芸人プロレスごっこ王14アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/14〜05/16

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「んー、港区、品川区、江東区、中央区、千代田区、豊島区、文京区。23−7だから、まだ16区もあるのか‥‥おーい、地図!」
「あの‥‥その前に一つよろしいでしょうか?」
 指折り数えつつ、地図を求めるえらい人。だが、スタッフが地図を持ってくることはなかった。
「なんだ!?」
「マカオ、ベガスの傷が深いのは重々承知しておりますが‥‥ここまで23区がつづくのはあまりに露骨なのではないかと?」
「‥‥で?」
「ようするに、ちょっと違った場所に行ってみたいと愚考する次第でありまして‥‥」
 冷や汗をかきながらも、なんとか言い切るスタッフ。それに心動かされる様子は微塵もなかったが、一応考え込むえらい人。
「あの、やはり‥‥」
「よし!」
 沈黙に耐え切れずスタッフが声をかけたところで、えらい人がカッと目を見開いた。
「横浜にでも行くか、横浜。そうだな‥‥ハマっぽいところで、ベタに山下公園にしておくか!」
「〜ッ! サー、イエッサー!」
 えらい人の言葉に、スタッフは久々に気持ちよくイエッサーと言えた。最初のうちは網走とか与那国島とか、遠出しまくっていたことも忘れて。
 こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の14戦目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・神奈川県横浜市山下公園周辺で収録を行います。
・『山下公園』をテーマに試合をしなくてはなりません。『山下公園』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定は、やっぱりしばらく先になるんじゃね? 気長にそのときを待ちましょう。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はやめとけばいーじゃん。

ランキング(第11回分まで)
 1位 白海龍(fa4120) 14pt
 2位 DarkUnicorn(fa3622) 13pt
 3位 百鬼レイ(fa4361) 10pt
 3位 伊藤達朗(fa5367) 10pt
 5位 阿野次のもじ(fa3092) 8pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第9回 04月19日 07:00〜 東京都豊島区
・第10回 04月24日 07:00〜 伊豆諸島
・第11回 04月26日 08:00〜 木星(のつもりなスタジオ)
・第12回 05月03日 07:00〜 中国(のつもりなパンダ前)
・第13回 05月09日 08:00〜 東京都文京区

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

 白いベール越しのマリンタワーが、大映しにされる。プロレスごっこの力では、マリンタワーに布をかぶせるなんて大がかりなコトはできないと思われるので、早くもイヤな予感ばかりしてくるが、それをバックにサトル・エンフィールド(fa2824)の実況がはじまる。
『さて、東京をはるかに超えて、ここ横浜山下公園では‥‥』
 段々と映像が引いていき、さらに90°回転したところで、犬神一子(fa4044)のフンドシ姿であることが判明する。
『僕たちは、そんなモノが見たいんじゃない! 確かに宣言どおりに大変堂々とした、まさにフンド神ともいえるフンドシ姿ではありますが‥‥公然猥褻罪で逮捕されればいいのに! しかし、それ以前にレフェリーチェックは入らなかったのでしょうか?』
「‥‥‥‥ッ!?」
 遠くから蚊の鳴くような叫び声の残骸が聞こえてくるが、サトルも犬神も気づかない。それは、今回のレフェリーである九条運(fa0378)が氷川丸から叫んだものであった。
「‥‥ハァハァ。全然気づいてもらえねぇ‥‥」
 映像が氷川丸上に切り替わったころには、すっかり肩で息をしている九条。
 だったら、犬神のところに駆けつければいい? レフェリーだけにフェリーから出られないのだ。つまり、氷川丸から出られないのである。
 だから、レフェリーチェックと称して、幸せそうなカップルどもを『おまえを外国人墓地に埋めてやろうか!』と世紀末な目で睨むコトが限界である。
「おまえを、フンドシ姿にしてやろうか!」
 再び山下公園の映像に戻ると、すでに逃げようとするサトルを、犬神がシュルシュルと伸ばしたフンドシで絡め捕らえていた。
「おまえ、ブリーフだな!? フンド神にとって、ブリーフとは悪! 悪即斬なので、ブリーフビリビリに決定だ!」
『いえ、ボクサーブリーフですけど‥‥』
「フンド神にとって、トランクスだろうとブルマだろうとベジータだろうと、すべて同じこと!」
『野菜の王子様は関係ない気がしますが‥‥僕の下半身が、ドキドキするほどのピンチです。ああ、この世に救世の王かキングはいないのか?』
 キキーッ! サトルの叫びを聞きつけてか、全面シャドウグラスの高級外車が、肝心のサトルをもひき殺しかねない勢いで突っ込んでくる。
 運転手が出てきて後部座席のドアを開けると、マリンブルーの、かつてのくじらな球団のビジター用ユニフォーム姿が現れる。国民的プロレスごっこ王、マリアーノ・ファリアス(fa2539)だ。
「OK、レフトとライトを交代だネ!」
 いきなり言い放つマリアーノ。無論、守備位置の交代指示ではない。右と左の下着を交換せよとの命令である。つまり、マリアーノから見て右手にいるサトルと、左手にいる犬神とで。
『さすがマリアーノ大ちゃん、攻めの采配‥‥って、ああーっ!』
 サトルがフンドシにされてしまうのを眺めながら、采配的中と満足気なマリアーノ。
 しかし、大ちゃんとはいえ頭を剃ったりはしていない。あくまでも、野球帽をかぶりつづけてダメージを与えつづけなければ意味がないのである‥‥という名目で、剃髪を回避していた。
 だが、それらをも含めて、ファンは超采配に不満爆発である。
「まったく、プロレスごっこ王ともあろうものが、その程度とは嘆かわしい‥‥」
「はッ! そういうおまえ‥‥いや、あなたはムチャキングサマ!?」
 マリアーノが声のした方を振り返ると、そこには半ばパンダとなった羽曳野ハツ子(fa1032)が立っていた。
「これハこれハ、先代の現ジョーカーにはお世話になりマシタ‥‥」
 マリアーノが羽曳野に握手を求めに行くが、あっさり払いのけられる。
「連想などといった、まだるっこしいコトをするとはナニゴト? なぜ、山下公園そのものに戦いを挑まないの? 私なら、山下公園そのものと戦ってみせるわ!」
 キングまで上りつめるには、打たれすぎるしかないのだろうか? と、自分が王なのは棚に上げて、哀れみの目で羽曳野を見るマリアーノ。
「山下公園が山下公園たり得るのは、ずばりその所在地が山下町にあるからに他ならない。山下町以外の場所にあれば、山下公園が山下公園とは呼ばれていないのは分かるわよね? だから、私は山下公園を押して石川町まで移動させることで、山下公園の根本を覆すわ!」
 マリアーノの目に宿った哀れみの光が余計に輝きを増すが、気にせずに海に飛び込む羽曳野。
 一応岸壁を押すが、進めないのは言うまでもない。ただプールサイドにつかまってバタ足しているだけ状態である。
「くっ‥‥やるじゃない、山下! でも、勝負はまだはじまったばかりよ、ふんぬぉおおぉっ!!」
 ヒートアップする羽曳野を、マリアーノも犬神もサトルもただ黙って見ている。
 サトルの目が雄弁にフンドシに強制生着替えさせられた自分よりも哀しい人がいると訴えていたが、口では何も言えない。言ってしまえば、すべてが幻になってしまうような気がして。
 だが、それを平然と打ち砕くものが現れた。槇島色(fa0868)である。
「まったくもう。みなさん、わざと山下を勘違いしているいでしょ? どう考えても、山下といったら公園じゃなくて、裸の大将な画家しかいないじゃない!」
 そのわりには、ランニングに坊主頭のトレードマークは封印し、オーバーオールにバンダナと守りの姿勢である。
『ダメです。ちゃんとランニングを着てくれないと、不思議センサーが反応しません!』
 ショボーンとなる男性陣。そこへ、さらにまた声がかかる。
「まったく、アイドル声優を名乗っていながらその程度とは、そちらの方こそ嘆かわしいのじゃ!」
 そこへ、グラビア芸人となって一発目の仕事であるDarkUnicorn(fa3622)が、やはり憤慨しながら入ってくる。
「わしなど、芸人の部分をアイドルに脳内変換して、『グラビアアイドルだ、わーい!』と必死に己をごまかしているというのにじゃな! 大体、やました公園→やらしい公園なのじゃ! それを、アイドルの名のつく身でありながら、ランニングで来ないとはナニゴトじゃ!」
 DarkUnicornの目は、『おまえをお笑い声優、それもサムカワ声優にしてやろうか!』という殺伐とした光を宿していた。
「でもほら、素肌にオーバーオールだから‥‥これで勘弁してね♪」
『〜ッ!? そうです。僕らはこれを待っていたんだッ!』
 ちらりと見せられた横乳に、男性陣ヒートアップである。犬神に至っては、マリンタワーから一気にランドマークタワーに格上げだ。DarkUnicornの言い分など忘れ、未だ必死にバタ足の羽曳野に至ってはもはや完全に忘却の彼方である。
 そして、その余波は氷川丸にまで届いていた。
「この山下公園、関東大震災の際に大量に出た瓦礫で海を埋め立てて作られた公園だそうで‥‥瓦礫→ガレキ→ガレージキット! ということでですね。まずは金型を‥‥ムム!?」
「ん? どうしたんだ!?」
 九条の前でガレキの解説をしていた百鬼レイ(fa4361)だったが、敏感にナニかを察知した。
「感じます、感じましたよ‥‥ちょっと等身大ガレキの型を取りに行ってきます!」
「あー、一人にしないでーッ!」
 だが、レフェリーでしかも男な九条をまったく振り返りもせず、下船してしまう百鬼。
 そして再び、槇島とDarkUnicornの戦場へと戻るが、相変わらずDarkUnicornが猛り狂っていた。
「ムキーッ! アイドル界も、格差社会なのじゃ。どいつもこいつも、ボインボインボイン。なぜボインを認めて、貧乳を認めんのじゃ!?」
 上着を脱ぎ捨て、サラシ姿となって力説するDarkUnicorn。ここまでしてくれれば、男性陣の食いつきも違う‥‥のだが、犬神は違うトコロに食いついていた。
「こ、この素材はフンドシと同じ‥‥ぐぼはっ!」
 DarkUnicornの胸を鷲づかみにしながらも、素材の確認ばかりする犬神。だが、プルプル震えるDarkUnicornが反撃するよりも早く、槇島が持っていた巨大絵筆で犬神にツッコミを入れていた。
「あ、折れちゃった‥‥けど、画家たるものスペアは抜かりなし! 筆がないと、禁断症状が出ちゃうもんね☆」
 こうして犬神は退場となったが、すぐに百鬼が補充されたので問題はない。
「さあ、今すぐ型を取りましょう。おまえを蝋人形っぽいガレキにしてやろうか‥‥ぐぼはっ!」
 いや、問題あった。槇島の手を取って、そのまま現物でオッパイの型を取ろうとしたのだが、またも絵筆で折檻である。
「あら? 今どきの巨大絵筆は、三節棍にもなるんだね☆」
 槇島は変なトコで感心していたが、百鬼は登場即退場である。
「昨日17になったばかりの自分に、誕生日プレゼントが欲しかっただけなのに‥‥ガクッ」
「それでも、まだ18禁には引っかかるからの。そんなコトよりもじゃ! 格差をどうにかせねばならんのじゃ! まったくけしからん胸じゃ。おぬしといい、ムチャキングといい‥‥おや?」
 気づけば、その豊満バディなムチャキングである羽曳野の姿が消えていた。一体ドコへ行ったというのか?
「狩場線の下の中村川を上り、大岡川に入っても止まることを知らず、快速やウィング号も止まるしかない上大岡をも通過し、タマちゃんを超えるのよ、フハハハ‥‥」
 すでに、バタ足で中村川まで来ていた。ムチャキングゆえの打たれすぎで、山下公園を押せてしまっていると思い込んでしまっていたのだ。
 現実には、ただ普通に川を泳いでいるパンダにしか見えなかったが。それでも、パンダが泳いでいる時点で軽くアザラシは超えていると思うが、もはやなんのために泳いでいるのかすらも分かっていない。
 そんな羽曳野はさておき、山下公園では犬神に百鬼と死屍累々の中、マリアーノを挟んで槇島とDarkUnicornが対峙し、サトルが実況するというよく分からない画が繰り広げられていた。
「くっ、この局面を乗り切ってこその迷監督ダ‥‥」
 大ちゃんス打線を爆発させるために、ついにマリアーノが動いた。
「僕の頭のように、ケガなくいきましょ‥‥ぐぼはっ!」
『剃髪もしていないのに‥‥これは先代プロレスごっこ王でも許されるハズがなーい! おかげで、SATSUGAIされてしまいましたッ!』
 槇島とDarkUnicornの息の合ったクロスボンバーを食らい、マスク代わりに野球帽が吹き飛ばされる。
 それを合図とするかのように、えらい人が走り込んできた。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 槇島色 7
 2位 DarkUnicorn 3
 3位 百鬼レイ 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
 そしてえらい人が去っていくと、なぜか槇島とDarkUnicornがバトルを通じて分かり合えてしまい、握手を交わしていた。
 そして、残るは氷川丸である。
「きっと今ごろ、お城では舞踏会が行われているのか? くっ‥‥」
 取り残された九条が一人寂しくガラスの靴の磨いていたが、血の涙のせいで磨いても磨いても赤い靴になってしまっていたという。