芸人プロレスごっこ王10アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/24〜04/26

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「第二期も2桁に突入だが、気にせず都内ロケを敢行! というわけで、地図を出せー、錨を上げろー、ようそろー!」
「はぁ‥‥ぐぼはっ!」
 えらい人のよく分からないテンションについていけず、とりあえずはと地図を運び込むスタッフ。だが、いきなりの鉄拳制裁である。
「はぁ!?」
「バカヤロウ! 錨を上げろ、ようそろって言ってんだから、海関係に決まってるだろうが! それを23区の地図なんか持ってきやがって‥‥」
「失礼しました‥‥こちらでよろしいのですね?」
 逆らってもいいことなしと、南鳥島や沖ノ鳥島まで含まれた地図を運び直してくるスタッフ。
 それをえらい人がなぞりながら、どこにするかと思案する。例によってダーツを刺したりはせず、えらい人の独断によって決まるのみである。
「んー、近いのは大島で、そっから利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島っと。八丈島になるとちょっと離れるな。んじゃ、伊豆諸島の大島〜御蔵島っつーことにするか」
「サー、イエッサー!」
 こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第10戦がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・伊豆諸島の大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島で収録を行います。
・『伊豆諸島』をテーマに試合をしなくてはなりません。『伊豆諸島』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王はそのうち決まりますので、気長に待ちましょう。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血、遭難は避けて通るがプロレスごっこ道。

ランキング(第5回分まで)
 1位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
 2位 DarkUnicorn(fa3622) 8pt
 3位 白海龍(fa4120) 7pt
 3位 阿野次のもじ(fa3092) 7pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第5回 02月22日 07:00〜
・第6回 04月11日 08:00〜
・第7回 04月17日 07:00〜
・第8回 04月18日 07:00〜
・第9回 02月19日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4555 シトリー・幽華(29歳・♀・豹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 カーン、カーン‥‥全員が黙祷する中、しめやかに12カウントゴングが鳴らされていく。
 普通10カウントじゃないのか? ヨシュア・ルーン(fa3577)がこの世に生を受けてから丸12年。今や立派に解説芸人になってしまったコトを哀れみ、年の数だけゴングを鳴らしているのだ。
 そんな中、ヨシュアの横たわる棺桶が、海へと流されていく。喪主のサトル・エンフィールド(fa2824)が顔面パンチでちゃんとヨシュアを失神させ、棺桶に寝かせている。
 サトルが号泣しながら最敬礼で見送る中、ヨシュアは母なる海へと還って‥‥とかいう趣もまったくなく、突然ものスゴい勢いで沖に向かい出す棺桶。サトルがただの棺桶を用意するハズがない。エンジン搭載である。
「次回試合会場、沖ノ鳥島でまた会おう‥‥って、パスポートが必要だったかな?」
 次は木星で沖ノ鳥島ではないし、そもそもパスポートだって必要ない。だが、号泣のせいでよく分からないという体で、強引にスルーさせるサトル。
 大体が、他の出演者たちも思い思いの島へ行くために、すでに散ってしまっている。だから、そんな彼らを実況するために、サトルは振り返らずに進まねばならないのだ。
『まずは一番近い、大島にやってまいりました。シトリー幽華(fa4555)選手が、ミスあんこでは相手にならない、もっと強いヤツに会いに行くと言ってましたが‥‥なんということだーッ! ゴジラと睨み合っているぅ!』
 サトルが絶叫する中、シトリーがゴジラと真っ向から対峙していた。ニューヨークでも番長シリーズでもないので、怪獣の方のゴジラである。
「ゴジラに垂直落下式ブレーンバスター、バックドロップ、パワースラムをかけることができたら‥‥私の勝ちだ!」
 無論、本物のゴジラがいたら自衛隊が出動してきてしまうので、長根浜公園の石像であるが。さらに言えば、ゴジラの石像といっても、威風堂々と立つ姿を等身大でというわけもなく、頭部だけではあるが。
「身長80メートル、体重5万トン‥‥まさに、相手にとって不足なし!」
 だが、どう考えても全身の身長体重を宣言するシトリー。残る身体は、地中に埋まっている設定のようだ。
「サバ読んでる? 50メートル、2万トンだろって‥‥ノンノン、これは三原山の火口から復活した三代目なのだよ!」
 細かい設定にはこだわりながら、石化している件には一切触れず、なんとか引っこ抜こうとするシトリー。当然ながら持ち上がりはしないのだが、万が一破壊しようものなら一大事なので、その前に止めに入るナゾの一団が。
「ちょ、なにを、うわぁ‥‥」
『あーっと、シトリー選手がナゾの黒服に連行されていきましたが‥‥ヨシュア同様、ご冥福を祈るばかりです』
 何かを嗅がされて担がれると、そのままモーターボートに乗せられ、いずこかへと去っていく。無論、ただ見送るだけのサトル。
『以上、大島編をお送りしました。つづいては‥‥』
「大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島‥‥と、ここまでは誰でも読めるのです。しかし! 御蔵島はオクラとか呼ぶ人が都民でも結構いらっしゃいます。そこで、そんな御蔵島をもっと知っていただきたく、観光に役立つ情報をお送りしたいと思います」
 サトルの実況に、河辺野一(fa0892)が割って入ってくる。アナウンサーらしく、読みにはうるさい男のようだ。
「そこでわたくし、イルカより速く泳ぐ対決をしてみようと思います。日本で野生のイルカと一緒に泳げるのは、御蔵島の他には、熊本の天草など数ヶ所しかありません‥‥へっ?」
 船上でこれからのバトルの説明をつづける河辺野だったが、ふと見ればサトルが手足を荒縄で縛っていた。
 別に実況に割って入られた恨みとか、鬼六先生の小説を読んだばかりとか、そんな些細なコトにこだわるサトルではない。
 今のサトルはなんでも許せる天使モード、だから天使の残酷さを披露するのみである。
『それでは、河辺野選手の一本目です!』
「ちょ、ドルフィンキックしかダメなんて、そんなムチャな‥‥ゴボゴボ‥‥」
 サトルに海に放り込まれるも、必死にバタフライ、ただし足のみで抵抗する河辺野。だが、当然ながらあっという間に海の藻屑と消える。
『やっぱり、二本目はありませんでしたか‥‥以上、御蔵島編をお送りしました。つづいては‥‥』
 すでに3人が海に消えていったが、サトルはまったく気にする気配がない。
「伊豆諸島には『くさや』っつー食い物があるんだって? 噂には聞いてて、興味本位で一回食ってみたかったんだが、家で焼いたりしたら当分臭いが取れなくて大変なことになるそうじゃねーか‥‥けどよ。それならそれで、家以外でやりゃあいいんだよな。ちょうどここは本場だし、地元でも普通に食べてるものみたいだし、ここなら問題ねーだろ?」
 サトルが陸地に到着すると、Tyrantess(fa3596)が七輪の火を起こしているところだった。
『えー、三宅島にやって来ました。すでに、Tyrantess選手がくさやと対峙していますが‥‥はい?』
「あー、ちょうどいい焼き加減とか分かんねーし、ちょっと地元の人でも引っ張ってきてくれよ」
『かしこまりました』
 天使モードとか関係なく、女子の言うコトは聞くコトにしているサトルである。
 だが、連れてきたのはまったく地元ではない百鬼レイ(fa4361)であった。
「伊豆諸島‥‥伊豆半島の南東方、太平洋上のほぼ南北に散在する富士火山帯の火山列島。つーことで、今回自分は地質学者に扮し大自然の脅威、火山と戦うことにします☆」
 いきなり、Tyrantessの胸を鷲づかみにしようとする百鬼。すんでのところで、ガッとその手をつかみ、耐えるTyrantess。
「ああん? どういうことだ、てめぇ!」
「いえ、火山学者として生命の根源である双子山のリサーチをしたところ、Tyrantessさんが選ばれたのです」
「大体分かってきたが‥‥なんで俺なんだよ!?」
「シトリーさんはマッチョすぎて、山というよりは岩。DarkUnicorn(fa3622)さんに至っては、むしろ谷ですよ、谷!」
 本人たちがいないのをいいことに、言いたい放題の百鬼。
「‥‥さあ、搾りたての白い溶岩を飲ませてください!」
「出るかッ!」
 当然の結果ながら、ボカっとギターで殴られる百鬼。そのまま、ピクリとも動かなくなる。
 ヤバい、やりすぎたか? と周囲を見渡すTyrantess。すると、本来は対戦相手のハズであったくさやが目に飛び込んできた。
「くさやを焼いていて、死体を焼いていると勘違いされて通報される珍事件があったとか。というわけで、百鬼をくさや汁に漬して焼いちゃえば‥‥完全犯罪!?」
「そんなわけあるか‥‥っと、うぷ‥‥」
 そこへ、伊藤達朗(fa5367)がやって来る。ツッコミにまったく切れがないとおり、フラフラと青い顔をしているが、船酔いではない。
「うぷっ、ゲロゲロゲロ‥‥三宅→身焼け→胸焼けってワケやな!」
「ちょっとスッキリした顔しやがって、リバースした後に遅いわ!」
 やはり、ボカっとギターで殴られる伊藤。無事、惨死体2体目の完成である。
『さあ、どう処理するつもりでしょうか‥‥?』
 どう考えても一部始終を見ていたサトルがいるが、実況は透明とばかりにスルーである。
 そんな間にも、Tyrantessは百鬼と伊藤を海に流して、証拠隠滅である。
「ふぅ、これでくさやの臭いと一緒にキレイに流れたな‥‥うおっ!」
 ようやく一息吐くTyrantessだったが、なぜかその瞬間だけ大波が来て、沖にさらわれてしまう。
 無事6人が海に還ったところで、残るはDarkUnicornただ一人である。が、そのDarkUnicornの姿はどこにも見当たらなかった。
「伊豆諸島→いずことう→何処島‥‥この島はどこにあるのじゃ!?」
 DarkUnicornは、本人もどこにあるか分からない島に来てしまっていた。しかも、無人島‥‥ということは、番組の舞台として設定した七島はすべて定住者がいるので、その枠外のところに来てしまったことになる。
「ガクガクブルブルなのじゃ、本当に死んでしまうのじゃ!」
 泳いでたどり着いたという設定なので、濡れて垂れたウサミミはさておき、濡れたスク水が容赦なく体力を奪っていく。
「とりあえず脱ぐのじゃ‥‥なに、ウサミミがあるから、全裸ではないのじゃ!」
 ウサミミがあるから、何も身に着けてないわけじゃない。恥ずかしくなんかないさ、の理論である。
『そうです、本来はロケ予定にはなかった八丈島です。それも、八丈小島の方! つまりは、無人島ということなんですね』
「うわぁ! 何をしておるのじゃ!?」
 ひょこっとサトルが実況に現れ、大慌てのDarkUnicorn。さすがにこの格好では、Tyrantessのように実況は透明というわけにはいかない。
『通りすがりの実況です。気にせず、試合を続行してください‥‥』
 前かがみになりながらも、俺の屍を乗り越えていけとばかりにキメたつもりのサトルだったが、DarkUnicornの手によってボッコンボコンである。
「見るななのじゃ!」
 子どもにも容赦なしである。というか、下半身をおっ勃てていれば、子どももクソもない。
「八丈島がないのに伊豆諸島ですって!? 八丈島がないと全部揃わないじゃないですか! と言ったのがいけなかったのでしょうか‥‥?」
 一方、河辺野も打ち上げられいた。すぐに八丈小島と気づくあたりがさすがだが、相変わらず縛られたままで身動きがとれず、どこか分かったところで意味はない。
「うう‥‥くさや汁の入ったボトルしかないやんか‥‥」
 そして、島の反対側では伊藤が同じく打ち上げられていた。こちらは一緒に流されてきた、唯一の飲食物であるところのくさや汁の入ったボトルを前に、途方に暮れていた。
 これを飲めば、胸焼けどころでは済まない。が、ここは胸焼けルールの通用する三宅島ではないのだ。ということで、思い切って飲んでみることにする伊藤。
「〜ッ!?」
 が、結果は予想どおり無惨なものであった。ただのた打ち回るだけの伊藤。海水を飲んで余計にノドが乾くのを、より悪化させた状況になっていた。
『ふう、いい目とヒドい目に同時に遭うとは‥‥ん?』
「サトルくん、ヒドいよ! ホントに死ぬかと‥‥ぐぼはっ!」
 ようやく立ち直ったところへ、運よく打ち上げられて助かっていやがったヨシュアがやって来る。まさに、奇跡の兄弟再会だ。
 が、サトルは駆け込んでくるヨシュアに無言で強烈なボディブローをかまし、再び棺桶の中に沈める。
 そして、今度こそさらに南の鳥島方面に向けて水葬を執り行うのであった。
「ひっ‥‥この状態で誰かに会ってしまったらと思うと、ドキドキが止まらないのじゃ‥‥」
 完全な無人ではないと知ったDarkUnicornが、必死に見せてはいけない部分を隠しながら島の中を進んでいく。なお、ずっとカメラがついて来てんじゃんとは、言わないであげるのが礼儀である。
「ひいっ!」
 DarkUnicornが悲鳴を上げてしまう中、ガサガサと茂みから出てきたのは、黒服に島流しにされたシトリーであった。
「ん? んー?」
 だが、さすがにシトリーも全裸のDarkUnicornの意味が分からない。
 しばしの後、ようやく何かを閃いたようだ。
「ん! ふむ、そういえば伊豆諸島は活火山地帯だったな。温泉に行くところなんだな? よし、私も温泉に癒されに行くぞ!」
「そんなわけないのじゃ!」
 DarkUnicornが否定するのも聞かず、全裸になってしまうシトリー。
「で、その秘湯ってのはドコよ?」
 キョロキョロするシトリーだったが、温泉が近くにあるハズもない。
 とりあえず、全裸仲間の増えたDarkUnicornだったが、不思議なもので、一人じゃなければ平気な気に‥‥は、あまりなってこない。
「ひいっ!」
 ガサガサっと、茂みから今度こそ‥‥Tyrantessが出てきた。幸いかどうかは分からないが、またも女性である。
「ん? んー!?」
 やっぱりTyrantessも、突然の全裸女性2名の出現にワケが分からないでいる。
「ああ、裸族の村って設定か! じゃあ、郷に入っては郷に従えっつーし‥‥」
「だから、違うのじゃ!」
 DarkUnicornが止めに入るよりも早く、素っ裸になってしまうTyrantess。
 そして、まるでこの瞬間、すなわち全女性出場者が裸になる瞬間を見計らったかのように、百鬼が飛び込んでくる。
「いつの間にか、山脈になってるじゃないですか! これは、早く地質調査をしないといけません!」
 せっかく助かった命だというのに、またも散らそうとする百鬼。ならば、DarkUnicornもシトリーもTyrantessも、その希望に応えぬわけにはいかなかった。
「おっぱ‥‥ぐごっ、どへっ、ぐひゃっ!」
「I’m えらい人ーッ! 今回は脱いでくれた人にポイントをやるゼ!」
 百鬼が血溜まりという名の赤い温泉に沈んだところで、ようやくえらい人が登場である。
  特別賞 DarkUnicorn、シトリー幽華、Tyrantess 各5
「うむ、では‥‥では‥‥」
 だが、中々立ち去ろうとはしないえらい人。立ち去りがたい理由は、その視線の先にあるのは、言うまでもない。
 こうして、えらい人までが全裸の女性3人にボコボコにされたところで、無事伊豆諸島ロケは終了するのであった。