芸人プロレスごっこ王7アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/17〜04/19

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が、場違いなさわやかさをもって姿を現す。
「はーい、じゃあ今回も張り切っていきましょうかね〜♪」
「えーと、ベガスで負けまくっておかしくなったなら分かるけど、まだベガスロケは終わってないし‥‥一体、何が!?」
 だが、逆にガクブルのスタッフたち。ひそひそとどうしたものかと話し合う。
「はーい、じゃあ東京都の地図を出して〜♪」
 だが、スタッフたちはえらい人のあまりの不気味さに、未だにひそひそ話をやめられないでいる。
「うるせえ! いいから出せ! ポイントのインフレを早く起こしてーんだ。そのためには、普通の小銭ポイントのを今のウチにたくさんやっておきたいんだよ!」
「‥‥サー、イエッサー!」
 急に元のえらい人に戻ったので、反射的に背筋を伸ばすスタッフたち。ただちに、東京都の地図を運び込んでくる。
「えーと、お台場のときは港区、品川区、江東区か。んじゃ、中央区あたりが近いかな。っつーことで、中央区にたった今決まった!」
「‥‥サー、イエッサー!」
 ダーツを刺したりすらしない。ただ、地図を確認するのみである。そして、スタッフは黙って従うのみである。
「というわけで、しばらく都内ロケな!」
「‥‥サー、イエッサー!」
 こうして、ようやく国内に戻ってきての、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第7戦がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・東京都中央区で収録を行います。
・『中央』をテーマに試合をしなくてはなりません。『中央』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、一応今月中を予定していますが、やっぱ来月以降にずれ込みますかね?
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は避けたいですよねぇ。

ランキング(第5回分まで)
 1位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
 2位 DarkUnicorn(fa3622) 8pt
 3位 白海龍(fa4120) 7pt
 3位 阿野次のもじ(fa3092) 7pt
(第3回は、諸般の事情により全員0ptとなっております)

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第2回 02月13日 07:00〜
・第3回 02月16日 07:00〜
・第4回 02月19日 07:00〜
・第5回 02月22日 07:00〜
・第6回 04月11日 08:00〜

●今回の参加者

 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5662 月詠・月夜(16歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

『プロレスごっこも中央区! ボクの今の気分は、非常に清々しい。中毒でハイって奴だ! というわけで、オープニングトークはヨシュアがやって、注目を浴びるといいよ』
「さあ、今回はひとりを除いて全員10代という前代未聞の形で始まりましたッ! 若さが勝つか、はたまた老獪さが勝つか!?」
 サトル・エンフィールド(fa2824)が微妙に中央区ダジャレを散りばめた実況ではじめるが、すぐにヨシュア・ルーン(fa3577)に譲ってしまう。
 となれば、ヨシュアは解説芸人として収集した情報を駆使した実況をするわけだが、実は若干20代も混じっていたのだ。が、そこは年齢詐称というか、見た目で勝負なので一切無視して‥‥とにかく、ブッチギリの30代である伊藤達朗(fa5367)登場である。
「中央区っちゅーと、中出っ‥‥ぐぼはっ!」
 飛んできた百鬼レイ(fa4361)に肉棒で殴られる伊藤。肉棒といっても、変な想像をしてはいけない。文字通り、巨大な牛肉の塊なだけである。
「違うんやって、中身って言おうとして、噛んだだけなんや! ホンマやで!」
 伊藤は本当に噛んだだけだったのだが、このプロレスごっこ王に出ているというだけで変な目で見られるので、わざと噛んだとしか思ってもらえない。
 そこへ、さらにあずさ&お兄さん(fa2132)が大量の箱を運びながら入ってくる。
「中央区といえば築地だし、築地といえば市場だよね。いやー、新鮮な海産物にフルーツがお手ごろ‥‥はっ!?」
 そこまで言ったところで、大量の肉のブロックを運び込んでいた百鬼と視線が交錯する。あずさの傍らには大量の魚介に果物、百鬼の傍らには肉棒で殴ったコトからも分かるとおりの大量の肉。
 そう、二人して殷の紂王で酒池肉林ということで、膨大な食材を搬入してきたところである。つまりは、かぶり芸発生の瞬間であった。
「この紂王さん、妲己という美女を溺愛し、酒池肉林な毎日を繰り広げたとされる王様なんですよ〜」
 専制君主になるには先制攻撃しかないと、先に百鬼がしゃべり出す。
『百鬼選手、殷王朝のラストエンペラーを名乗りました! 暴君キャラではない気がしますが、持ち上げておいて落とすパターンでしょうから、問題はないでしょう』
「そんなコトよりも、あずささんがどう出るか、最初の動きに注目しましょう」
 一見、普通の実況と解説のやりとりのようだが、ヨシュアはVistaを入れたノートパソコンを大切そうに抱きしめながら、サトルは胸元に仕込んでおいた電話帳といつすり替えてやろうかと機会をうかがっている。
 だが、そんな放送席の攻防はさておき、リング中央での紂王をめぐる攻防である。
 酒池肉林とはいえ、酒の池の方は二人とも未成年なので法令順守でなしである。食材こそ豊富だが、それだけで肉林を名乗るのはおこがましい。
「自分だけのハーレム王国を今、ここに打ち立てんと欲す! コレってある意味、男の究極の夢なんじゃないでしょうか?」
 そう、そっちじゃない意味の肉の林がなくてはならない。つまりは、肉欲を満たす方の。
「これ、そこな女子。少し我と酒池肉りらぬか?」
 調子に乗った百鬼があずさに言うが、果たしてあずさが百鬼の隣に座る。そう、あずさは妾の妲己の位置に下がり、裏からすべてを操るつもりなのである。
「いてて‥‥せやから、中央区っちゅーと、中で中身ってコトなんやな!」
 そこへ、頭をさすりながら伊藤が起き上がる。そして、今度は噛まずに言うことができた。
「せやから、餃子の中身、春巻きの中身、ロールキャベツの中身と、あえて皮や外身は残して、喰らい尽くすことで勝利を目指しますわ‥‥はい?」
「では、早くわらわの用意したすべてを食べるがよい」
「うむ、妲己もそう言っておる。中なら中身と言わず、すべてを胃の中に収めるがよい」
 完全に調子に乗ってあずさの肩を抱き寄せながら、伊藤に命令を出す百鬼。
「‥‥わいも関西人の端くれ、やったりますわ!」
 あずさと百鬼の命令は無視できても、えらい人のおそろしい視線は無視できなかった。
 この大量の食べ物、あずさと百鬼の自腹のハズもなく、すべて番組制作費で購入したものである。マカオにベガスといろいろあった上での貴重な制作費なので、それで購入したモノを粗末に扱うなど許されるハズがない。
『そういえば最近、えらい人元気がなさそうだけど‥‥きっと五月病なんだね。今までの自分の言動を振り返っているに違いない』
「そんな殊勝な人だとは思えませんが‥‥あれ、サトルくん、どこへ?」
『えらい人は、ボクのような実況芸人も含めてのプロレスごっこだっていうコトを忘れているんじゃないかな? だから、本分を思い出させるために、ボクが魔法のブローパイプで延髄を一突きしてくるよ』
「‥‥はい、いってらっしゃい」
 ヨシュアにはサトルの末路が分かりすぎていたが、その末路こそが見たいモノだったので快く送り出すコトにした
『これは愛の鞭‥‥ギャーッ!』
 だから、しばらくして子どもらしき悲鳴が聞こえてきたところで、ヨシュアは何も聞こえなかったフリをした。ただ、ニヤリとするのみである。
 というわけで、目の前でサトルがダミー人形のごとく身をもってどうなるかを示してくれたおかげで、伊藤には完食以外の道はなくなってしまっていた。
 伊藤が千里の道の一歩として生肉をかじり出したところで、映像が引きになる。
 そこで、今回の舞台が中央区でも、その中の晴海、しかも見本市会場のあったところにリングを設置しているのだと、ようやく分かる。
「混雑サークル対応で隔離のA館! 直射日光の前に冷房が無力だと知る新館2F! そして、我らがガメラ館‥‥って、全部オリンピックスタジアムの建設予定地なんだ‥‥」
 確実にその時代を知らないハズの腐女子、武越ゆか(fa3306)がなつかしそうにカメラの映像に見入っていた。
「あっ、はーい! 応援特化バラドルの武越ゆかでーすっ! みんなー、GWの新刊の原稿は進んでるかしら? 男子諸君のレヴォはもうないけれど、女子はスーパーで問題なし?」
 カメラに気づいた武越が、急に仕事モードに切り替わる。とはいえ、腐女子モードにブレはないが。
「そんなあなたに、サークル配置情報よ☆ サトル×ヨシュアの王道は、亀怪獣クリソツな東館! 丸い形だから列が変則的よ。逆カップリングのヨシュア×サトルな下剋上ものは、鬼畜シチュが多いせいか、王道派閥と犬猿の仲! だから西館なの‥‥きゃっ!」
『近親での相姦に加え、下克上、おまけに鬼畜というのは許さない!』
 好き勝手言う武越のところへ、えらい人にやられた傷も癒えていないというのに、サトルが飛び込んでくる。
「ほらね、こういう人がいるから‥‥ヨシュアくんは早く西館に避難してー!」
 言われるがままに、大事そうにノートパソコンを抱えたヨシュアが逃げていくのが見える。それを、反射的に追いかけてしまうサトル。
「ふぅ‥‥で、お兄さん総受は、魔の新館2階でイロモノ扱いだわ。かぶり芸人、モザイク芸人、固茹で芸人はもちろん、鰻とか鮫とかハサミとかがお兄さんに求愛するの!」
 なおも解説をつづける武越だったが、一般視聴者の気持ちを表すかのように、武越を撮っている映像が小さくなっていく。まあ、引くのも素養がある証拠で、本当の一般人ならポカーンと意味が分からないだけであるが。
 ともかく、映像がビールケースの上に立った阿野次のもじ(fa3092)に切り替わる。
「汚れのない、明るく健全な社会を作っていきます。阿野次、阿野次に清き一票をお願いします」
 シャイニングなアイドル衣装に身を包み、『私が大将』と書かれたたすきをかけている。そう、すでにドブ板選挙展開中の候補者、阿野次であった。
 というか、それ以前に何に立候補したというのであろうか?
「何に立候補しているのかって? その話は長くなるから、マニフェストならぬ魔似ファクトを見てくれ。魔似ファクトは2種類あるから、どちらも見逃さないように」
 1種類しかないのだが、とにかく紙っぺらに箇条書きされた公約が映し出される。
 ・東京大プロレスごっこの開催
 ・同ごっこ参加者のギャラ倍増
 ・東京国際見本市会場跡地への都庁の移動と同人誌活動
 ・阿野次のもじプロモーションビデオの販売
 ・阿野次のもじによる後期プロレスごっこED曲
 それを読んで、特に『同人誌活動』の部分に食いついた武越がすっ飛んきて、握手をかわす。
 が、この魔似ファクトでは、相変わらず何に立候補しているのか分からない。
「都知事選は終わったけど、ドクター高松の勇姿は忘れない‥‥というわけで、熊本県議選ではなく中央区議選に出馬なのだよ」
 ようやく中央区につながったが、中松でなく高松なら香川県、いや群馬県知事を目指すんじゃ? という話もあるが、選挙と占拠の違いの分からない阿野次相手では、誰が止められようか。すでに苦労を演出しているハズのビールケースに腰かけながら、ふんぞり返っている。
 どう考えても下2つしか守る気がない、というかこの選挙活動自体が自分のプロモーションやCD発売の宣伝にしかなっていない気がするが、武越みたいにコロっとだまされたりする人もいるので、やってみるものである。
 そんな会場周辺の盛り上がりはともかく、百鬼とあずさが高みの見物をしている酒池肉林リングである。せっかく、伊藤が無意味な戦いを繰り広げているのだから。
 だが、それも終焉のときが確実に近づいていた。
「多少のヨゴレくらい‥‥うぷ‥‥大部屋俳優から抜け出るためなら‥‥うぷっ‥‥どうということもおまへんしなロロロロ‥‥」
 結局リバースということで、多少のヨゴレでは済まなくなってしまったが、無事伊藤が息絶えたところで、月詠月夜(fa5662)が入ってくる。
「バラエティ界‥‥それは、生き馬の目をくりぬいて、別のものをハメなおし、それを笑う過酷な競争世界‥‥」
 常にあずさに寄り添っていたハズのお兄さんが、今は月詠の手の中にある。
 妲己となったあずさの横に必要なのは紂王の百鬼ということで、お兄さんは打ち捨てられていたのだ。
 なので、月詠がお兄さんを手にしていようが、目をくり抜いて代わりに五円玉をハメていようが、完全にスルーである。
「‥‥はい。中央区→ちゅうおーく→チューオークションというコトで、月夜のチューオークションを勝手に開催しまーす」
 過酷さを噛み締めながら、月詠が新たな戦いとして自らのキスのオーディションを宣言するが、まったく反応がない。
「ちなみに、これが月夜のファーストキス☆」
 それでも、誰の手も挙がらない。紂王となった百鬼はあずさに逆らえないし、あずさは女子である月詠に興味を抱かない。
「『君‥‥もう月夜とキスはしたのかい? まだだよなァ? はじめての相手は△△ではないッ! この○○だーッ!』と名ゼリフが言えますし、そのあと泥水で口も注げますよ!」
 月詠が必死にあおるが、0円のままピクリとも動かない。残りの男子はといえば、サトルとヨシュアは追いかけっこに忙しかったし、伊藤なら甘酸っぱい感じになるのだが、晴海会場跡地だけに現在清掃中である。
 いや、いた! 10円を持つ人物が一人。持つというか、ムリヤリハメ込まれただけではあるが。
「えと、目をつむってください‥‥」
 月詠が落札金額である5円玉2枚をくり抜き、お兄さんが無事目をつむってくれたところで、チューである。
 こうして、月詠のファーストキスのお相手はお兄さんとなった。お兄さんという人形が、はじめてとカウントされるのかはナゾであるが。
 1位 伊藤達朗 7
 2位 月詠月夜 3
 3位 阿野次のもじ 1
 そして、最後に阿野次の魔似ファクトからあぶりだしてポイントが浮かび上がって、お開きとなった。