芸人プロレスごっこ王12アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/03〜05/05

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「拳法記念日か‥‥本場中国まで行くのもダルいし‥‥」
「あの、憲法で中国の意味が分かりませんが‥‥ぐぼはっ!」
 すかさずスタッフが割って入るが、えらい人になつかしの鉄パイプで殴られるという殺人拳法をくらって終わりである。
「拳法って言ってるだろうが! で、中国地方でもダルいしなぁ。スタジオで中国の体でってのも、前回の木星からスケールダウンしているだけだし‥‥」
「でしたら、中国っぽくパンダの前でやってみるというのは‥‥ひいっ!」
「なんだと! よし、それだ!」
 思わず怯えるスタッフだったが、えらい人があっさりそれを受け入れる。
「‥‥サー、イエッサー!」
 こうして、パンダに危害を加えるのは厳禁の中、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第12戦目は平然とスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・中国で収録を行っているという体で、動物園のパンダの前で拳法によるバトルロイヤルを行います。
・マトモな拳法を使ってはいけません。変態的な拳法を各自考案してください。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王は事前告知した上である日唐突に決まりますので、気長にそのときを待ちましょう。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。おまえらが死亡、怪我、流血するのは勝手だが、パンダにさせてはダメだぞ。

ランキング(第7回分まで)
 1位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
 1位 伊藤達朗(fa5367) 10pt
 3位 DarkUnicorn(fa3622) 8pt
 3位 阿野次のもじ(fa3092) 8pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第7回 04月17日 07:00〜
・第8回 04月18日 07:00〜
・第9回 04月19日 07:00〜
・第10回 04月24日 07:00〜
・第11回 04月26日 08:00〜

●今回の参加者

 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 5月3日は拳法記念日。聞いたこともない? それはそうだろう。なぜなら、今日これから起こることを記念する日となるのだから。
『そんな拳法記念日の伝説を作るべく、6人の精鋭がパンダの前に‥‥ハッ!?』
「ん? またエロい白昼夢でも見たの? 相変わらず‥‥ぐはっ!」
 実況を開始するサトル・エンフィールド(fa2824)が何かに気づいて声を上げたところを、すかさず解説のヨシュア・ルーン(fa3577)が茶々を入れたのだが、さらに返す刀でサトルの鉄拳がヨシュアのボディにめり込んでいた。
 サトルは、パンダの前にさらにパンダの格好をした羽曳野ハツ子(fa1032)がいたことに驚いていたのだが、早くもそれどころではなくなってしまっている。
「くふっ‥‥とりあえず拳法記念日というからには、兄弟でのバトルのが原則でしょうってコト? もちろん、弟が勝利するのが、努力、友情、勝利の正しい姿!」
 口元の血を拭い、よく分からない構えからサトルに飛びかかるヨシュア。クロスカウンターのように、両者のパンチが交錯する。
「兄よりすぐれた弟なぞ、存在しないのだよ!」
「‥‥って言った人の方がやられてた気がするけど‥‥ぐぼはっ!」
 静止した状態から、崩れ落ちたのはヨシュアの方だった。ヨシュアのパンチを肘で跳ね上げつつ、サトルはそのままヨシュアのテンプルにパンチを叩き込んだのだった。
 だが、努力、友情、勝利の世界では、ボクサーは拳法家の噛ませ犬以下の存在でしかないので、リングより先に放送席に屍が一体積まれたところで、ようやく試合開始でしかない。
『‥‥解説もいなくなったので、試合を追いながら選手を紹介していきましょう』
 バトルロイヤルなので、すでにリング上には6人の選手が立っている。
『ガムテープがなくても、御膳試合には勝ってみせる。だって剣法家だから。古河甚五郎(fa3135)選手、堂々とポン刀を差しての登場です!』
 大ウソの『模造刀です』のスーパーが入る中、拳法と剣法を間違えた古河が紹介される。とはいえ、無論ガムテープを携帯しているのは言うまでもない。
「えー、まずは飲めば飲むほど強くなるスイ拳アルです」
『切り札は先に見せるなと言っていたパトリシア(fa3800)選手ですが、早くもスイ拳を披露する模様です‥‥さらに奥の手を持っているのでしょうか?』
 古河がポン刀なら、パトリシアはホースを持ち込んでいた。もちろん消防用のもので、その先は消火栓にまでつながっている。
『まったく酔っている気配はないようですが‥‥これは酔拳ではない、水拳だぁ!』
 ただ単にホースで水を撒くだけの話であるが、その水圧を侮ってはいけない。このバトルロイヤル、場外に落ちただけでも負けである。
「‥‥仕方あらへん。やられ役生活幾星霜の中で編み出した、禁断の拳法を本邦初公開するコトにしますわ」
『伊藤達朗(fa5367)選手、なにやら大技を披露するようですが‥‥あーっと、パトリシア選手の水の直撃を受けたーッ!』
「フッ、名づけてわいまわる拳法や! どんな大根な役者、格闘センスの欠片もないタレントが相手であっても、華麗に戦ってみせ、相手に勝利を収めさせることができるという、実に素晴らしい拳法や!」
 伊藤がクルクル回りながら、水の勢いをそらしていく。風車の理論ならぬ、水車の理論だ。そう、ワイマール憲法は何の関係もなく、わいが回る拳法→わいまわる拳法というだけの話である。
 だが、この拳法には大きな欠陥があった。伊藤はしがない大部屋俳優に過ぎない。フィギュアスケートの選手とかではないのだ。
『おーっと、明らかに伊藤選手の足がもつれてきましたが‥‥転落ーッ!』
「負けたところで、捨てゼリフも必要やな! 『今日のトコはこの辺にしといたる!』くらいは口を切りながらも言えるようにならんと、一人前言えへんからなぁ‥‥」
 そう言いながらも、目が回っているせいであさっての方向へ消えていってしまう伊藤。
「プロレスごっこを離れること132日。俺は世界各地を旅して来た。あるときは‥‥」
 そんな喧騒をよそに、佐渡川ススム(fa3134)はコーナーポストに寄りかかり、空を見上げていた。そのたたずまいはどこか哀愁さえ感じさせるほどであったが、佐渡川ってこんなキャラだったっけ?
「‥‥闘い越えて来た幾日もの夜が、俺を鍛え上げた! 俺は以前の佐渡川じゃない、パワーアップして余計におかしくなった、言うなれば佐渡川マーク2(仮)‥‥って、なんで未だに仮がとれないんだろう‥‥」
 佐渡川がついに動いた。半獣化パンダ状態の羽曳野へと突進していく。
「イクぜ! 猿丸流葬兵術影技ッ!」
 よく分からないワザの名前だったが、単に羽曳野を水の中へ突っ込ませるだけのワザである。
 それも、単に羽曳野を塗らして下着を透かし見たいだけの話である。結局のところ、三つ子の魂百までということで、生まれながらのエロスはどうにもならない。パワーアップしたのは、性欲なのであった。
「これはいけません! 透けないようにしましょう、ガムテで!」
 あっさりとポン刀を捨てた古河が、ガムテを持って飛び込んでくる。そして、羽曳野の胸にペタペタとガムテを貼りつけていく。
「くっ、うらやましいヤツめ! ならば一子相伝の暗殺拳法、猿丸流葬兵術が秘奥義、悶絶虎馬穿衝を食らえっ!」
 怒りの矛先を古河に向けた佐渡川が、さらなるワザを繰り出す。って、ただのカンチョーでしかないのだが、それすらも果たすことはできなかった。
 羽曳野の包帯の巻かれた黒い腕が、佐渡川をなぎ払って場外まで吹き飛ばしてしまったのである。
『こっ、これはッ!?』
 驚愕の表情を浮かべたサトルが、なぜかリングインしてくる。
 そして、羽曳野の額に『肉』だの『大往生』だのを書いては消しを繰り返した後、『死』に落ち着いたところで去っていく。
「『死』ね‥‥勘のいい子ね。私のこの拳が、中国拳法における秘伝、毒手であることに気づくなんて‥‥教えてあげましょう、パンダの腕が黒い理由をッ!」
 一同、『パンダだから黒いだけじゃん』と言いたかったが、つづきがあるようなので、グッと堪える。
「パンダが元々はシロクマだったというのは、知ってのとおり。それが笹に混ぜられた毒を摂取することで、段々とパンダになっていく。そう、この黒い部分は、すべて毒なのよ!」
「それはいけません。早く毒を治療しなくては、ガムテで‥‥はムリなので、病院で! ムチャキングなら、TOMITVの組合健康保険、すなわち組合拳法がききます!」
 羽曳野が言い切ったところへ、保険証を持った古河が飛び込んでくる。
「毒手の前には、防御など一切不可能!」
 だが、シャレの通じない羽曳野の前に、佐渡川同様あっさり場外へ吹き飛ばされてしまう古河。
『毒は一切無関係で、腕力だけな気もしますが‥‥古河選手、アウトです!』
「佐渡川や古河ほどの変態‥‥もとい漢ともあろうものが、なんと愚かな。最強の拳法といえば、おまえらの大好きな野球拳だったのにな」
 これまで沈黙を守っていたグリモア(fa4713)が、佐渡川と古河が敗れていくのを見て‥‥というか、パトリシアと羽曳野の女性二人になるのを見計らって、ついにリング中央に進み出てくる。
『グリモア選手、首にネクタイを10本も締めています。そこまでして勝ちたいか‥‥そりゃ、勝ちたいですね! 是非、勝って欲しいものです』
 一瞬非難しかけたサトルだったが、おこぼれに与ろうとすぐに言い直す。
「ならば私も、タイ極拳アルです。あ、準備に時間がかかるんで、そっちで先にやっててください」
 ならばと、パトリシアも水拳をやめ、新たなる拳法を出してきた。といっても、準備中ではあるが。
「アウト! セーフ! よよいのよい! うう、負けちゃった‥‥」
 そんな中、サトルの希望を打ち砕きながら、順調にグリモアのネクタイの数が減っていく。
 一方、リング下では古河が佐渡川にも保険証を提示していた。
「マゾ皮さん、早く治療した方がいいです。アマチュアですから、国民健康保険で国民拳法がききます! ムスコさんですから、扶養家族ですね!」
 ナニのコトを言っているのかよく分からないが、しきりに病院に行くことを勧める古河。無論、手遅れの打たれすぎの方ではないことは確かだ。
 そんな敗者のリング下はさておき、リング上ではいよいよグリモアがパンツ一枚になっていた。
 羽曳野が毒手の抜き手でパーしか出していないのに、グリモアは延々グーばかり出していたからである。なぜか?
「我が人生に一片の悔いなし!」
 そう言って、握り拳を突き上げるためである。そのため、握り拳のグー以外を出すことは、覇王として許されなかったのだ。
 というわけで完敗のグリモアの背後から、ようやくタイ極拳の準備の整ったパトリシアが近づいてくる。
「はい、プラス極とマイナス極で対極拳でーす」
 ビリビリ! 一瞬、光るガイコツが見えた気がするが、きっと気のせいであろう。だから、グリモアが黒コゲアフロになっているのも気のせいだ。
『さあ、勝負は女性二人に絞られました。一体、どんな淫靡な勝負が‥‥えーっ!?』
 サトルが驚愕の声を上げる。あっという間に、羽曳野が場外に突き落とされてしまったからだ。
「トドメの、トウロウ拳アルです」
 蟷螂ではなく、灯篭拳。つまり、石灯篭で殴るという、羽曳野の毒手同様に力ずくで場外に落とすだけの話である。
 こうして、最後までリング上に残ったパトリシアが優勝となった。
 が、バトルロイヤルの勝敗は、ランキングのポイントには何の関係もない。すべてを決めるのはこの人。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 パトリシア 7
 2位 羽曳野ハツ子 3
 3位 グリモア 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
 結局、最後に残った順番どおりに発表して、えらい人は去っていった。
『以上、芸人プロレスごっこ王をお送りしました。また来週の水曜にお会いしましょう!』
 久々にさわやかにシメることのできたサトル。倒れたままのヨシュアを一切気にすることなく。