芸人プロレスごっこ王19アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
牛山ひろかず
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
0.7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
07/07〜07/09
|
●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「今宵は七夕じゃのう‥‥みなの者、準備はよいか?」
「はい、すでに巨大な笹を‥‥ぐはっ!」
笹を担いで入ってきたスタッフが、いきなり鉄パイプで制裁を食らう。吹き飛ばされ、さらに笹の下敷きになってしまう。
「バカヤロウ! 短冊に願い事を書くなどという非現実的なマネを、えらい人はしない! ただ、現実的に天の川で試合をするのみである!」
「‥‥いや、まあ、すでに木星で試合をした(ことになっている)ので、太陽系を飛び出すくらい、えらい人には造作もないことなのでしょうが‥‥」
「うむ、分かっているじゃないか。だったら、すぐにも天の川ロケを行うぞ!」
「サー、イエッサー!」
こうして、絶対に天の川ではやれないコトは分かっている中、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第19戦目は平然とスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・天の川で収録を行っているという体で、ごく普通のスタジオにセットもなくリングだけ置かれた状態で収録を行います。
・『七夕』や『天の川』をテーマに試合をしなくてはなりません。『七夕』『天の川』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定の時は、7月末くらいが予想されていますが、梅雨入りの予報並みにアテになりません。
・とりあえず現在はポイントのインフレにはなってませんが、最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。宇宙葬にならないよう、気をつけましょう。
ランキング(第17回分まで)
1位 百鬼レイ(fa4361) 25pt
2位 白海龍(fa4120) 21pt
3位 伊藤達朗(fa5367) 20pt
4位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
5位 パトリシア(fa3800) 14pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第14回 05月14日 07:00〜 山下公園
・第15回 05月17日 07:00〜 横浜中華街
・第16回 05月20日 07:00〜 東京都新宿区
・第17回 05月23日 07:00〜 東京都港区
・第18回 07月04日 07:00〜 美しい国
●リプレイ本文
『俺は‥‥俺にできる仕事をやるだけだ‥‥』
カメラマン兼実況兼解説兼レフェリーの鶸檜皮(fa2614)がいきなりドアップの恍惚の表情で呟くが、そんなコトはどうでもよく、まずは本日の主役である天の川の入場である。
天の川が入場? 舞台じゃなくて、登場選手なの? という話だが、羽曳野ハツ子(fa1032)が『そのものズバリと戦うのが羽曳野流』とムチャキング言っているので、選手入場してもらうしかない。
そこへ、浴槽に浸かったパトリシア(fa3800)が台車に乗せられ、鶸に押されて入ってくる。
「天の川‥‥それは星屑の集まり、ミルキーウェイ‥‥」
別に全パがオールスターからオールスターダストになったとか言っているわけではなく、単に牛乳風呂の浴槽を天の川と言い張っているだけである。
というわけで、乳白色の湯が満たされているので、せっかくの透明な浴槽もパトリシアの肌を拝むことは叶わない。もっとも、ちゃんと水着を着けているので、浴槽も湯も透明だとしても意味はないが。
しかし、それに納得できない男がいた。一人四役もカメラマンとしての本分を忘れずにカメラを担ぎながらのため、『ナイスですね』とか言い出さないか心配になってきてしまう鶸だ。
『やらないか?』
「‥‥?」
『サービスシーンを!』
鶸の突然の呼びかけに、ポカーンとするパトリシア。鶸も無理強いしたりはしない。ただ、カメラを構えてじっと待ち受けるのみである。
とはいえ、七夕という願いが叶う日に美容と豊胸のために牛乳風呂に入るという乙女チックなパトリシアであるから、別にここからサービスシーンに移行する気などまったくなかったのである。
「ふっ‥‥私はここから出られないのです! いい感じに効果が出るまでは‥‥」
それって半永久的に出られないんじゃ? と思わずにはいられない鶸だったが、さすがに言葉にはしない。というか、何か言い出す前に伊藤達朗(fa5367)がやって来たからだ。
「まいど、伊藤達朗や。パトリシアさん、間違ってまっせ!」
伊藤の言葉に、鶸が貧乳の希望を打ち砕くとはナニゴトかと失礼にも憤慨しかけるが、伊藤はそういうつもりで言ったのではなかった。
「天の川が英語でミルキーウェイなのは、先程おっしゃったとおりや。つまり、柔道が柔の道ならば、ミルキーウェイは牛乳道や! それをお湯で薄めてどうにかなるほど、牛乳道はアマくはないんや!」
ガーン! パトリシアは聞き流しているが、鶸は激しい衝撃を受ける。ショックのあまり、ヘッドバンギングをはじめてしまうほどに。
「カメラ、ちゃんと撮れてるんかいな‥‥?」
伊藤が心配してしまうように、鶸がおかしくなったようにしか見えない。が、これは自ら脳をシェイクしてプロレスごっこ仕様の思考力に作り変えているだけの話である。だから、ヘッドバンギング終了後にこそ、ちゃんとおかしくなっているのである。
「ま、ええか‥‥せやから、わいは番組終了まで延々と乳製品──バター、チーズにはじまって牛乳、アイスクリームなど──を食べつづけますわ。リバースやトイレ直行せんかったら、わいの勝ちという牛乳道の死合やね!」
キケンな香りを発散しつづける鶸は一切無視して、自分の試合の説明をする伊藤。
「おっと、途中で追加の料理が入ってはルールが台なしや。別室での撮影とさせてもらいまひょか」
そして、ヘッドバンギングで映像が使い物にならなくなっているカメラを伊藤がひょいと持ち上げると、それを手にして別室へと向かっていこうとする。
「しばし待たれい!」
だが、今度は樋口愛(fa5602)が止めに入ってきた。伊藤がパトリシアの天の川に納得がいかなかったように、樋口も伊藤の天の川に納得がいかないのである。
「天の川とはなんだ! 正しくは甘の川じゃないか。七夕とは棚機で、棚ぼたとは棚から牡丹餅の略だ。甘さ辛さも彼岸までという古代中国カントン省のことわざに由来する節句だ。それは6月の花嫁がちょうどマリッジブルーに陥ったあたりを見計らい、甘ったるい甘の川の彼岸と此岸にイチャつくカップルどもを引き裂いて楽しむ風習だ‥‥って、いない」
樋口が意味不明の解説をはじめていたが、すでに伊藤は別室へと引き上げていた。そこへ、ちょうどヘッドバンギングを終えておかしくなった鶸が復帰してくる。
『いつの間にか選手が入れ替わっているではないか。凶器がないか、ボディチェックと称しチャックを下ろさねば‥‥』
樋口に気づいた鶸が、樋口のズボンのチャックを下ろしにかかる。
「バカ者ッ! 断っておくが、ミルクは単に白い液体ではない。甘の川というからには、甘みがなくてはならない。苦味などあってはならないのだ! また、川は河川の川であって皮ではない。つまり、甘みに目をつむったとしても、どのみちカントン省出身の俺ではダメなのだ!」
単に樋口が恥ずかしいヒミツを暴露しているだけの気がしないでもないが、鶸はすっかり説得されてしまっていた。
『なるほど。では、どうすれば甘の川に?』
「ミルクの表面に張る皮、つまり湯葉と戦う!」
『確かに豆乳はソイミルク、余計なモノが頭にかぶっていて苦しいが、ギリギリミルキーウェイといえなくもない‥‥』
「豆乳を河川のごとく流して熱し、その白い液体に被る皮をひたすら取り除く! 油断しているとどんどん分厚く歪になるから、素早く手を動かすのだ。いや、素早く手を動かすから分厚く歪になるのか? ムム‥‥」
『卵が先か、鶏が先か‥‥』
思い悩む樋口と鶸だったが、パトリシアはそんな30代と40代の男の会話にはまったく耳を傾けず、ひたすら念じながらの入浴に励んでいた。
「ハツ子さんほどではないにしろ、さすがにあずささんよりは育っているに違いありません」
「ちょっと、それどういうコト!?」
パトリシアの呟きに、あずさ&お兄さん(fa2132)のあずさが飛び出してくる。織姫の格好をしているので、あずさの胸がかなりの上げ底になっていた。
「うっ、あずささんにまで負けています‥‥」
落ち込むパトリシアの視線が自分の胸に向いていることに気づき、慌てて言い訳をするあずさ。
「えっと、これにはヒミツが‥‥じゃない、絶対にのぞいてはなりませんよ」
危うくパッドのヒミツを洩らしそうになりながらも、どこから取り出したのか障子を閉めて、隠れて機織りをはじめてしまうあずさ。織姫だから機織りする分には構わないが、どう考えても鶴の恩返しに移行してしまっている。
とはいえ、パトリシアも牛乳風呂から出られない身である。となれば、出歯亀‥‥もとい、彦星のグリモア(fa4713)の出番である。
「織姫には、今回一番エロい身体をしているハツ子ちゃんをと思っていたのだが、あずさちゃんでも拒む理由はない。というか、一年間引き絞られたリビドーという名の弓を解き放つ前に、最後の仕上げのように部屋に閉じこもって待つ様など、もうたまらない‥‥」
なぜかフライパンで卵を焼いている羽曳野を横目に、グリモアは標的をあずさに絞っていた。
「放送は朝でも、収録は夜。だって七夕だもの‥‥さあ、夜のプロレスごっこをしようじゃないか‥‥ぐはっ!」
だが、矢は目の前に突如出現した壁に阻まれた。見れば、十字架を掲げる神父のように、逆さテルテル坊主を掲げる百鬼レイ(fa4361)の姿があった。
「ハイ、ドーモ★ 願いゴトが一つだけ叶うなら、『ミンナ“自分くらい”幸せになりますよーに』とブラックに攻めたりせず、『彼女欲しい』とストレートに攻めてしまう、逼迫した百鬼ですよー」
「な、一体‥‥?」
思わず怯むグリモア。百鬼が血の涙を流しているのが見えたからだ。
「一年に一回、7月7日に天の川によって隔てられていた二人が短い間ながらも再会の喜びを分かち合う‥‥いー話じゃないですか!」
「う、うむ‥‥」
話の先が見えなくて、なんとなく相槌を打つしかできないグリモア。とここで、急に百鬼の語気が荒くなる。
「で・す・が! そんな感動的&悲劇的なお話があったとしても、しょせんカポーはカポー。我が眼前に立ちふさがる敵なのであります! そんなカポーの織姫と彦星を再会させないよう、織姫彦星引き裂き大作戦を開始なのですっ!」
ドギャーン! という効果音を背負って百鬼が言い切ったが、事情が分かればグリモアにも対処のしようがあるというものだ。
「なるほど、そのために雨を降らせようと逆さテルテル坊主だったのか。だけど、そんなコトをするよりも、おまえも一緒に来ればいいだけじゃないか!」
「さ、3人で! はじめてでそれだと、普通の身体に戻れない気がしますが‥‥」
「なーに、まずは織姫の秘めゴトを軽くのぞくだけだからさ。大丈夫だって」
「そうですか? そういうことでしたら‥‥」
悲壮な決意を胸に織姫彦星引き裂き大作戦に臨んだハズなのに、軽く丸め込まれる百鬼。見事である。
天の川を渡ると称して、無意味にパトリシアの入った浴槽の回りをグルグル回って軽く水着姿を堪能した後、障子の前へと到着した。
「よし、まずは障子に穴を開けて、中の様子をのぞくんだ」
「ラジャー!」
二人の視線の先にはドキドキするものが‥‥って、違うドキドキする光景が広がっていた。そこにあったのは、山姥のようにハサミを研ぐあずさの姿だったのだ。
「えーと、これはどういうコトですか?」
「痴情のもつれで刃傷沙汰ってヤツ‥‥かなぁ?」
思わず顔を見合わせる百鬼とグリモアだったが、そこへサイレンがけたたましく鳴り響いた。
「見た‥‥?」
障子が開いた様子もないのに、百鬼とグリモアの後ろには幽鬼のようにあずさが立っていた。だらんと下げた手に、ハサミを握り締め。
「いえ‥‥」
「見てません」
反射的に否定の返事はしてみたものの、それであずさが引き下がるわけがない。こうして、百鬼とグリモアがあずさに追い回されることとなった。もはや、何の話なのか分からない。
「‥‥ふぅ、ようやく完成ね!」
七夕そのものとの対戦を熱望していたハズの肝心の羽曳野であるが、周囲の喧騒をよそに何をやっていたのかといえば、冷やし中華を作っていたのである。先程の卵は、錦糸玉子だったわけだ。
つまりは、挑戦者殺到の天の川回りは一切無視し、同じ7月7日でも七夕ではなく冷やし中華の日の方を選択していたのだ。
だから、スタジオにある短冊はすべて『冷やし中華はじめました』に書き換えられてしまっている。
『ハム、錦糸玉子、キュウリはもちろん、酢や麺に至るまで一切の手を抜かず調理! これは正に黄金の冷やし中華です!』
気づけば、アツい議論を交わしていたハズの鶸と樋口が、羽曳野の前までやって来ていた。
「分かってるじゃない。昼飯によし、夕飯によし。食欲がなくてもするりと食べられるのよ!」
冷やし中華を宣伝しながら、ずるずるずるりと豪快に麺をすすりあげる羽曳野。だが、樋口は納得がいかない様子だ。
「食欲がなくても、たんぱく質はしっかりとらないと。ほら、湯葉をお食べ‥‥ぐぼはっ!」
勝手に冷やし中華の上に湯葉を乗せてしまう樋口。これには、羽曳野の鉄拳制裁も当然であろう。
だが、鉄拳制裁によって脳の揺れた樋口は、ヘッドバンギングした鶸と同じ症状になっていた。すなわち、打たれすぎである。
「これは失礼。植物性たんぱく質よりも、動物性たんぱく質というわけだ。最初からそうと言ってくれれば‥‥」
『あ、ボディチャックね?』
樋口がズボンのチャックを下ろしはじめると、鶸も一緒になって下ろしはじめる。
「冷やし中華にさくらんぼなどのフルーツを乗せるのは邪道。極めて邪道‥‥だけど、それはもはや外道よ!」
あずさに追い回されるグリモアと百鬼の輪に、新たに羽曳野に追われる樋口と鶸の輪が加わった。
「ところで、私はいつになったら出られるのでしょうか?」
当然ながら一向に育つ気配のないパトリシアが、その輪の中心で牛乳風呂に浸かったままである。
しかし、いつの間にか笹の葉に、ポイントの書かれた短冊がぶら下げてあった。
1位 あずさ&お兄さん 7
2位 羽曳野ハツ子 3
3位 パトリシア 1
ところでここに名前がないが、伊藤の別室での孤独な戦いはどうなっていたのであろうか?
「なんや、ミルキーウェイも大したことないんやな」
普通に完食して勝ってしまっていたので、特に出番もポイントもないままに終わってしまっていた。