ねるとん百合鯨団アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/18〜03/20
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●本文
『ねるとん──それは見合いパーティーのことと一般名詞化されてしまっているが、それも男女間でのこと。今こそ、それを女性限定、女性同士のみで行うべきです!』
「なんじゃ、この企画は?」
部下の出してきた企画に、上司は渋い顔である。しかし、部下に引き下がる気はまったくない。
「そのままですが。女性だけによるねるとんですよ」
「いや、しかしなあ‥‥。同性同士のそういうのは、いろいろ問題があるんじゃ‥‥?」
「同性結婚が認められている国はたくさんあるんです! 日本でいつ認められるかは分かりませんが、認められるかもしれないという段階では、すでに時代に乗り遅れているんですよ! テレビに携わる者が、時代のエッジを走らなくてどうするんですか!?」
「そ、そうなのか‥‥」
部下の熱弁に、すっかり気圧されてしまう上司。こうなれば、あと一押しである。
「でも、男女の場合はおのずと分けることができるけど、全員女性だとどう二つに分けるんだ?」
「SとMに分けます!」
「いやいや、SMはマズいんじゃねーか? いや、ネコだのタチだのもマズいけどさ」
「は? Sは攻めたい女、Mは任せたい女の略ですが、何か問題でも?」
「いや‥‥それならいいんだが‥‥。半々に分かれなかったらどうするんだ?」
「よっぽど極端になれば抽選で無理矢理振り分けますが‥‥多少バラついても問題はないかと」
「そうか‥‥じゃ、もうユーやっちゃいなよ!」
最後は投げやりになった上司が折れて、ねるとん百合鯨団の企画はスタートした。
舞台:
・公園。ベンチ、噴水、ボートなどの一通りのものはそろってます。
進行:
・自己紹介
・フリータイム
・告白タイム
注意:
・カップル成立の場合でも、番組後の縛りは一切ありません。その後の関係を気にして、ゴメンナサイする必要はありません。
・女性のみ参加可能です。男性は、女性の心をお持ちでも不可ですので、ご了承ください。
●リプレイ本文
郭蘭花(fa0917)がカメラを向けると、そこには上は23歳から下は12歳まで、老若女々勢ぞろいであった。いやまあ、テレビの画的なこともあって、老若とはいかずに若い女性だけであるが。それでも、小学生から四大卒くらいの年齢まで揃っていれば、大したものである。何がどう大したものなのかは謎であるが。
そこへ、司会として現れたのは、やや緊張した面持ちの角倉雨神名(fa2640)である。
『私、新人モデルでアイドルも目指してます、角倉雨神名です‥‥えっと、このねるとん百合鯨団の司会という大役を任されました。色々経験浅いですけど、よろしくお願いします‥‥えーと、えっと、趣味はリボンとかお裁縫して作ったりとか‥‥きゃ!?』
「ほら、慌てないの。さ、ちゃんと紹介していきましょう」
早くもテンパリ気味の角倉に、ビスタ・メーベルナッハ(fa0748)が後ろから肩を抱きしめる。一瞬ドキリとしてかえって緊張してしまった角倉だったが、すぐに落ち着きを取り戻す。
『えっと、ではMチーム、任せたい女性陣から自己紹介してもらいましょう!』
ビスタに促されて、角倉は2チームに分けられたうちの一つ、Mチームを紹介する。
「‥‥またスタントマンとしての仕事じゃない‥‥っと!」
ぶつくさ言っていた本業スタントマンの白虎(fa0756)だったが、急にカメラが向けられて
「私は虎白サユリといいます。ねるとんというものがはじめてなので、何かヘンなことをしてしまうかもしれませんけど、よろしくお願いします!」
なぜ偽名を使うのかは謎であるが、その謎すらも乙女の嗜みというところであろうか。とはいえ、服装は男物に近い格好で、フリルなどもってのほかのようであるが。
「月李花(fa1105)、12歳です。それより、百合カップルって何?」
つづいて登場した月が、未だに番組の意図を理解していない発言をする。慌てて、角倉が説明する。
「ふ〜ん、女同士の恋人たちのことなんだ‥‥別にいいけど」
改めて説明させられるとやや恥ずかしくもあるが、そこをズバっと聞いてしまえるのが、お子ちゃまキャラの強みである。番組趣旨説明ありがとう、というところであろうか。
「白河瑞穂(fa0954)です。演出家ですが、モデル活動も行っています‥‥今日は、仲良く楽しめたらいいなと思っています。よろしくお願いします」
優等生的な、きっちりした自己紹介をする白河。演出家でありながらモデルをこなし、今日の衣装は巫女となれば、イロモノの臭いプンプンであるが、そうは思わせないのはやわらかな物腰と、先程の月同様、番組趣旨を知らずに参加してしまうような、天然なところがあるせいであろうか。
『つづいて、対するSチーム、攻めたい女性陣に自己紹介していただきます!』
角倉に紹介されたSチームは、早くも臨戦態勢十分であった。ギラついた瞳の、ともすれば飢えた野獣といえなくもない。
「うわー。殺気だって、コワい感じがする〜」
月が傍観者のごとくボソリとつぶやくが、月だってその獲物の中の一人なのである。
「宵谷香澄(fa0913)、名は売れてないが、一応モデルだ。特徴は‥‥脚に自信があるのと、珈琲好きなこと。後は‥‥男に興味がないことだな」
そこまで言ってクスっと笑う、スラリとした長身の宵谷。
「あたしは門屋嬢(fa1443)っていうんだ、よろしくね。あ、嬢はお嬢様の『嬢』って書くんだからね!」
爽やかに自己紹介したのは、宵谷同様長身の門屋。違いは、スレンダー美人の宵谷に対し、豊満な体の門屋というところであろうか。ショートカットでボーイッシュな感じの顔立ちとは対照的に、黒のチビTに強調された胸は、その上に白いジャケットを羽織っているとはいえ、一際目立たずにはいられない。
「ビスタ・メーベルナッハよ。ビスティと呼んで頂戴な。せっかくの機会、みんなで楽しみましょうね。趣味は‥‥そうね、こうやって可愛い女の子たちとお話するコト、かしら」
そう言ったわりには、早くも角倉の腰に手を回しながらの自己紹介のビスタ。
「郭蘭花、カメラマンでした‥‥いえ、一応今もカメラマンだけどね、いてもたってもいられず‥‥ほら、ハンディって便利なものがあるから」
先程までカメラを回していたハズの郭が、いつの間にかSチームに加わっていた。
自己紹介も終わり、いよいよフリータイムである。
しばし、8人での歓談の映像がダイジェストで流れた後、早くもツーショットはビスタと角倉である。
「公園や外で遊ぶのは、あんまりしたことなくて‥‥」
「じゃ、私にまかせて!」
そんな角倉に、ビスタはソフトクリームを買ってあげると、ベンチへと誘う。
そして、仕組まれたハプニングが! ビスタが何もないところでちょっとつまづいてしまい、角倉の背中を押してしまう。その拍子に、ちょうどソフトクリームを舐めていた角倉は、頬にクリームをつけてしまう。
「ご、ごめんなさい!」
「い、いえ‥‥」
角倉が拭き取るよりも早く、謝りざまクリームをペロっと舐め取るビスタ。
「ふふ、甘いのね‥‥♪」
一応角倉は司会であるのだが、基本的にMチーム気質だったのか、ビスタに身を任せっぱなしで、司会どころではない。
同じく早々にツーショットとなったのは、郭と白河だった。予想外に早く二人っきりになってしまったので、二人とも作ってきたお弁当に四苦八苦である。郭は分かりやすく中華、白河は基本に忠実におにぎりに唐揚げ、サラダにフルーツ盛り合わせである。
そして、腹ごなしにとでもボートに乗り込む二人。定説ならSチーム側である郭が漕ぐところであるが、防水デジカメを手放せないので、白河が漕いでいる。しかし、防水というあたりが、ある意味この後を暗示しているといえなくもない。
果たして、水上で二人きりという状況に意味もなく動揺していた白河が、郭の向けるデジカメに気を取られて姿勢を直そうとしてバランスを崩し
「きゃ!」
「わっ!」
ドボーンという豪快な水音と水柱を上げて、二人仲良く水中に落下である。
そしてやはり二人仲良く更衣室に直行。郭がハンディを回しつづけていたというが、さすがにそれが放送に乗ることはない。
そんな二組と対照的に、こちらは4人でのグループとなった、Sチーム宵谷、門屋と、Mチーム白虎、月。
「それじゃあ、鬼ごっこか缶蹴りなんかしてみませんか? 最後まで鬼だった人は、クジで決めた罰ゲームをするとか」
「いいね、やろ、やろう!」
白虎の提案に、月も無邪気に乗る。任せるMチームはそれでいいかもしれないが、一方の狩人Sチームは即答とはいかない。
「隠れれば、必然的に人目につきづらい場所に‥‥いや、無理に行くのは私の趣味じゃないし、意味もない。まずは楽しく遊ぶことを念頭に置き‥‥ブツブツ」
聞き取れないほどの小声であれこれ策略を練る宵谷。
「いかん、いかん。もっと積極的にアプローチしなきゃ。ベンチでおしゃべりしたり、ボートに乗って二人だけの時間を過ごしたり、噴水の前で写真を撮ったり‥‥ああ、それなのに、それなのに!」
門屋はもうちょっと大きい声で、反省しきりである。
だが結局、宵谷と門屋の出した答えはYESであった。そして鬼ごっこをすることとなり、最初の鬼が門屋になる。
しばらく隠れたり、走り回る画がダイジェストで流れ、ついに門屋が月を捕まえる。
「あー! 捕まっちゃったよ」
「じゃ、ちょっと疲れたし、ボートでも乗ろうか?」
「え? でも、鬼ごっこは?」
「向こうは向こうで盛り上がっているようだし」
門屋が指差した先には、木立の中の宵谷と白虎であった。
「えっと‥‥なぜこのような状況になっているのでしょう?」
宵谷に木に押し付けられ、頭をなでられたりと積極的な攻勢を受ける白虎。
「こういうの‥‥キライ?」
「キライ‥‥じゃないですけど‥‥」
白虎も男性的な格好を好んでも、スキンシップ攻撃には弱かったようである。
一方の門屋と月は、ボートに乗っていた。門屋はボートを漕ぎながら、質問攻めである。
「あたしは作曲家をしてるんだ。あんたの職業は何?」
「大ざっぱだけど‥‥タレント、かなぁ」
「へー。でさ、ボートって楽しいよね」
「うん」
「あんたも漕いでみる?」
「え、いいの!?」
そんなこんなでフリータイムは過ぎていった。
そしてお待ちかね、告白タイムである。
まずは、白虎がなぜか同じMチームの月に向かう。
「お茶、おいしかったですね。またみんなで飲みませんか?」
「ほえ? 李花でいいの? OKだ‥‥」
「ちょっと、待ったぁ!」
突然、ちょっと待ったコールがかかる。声の主は門屋であった。
「李花のこと、第一印象からかわいいと思ってたんだよね。だから‥‥あたしと友達になってくれっ!」
そう言って、月に手を差し出す門屋。
「ならば、私もちょっと待った、だ」
さらにさらに、宵谷も割って入ってくる。こちらは白虎の方に、山百合の学校の伝統であるロザリオを差し出す。
「どうせなら、私につき合ってみないか? 少なくとも、暇にさせないと約束する‥‥まぁ、暇潰しで終わる保障はしないがな」
『どうしましょう‥‥三すくみならぬ、四すくみとなってしまいました』
もはや役に立たない司会ぶりでおなじみになってしまった角倉がオロオロしていると、そこにビスタが助け舟を出した。
「だったら、グループ交際からでいいんじゃないの?」
まあ、そういうことだったら的な空気になり、その後どういう組み合わせになるかはまたのこととして、変則的なカップルの成立ということになった。
今度は、郭が白河に向かう。
「第一印象から決めていました。フリータイムもずっと一緒だったし‥‥どうかな?」
「えっ!?」
郭の告白に、思わず頬を染めてしまう白河。だが、どうしても声が出てこない。
そして、OKでもNGでもなく、返事はキスだった。それも唇と唇で。思わず、更衣室で何かあったのではと勘繰りたくなってしまう。
「えーっと、ここまでとは意外だったけど‥‥OKってコトかな?」
やや照れくさそうに言う郭だったが、ここで今さらながらカメラが回っていることに気づいた白河が、恥ずかしさのあまり逃げ出してしまう。
「ちょ、ちょっと待ってってば!」
それを、慌てて郭が追っていく。そして、あわよくば番組中にキスをと意気込んでいた宵谷が、うらやましそうに見ていたとかいないとか。
『あの‥‥ビスタさんが残ってますけど‥‥どうされるんですか?』
そして残るは、ビスタただ一人となっていた。だが、ビスタにまったく動じる気配はない。
「あら、そんなの決まっているじゃない。あなたがいるじゃない。私の気持ち、気づかなかった?」
『え? え!? わ、私ですか!? 私はその、一介の司会でして‥‥』
あたふたしてビスタを見上げる角倉の唇に、ビスタはそっと人差し指を当てる。
「あなたのコト、もっと色々知りたいの。これからも、今日みたいにつき合ってくれるかしら?」
しばらくして、角倉がコクンとうなずく。
『他の人と仲良くなろうって思って、一歩踏み出すのは勇気がいる。だから、その気持ち、とっても大切に受け止めなきゃって思います』
「‥‥ありがとうね」
ビスタがそんな一生懸命な角倉を愛しむように抱きしめると、そこでカメラが引きになっていく。
前代未聞の司会者、カメラマン込みでの、全員カップル成立である。第一回なので、前代もなにもないのはさておき。