フリフリシェイクアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/16〜03/18

●本文

「ダメだな!」
 上司が、部下から渡された企画書をひらりと投げ返す。
「大体、万歩計を振るだけなんて地味じゃね?」
「何を言ってるんですか! かつて、伝説のヘヴィメタルバンドはヘッドバンギングで万歩計を掻き鳴らし、伝説のハードゲイは腰振りで万歩計をピストンしたという、ジャンルを問わず若手時代の登竜門的企画ですよ!」
「そ、そうなのか‥‥?」
「そうですよ!」
 突然ヒートアップした部下に気圧されて、ついついOKしてしまう上司。
 こうして、万歩計を振るだけという微妙な番組が作られることとなった。

『フリフリシェイク』
 30秒間で、とにかく万歩計の歩数を稼ぐ。その際のリアクションを楽しむという企画。
 ただし、自分の職業に関連した振り方でなくてはならない。
 優勝者を選出したりとかは特にしない。賞金は、30秒での歩数×千円で、全員に与えられる。ただし、おもしろリアクションでない場合は、ナレーションベースで飛ばされる場合もある。
 収録は基本スタジオで行う。どうしてもロケしたいという場合は、スタジオ収録前にロケに行ったVTRをスタジオで見せる形になる。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa0481 石榴(22歳・♀・猫)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa2860 静琉(16歳・♂・兎)
 fa3175 下心充(22歳・♂・一角獣)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)

●リプレイ本文

『さあ、はじまりました、フリフリシェイク。低予算番組らしく、司会進行は、本業プロデューサーのスモーキー巻(fa3211)でお送りします。とはいえ、万歩計を振る、ただそれだけのことに賞金を出します!』
 スモーキーの司会で、番組がはじまる。
『まずは、パイロ・シルヴァン(fa1772)君の登場です。えっと、何をやってくれるのかな?』
「暴れていいって聞いたんで、来たんだけど‥‥それでいいんだよね?」
 勢いよく走って登場したパイロ。すでにウォーミングアップ十分とばかりに汗をかいている。
『それでいいんです。では、やっていただきましょう!』
 合図と同時に、パイロは凄まじい勢いでショートジャブの連発をはじめる。手首に装着した万歩計が、激しく掻き鳴らされる。
「あたたっ! あたっ! あたたたっ! あたっ!」
 意味不明の奇声を発しながら、シャドウボクシングを繰り広げるパイロ。
『終〜了〜!』
「我が30秒に一片の悔いなし!」
 パイロは天に高々と右拳を突き上げ、静止していた。
 そして、なぜか用意されていたコーナーポストの前にイスを置き、ガックリと頭を垂れて座り込む。
「燃え尽きちまったぜ‥‥真っ白によ‥‥」
「パイローっ!」
 コーナー下から、なぜか鶸檜皮(fa2614)が眼帯をつけて叫んでいる。
『どこからどうツッ込んでよいものやら‥‥それ以前に彼はホントに11歳なのか‥‥ツッコミを入れるだけ損な気がするので、次行きましょう』
 なお、パイロは文字通り百裂拳の100カウントで、見事10万円を獲得した。
 つづいて現れたのは、胸元の開いたドレスを着たアヤカ(fa0075)。その胸元につけているのは、ピンマイクではなく万歩計である。
『えっと、アヤカさんは何をしてくれるのかな?』
「歌を唄いながら、ダンスをするニャ!」
『それなら、僕は30秒少々お休みをもらおう。天使の歌声を邪魔してはいけないからね』
「ちょっと、待ったぁ!」
 突然、ちょっと待ったコールがかかる。といっても、スモーキーのくさいセリフを待てと言っているわけではない。見れば、チャイドルのサクラ・ヤヴァ(fa2791)が、まったく同じように胸に万歩計をつけての登場である。
 ツカツカとアヤカの前まで歩み寄ると、
「第一印象から決めてましたぁ〜」
 そう言って手を差し出すサクラ。
「ゴメンなさいニャ」
「大どんでん返ーし‥‥じゃなくてぇ! あたしもアヤカお姉ちゃんと一緒に踊る!」
 自分で振っておきながらのノリツッコミで、サクラが宣言する。
「こういうのは、一緒になって踊った方が楽しいし、盛り上がれるニャ☆」
 アヤカもノッたので、二人同時に歌って踊ってとなった。
 見よう見まねでアヤカのように踊るサクラだったが、唯一真似できないものがあった。それは、激しく動くたびにタップンタップン揺れるアヤカの胸である。まあ、そこは年齢的な成長力の差でもある。
『いやぁ、実に可愛らしい歌と踊りだったね。つい見入ってしまったよ』
 アヤカが98カウントで9万8千円、サクラが74カウントで7万4千円であった。同じことをしておきながらの額の違いは、やはり胸の弾む際の小刻みな振動の差異であろうか?
『つづいては、石榴(fa0481)さんの剣舞です』
 石榴が、和服姿で現れた。舞師の剣舞といえば優雅に流れるように踊るものと思いがちだが、石榴はそんな安易なことはしない。手にしているのはドス、単身敵地に乗り込む組長の娘をイメージして踊るのである。むしろ、ド演歌な世界なのである。
 狙い来る別の組の下っ端どもを避け、時にはドスで攻撃を受けながら敵の頭に近づき、正面から攻撃に出る、という脳内ストーリーでの剣舞ある。
『本当に美しい。激しさの中にも、どこか気品が感じられる踊りだよ』
 スモーキーがそう言ってるそばから、石榴の着物が着崩れはじめる。
『これは嬉しいハプニングだね。気品から色気に方向性が変わってきたようだ。夕食時にこんな映像が見られるなんて、日本はいい国だぁ!』
 和服で激しく動けばこうなるのは分かっているのだから、それをハプニングというのはどうかとも思うのだが、それを言わないのはお約束である。
「はわわっ‥‥」
 ようやく気づいた石榴が、赤面しながら慌てて手で肌を隠す。お約束のお色気かと思いきや、本人だけはその気はなかったらしい。
「ご、ごめんなさいだよっ!?」
 そう言って、走って逃げ出してしまう。なお、ストーリー性重視で縦揺れが少なかったせいか、意外に伸びずに42カウントで4万2千円となった。
『つづいても踊り、というかダンスだね。静琉(fa2860)さんです』
 早速激しいダンスを30秒披露し、いざ歩数を確認というところで異変が起こった。確認しようにも、肝心の万歩計がどこにもないのである。
「‥‥万歩計、つけ忘れてた‥‥」
 しょぼーんとなる静琉。
「ううっ、誰か教えてくれればいいのに‥‥」
 と言ったところでどうにかなるわけでもなく、再度挑戦である。今度こそ、万歩計はつけている。
『どうやら彼はお笑いもイケるみたいだね。定番だけど、なかなかいいボケだ。さあ、今度はどうだ?』
「‥‥スイッチが入ってない‥‥」
 その後も、ダンスが激しくて万歩計が壊れた、次につけた万歩計が不良品だった、予想以上に不幸がつづくのでテープが足りなくなった等々を経て、次で実にテイク10である。
『テレビを見てらっしゃる方々には、なぜ彼が汗だくで肩で息をしているのかさっぱり分からないと思いますが‥‥』
 ようやくOKとなったときには、さすがの静琉も疲労困憊で、わずか26カウントで2万6千円となった。
『スタミナ自慢の彼も、さすがにムリがあったね。では、つづいて鶸檜皮さん』
 鶸が初登場のように、颯爽と現れる。先程の眼帯キャラのことは、なかったことにする気満々である。
「俺はカメラマン、俺にしかできない仕事をやるだけだ‥‥」
 一眼レフカメラを手に、指先に万歩計をつけている。
 おもむろにパンダのヌイグルミを置くと、それを中心に油をまき、火を付ける鶸。鶸は無論、その火の輪の中にいる。
『火事場の馬鹿力って‥‥意味不明だよ‥‥』
 勝手に作り出した極限の状況下、鶸は凄まじい勢いでシャッターを切っていく。
 そして残り10秒になったところ。デジカメも取り出すと、それぞれの手で連射をする。が、そちらの指には万歩計がついてないので、なんの意味もないのは言うまでもない。
 火やデジカメといった要素はまったく役に立っていなかったが、それでも最後のシャッター連射が効き、ここまでで最高の145カウント、14万5千円を獲得した。
『最後の登場は、下心充(fa3175)さん』
 そう紹介されたときには、下心はすでに瞑想状態だった。
「キャ〜! 下心様〜!」
「はっはっは。ありがとう女の子たち」
 ファッションショーで声援を受け、それに手を振るモデルの自分という脳内イメージが、口からセリフとなって出てくる。
 映像としての使いやすさを考えてなのか、素で妄想が口から溢れ出てしまうタイプなのか、それは永遠の謎である。とはいえ、女の子たちの『キャ〜! 下心様〜!』の声援まで自分で言っている様は、夕食時には若干危険な香りがする。
「下心、充填完了〜!!」
 そんな間にも何がどうなったのか、準備完了の様相である。下心はおもむろに万歩計をつかむと、激しく上下に振りはじめる。
「フォォォォ! フォォォォ! フォォォォ!」
『フォフォフォフォー! ならRG、シュシュポーッ! なら自家発電式蒸気機関車なのですが、いずれとも若干違うようだ』
 ただ手で振っているだけじゃないかと物言いがついたが、モデルでありながらのヨゴレ芸に敬意を表し、テンション上げるまでがモデルだったと無理矢理納得することにして、118カウントで11万8千円の獲得となった。
 とそこへ、スタッフがカンペでスモーキーに何やら指示を出す。
『あっと、いつの間にか腕時計が万歩計に変わっていた! えっと‥‥26カウントだね。いい成績ではないけど、あれだけがんばった静琉さんと同じになってしまって、なんか悪いなあ‥‥』
 頭をかくスモーキー。その際にプラス4カウントされてしまい、静琉が最下位となってしまった。
『賞金総額63万3千円! 別にこの番組のプロデューサーというわけではないので、知ったことではないけれど、次はないような気がします。では、ごきげんよう、さようなら!』