芸人プロレスごっこ王16アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/20〜05/22

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「遠足気分もここまでということで、23区に戻るぞ!」
「いつから23区限定になったんだろう‥‥いえ、何も言っていません!」
 ボソリと言っただけなのに、えらい人がギロリとにらんだものだから、すぐに震え上がってしまうスタッフ。
「都庁って高くてステキだよね‥‥というコトで、新宿区で収録を行う!」
「バカとなんとかは高いところが‥‥ぐぼはっ!」
 今度こそ、余計なコトを言ったスタッフが鉄パイプのエジキとなる。
「隠すところが間違っているぞ。なんとかと煙と言わんかい!」
「バカは否定しないんですね。面と向かって言われるのがイヤなだけで‥‥ぐぼはっ!」
 さらに余計なコトを言ったスタッフも、もちろん鉄パイプのエジキである。
「‥‥で、新宿区で何か問題があるのかね?」
「サー、ノーサー!」
 全力で問題のないことを主張するスタッフたち。無論、目は鉄パイプに釘づけのままである。
 こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の16戦目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・東京都新宿区で収録を行います。
・『新宿』をテーマに試合をしなくてはなりません。『新宿』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定の時は、気長に待ってください。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はやめとくアルよ!

ランキング(第13回分まで)
 1位 伊藤達朗(fa5367) 17pt
 2位 白海龍(fa4120) 14pt
 2位 パトリシア(fa3800) 14pt
 4位 DarkUnicorn(fa3622) 13pt
 5位 百鬼レイ(fa4361) 10pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第11回 04月26日 08:00〜 木星(のつもりなスタジオ)
・第12回 05月03日 07:00〜 中国(のつもりなパンダ前)
・第13回 05月09日 08:00〜 東京都文京区
・第14回 05月14日 07:00〜 山下公園
・第15回 05月17日 07:00〜 横浜中華街

●今回の参加者

 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa4120 白海龍(32歳・♂・竜)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5756 ガン=ブラッド(33歳・♂・竜)

●リプレイ本文

『さあ、記念すべき芸人プロレスごっこ王100まで、あとわずかに84回となってしまいました。早くラストスパートしないと手遅れになってしまいます‥‥って、解説はコースアウトしていて論外だけどね』
 サトル・エンフィールド(fa2824)の随所にムチャな実況ではじまるが、中でもヨシュア・ルーン(fa3577)のコースアウトとは何ゴトか?
「GPSもちゃんと動いてますし、地図ソフトもサトルくんに最新状態に更新してもらったんですが‥‥おかしいなぁ‥‥」
 ヨシュアは新宿二丁目で迷っていた。コースアウトといっても、新宿区から外れているわけではない。ただ、男の道を踏み外させようというワナなだけである。
「戦麗舞と書いてセレブと読む人は助けてくれないのですか? やっぱり、杉並区編じゃないとダメなのですか? うわっ!」
 ブツブツと文句を言っていたヨシュアだったが、急にビクっと飛びのく。なぜなら、そこに白海龍(fa4120)がいたからである。
「新宿といえば、ベガス、NYにも負けナイ『眠らない街』デスネ! そこで、『眠らない街』と戦うコトにしマース!」
 眠らない街にとっての最大の敵は眠るヤツだというという発想‥‥至極マトモである。だから、ロケ中に何があっても寝つづけるという試合形式‥‥実に理路整然としている。寝ながらの説明って、寝言? そんなことはどうでもいい。
 ただ唯一気にすべきは、ものすごく細い革で作られたボンデージな服だけをまとい、ロケバスの側面に磔になっている、ということのみである。
「ドキドキする程の大ピンチです。助けて百太郎! 寿命が百日縮まっても構わないから‥‥って、それは新聞の方ッ!」
 ブルブルと震えながらも、白海龍の横を素通りして、ロケバスに乗り込むヨシュア。そして、早くバスよ動けと念じるのみである。
「キャプテン、緊急発進、全速離脱! どうしたキャプテン!? 聞こえないのか?」
 席に着いたヨシュアが念じるが、動く気配はない。問題のキャプテンというかロケバスの運転手だが、白海龍が運転してきたのである。その運転手が磔の状態では発車するわけがないのだが、ヨシュアは気づかないでいる。
『早いもんだぜ、あの魚も泳ぐ1999年の魔震から8年。解説役の愚弟は散ったけど、やっと身体も動くようになってプロレスごっこに‥‥』
 そんなヨシュアと白海龍の出会い編はさっくり無視して、新宿駅に切り替わった映像に、サトルが相も変わらず勝手な実況を入れていく。
 だが、そんな実況とはまったく関係なく、掲示板の前でマリアーノ・ファリアス(fa2539)が死んだ魚のような目でへたり込んでいた。
「男性比率87.5%って‥‥」
 レフェリーである角倉雪恋(fa5003)しか女性がいない状況に、もっこりなんかできないのである。だから、掲示板に女性からの依頼の『XYZ』の文字がないかに一縷の望みをかけるものの、それすらも裏切られたのである。
「新宿は歌舞伎町といえば、歌舞伎町浄化作戦なるものがあったらしいわね? というわけで、キメたわ。あたしはヨゴレたプロレスごっこを、浄化するっ! ヨゴレは消毒だぁーっ‥‥って、一人でやってたらバカみたいじゃない!」
 そこへ、12.5%にして唯一の女性である角倉が颯爽と現れる。しかし、マリアーノは100tハンマーくらいの衝撃がなければ、生ける屍のままである。
「レフェリーのあたしの言うコト聞かなかったら、マイナス1兆ptなんだからねっ! ちゃんと消毒されなさいよっ!」
 そのマリアーノの頭をガックンガックン揺すりながら、勝手な命令を下す角倉。
「そうダ‥‥マリスは初代プロレスごっこ王、つまりヨゴレの王様だったんダ! ヨゴレ王っテ‥‥だがそれがイイ! よーし、こうなったら、とことん傾(かぶ)くゼ!」
 歌舞伎町→傾奇者ということで、突然傾く気満々になるマリアーノ。どこからともなく取り出した派手な着物に派手な帯、さらに派手なガウンをいきなりまとう。
「さア、早く消毒してオクレ!」
 爛々と輝く目で、角倉に求めるマリアーノ。とはいえ、新宿駅で消毒部隊名物火炎放射器をぶちまけては、ただのテロリストである。
「ふっ、探検リポーターの責務を全うすべく、探検に繰り出したはいいものの‥‥探検違いで、とんでもないところを探るハメになったようね。行くわよ!」
 仕方なく、本来の職業を持ち出して歌舞伎町に繰り出すことにする角倉。もちろん、女性に命令されてうれしくないマリアーノではない。ほいほいついて行く。
 すると、目の前を百鬼レイ(fa4361)が肩で風を切っているではないか。道行く人々にメンチを切り切り、道は譲らず肩揺らし‥‥なのだが、まったくコワくない。
 なぜなら、百鬼がボコボコにされていたからだ。身を包んだ昔の野球選手のようなチンピラ服など、ビリビリに裂かれてしまっている。
「自分‥‥・不器用ですから‥‥」
 歌舞伎町は夜の町→当然ソコを仕切ってる方々がいらっしゃる→仁義なき戦いということで、肩をぶつけてみたはいいものの、不器用にも本職の道を極められた方を相手にしてしまったのだ。
 残虐映像はカットで、こうしてヒドい目に遭った後の悲しい姿をさらしている。
「今日はこのへんにしといたるわ‥‥ゴホゴホ‥‥」
 だがそれでも懲りない百鬼は、今度は角倉とマリアーノに目標を定めた。が、角倉がスっと鞭を取り出したので、するりと相手をマリアーノ一人に絞る百鬼。痛い目に合った直後なので、きちんと相手を見る。
「おぉう、ワレェ‥‥えぇ度胸しとるやないか! コレ、もう鎖骨イってもうたわ。どない落とし前つけてくれるんじゃ‥‥ぐはっ!」」
 マリアーノに因縁をつける百鬼だったが、そこへ鋭く角倉の鞭がしなった。
「芸がヨゴレてしまったヒトを、レフェリーのあたしが指導して矯正したいのよ! 血で汚れているのを見たいんじゃないのよ!」
「はっ、おっしゃるとおりでございます」
 鞭の痛みに酔いしれて、思わず角倉になついてしまう百鬼。
 だが、角倉の犬が2匹になったところで、珍道中はまだまだつづく。
「魔界都市の住人がヨゴレ芸人ばかりとは、悲しくなりますわ。ならば、せめてわいがその住人に扮しまひょか!」
 その様子を眺めていた伊藤達朗(fa5367)だったが、ちょうど3人の前で明らかに怪しいぼったくりというか、暴力バーに入っていく。
「ポッキリで帰ってこれたら、わいの勝ちというコトで。店に入っても余分なもの頼まず、姉ちゃんも寄せつけず、出された通しと一杯目のアルコールだけ飲んだら、そのまま店を後にさせてもらいまっせ!」
 勢い込んで入っていたものの、中々出てこない伊藤。
 途中ごっそりカットされ、再び店の出入り口前。影の角度が素人目にも変わっていると分かるくらい経っていたが、それでも伊藤は出てこない。
「ワン!」
 角倉はその間の時間を使ってレフェリーとしての犬のしつけに精を出し、マリアーノも百鬼も今では立派に首輪につながれた飼い犬となっていた。
 ガチャ! ようやくドアが開いた。そして、変わり果てた姿の伊藤が、荒くれ者の手によって放り捨てられた。外見上は、先程の百鬼と大差ない。
 そう、結局伊藤は戦いに敗れたのである。
「正義は‥‥わいに‥‥ありや‥‥ガクッ!」
 伊藤が崩れ落ちた。だが、まだ戦いは終わっていない。レフェリーの角倉が試合終了を宣言しない限りは、戦いは非情につづいていくのである。
「だから、ヨゴレと汚れは違うんだってば! また指導が必要のようね‥‥やれやれだわ」
「ワンワン!」
 角倉の横では、マリアーノと百鬼がうれしそうに吠えていた。ここに伊藤が加わるのも、時間の問題と思われた。
『愛と安らぎをこめたニルヴァーナのようなやさしさをもって、路上の犬たちを見なかったコトにするのを忘れません。というわけで、都庁にやって来ております。ガン=ブラッド(fa5756)選手がこの都庁を登るというのですから!』
 舞台は歌舞伎町から都庁前に移って、サトルがガンをしきりに急かしていた。
「うぉい! 誰が登るって言ったよ! この格好を見て分からないのか? 都庁のかぶりものだぞ。機動性最悪、手足もあんまり出せず、動きにくいことこの上なし! 三拍子揃ってるんだぞ!」
『大丈夫です。死なない、怪我しない、脳漿を撒き散らさないの3ない運動は、プロレスごっこ流にアレンジして、最後を臓物(ハラワタ)をぶちまけないに代えておきましたので‥‥都庁の登頂、お願いします!』
 3間違いで、3ない運動を持ち出すサトル。だからといって、ガンが三重苦であることに変わりはない。
「ダジャレで頼まれちゃったら、やるしかないよな‥‥って、おい! 倒れたら自力では絶対起き上がれないほどなんだぞ‥‥ぐぼはっ!」
 思わず一瞬ノってしまうガンだったが、すぐに否定する。そして、すぐにロケバスにはね飛ばされた。
『あ‥‥確かに、倒れるとホントに立ち上がれませんね』
 倒れるどころか、思いっきり吹き飛んだ気がしてならないが、気のせいである。だから、ガンが手足をジタバタさせるどころか、ピクリともしていない気がしてならないが、それも気のせいである。
「待たせたなーナノデス!」
 ロケバスから、悪びれず白海龍が降りてくる。ヨシュアだけではいじってもらえないと、いじられる場を求めて移動してきたのだ。
 だから、降りた次の瞬間には再びロケバス側面に磔である。もちろん、ガンは動けないし、サトルも関わり合いになろうとはしないが。
 というか、ロケバスからヨシュアが飛び出してきて、問い詰められてしまっている。
「ちょ、地図に細工したでしょ!?」
『何を言ってるのか分からないけど、早く都庁に登らないと‥‥あーっと、ガン選手。突撃解説のヨシュアに追い越されてしまうのかーッ!? ささ、早く!』
 実況の先行入力で、強引にヨシュアを促すサトル。
「そりゃ、ダテに第13回でサンシャインを降下したわけじゃないけどさー‥‥ブツブツ‥‥」
 なんだかんだ言いながら、ぐったりとしたままのガンを着ぐるみごと背負うヨシュア。確実にガンの手足がドギャーンという効果音が似合うほど不自然な角度を向いていたが、『CGによる過剰演出です』のスーパーを信じて気にしないコトにする。
「寝てるから、夢の世界を楽しんでマース! 僕ってマゾいナァ☆」
 だから、白海龍の呼びかけも気にしない。
「オウ、またも放置プレイですカー? 高度すぎマース!」
 だが、そこへ救世主が現れてしまった。3匹の犬を連れた角倉である。
 3匹? ということは、無事伊藤も加わっているようで、何よりである。
「ゴー!」
 さっそく、マリアーノ号、百鬼号、伊藤号を白海龍にけしかける角倉。
「ノー! まだバター塗ってマセーン!」
 白海龍が歓喜の声を上げるが、見苦しい映像になりそうなので、すかさずえらい人登場である。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 白海龍 7
 2位 角倉雪恋 3
 3位 ガン=ブラッド 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
 そしてえらい人が去っていくと、ガンを背負ったまま立ちすくむヨシュアが残された。
「やっぱ、登るのムリだよ。こういうときは、何をしても死なない人に頼もう。えーっと、マリス‥‥はもう人じゃなくなってるや‥‥」
 周囲を見渡すが、誰も残っていないことに気づくだけのヨシュア。そこを、サトルがムリにシメにかかる。
『では、プロレスごっこを見ている悪い子の諸君、ぼくは君たちを待っているからね〜』
 こうして、犬3匹、ブリーダー1人、磔マッチョ1人、都庁のオブジェ1個に、実況と解説1人ずつ‥‥魔界都市は人間をやめさせてくれる場所なのだという教訓を残して、番組は終わっていくのであった。