動力がなんであれ、全員が4,250mの長丁場に挑むのである。
 では、出走各人を順に紹介していこう。
 まずは1枠1番、阿野次のもじ(fa3092)である。どこかで見たような亀なデザインの道着と、頭には天使の輪のようなものをつけている。
「さあ走れ、とびきりZENKAI、理不尽な人間ども!!」
 龍の道と化したコースを走り抜けるべく、すでに気合十分の阿野次。
 すでに舞空術の封印も決意している。龍の道ならば『Don’t feel,think』ということで、コースを一切観察せずに考え抜いての結論である。
 障害レースなんだから飛んだ方がいいような気もするが、ガチで言うと人が飛べるハズないので、そこはそれである。
 つづく2枠2番は瑛椰翼(fa5442)だが、阿野次以上に入れ込みが激しかった。
「なんだと、ドバイロケがなくなった!? あの日あのとき、俺たちの血と汗と涙の結晶はムダだったというのかぁぁッ!?」
 前回放送のドバイ壮行レースに思いを馳せる瑛椰。とはいえ、そんな前走は4着だったのだが。まあ、優勝したトコロで招待されるコトもない。
「なんちて。えへ★ 一度やってみかっただけ。はい、撤収撤収〜」
 あっさり前言撤回で、おとなしくなってしまう瑛椰。かかる心配はなさそうだ。
 そして3枠3番は、DarkUnicorn(fa3622)である。
「敢闘賞の10万円にも興味はあるのじゃが‥‥やはり、走るからにはカッコよくぶっちぎりで1位になりたいのじゃ!」
 そう言うだけあって、馬とロープでつながれて引っ張られる気満々である。とはいえ、別に四肢を馬につないで、DarkUnicornの身体を裂く刑罰を執行しようというのではない。
 馬に引っ張ってもらって走るのだが、暴走とかコワくないのか? 一角獣の獣人であるDarkUnicornにとってサラブレッドは友だち、コワくなんかないのである。
 が、馬の方が友だち以上恋人未満だと思っていたら? 無論、そこも抜かりはない。去勢されたセン馬である。縁起よく豪州最強馬と同じである。
「わしがただのお色気ヨゴレお姉さんでないところを、やればできるという子じゃと見せつけてやるのじゃ!」
 つまり、セン馬なので馬っ気を出される心配がなく、カクカクされて放送できない内容になってしまう心配もないというわけだ。
 以上までが無謀な自分の足組である。アシストつきのDarkUnicornはともかく、10分の壁を破ってしまった際に、どう言い訳するのかが逆に見ものではある。
 そして、文明の利器に頼る組の登場だ。4枠4番はマウンテンバイクのティタネス(fa3251)、動力はあくまでも自分の脚ではあるが。
「このマウンテンバイク1台あれば、なんでも乗り越えられるさ‥‥と思ったけど、さすがにこれはムリかな? でも、動力のある物は使わない! 無理無茶無謀と言われても、それがあたしのこだわりだ」
 そう言うだけあって、レースに先立ち障害の前にジャンプ台を設置しておくなど、抜かりはない。
 つづく5枠5番の伊藤達朗(fa5367)もバイクである。
「今回障害物のあるコースを走らされ、しかもタイム制限があるっちゅうことやから、さすがに生身ではよう走られへんな‥‥せやから、馬に乗せてもらいますわ」
 馬といってもDarkUnicornのようにサラブレッドではなく、バイクといってもティタネスのようにMTBでもない。つまりは、鋼鉄が火を吹くエンジン様の登場である。
「鋼鉄の馬やさかい、本物の馬よりいいタイムを出さな、面目は保てまへんな」
 モトクロス用のバイクに乗り込むと、早くもエンジンをふかしはじめる伊藤。
 そして、ここからは重戦車の登場である。6枠6番は上野公八(fa3871)と大型トラックだ。
「そっか、私有地って免許がなくても車に乗れるんだ‥‥ハチ、ずっと前から大型トラックで走ってみたかったんだけど、いいかなぁ?」
 勝ちにいくよりは乗り回したいだけの理由で、大型トラックに決定の上野。とはいえ、あくまでも大型免許を持っていないだけである。普通免許は持っている‥‥ペーパーの証、ゴールド免許だが。
 よって、大型トラックから見る風景を知らないだけに、前を走る者は巻き込まれないよう注意が必要だ。
 7枠7番も大型トラックだが、こちらはデコトラのランディ・ランドルフ(fa4558)だ。
「蹂躙‥‥いい響きだ。その力強さに、心が躍る‥‥」
 上野の巻き込みが不注意ならば、こちらは注意深く観察した上で巻き込むタイプだ。
 そして最後に8枠8番、デカーい、説明不要ーとばかりに、モンスタートラックの敷島ポーレット(fa3611)である。しかも、なぜかゴール板前にいるではないか。
「うちの前に道はない〜♪ うちの後に道はできる〜♪ 潰れとうなかったら、避けてな〜」
 巻き込みとか以前に、コース自体作ってしまう気である。つまり、コースを往復しようというのである。
 というわけで、早くもスタートだ。
 まずは阿野次がスタートダッシュを決める。ついで、ティタネスと伊藤の二輪組、最後にランディと敷島の大型四輪の順となる。
「オラオラ、轢き殺すぞ!」
 が、ハンドルを握ってすっかり性格の変わってしまったランディがトップスピードの違いであっという間にトップ、負けじと上野が並走気味に追いかけ、ティタネスと伊藤がつづいて、阿野次が追う展開に変わる。
 最後方‥‥と言っていいのかどうかはナゾだが、往路の敷島もまずは下りの直線ということで、順調な滑り出しだ。通った跡には無残に撒き散らされた芝しかなく、文字通り草すら生えていない状態なのだが、それこそが獣道の理論とばかりに突き進む。
 各人、予想どおりの順調な‥‥って、二人ほど抜けている気が。
「くくっ‥‥あのときの俺とは、一味も二味も違うのだっ!」
 まずは瑛椰だが、高らかにコースを指差し、笑いを堪えながら大見得を切っていたので、すっかり出遅れてしまっていた。
 まあ、スタートダッシュを決めたところで、後からやって来る重戦車群にプチっとつぶされるのが瑛椰のオチであるから、安全上はよかったのかもしれないが。
 だが、本当に安全上問題なのは、DarkUnicornの方だった。
「ひーっ! 春は発情のシーズンじゃったのじゃ!」
 セン馬とはいってもあくまでも玉抜きであって、さおはあるのだ。というわけで、馬の巨体に圧しかかられて、カクカクされてしまっている。
「こら、やめるのじゃ! じゅんとなってしまうのじゃ!」
 ここはDarkUnicornのお色気担当B級ヨゴレアイドルっぷりを存分に撮影したいところであるが、それ以前にこの動きはモザイク越しにも放送できない。
 馬と違う戦いに挑むコトになったDarkUnicornの尊い犠牲を華麗にスルーしたところで、ようやく瑛椰が走り出す。
 先頭はダートコースを横切り、早くも最初の5号障害の飛越である。
 高さわずかに1.4mの生け垣。人間の110mハードルでも、1.067mもの高さを飛ぶのだ。それが、1.4mで何の問題があろうか? 100分の1秒を競う世界なら大問題だが、時間をさほど気にせずにクリアすればいいだけなのだから。
 まあ、幅が2.4mもあるのが落とし穴だが、触れることなくキレイに飛越する必要はなく、生け垣に乗ってしまっても構わないので、やはり問題はない。
 が、問題は跳び越えることもできず、乗っかることもできない場合である。つまりは、6〜8枠のトラック野郎どものコトだ。
 障害をどうする気でいたのか? まず、それをいきなり確認される場でもある。
 ドカーン! 案の定というか、普通に走り抜けるのみである。上野、ランディの2台が横一線で通過したものだから、後続にとっては残骸が若干残る更地に早変わりである。
「ああっ! せっかく設置したジャンプ台が!」
 ジャンプ台を粉々にされたティタネスが嘆くが、肝心の飛び越えるべき障害自体も粉々なので、むしろより早く通過できてしまう。もっとも、ジャンプという見せ場も一緒になくなってしまっていたが。
 とにかく、まだけぶる5号障害のあった場所を、伊藤、ティタネスの順に通過していく。
 だが、阿野次がここでピタリと止まる。なぜならここは龍の道、障害ごとに龍玉が設置されているのだ‥‥って、阿野次が事前に自前の龍玉を置いておいただけだが。
 それが、すっかり埋まってしまっていたのだ。こうして、障害に隠しておいた龍玉を掘り起こす作業で、大幅なタイムロスである。
 ドカーン! 上野とランディが正面スタンド前に入り、1号障害の水濠も構わず粉砕である。撒き散らかされたものに、水が加わっただけの話である。
 ドカーン! となれば、つづく2号、3号障害の生け垣も以下同文となるだけだ。そのまま最初のバンケットの急坂も、巧みなギアチェンジも必要なく勢いに乗ったまま通過である。
 パッパー! ここで10号、9号、8号と、可動式竹柵を破壊完了の敷島とすれ違う。クラクションを鳴らし合うトラック野郎ども。
 やや遅れて、伊藤とティタネスもバンケットを下って上がり、ガガガとドリフトでコーナーを回って次のバンケットに向かう。障害を破壊され尽くしているので、このくらいしか見せ場がない。
 そして、いよいよ大障害コースに突入だ。最初の難関、6号障害。すなわち、高さ1.6m、幅2.05mの大竹柵である。
 ドカーン! が、所詮は竹柵の高さと厚みが増しただけの話である。ランディと上野が問題なく通過していく。すでにバンパーはないも同然になってはいたが。
 一方の敷島は、7号障害の大生け垣、通称赤レンガである。
 藁の家(竹柵)、木の家(大竹柵)と吹き飛ばされてきたが、レンガの家(大生け垣)はどうか? 
 ドゴーン! 難なく粉砕‥‥ではなく、乗り上げる形となる敷島。そして、なんとか乗り越えることには成功したものの、モンスタートラックが横転してしまう。
 だが、レースは止まらない。今度は反対側から早くもランディと上野が迫ってきている。敷島とは反対側から飛越となるが、飛び越えた先で横転しているので、つまりは赤レンガの前にモンスタートラックが横転しているのである。
「ひゅ〜。どんなスタントよりもスリリングだ!」
 ランディスタントマンの意地ですり抜けて飛んだ。衝撃でデコレーションの大半が消し飛んでいたが、そんなことは些細なことだ。問題はペーパードライバーの上野である。
「ドッキドキだぜぇ‥‥ぐはっ!」
 引きつった笑いで、凍りついたかのようにアクセルベタ踏みのままの上野。果たして、赤レンガにたどり着く前に敷島のモンスタートラックに正面衝突で、大惨事である。
 だが、その後ろから早くもティタネスと伊藤がやって来る。もっとも、二輪だけに簡単にすり抜けられる。そして、赤レンガをジャンプ‥‥ようやくのジャンプの見せ場だ。
 さらには、瑛椰が普通に足で走っている強みで、さっくりすり抜けながら駆け抜けていく。いつの間に? という話だが、4分を経過したところで、俊敏脚足を絶賛使用中である。
 勝負はランディ、差なく追う伊藤とティタネス、さらに迫る瑛椰と、4人に絞られて芝外回りコースに突入である。残る障害はすでに敷島が破壊済みなので、純粋なスピード比べである。
 そのため、当たり前だが1位で入線したのはランディだった。
 そして、問題の2着争いは熾烈を極めた。モトクロスバイクとMTB、そして駆けっこが横一線になるというのもどうかと思うが、抜け出したのはMTBのティタネスだった。
「極旨ラーメンが俺を待っている! 待ってて、ナルトチャ〜ン♪」
「んなアホな!」
 ずささーとヘッドスライディングでバイクの伊藤を追い抜いていく瑛椰。馬の鼻面にニンジン戦法で、瑛椰のゴールにラーメンがここでピタリとハマった。
 こうして、4人がゴールインし、2人が競走中止、そしてDarkUnicornは問題外として、残る阿野次は何をしているというのか?
「龍玉レーダーにもかからんとは‥‥どげんなっとりますか?」
 どこの人だかよく分からなくなっていたが、なんとか持ち込みの龍玉すべてを回収することに成功していた。だが、残る星一つの龍玉がどうしても見つからない。
 って、最初からないのだから、見つかるハズもなかった。番組に用意を頼んでおいたのだが、そんなシロモノを用意できるハズもない。こうして、願いはかなうことなくタイムアップとなる阿野次であった。
  1着 7 ランディ・ランドルフ
  2着 4 ティタネス
  3着 2 瑛椰翼
  4着 5 伊藤達朗
  中止 8 敷島ポーレット(落車)
  中止 6 上野公八(廃車)
  中止 1 阿野次のもじ(探し物はどこですか)
  失格 3 DarkUnicorn(放送禁止)
 優勝したランディには、優勝賞金2万円が贈られた。
 そして、身体を張ってヨゴレたDarkUnicornに、敢闘賞10万円が贈られたという。