芸人プロレスごっこ王9アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
牛山ひろかず
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
0.7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
04/19〜04/21
|
●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「よーし、地図を出せー!」
「はいっ!」
3日連続の招集であるが、そんなコトなどお構いなしに東京都の地図が運び込まれる。例によって、えらい人の気分次第でロケ先が決まろうとしている。
「んー、千代田区、中央区と来てはいるが‥‥ずーっと接し合った区で行く必要もねーしな。んじゃ、豊島区辺りにしておくか!」
「サー、イエッサー!」
こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第9戦がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・東京都豊島区で収録を行います。
・『豊島』をテーマに試合をしなくてはなりません。『豊島』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決まるのは、それなりに先のコトとなります。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は避けて通れぬ道ではありません。
ランキング(第5回分まで)
1位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
2位 DarkUnicorn(fa3622) 8pt
3位 白海龍(fa4120) 7pt
3位 阿野次のもじ(fa3092) 7pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第4回 02月19日 07:00〜
・第5回 02月22日 07:00〜
・第6回 04月11日 08:00〜
・第7回 04月17日 07:00〜
・第8回 04月18日 07:00〜
●リプレイ本文
「俺は‥‥俺にしかできない仕事をやるだけだ‥‥」
一見すると職人気質な仕事熱心なカメラマンに見えなくもない鶸檜皮(fa2614)。
だが、その実体は俗に言うところのハメ‥‥いやいや、ヨゴレ参加型カメラマンなのである。
「乙女ロード、か‥‥ならば、乙女の希望に添うサービスシーンを撮らねばなるまい。今回のターゲットとなる男子は、と‥‥」
早速ノンケの男子には物騒なセリフを吐くと、出演者をギロリと見渡す。
「池袋‥‥池袋ですか‥‥」
まずは男子一人目、古河甚五郎(fa3135)がサンシャイン60を見上げて、遠い目をしていた。
「池袋も今やすっかり乙女の道ですが、その昔は野郎の祭典が開催されていたことを、覚えてらっしゃる方はおられますか?」
いや、サンシャイン60を突き抜けて、奥の文化会館とかの展示ホールを見ていたのである。
「そう、かつて野郎どもの革命が行われていたコトを! 無血革命とはほど遠い、エロスとバイオレンスが支配する空間。そう‥‥」
言っているコトはあまり理解できなかったが、古河の吟味を開始する鶸。
(年齢的にはリーマン系か? って、ほど遠いだろ! だがそれでも、いざとなったらガムテ術でなんとかなるだろう‥‥)
とりあえず古河は保留というコトで、今度は七瀬七海(fa3599)にギロリと目を向ける。
「えぐえぐ、ブースターが折れちゃったよぉ‥‥」
こちらは、池袋の職安近くにショールームを持つスーパーなドールフィギュアで有名なトコとコラボした食玩で遊びほうけていた。
(こちらはド直球にショタだが‥‥くっ! おのれ、条例め‥‥)
ならばと、今度はラファエロ・フラナガン(fa5035)にターゲットを定める。
「池袋→乙女ロード→乙めロード。つまり、リングに上がる皆さんに一々、1番乙! と声がかかるシステムを作り出し、全体にやる気を失せさせるんだ!」
前二人同様に言っているコトはあまりできなかったが、ラファエロの吟味を開始‥‥するまでもなく、七瀬と同様に条例で引っかかる。
「ハッ! 1番乙。2ゲット、ズサーッとやるハズが、何の因果かもう4様。どうすれば‥‥まだまだ紹介段階。リングに上がるトキにやればいいかな?」
相変わらずよく分からないコトを言いつづけて、一人納得してしまうラファエロ。
だが、ここで映像が池袋から巣鴨に切り替わってしまう。とげぬき地蔵の巣鴨地蔵通商店街に、リングが設置されていた。
そこへ、加波保利美(fa5471)が上がってしまう。どう考えても、ラファエロがズサーッと滑り込んでこれるとは考えにくかった。
「乙女ロードをテーマに戦いたいトコロだけど、かぶり芸人にはなりたくないので、とげぬき地蔵にシフトチェーンジッ! えっと、100本程のトゲを何かに刺して、それを高速で抜くというヌルい芸を‥‥」
だが次の瞬間には、加波はトゲを宙に放り投げていた。
「‥‥あー、ダメ! やっぱり、乙女ロードを無視するなんて私にはできない! だから、テーマリターン! 新たに戦うモノは‥‥『やおい小説原稿100ページ分、番組収録時間中に書き上げられたら勝ち』ですっ!」
欲望には忠実に従うべしということで池袋へ急行すべく、リングを下りざま巣鴨駅へと向かってしまう加波。
「ハァハァ‥‥」
巣鴨駅に到着するやいなや、息の荒くなる加波。無論、走ってきたせいではない。
「巣鴨を通っているのは‥‥山手線と都営三田線!? ハァハァ‥‥」
生物ならずとも物体が2つ以上存在すれば、その瞬間にカップリングは誕生するのである。
が、とにかく山手線に乗って池袋へと向かう加波。大塚駅を過ぎたところまでくると、反対側の電車にラファエロが乗っていたのだが、気づくはずもない。
「1番乙! 1番乙!」
すれ違いざまに窓をガンガン叩いてラファエロがアピールしていたが、一瞬で見えなくなる。
それに、加波は妄想でそれどころではなかったのだ。
「埼京線に西武に東武、地下鉄も丸ノ内線に有楽町線が乗り挿れて‥‥ってコトは、えーっ! 山手線総受? ハァハァ‥‥」
必死に鼻を押さえる加波。到着前に失血死しそうな勢いである。
こうして、再び映像は池袋に切り替わる。だがラファエロがいなくなった以外は特に何事もなく、古河にいたってはサンシャインシティ横の東池袋中央公園でまったりとしていた。
「春と秋には、ここにガムテハウスを作って住むのが夢でした。夏と冬に浦島に住むコト並みの憧れだったのです。が、それも今は昔。ああ‥‥」
木漏れ日の中、なぜかたそがれる古河。だが、急に目つきが肉食獣のそれに変わる。
「すべては過去の残影。今はそう‥‥プロレスごっこなのです!」
スペイン階段を駆け上がっていく古河。途中、段差を利用して七瀬が腰かけて、相変わらず食玩をいじくっていたが、構わず突き飛ばして進む。
「うわーん、腕が全然ハマんないよ‥‥あっ!」
その衝撃で、外れていた腕がハマって大喜びの七瀬。そして、ようやく実況解説の役割を思い出し、慌てて追いかけていく。
「フィストをハメたって? フッ、いよいよか‥‥」
さらには、勝手なコトを言いながら鶸もその後を追っていく。
だが、階段を上り切ったところで、急に立ち止まる古河。
「走ってはいけません。ここはもうプロレスごっこという名の戦場なのです。だから、赤青黄に染めるのです、ガムテで!」
古河の理屈は相変わらずさっぱり分からないが、鶸もさっぱりな理論で何かを閃く。
「くっ、そういうことか。ホントは俺もこんなシーンに混じりたくはないんだが‥‥分かった。白く染めてやるゼ!」
そう言って、ガッと古河を押し倒してしまう。無論、カメラは構えたままである。
「ま、待ってください‥‥」
「待てって‥‥頭の中を真っ白にしてやるというだけだぞ。一体何を想像したんだ?」
ヤることに大差はないんじゃないかと思いつつ、だからそうじゃないと古河が鶸を振りほどく。
「宇都宮がラップでラッパーなら、池袋はガムテでガムテーパーなのです」
「うわーん、真っ暗で何も見えないよぉー」
七瀬が急にうろたえるが、古河がガムテで目隠しをしたのである。
子どもに見えなくしたので、これで年齢制限も問題なし。公然猥褻罪とか一番大きな問題が残っている気がするが、もはや二人の間に何の障害もない。
当たり前のように、古河がもう一度鶸の腕の中に納まる。
「‥‥えらい人の命令でしょうがなくなんだからね! 宮仕えの辛さを表現しているだけなんだからね!」
頬を赤く染める鶸。残る青と黄色はいつ出てくるのであろうか?
「おーっと、I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見でポイントによるランキングがつくゼ!」
古河と鶸が違う世界へ旅立ってしまったところへ、そんなものを放映させてなるものか──女子なら考えるが──ということで、少しだけ青ざめたえらい人が飛び込んでくる。
1位 古河甚五郎 7
2位 鶸檜皮 3
3位 加波保利美 1
「では、池袋駅の映像でお別れです。さようなら」
えらい人がそう言うと、映像は本当に池袋駅に切り替わる。
「お地蔵さん、俺のトゲをお前に刺して‥‥フフフ‥‥」
いけふくろうをとげぬき地蔵と間違えて抱きしめたまま、加波保が妄想過多の大量出血により殉職していた。だが、残念ながら、赤はすでに使われている。残るは黄色だけだ。
「‥‥1000なら、今週最後のプロレスごっこのトリを自分が飾る!」
ラファエロは山手線を何周かした後、華麗に2ゲットできなかった分、華麗に立ち食いカレーを食べていた。
そう、カレーといえばイエロー。これで黄色も完了で、なんとか全色揃った。
そして、なぜ赤青黄に染めなきゃいけないかも分からないまま、番組も終わっていくのであった。