番長の精密検査アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/08〜07/10

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「オールスターも近づいてきたな。って、番長は用紙のDH欄に名前こそ載っていたが、得票とか一切関係なくアメリカへ検査しに行ったりしてるわけだが‥‥」
「検査の結果次第によっては、最悪のケースもあるわけで‥‥番組存続のピンチですよ!」
 深いため息を吐く先輩と後輩。だが無論、ただ黙って運命を受け入れるだけでは許されないのが便乗チームの宿命。
「以前、千羽鶴で回復を祈っただが、やはり番長的にそんなものは生ヌルかったということだ!」
「千羽鶴っていっても、折り紙じゃなくて闘鶏でしたけどね」
「だから、それすらも生ヌルいということだ! やはり、水ごりしかなかったんだ!」
「今の季節、水も随分とヌルくなっているような気もしますが‥‥」
「誰が水をかぶると言った? 液体には、水以外にもたくさんあるじゃないか。別に液体である必要もないしな! こうして、氷水ですらも生ヌルくなるのだ、フハハハ‥‥」
 こうして、番長の回復を祈って水ごりをするといいながら水は使わないという、番長リスペクト企画の第14弾がスタートするのであった。

『番長汁をかぶりまくり編』

ルール
・全員が番長とかに扮して、水ごり的なコトをします。
・水ごりの際にかぶるのは、水以外の何かでなくてはなりません。
・収録か生か、スタジオかロケか、そういったものはすべて自由です。
・撮りたいものは、おもしろ番長映像です。いろんな意味で番長復活への思いが一番伝わってきた水ごりをした番長が優勝となり、賞金10万円が授与されます。
・その他細かいルールは特にありません。が、番長でも法は守る必要がありますし、スタッフ番長がルールブックです。

過去の放送スケジュール(最近5回分)
・番長のストーブリーグ 10月21日 7:00〜
・番長の自主トレ 2月08日 7:00〜
・番長のバレンタインデー 2月14日 8:00〜
・番長のリハビリ 4月15日 7:00〜
・昭和の番長列伝 4月29日 7:00〜

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0748 ビスタ・メーベルナッハ(15歳・♀・狐)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2196 リーゼロッテ・ルーヴェ(16歳・♀・猫)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa4941 メルクサラート(24歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

『今年もアツい夏がやってまいりました! しかし、我々はかつてとてつもなくアツかった3年間を忘れたわけではありません! そのときの番長がドキドキするほどのピンチな今、我々には何かをかぶるコトしかできません!』
 司会進行のリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)によって導かれて出てきたのは、越中褌一丁にマントを羽織っただけの名無しの演技者(fa2582)だった。
「魁で暁である男な塾の番長! 我輩が大強引邪気である!」
 三号生筆頭番長としては肉体の厚みが足りなかったが、それを補うかのように軍刀を掲げる名無しの演技者。一応、安全に配慮して模造刀ではあるが。
『で、何をかぶるんですか?』
「ふん、水をかぶるなんぞ男にあらず。見よ! これぞ男である!」
 運び込ませた金ダライの上に乗ると、油をかぶりまくる名無しの演技者。サンオイルなのではなく、きっちり食用の油だったが、テカテカの身体を用いてポージングをはじめる。
「バリバリ‥‥キレてます‥‥」
 かぶりつきで見ていた湯ノ花ゆくる(fa0640)が、ボディビル大会のようなかけ声をかける。その格好は、メロンパンの着ぐるみ。そう、メロンパン番長はそれすなわちマスコット番長であるので、貧相な身体でも応援せぬわけにはいかなかったのだ。
 だが、その様子を見ながら小道具をいじっている男がいた。マッチョなZebra(fa3503)である。
「うーん、なんかベタなものしか思いつかないぞ。かといって、他は人とかぶりそうな‥‥うん? かぶる? そうか! ネタがかぶってもいい! っていうか、俺はネタをかぶるんだ! そうだ、俺はかぶりの番長になる!! と気づいたのはいいものの、早くしないと‥‥えーと、熱湯、牛乳、泥、酒、水飴、油‥‥油! あるじゃないか!」
 ネタかぶり番長となったZebraが、油をかぶると勢いよく名無しの演技者の隣へと走り込んでいく。本当の肉体美というものを見せてやる、といわんばかりの勢いである。
「ぬおっ! うわぁー‥‥」
 が、それが果たされることはなかった。油に足を滑らせ、そのままあさっての方向に滑っていってしまう。
「まったく、男子はかぶるというものが分かってないわね。ここはエロス番長の出番のようね‥‥」
 一連の様子に呆れていたビスタ・メーベルナッハ(fa0748)だが、ついにガマンできずに入ってきた。白い体操服と紺のブルマを着け、長ランを羽織って。
「朝の一発絞りよ!」
 長ランを投げ捨てると、牛乳の入ったバケツを取り出すビスタ。ふー、何を絞るのかと思えば牛乳のコトかー、と安心したのも束の間、その牛乳を顔からかぶってしまう。
「ああ、熱くて濃くてねっとりして‥‥サ・イ・コ・ー‥‥」
 ビスタがうっとりした表情で呟くが、今度はそれに激高した森里時雨(fa2002)が走り込んでくる。
「ウソをつかないでください! なにやってるんですか。全然濃くないじゃないですか。そんなピチャピチャじゃ意味ないですよ! もっとドロリと濁った白色の、言うなれば一手間かけた擬似‥‥いやいや、ならばむしろこの俺が‥‥だが死下肢! 飛びが悪くてですね‥‥俺、この手術が終わったら、かぶり芸から足を洗うんだ‥‥」
 激怒したかと思えば、一人勝手に落ち込んでたそがれる森里。
 その隙にようやくZebraが戻ってくるが、牛乳かぶりは男がやるとより変態度が上がってしまうので、仕方なくそそくさと退散していく。
「じゃー、コレ使ってみたら?」
 一方、かわいそうに思ったビスタが森里に何かを渡していた。何か? 矯正パンツである。だが、何を矯正するかまでは、森里の名誉のために聞かないでやって欲しい。
「こ、これで俺がUMA並みであることを‥‥まさにチュパカブラ! チュパをカブっちゃうのです。カブりをチュパ! って、どういう意味ですか!?」
「それはね‥‥」
 悪ノリして喜ぶ森里に、それ以上悪ノリして『カブりをチュパ』という言葉をエロス通訳番長して再現してみせようというポーズをとるビスタ。
「ええい、瀬苦原流奥義! 烈、搾乳爆!!」
 だが、するするとやって来た名無しの演技者がビスタに低空タックルをかましてしまう。油をかぶってのポージングも終え、次の出番を散々待たされていたが、うらやましい森里を見て、ついにキレてしまったのである。
「ああ、ヌ・ル・ヌ・ル‥‥」
 油まみれにされても、あくまでエロス番長を崩さないビスタ。そして、名無しの演技者が技名どおりにすべく、両の手をビスタの胸に伸ばそうとする。
「ああん、痛い!」
 だが、歓喜の声を上げたのは名無しの演技者の方だった。メルクサラート(fa4941)がやって来ると、鞭でビシバシ叩いていたのだ。
 年下の美少年には目がないメルクサラートだが、油まみれの17歳と矯正パンツを持つ18歳では、まったく食指が動かない。
 というか、殺意すら湧いてくる。なので、その殺意に突き動かされるままに行動してしまったのだ。
「我が名はメルクサラート、鳳凰番長と人は呼ぶわ。このメルクサラートの鞭は痛いわよ!」
 そう言うと、今度は森里を滅多打ちにするメルクサラート。だが、森里は痛みを快感としか感じられない番長なので、まったく効果なし、というか逆効果である。
「ふふ、ミルクボールは見逃して正解だったな。あやうく没収試合になるトコだったゼ‥‥」
 その様子を、遠巻きにZebraが眺めていた。
『‥‥えー、そろそろ次にいきましょうか?』
 一通りの騒ぎも収まったところでリーゼロッテが促すと、森里は控え室へ戻っていき、ビスタとメルクサラートはマスコット番長の湯ノ花の隣にちょこんと座った。
 その中を、名無しの演技者が先程の金ダライの中に戻っていく。
「あちっ‥‥いや、適温だ!」
『ああ、ちゃんと温めておきましたよー』
 温めておきましたなんてレベルではなく、グラグラいっているが。
「それでこその油風呂。根性試しに最高である!」
 番長らしいヤセガマンで、煮立った油の上にあぐらをかく名無しの演技者。あっという間に顔が紅潮し、こめかみの血管がすぐにも切れそうになる。
『えーと、この油に浮かべてあるロウソクは、何か意味があるんですか?』
「それで時間の経過を‥‥あっ! 触るな‥‥うぎゃーす!」
 油風呂には、時間を計るための火のついたロウソクを乗せた笹船が浮かべてあるのだが、つい触ってしまったリーゼロッテが倒してしまい、ピッチャーでもないのに大炎上である。
「これは‥‥いけません‥‥」
 すくっと立ち上がった湯ノ花が、金ダライに大量のメロンパンを投入していく。これこそ、酸素を遮断して鎮火する‥‥世に言うメロンパン消火である。
 が、メロンパンがふっくらしているのは、空気がたくさん含まれているからなんだネ! というコトで、むしろ燃えるものが増えてしまっただけであった。
「油番長なら、すぐにもかぶれるゼ‥‥うぎゃーす!」
 そこへ、さっき油をかぶったことだしとネタをかぶせに来たZebraが走り込んできて、すぐに一緒になって燃え上がってしまう。メロンパン以上の燃料投下だ。
『えー、諸般の事情により、ここからはメルクサラートさんの番長をお楽しみください』
 さっくり名無しの演技者とZebraを切り捨て、メルクサラートにふるリーゼロッテ。メルクサラートも過去を振り返りはせず、白ランを脱ぎ捨てて颯爽と登場する。
 こうしてボンタンに上半身はサラシを巻いた格好になったメルクサラートが、なにやら大きな樽を運び込ませてくる。
「クサヤの漬け汁、百年モノ! 時代を超えた風味が今、スタッフをノックアウトする。封印を解くのが楽しみだわ!」
 湯ノ花とビスタが後ずさる中、本当にクサヤ汁をかぶってしまうメルクサラート。
 次の瞬間、メルクサラートの身体がドサリと崩れ落ちた。スタッフをノックアウトするどころか、一番間近な自分がノックアウトされてしまったのだ。
 火事につづいて異臭騒ぎと、かなりの地獄絵図である。が、ここでリーゼロッテがいいことに気づいた。
『マッチをすれば、消臭効果があるといいます‥‥えい!』
 しかし、効果は着火する瞬間だけである。なので、火のついたマッチを無造作に放り投げるリーゼロッテ。
「やっと消えた‥‥あっ、うぎゃーす!」
「って、こっち来んな‥‥うぎゃーす!」
 ようやく火を消し止めた名無しの演技者とZebraが、再び大炎上番長になってしまう。
『えー、盛り上がってきたところで、Tyrantess(fa3596)番長に登場してもらいましょう!』
 自分でやったコトは振り返らず、リーゼロッテが平然と進行する。というわけで、長ランのTyrantessが入ってくる。
「どうよ、今日の俺は?」
 Tyrantessの格好は、長ランしか着ていないように見える。思わず、避難していたビスタが戻ってきてしまうくらいに。
 だが、実際は裸学ランではなく、ちゃんと下に水着を着けている。マイクロビキニがちゃんとしたと言えるのかどうかはさておき。
「『泥水を飲む覚悟』はどこへ行ったコラぁ! というわけで、泥をかぶるぜ!」
 泥レスプールが運び込まれてくると、すぐさま飛び込むTyrantess。行きがけの駄賃にビスタを巻き込んで。
「さーて、サービスシーンと称してかわいがってやるか‥‥ん?」
「これってガチ? ガチでいいの?」
 泥まみれでTyrantessと組み合ったビスタが、Tyrantessの顔のすぐ前で目を爛々と輝かせていた。思わず身の危険を感じるTyrantessだったが、番長は引き下がらない。
「むむ‥‥俺より手慣れてそうなのを引きずり込んでしまったな。しかし、番長は常に全力疾走! ケガなど気にしない!」
 が、結果は大ケガである。映像が引きになるが、これは水着がめくれてしまっているからか、あるいは脱げてしまっているからか。泥でよく分からないからなんとか引きでなら撮っていられるものの、いつハプニングが起こるか分からない。
 そこへ、前かがみになった森里が控え室から戻ってくる。とはいえ、目の前のTyrantessとビスタのせいではない。
「あの、敏感なトコが荒い布とすれて‥‥今期絶望ですが、来年には使いこなせるようにがんばります!」
 こうして、森里の現状が一番番長の現実に近いということで、賞金10万円が贈られることとなった。
「森里さんの‥‥優勝です‥‥胴上げ‥‥なのです‥‥」
 祝福に湯ノ花が駆け寄ってくる。そして、森里の胴上げだ。
「わっしょい‥‥わっしょい‥‥血祭りわっしょい‥‥」
 なぜ血祭りなのか? それは、胴上げを落とすからである。そのまま頭から転落し、血溜まりに沈むというわけである。
 というわけで、赤いモザイク状の何かになる森里。だが、心配無用である。
『胴上げと来たら、つづいて祝勝会ですね? ビールかけですね?』
 湯ノ花がメロンパン汁で作ったメロンパン子どもビールを用意していたのに対し、やっぱり未成年のリーゼロッテはガチでアルコール類を用意していた。
『飲むんじゃなくて、かぶるだけだから問題ないですよ?』
 ただ、問題があったとしたらテキーラやらウォッカやら、アルコール度数の高いものを用意していたことだろうか。
「うぎゃーす!」
 ようやく鎮火しかかっていた名無しの演技者とZebraが走り込んでくると、酒まみれの森里につまずき、三度炎上である。
『はーい、ではまた次回にお会いしましょう。ごきげんよー』
 平然と笑顔で手を振り、シメにかかるリーゼロッテ。地獄絵図を背景に、番組は終わっていくのであった。