芸人プロレスごっこ王13アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/09〜05/11

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「GWも終わったし、通常ロケに戻るか‥‥おい、地図!」
「えーっと‥‥こちらでよろしかったでしょうか?」
 どこまでさかのぼっていいのか分からず、とりあえずは東京23区の地図を持ってくるスタッフ。
「うむ、他に何があるとでも? えーと、確か豊島区までやってたっけか?」
 えらい人の記憶からは、途中の伊豆諸島やら木星やらは飛んでしまっているようだ。無論、そのコトにツッコミを入れる無粋なスタッフはいない。
「んー、前やった千代田区と豊島区に挟まれてる文京区にするか。ドームもあるし」
「それをいったら新宿区も挟まれて‥‥ぐぼはっ!」
 だが、こらえ切れずについツッコミを入れてしまうスタッフ。たとえ、次の瞬間には鉄パイプのエジキになると分かっていても、だ。
「オセロじゃねーんだ! 同時に複数ひっくり返ると思うなよ!」
「‥‥サー、イエッサー!」
 こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の13戦目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・東京都文京区で収録を行います。
・『文京』をテーマに試合をしなくてはなりません。『文京』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王は、ポイントがいい感じになってきたら決まりますので、気長にそのときを待ちましょう。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はやめとけ。

ランキング(第10回分まで)
 1位 白海龍(fa4120) 14pt
 2位 DarkUnicorn(fa3622) 13pt
 3位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
 3位 伊藤達朗(fa5367) 10pt
 5位 阿野次のもじ(fa3092) 8pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第8回 04月18日 07:00〜
・第9回 04月19日 07:00〜
・第10回 04月24日 07:00〜
・第11回 04月26日 08:00〜
・第12回 05月03日 07:00〜

●今回の参加者

 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa5271 磐津 秋流(40歳・♂・鷹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 サンシャイン60の前に、アパッチ族の姿でたたずむ娘が一人。
「ぬ、ぬぬ‥‥」
 だが、阿野次のもじ(fa3092)が雄叫びを上げるではなく、何やら唸っていた。
 それもそのハズ、サンシャインは池袋で、すなわち第9回の豊島区のときにやるべきネタなのである。池袋が文京区だと思っている阿野次と、それを鵜呑みにしてついて来てしまったサトル・エンフィールド(fa2824)とヨシュア・ルーン(fa3577)の三人は、確実に間違った場所にいるのだ。
 いや、間違い度合いで言えば、実況のサトルと解説のヨシュアの方がヒドかった。なんといっても、すでに屋上で待ち受けているのだから。
『新シリーズに突入して13回目、非常に縁起のいい数字です。天使のように清らか僕としては、このロケハンを見て、目をつぶすご老人や、トラウマを負う乳幼児がいないコトを祈るのみです』
 実況を開始するサトルの目の前で、ヨシュアが壁面を降りていこうとしていた。
「この摩天楼を下れって、そんなご無体な‥‥」
 普通は実況が降りて、解説は屋上で待機しそうなものだが、そこへ兄弟の力学が働いてしまい、解説のヨシュアの方が降りることとなったのである。
『プロレスごっこに労災は適用されますか? って、聞くだけヤボだったようです。しかしッ! 残された僕には一銭のお金も入らないけど、それでも僕は構わないッ! PTSD、心的外傷後ストレス障害になっても構わないッ!』
「そりゃ、そのショッキング映像の当事者は僕だしね‥‥」
 ボヤキながらも、ロープづたいに降下を開始するヨシュア。下では、間違いに気づいた阿野次が文京区に向かっていたが、上からでは小さすぎて気づけない。
 ということで、あっさりと映像は東京ドーム前に切り替わる。そこには、卵を持ったイルゼ・クヴァンツ(fa2910)が立っていた。
「え? 卵の意味が分からないですって? 文京区→東京ドーム→D.O.M.E→月は出ているか→月見→月見そば→卵って、簡単直結な連想でしょう?」
「‥‥かぶってしまった‥‥」
 そこへ、磐津秋流(fa5271)が現れる。これまでプロレスごっこでは無言キャラを通してきた磐津だが、あっさりとしゃべってしまっている。とはいえ、無口キャラだからといっても、必要ならば多少はしゃべるのである。
「文京区の目玉→東京ドーム→ビッグエッグ→卵で目玉焼き‥‥だったのだが‥‥」
「あ! 私のも文京区→東京ドーム→ビッグエッグ→卵という派生にすれば、早かったんですね?」
 腕を組んで、一人うんうんとうなずくイルゼ。だが、磐津はそれを気づかせるために重い口を開いたのではない。
「話が早い‥‥その卵、目玉焼きのためにも渡してもらおうか‥‥」
 選手二人に対して、卵は一つ。つまりは、イルゼは手にしている卵を割られたら負け、一方の磐津はその卵を割って目玉焼きを作ったら勝ちという、変則的な3WAYマッチになる。
「大切なタッグパートナーなんですから、渡せません‥‥」
「悪いが、これも仕事なんでね‥‥」
 後ずさりするイルゼに、じりじりとにじり寄る磐津。緊迫する空気の中、平然と映像が切り替わる。
 そのころ、阿野次は池袋駅に到着していた。池袋から山手線で秋葉原まで出て、そこから中央線で水道橋に向かうというルートを選択している。地下鉄使えよという話であるが、日の当たるところしか通る気はないようである。
 そして、再びドーム前に映像が戻ると、デーンとソファに座ったあずさ&お兄さん(fa2132)のお兄さんが大映しになった。
「はい、安楽椅子探偵となってお兄さんです。サトル・ヨシュア兄弟殺人事件‥‥この難解なヤマを、紐解いていきたいと思います」
 お兄さんがしゃべり出す。お兄さんの首筋に針が刺さっているのも気のせいで、ソファの背後であずさが蝶ネクタイ型マイクにしゃべっているのが見えるのも気のせいである。
 それにしても、その場にいないだけで殺されたものと断定するお兄さん。阿野次もいねーじゃんという話だが、そもそも女なんぞ最初から眼中にないので、存在しないものは行方不明になりようもない。
「なあに? 文京区なのに安楽椅子探偵なのはなんでだって? そいつはいい質問ね。私は文京区のことなら安楽椅子探偵よりも知っているからね。まずは、なんたってカイザースラウテルンよ。文京区の姉妹都市で、この前のW杯で日本対豪州も行われたくらい。そしてつづくは、コロンビアよ。麻薬で有名なコロンビア共和国とみせかけて、姉妹都市なのはサウスカロライナ州の方だから、注意が必要だね。少し荒れているが、チェリャビンスクもそいつぁすげえョ。コロンビアの姉妹都市で核兵器工場の事故が起きたのは、ここしかない! おっと、忘れちゃいけないのが、チェリャビンスクがシベリア鉄道の起点だってこと。超特急はダテではないんだよ!」
 長々と説明するわりには、中々安楽椅子探偵までたどり着かないお兄さん。これに、寝不足も加わってイライラする人物が一人。
「なんや? いつまで経っても、わいの名前が出てこーへんやないか。もっと弩エラいヤツを忘れてへんやろかーっ」
 そう、中々出番の回ってこない坊さん姿の伊藤達朗(fa5367)が割って入ってくる。別に犯人になりたいわけではない。まったくカメラに映らない状況を打破したかっただけだ。
「もっとすげえヤツ‥‥? ああーっ、肝心なのを忘れてたーっ!」
「やった! そっ、それやーっ!」
「耳の敏感な同性愛者の映画評論家ーッ! こいつがいなければ、超特急自体が存在しなかったっていうよ!」
「てめえ、ふざけるんやない! いつまで経っても、安楽椅子探偵にたどり着かないやないか!?」
 逆上した伊藤によって、お兄さんが第二の殺人事件の犠牲者となったところで、再び映像がサンシャイン前に切り替わる。
「‥‥はあはあ‥‥心臓が破れるかと思った‥‥」
 ようやく下まで降り切ったヨシュアを、サトルがあたたかく出迎えていた。
『ん? あ、そう。じゃ、これから文京区行くから、今までのナシね』
「へ? あ、ありのまま、今起こったコトを話すゼ! 言われるがままにサンシャインの壁を降りたら、なかったことにされた。編集でカットとかお蔵入りとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ! もっとおそろしいモノの片鱗を味わったぜ‥‥ガクッ」
 こうして、ヨシュアは文京区にたどり着くことなくリタイヤとなった。
 だが、文京区編なので豊島区でのできごとはスルーで、さっくりドーム前である。
「なんぞ色々あった気がしまっけど、お経の眠たさと戦うことにしまんねん」
 お兄さん殺人事件のコトはさっくり忘れ、本来の対戦相手と戦うことにした伊藤。
「わしの名前を言ってみろ、なのじゃ!」
 だが、そこへ飲んだくれたDarkUnicorn(fa3622)が乱入してきて、睡魔もクソもなくなる。ドームで野球観戦というよりは、ダメトラ時代のトラキチ乱入という感じだ。
「ヒメさん‥‥やったっけ?」
「そうじゃ! 文京→文豪ということで、本名ヒメ・ヒノトのペンネームDarkUnicornなのじゃ! ならば、わしの本当の職業を言ってみろ、なのじゃ!」
「えーと、お色気専用B級ヨゴレアイドルでしたっけ‥‥ぐはっ!」
 名前はなんとかやり過ごした伊藤だったが、職業で地雷を踏んでしまい、DarkUnicornに始末されてしまう。永眠も、やはり寝たうちに入って負けとなるのであろうか?
 こうして、第二の殺人事件の犯人は第三の殺人事件の被害者となるのであった。
 だが、DarkUnicornは一向に治まる気配はない。間に卵を挟んで戦っていたハズのイルゼと磐津まで、集合をかけられ連れてこられる。
「わしの名前を言ってみろ、なのじゃ!」
 とはいえ、プロレスごっこ初参戦のイルゼには難問である。が、なんとか考える人のいいイルゼ。
「ああ、噂に聞いたコトがあります。なんでも、かぶり芸人とか、アマチュア芸人とか、打たれすぎ芸人とか‥‥」
「噂が捻じ曲げられておるのじゃ! なんか別の個人が特定できそうなのじゃ!」
 激高したDarkUnicornがイルゼに襲いかかるが、卵を守るためにすっと避けられてしまう。おかげで、DarkUnicornが余計にヒートアップしてしまう。
「‥‥‥‥露出狂‥‥ぐぼはっ!」
 磐津がボソリと呟いた言葉にも鋭く反応し、DarkUnicornの周囲は死屍累々である。第二の殺人事件どころか、一気に第三、第四の殺人事件発生だ。
「証拠をでっち上げる前に、容疑者がどんどん消えていくよぅ‥‥」
 おかげで、助手から昇格したばかりのあずさ探偵がてんてこまいである。
 バラバラバラ‥‥そこへ、ヘリの音が近づいてくる。サトルが、ヨシュアを見捨ててヘリで移動してきたのである。
『僕らの身体のアイドルでいいんじゃないでしょうか?』
 降りるなり、いきなり提案するサトル。
「わっ、サトルくんだ‥‥ああっ!?」
『だから、身体を‥‥ぐぼはっ!』
 あずさの目の前で、サトルが崩れ落ちていく。実は生きていた最初の被害者のサトルが再び消され、捜査は振り出しに戻るのであった。
「プロレスごっこに出ている以上、リアクション芸人かヨゴレ芸人のどちらかであることに疑いはないと、この子が言っています‥‥そんな私は曲芸師ですけど」
 いつの間にか情が湧いたのか、卵を大切そうに温めながら、DarkUnicornに言うイルゼ。卵がしゃべることはないし、言うまでもなく無精卵であるが。
「もうこうなったら、グラビア芸人なんかでちょうどいいんじゃないかな?」
 半ば捜査をあきらめたあずさが、諭すようにDarkUnicornの肩を叩きながら言う。
「ムム、もう動く人間も残ってないことじゃし‥‥とりあえずそれにしておくのじゃ! 別にグラビアをやってるわけじゃないのじゃが‥‥」
「わけじゃないけど、よく脱ぐもんねぇ〜」
「ええい、次までに考えておくのじゃ、宿題じゃぞ! うわーん‥‥」
 泣きながら走り去っていくDarkUnicorn。入れ替わるようにして、えらい人が走り込んでくる。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 伊藤達朗 7
 2位 磐津秋流 3
 3位 イルゼ・クヴァンツ 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
 去っていこうとするえらい人のところへ、あずさが飛び込んでくる。
「犯人は必ず現場に戻ると言います。だから、最後に現れたえらい人が‥‥あっ!?」
 あずさがえらい人を犯人に仕立て上げようとしたところで、さらに遅れて阿野次が到着したのである。
 誤認逮捕の報復で、あずさが鉄パイプを持ったえらい人に追い回される中、阿野次のプロレスごっこEDテーマが流れ出す。
「それでは、5万6千の大観衆よ、裏テーマ曲『えらいひとは大切な制作費』を聞くがよい。制作費はモノの読むのだゾ☆」
 あらゆる水増し発表も目じゃないほどのサバの読み方はともかく、ズシズシと東京ドームの中に入っていってしまう阿野次。
 おかげで、せっかくの歌声も一切聞こえなくなってしまったという。