雪なしジャンプ台クイズアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
牛山ひろかず
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
普通
|
報酬 |
0.8万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
05/18〜05/20
|
●本文
TOMITVの会議室の一室。そこで、2人の男が企画を練っていた。
「今はウインタースポーツのシーズンやないな?」
「はぁ、そうですね‥‥」
上司とおぼしき男に、今年はじめて呼び出された部下の男。
呼び出されるときは、必ずウインタースポーツネタを振ってくるし、実際に振られたわけだが、今の日本は初夏である。上司が何を言いたいのか、さっぱり分からない。
「そこをあえてやるから、おもろい。分かるな?」
「グラススキーか何かですか?」
「アホか! シーズンオフで雪のない普通のトコでやるから、安く済むんやないか!」
「はぁ、そうですね‥‥」
ムチャクチャ言うだけの上司に、部下は曖昧な返事しかできない。
「立てつづけにスノボでハーフパイプ、スキーでエアリアルと来たから、満を持してジャンプやな! 着地した先に回答ボタン。落ちるだけやから、オチいらずっちゅーヤツや! かっかっかっ」
すでに部下の意識が落ちはじめていたが、もはやどうにもならない。こうして、初夏なのにウインタースポーツ便乗企画がスタートするのであった。
スタート地点でクイズが出され、ラージヒルのジャンプ台を飛び、着地後にクイズに答えます。その一連のおもしろリアクションを競い合います。
一人ずつ飛ぶか、一斉に飛び出し早押しにするかは、その日の上司の気分次第で決まります。
雪がないことですし、スキーで滑る必要はありません。どのような用具、格好で滑ろうとも勝手であります。
クイズとは名ばかりなのは、言うまでもありません。正解しても特典は何もないので、最後のボケどころを大切にしましょう。
出題されるクイズを自分で指定することもできます。ただし、必ずしもそのとおりに出されるとは限りません。
優勝者には、賞金10万円が授与されます。
得点は、おもしろさと無謀さのコンビネーションで決まります。視聴者が引くくらい無謀すぎると、逆に得点は下がります。何事もバランスが大切なのです。
過去の放送のスケジュール
・スノボハーフパイプQ 02月20日 18:00〜
・スキーエアリアルクイズ 12月05日 07:00〜
●リプレイ本文
「3ない運動‥‥脳漿以外は撒き散らしてよいのでしょうか? 清掃が大変そうですが‥‥ガムテでペタペタやれば問題ないですかね。そんな後のことよりも、まずはこのジャンプ台整備を早くしなければ、収録がはじまってしまいます」
収録直前。頼まれてもいないのに、古河甚五郎(fa3135)がジャンプ台の整備をガムテープで行っていた。
「滑らかになりましたね? いえ、雪のない現状では限界があります。そこで、この紙製ガムテですよ! この表面のスベスベ感が路面状態を冬にしてくれるのです☆」
摩擦係数にうるさく、斜面にガムテを貼っていこうとする古河。とはいえ、これだけの傾斜となると、常に滑落のキケンと隣り合わせである。
「大丈夫です。命綱があります、ガムテの!」
自らを吊るすガムテープを示してみせる古河。素人目にはなんとも頼りなく見えるが、プロのガムテ職人ともなると大丈夫になってしまうようだ。
「ふー、ここがボブスレーのコースかぁ‥‥氷上のF1というだけあって、スゴい角度だな」
そんな間に、上には高柳徹平(fa5394)が立っていた。すでに息が上がっていたが、重いボブスレーを運び込むのに苦労したからである。
「あ、もちろんそのままじゃキケンだから、パラシュートは背負うけどな!」
遠く着地点を見すえ、背中のパラシュートをカメラに見せる高柳。途中の古河のコトなど、まったく映っていないようだ。
「よっしゃ‥‥行くゼ! ぬおっ!」
威勢よく飛び出そうとした高柳だったが、いきなりボブスレーが転倒する。飛び乗ろうとしていた高柳の目の前で、ボブスレーだけが滑り落ちていく。
「くっ、待ってくれ〜!」
慌てて高柳も斜面を駆け下りて追うが、走っていられる角度ではないので、すぐにゴロンゴロンと転がっていく。
「なんかうるさいですね。こんなときは、耳をふさぎましょう、ガムテで‥‥ぐぼはっ!」
一方、ジャンプ台の滑りをよくするコトだけに心血を注いでいた古河は、すぐ間近に迫った危機にまったく気づいていなかった。
当然ながらボブスレーに吹き飛ばされ、当然ながらガムテの命綱が役に立つハズもなく、当然ながら落ちていく古河。
「護ってくれるのです‥‥ガムテが!」
気合い一閃、両手に装着したガムテのありえない粘着力で、急にピタっと貼りつく古河。
「うわ〜!」
転がり落ちてきた高柳にも踏みつけられるが、それでも落下しない古河の吸着力!
下では、ボブスレーが回答ボタンを吹き飛ばし、なおも勢いを増してどこかへと行ってしまっていた。さらに大分遅れて回答ボタンのあった場所を高柳が通過していく。
仮に回答ボタンがあっても、でんぐり返しを止められないでいたので、答えられなかったことには変わりはないだろうが。
「はっ! 滑りをよくしなければいけないのに、貼りついてしまいました、ガムテで! 早くすべりをよくしなければ、収録に間に合いません」
とっくに収録ははじまっていたのだが、まだ整備中の体でいる古河。
そこへ、さらに長瀬匠(fa5416)が現れる。
「獅子は‥‥モグモグ‥‥我が子を千尋の谷に‥‥モグモグ‥‥落とすといいますが‥‥」
古河を地獄に落とすというコトなのか!? と緊張が走ったりはしない。長瀬がバナナを食べながらしゃべっては、そんな緊張感が生まれるハズもなかった。
「バナナの皮で滑り、バナナの皮で飛び、バナナの皮に着地する‥‥そんな獅子でありたいものです。猿っぽい気もしますが、挑戦することに意義があるので、気にしません」
「皮? 今、カントン省な自分の耳に、皮という言葉が飛び込んできましたよ、ガムテを突き抜けて!」
皮という単語に、無意味に古河が食いついてくる。が、そんな古河をまったく気にすることなく、長瀬がバナナの皮でのコケ芸を披露する。
「そんなバナナ〜!」
ゴロゴロと落下していく長瀬。その光景を、古河が冷ややかに見ていた。
「番組が違いますよ。それは『ダジャレに命を賭ける』シリーズでやるべきだったんです、ガムテで」
果たして、長瀬はバナナの皮に着地するコトなどできず、先程の高柳同様、麓へと消えていった。
「ウインタースポーツでバナナって‥‥釘が打てちゃうだろうが。冬はこたつでみかんだろうが!」
その様子を見ていたブレイズ(fa5745)が、ドーンと勢いよく登場する。こたつではなく、みかん箱を持っての登場ではあるが。
「ふっ、ボーカル志望の新人にとって、こたつなど高嶺の花! みかん箱のちゃぶ台が限界なのさ‥‥」
思わず涙するブレイズ。だが、そこで終わる男ではない。
「しかしッ! みかん箱で滑走し、ジャンプしてもなお歌いつづけることができれば、どんな状況下でも正しい音を声に出すためのトレーニングとなる。まさに、貧乏な若手の知恵だッ!」
理路整然とみかん箱に乗ってジャンプする理由を説くブレイズ。普通の人にはまったく理解できない理屈だが、この場ではスタッフ一同完全に信じ込んでしまっている。
なので、ブレイズがさっそく歌いながら滑り出す。
「 紫外線、太陽の平手打ち。
俺の奥歯をへし折る。
紫外線、太陽のダメだし。
男の頭皮を焼き尽くす♪ 」
だが、歌詞とは裏腹に、ブレイズの頭皮は摩擦で焼き尽くされそうだった。
ジャンプまではなんとか乗り切ったものの、着地に失敗し、ジョリジョリと頭皮を削りながら滑降してしまっている。もはや、3ない運動達成失敗の一歩手前の状況だ。
「これはいけません。なんとかしないと、ガムテで!」
その様子に気づいた古河が駆け出すと、ブレイズを抱きとめ、その頭にガムテを貼りつける。
「これで大丈夫です、ガムテのおかげで!」
古河は脳漿を撒き散らさないよう補修できたことに満足し、ブレイズが失神KOのままなのは気にしない。ましてや、頭皮が思いのほか無事で、まだきっちり残っていた髪の毛にバッチリ粘着したことなど気にするわけがない。
「なんでみんなして、飛ばずに落ちていくかなぁ? 雪のないゲレンデといえば、やっぱりこれしかないでしょ! というわけで、空まで飛んでけ、ハンググライダー!」
全員が下を見つづける中、上昇志向のティタネス(fa3251)がハンググライダーを担いで登場した。というか、早くも飛んでいる。
「やっぱり空っていいなあ。さーて、回答ボタンを押さないと‥‥あれ?」
きっちり飛ぶことこそできたものの、事前に簡単な指導を受けただけの初心者が自由自在に操れるほどアマくはない。
「えーっと‥‥旋回、といっても急旋回はできないし、急降下なんかしたら墜落しちゃうしなあ。ゆっくり、とんびみたいに上空を大回りしながら‥‥あ、とんび!」
ティタネスの目の前を、本物のとんびが旋回していた。その輪の中に入り、とんびの仲間として一緒に旋回することとなった。
が、とんびは上昇気流をつかまえて上昇していたのだ。となれば、ティタネスも一緒にドンドン高度を上げていってしまう。
「えーっと‥‥腹が減っては戦はできぬというし」
すぐに降下するのはあきらめたのか、携帯用油揚げを食べはじめるティタネス。幸いにして、とんびにさらわれることはなかった。
だが、そんなティタネスが降りてくるのを待ってたら日が暮れそうなので、インラインスケートのパイロ・シルヴァン(fa1772)が次の準備に入っている。
「えーっと、語尾を『ですわ』にして、カメラ片手に追いかければいいんですね‥‥じゃない、いいんですわね?」
ビデオカメラを手渡された月詠月夜(fa5662)が、パイロに確認をとっている。
「はにゃーん☆」
よく分からないが、これが今のパイロの肯定の返事のようだ。
だから、後はスタートするだけなのだが、なかなかスタートしようとしない。構えてはいるのだが。
「‥‥問題が出てから、ボタン押しに滑降するんじゃないんだ。ボタン押してから、はじめて問題が出るんだ‥‥はにゃー」
これまでみんな勝手に落ちていくだけだったので、出題形式に疑問が生じることはなかったのである。
回答ボタンが出題ボタンも兼ねていることも今さらながらに分かったところで、ようやくパイロがスタートする。
そして、はじめてジャンプをこなし、なんとか回答ボタンまでたどり着く。
だが、回答ボタンはすでにボブスレーのエジキになっていてない。代わりに、みかん箱に入れられて頭にガムテープを巻き、クラウザーさんバリに白目をむいたブレイズが置かれているだけである。
「はうー‥‥これなのかなぁ?」
仕方なく、ブレイズの頭を叩くパイロ。次の瞬間、目がギュルと動き、黒目に戻る。
「ピンポン‥‥ガクッ」
突然ピンポンとだけ言って、再び失神KO状態に戻るブレイズ。ショックでパイロが腰を抜かしていたが、失神しているので気にしようがない。
「それでは問題!」
そこへ、さらにナニゴトもなかったかのように平然と戻ってきていた長瀬が、これまた平然と出題する。無論、パラシュートは何の役にも立っていないので、依然背負ったままであるが。
「イカの脚は何本?」
「あ、引っかけ問題だね? 0本だね! 脚に見えるのは、全部腕なんだそうで」
自分で仕込んだ問題なので、当然答えられるパイロ。
「ブブー! イカは十腕形上目に分類されるように、腕8本、触腕2本で合計10本の腕を持ちます。だけど、下足を略してゲソとなったように、一般的には足と呼んだ方が通りがいいので‥‥学術的っぽく言うなら0本、一般的っぽく言うなら10本‥‥が正解です、だってさ!」
これまた普通に復帰していた高柳が、普通に正答を読み上げている。
「長いよぅ!」
パイロが文句を言うが、聞き入れてもらえない。すでに、上では月詠が鳥の羽根を背負っての登場という名の半獣化で登場してしまっている。
「寝袋に入って転がりまーす」
そう言って、寝袋を押す月詠。
って、押す? そう、月詠は光学迷彩を使って姿を消し、安全にやり過ごす作戦である。だから、寝袋の中身はダミー人形である。
「この隙に、回答ボタンに先回りして、っと」
途中、古河が光学迷彩で見えなくなった月詠に蹴り飛ばされていたりもしたが、映像上は古河が勝手に落ちただけの話である。
そして、パコーンとブレイズの頭を叩く月詠。肝心の寝袋がジャンプ台の縁に引っかかっていたが、まったく臆するところはない。
「現に月夜はここにいます。それのどこがおかしい、と? 現実を見てください」
「では問題。月詠さんの3サイズを、すべて答えよ」
長瀬がまったく気にすることなく、問題を出す。
「乙女のヒ・ミ・ツでーす☆」
間髪入れず、しれっと言ってみせる月詠。それには、巻き添え損の古河大激怒、もとい大興奮である。
「それでは、このガムテメジャーで計ってみましょう‥‥ぐはっ!」
すかさず月詠に飛びついてくるが、それが叶う前に撃墜される古河。
「だから、乙女のヒミツですッ!」
乙女のヒミツとは、かくも強固に守られているものなんだなぁ、とパイロが子ども心に思う中、まったく守られない乙女のヒミツを見せてあげるとばかりに姫川ミュウ(fa5412)が立ち上がった。
「あ〜ん、はりつけにされちゃったよ〜」
上では、確かに姫川がはりつけにされていたのだが、問題はその格好である。
スキーウェアのどこに問題が? それに問題はない。問題なのは、隙間から素肌がのぞくほどにほつれまくったスキーウェアだということだ。
しかも、それぞれのパーツがヒモではりつけにされている。この状態でスタートを切ったらどうなるか? 一目瞭然である。
「でも負けない! がんばって、スタートしちゃうよ!」
しかも、こういうコトをやるのは、女優ではなく女芸人と呼ばれる人々だというコトに、まだ気づいていない女優の姫川。
「いけません、このままでは放送事故になってしまいます!」
ガムテが必要な状況と読んで、古河が鋭く飛び込んできたが、それ以上どうすることもできなくなってしまう。
「だがしかし、男の本能でガムテを貼れません!」
古河が苦悩するが、気づけば、高柳も長瀬もパイロも、さらには回答ボタンとなったハズのブレイズまでもが、その場に駆けつけていた。
恐ろしい勢いで駆け上ってきたので、みんなハァハァと息が荒い。そのせいで、姫川が余計に勘違いしてしまう。
「ちょっと、何やってるんですか〜?」
月詠までもが上がってくるが、事態が好転するわけではない。姫川が期待されているんだと思って、今にも飛び出していきそうだ。
「ティタネスさんが降りてこないと、番組をシメられない‥‥このままでは!」
もう番組自体はお蔵入りでもいいから、生まれたままの姫川を見せてくれと男性陣が思いはじめたころ、月詠が余計な提案をしてしまう。
「賞金の授与でシメなのでしたら、ここにいる7人で山分けしちゃえばいいんじゃないですか? 別に、月夜一人でもらってしまっても、全然構わないですけど」
こうして、とんびの仲間となったままのティタネス以外が14,300円を獲得するという形で、決着することとなった。
「えーと、よく分かんないけど、OKなのかな? じゃ、行きまーす!」
そして、ついに走り出す姫川。無論、スキーウェアは完全にほどける。
だが、その姫川を追い越して走っていき、なぜかそこから背走する男性陣‥‥って、全然なぜかではなく、姫川を見るために決まっているのだが。
もっとも、カメラ映像的には姫川の後姿なので、お蔵入りとなることはなかった。
だから、全員が走っていて、遠く上空で小さくティタネスが映っているという妙にさわやかな映像で、シメられるのであった。