芸人プロレスごっこ王17アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/23〜05/25
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「都庁ときたら、東京タワーしかないよな? というわけで、今回は港区で行くぞ!」
「でも、第4回のお台場のときに港区出てきたんですけど‥‥ぐぼはっ!」
余計な豆情報を挟んだがばっかりに、えらい人名物の鉄パイプで制裁されるスタッフ。
「トリオで出たら、ソロ活動は禁止か? もっと柔軟な頭で対応できんのか!?」
「いえ、バカと煙は高いところが好きと言いますし、もしかしたらバカで気づいてないのかと思いまして‥‥出すぎたマネをして、すみませんでした」
「うむ、分かればよろしい」
出だしがとてつもなく失礼だったが、えらい人は最後の謝った部分しか考慮に入れてないらしい。
こうして、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の17戦目がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・東京都港区で収録を行います。
・『東京都港区』をテーマに試合をしなくてはなりません。『東京都港区』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定の時は、相当気長に待ってください。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血はやめときましょうか?
ランキング(第14回分まで)
1位 伊藤達朗(fa5367) 17pt
2位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
3位 白海龍(fa4120) 14pt
3位 パトリシア(fa3800) 14pt
5位 百鬼レイ(fa4361) 11pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第12回 05月03日 07:00〜 中国(のつもりなパンダ前)
・第13回 05月09日 08:00〜 東京都文京区
・第14回 05月14日 07:00〜 山下公園
・第15回 05月17日 07:00〜 横浜中華街
・第16回 05月20日 07:00〜 東京都新宿区
●リプレイ本文
「俺は‥‥俺にできる仕事をやるだけだ‥‥が、女性選手2人だけでどうしろと?」
カメラを担ぎながらも、天を仰ぐ鶸檜皮(fa2614)。しかも、あずさ&お兄さん(fa2132)のあずさも1人としてカウントしているので、厳密にいえば月詠月夜(fa5662)ただ1人なのであるが、そんなことは知る由もない。
「くっ‥‥えらい人は、そんなに女性向けのサービスシーンを撮らせたいのか‥‥?」
苦悩する鶸のエロス。そんな鶸の目に、ふと放送席が飛び込んでくる。
「な、なんかこっちにアツい視線を送っている気が‥‥」
悪寒のした解説席のヨシュア・ルーン(fa3577)が、思わず実況席のサトル・エンフィールド(fa2824)の腕をツンツンと突くが、サトルは天使の笑みを返すのみである。
なぜなら、鶸の視線の先がヨシュアの方を向いていると分かったからだ。ならば、サトルが歓迎しないわけがない。
『さすがはヨシュア、モテモテだな。大丈夫、僕はそんなコトで差別はしないよ。兄より優秀な弟はいない! というわけで、最初から上下関係は決まっているんだし』
「ヒドいよ‥‥って、うわっ! こっち向かってきた!」
『さあ、我が弟は純潔を失ってしまうのでしょうか!? ああ、感動の涙でくもって何も見えない‥‥』
サトルの勝手な実況と相まってヨシュアがブルブルと怯える中、ついに鶸がヨシュアの前に立った。
「やらないか?」
「やりません、絶対にやりません!」
ウホっと迫る鶸に、ヨシュアが力の限り拒絶する。そのヨシュアの態度に、鶸がガックリとうなだれる。
「そうか、あずさのサービスシーンの撮影はやらないのか‥‥お兄さんだけで満足なのか‥‥」
『さすがはヨシュア! 女好きの──と自分で言うのもなんだけど──兄とかぶらないように違う方向性を目指すその謙虚さ、大切にして欲しいよね』
どう考えても、最初の鶸の言葉が足りていないのがいけなかったのだが、そのツケはすべてヨシュアにかぶせられる。
「ちょ‥‥そんなコトより、今日のお兄さん、どこか変じゃない?」
何とか矛先をそらすようにヨシュアが指差した先には、打ち捨てられたお兄さんの姿があった。
『はっ、これは人形!? いや、お兄さんだーッ!』
ヨシュアが変と言うとおり、今日のお兄さんは塩ビ製の消しゴム使用である。
しかし、お兄さんが放置プレイということは、あずさの方はどうしているのだろうか? 港区ということで、タッグパートナーを東京タワーにしてしまっていたのだ。だから、お兄さんは用済みなのである。
あずさは東京タワーを見上げる形で、新タッグチームの解説をはじめる。
「東京タワーの332.6mに私の1.56mを足しても334.16mにしかならない。でも、2人で戦うので2倍の668.32m!」
2人分をすでに足しているところへ、さらに2人だからと2倍する意味が分からないが、東京タワーのみやげ物は努力と根性と相場が決まっているので、それが友情パワーというものである。
「さらに2倍のジャンプで1,336.64m、いつもの3倍の回転を加えることで4,009.92m! 約610mになることが予想されている強敵、新東京タワーに圧倒的な差を見せつけて世代交代を許さず、標高3,776mの日本最高峰、富士山にさえにも勝てるという寸法です‥‥コーホー!」
何の説明なんだかさっぱりだが、最後に妙な呼吸音を立てるあずさ。つまり、そのあおりを食って、今回のお兄さんはちょっと違うわけだ。
「そんなわけで、東京タワーと親交を深めるべく、展望台に上ってくるよ! じゃ、みなさーん、この旗についてきてくださいねー」
『はーい!』
「はーい!」
気づけば、バスガイドの格好をしたあずさに、サトル、ヨシュア、鶸と行儀よく並んでしまっている。
「あら? あとの3人はどうしたのかなー?」
あずさが首をかしげると、セーラー服を着させられた月詠が入ってくる。
「はーい、みんな集合ー!」
あずさとは別に、セットの円卓が運び込まれた東京タワー下で集合をかける月詠。
とはいえ、全員が東京タワーをネタにしているわけではないので、百鬼レイ(fa4361)と伊藤達朗(fa5367)はここにはいない。
『では、あずささん派か月夜さん派かを僕らが悩んでいる隙に、こちらのVをご覧ください』
映像が切り替わり、六本木ヒルズの前に立つ百鬼が映し出される。
「港区といえば、新橋や虎ノ門などの大企業の本社だらけなビジネス街、六本木や青山といった商業エリア、麻布や白金台などの高級住宅街など様々な面をもった地区ですが‥‥その共通項といえば『サクセスしたセレブども』ではないでしょーか?」
その百鬼が、どこかリポーター風の説明をはじめる。
「そこで、自分もそのおこぼれにあずかるっつーか、自分自身がなってやる! みたいな〜♪ 今流行りのデイトレーダーとなってサクセス!」
ネットカフェに移動し、今回の番組制作費を入れた口座で、株式のネット取り引きを開始する百鬼。
「この元手では、中国株程度では一日でどうこうできませんし‥‥」
中国株すらも生ぬるいと言っている段階で、どうなるか火を見るよりも明らかな気もするが、果たして途中はカットされ、次の瞬間には血ヘドを吐いて倒れている百鬼の姿があった。
「ぐはっ‥‥思わず喀血してしまいましたが、デイトレードはいかだで台風の海面を行くようなもの。自分のお金じゃないのに、危うく死にかけましたよ‥‥」
思わず意識の飛んでしまった百鬼であったが、頭を振って何とか復帰する。
「しかーし、リスクあってのセレブじゃないですか! バブルのようにはじけるのが人生じゃあないですか!」
すぐに立ち直る百鬼。まあ、冷静に考えれば自分の金ではないので、立ち直って当然である。
「やっぱり地道にコツコツ‥‥でも、会社を立ち上げているような時間はありませんし‥‥ここは、宝くじ系で一攫千金みたいな〜♪ でも、サッカーくじは繰り越し金を吐き出してしまってるから、うまみが少ないですし‥‥」
百鬼が悩みはじめたところで映像は切り替わり、今度はレインボーブリッジが映し出される。その下には、伊藤が船上の人となって立っていた。
レインボーブリッジといえばお台場で、第4回のテーマでもあるわけで、すわかぶり芸か? と色めき立ちたくなるところではあるが、そこは伊藤も抜かりない。
「前にロケしとるから、ネタはかぶらんようにしてまっせ。お台場→レインボーブリッジでレインボーや! ホンマはお台場→Ohダイバー→ダイバーだった→提婆達多→以下略とムダに長々と巡るコースもあるのだが、大部屋俳優はカットがコワいんや!」
細かい気配りの人伊藤が、消防船の放水銃を大空に向けて発射する。すると、そこには見事な虹が描かれた。
「放水銃の水圧は洒落にならんさかい、ジャマするヤツは実力排除も可能や‥‥わーはっはっは!」
高笑いを上げる伊藤をジャマする者などいなかった。むしろ、関わり合いになりたくないくらいである。
なので、映像まで切り替わってしまう。再び東京タワーに戻り、大展望台内の映像となる。
そこには、円卓を囲んでサトル、ヨシュア、鶸、そしてあずさと月詠が座っていた。あずさと月詠でどちらか一人に絞るくらいなら、両方やって両手に花という選択だ。
「港区→みなトークというコトで、みんなでトークです。真剣十代プロごっこ場です。プロごっこに出ている以上、みんな精神年齢は十代と見て間違いないですからね‥‥ん?」
月詠が宣言したところへ、すっかりボロボロの服装にハウス用のダンボールを持った百鬼が入ってくる。六本木から駆けつけてくれたようだ。
「一度しかない人生だもの! 弾けて行きましょう、いろんな意味で終わるまで! 弾けちまったゼ‥‥ガクッ」
ありもしないバブルが弾け、息絶える百鬼。そこへ、さらに伊藤もお台場から駆けつけてくれた。
「わーっはっはっは! 消毒じゃー!」
伊藤はハンドルを持つと性格が変わるタイプなのか、ホースを持って性格が消毒部隊になってしまっている。手にした放水ホースを、噴射寸前である。
だが、展望台でそんなことをしたら、つまみ出されるだけである。ナゾの黒服集団にさらわれて、姿を消す伊藤。
『我々は今、二人の英雄を失いました! まあ、あずささんと月詠さんさえ無事ならいいんですけど。では月詠さん、つづきをどうぞ』
「あの二人のように、命を賭してまでなぜ戦うのでしょうか? そうまでさせるプロレスごっこ王の称号とは、一体何なのでしょうか?」
百鬼と伊藤をあっさり見捨てたサトルに促されて、再び月詠が話しはじめる。
だが、それとは無関係に鶸とヨシュアは私語に忙しかった。
「本当にいいのか? サービスシーンがなくて。今の俺たちになら撮影できる。ヨシュアのノートパソコンと、俺のカメラが組み合わさればッ!」
「ええ、東京タワーをピンクに染めて、濡らしてやりましょう!」
鶸の提案に、あっさり乗るヨシュア。だが、次の瞬間に待っていたのは天誅であった。
ボカッ! いや、グサッ! といった方がいいのかもしれない。月詠が、手にしていたハリセンボンで鶸とヨシュアをど突いたからだ。
港区→港→魚→朝一で仕入れてきたハリセンボンということで、ハリセンボンである。その後の、市場→築地→第7回の中央区とかいうことは気にしない。
『我々は今、二人の英雄を失いました! まあ、あずささんと月詠さんさえ無事ならいいんですけど。では月詠さん、つづきをどうぞ』
「このような選手の異常行動から分かるように、えらいひとはえらいのか? 本当はえろい人ではないのか? と思う次第なのです。どうでしょう、あずささん」
月詠に突然ふられて、展望台まで上ってやり遂げた感に浸っていたあずさがビクッとなる。
「えーっと‥‥こういうときはあれだね、非常階段を駆け下りるの、夕日に向かって走るようにね。『俺たちはようやく下りはじめたばかりだからな。この果てしなく深いプロレスごっこ穴をよ‥‥』って具合に!」
問答無用で、そのまま非常階段を駆け下りはじめるあずさ。よく分からない勢いに流されて、月詠とサトルも後を追ってしまう。
こうして、倒れた鶸とヨシュア、百鬼だけの残る展望台へ、えらい人が現れる。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
1位 百鬼レイ 7
2位 伊藤達朗 3
3位 月詠月夜 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
そして、映像が階段に切り替わる。そこには、すでに息の上がったあずさ、サトル、月詠の姿があった。
「え? え? 何で走り降りてるんですか? 十代だけに、中二病ですか?」
『大体、こういうときは駆け上がるもんじゃないんですか?』
ようやく疑問が湧いてくる月詠とサトル。それに、あずさが笑顔で答える。
「分かってないなー。プロレスごっこは落ちるだけに決まってんじゃん! 底なしだよっ!」
力強く宣言するあずさ。そこへ、巨大な『未完』のスーパーが重ねられ、番組は終わっていくのであった。