走れ、人間ども13アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/11〜07/13
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。なぜ毎回駆け込んでくるのかといえば、タイトルが『走れ、人間ども』だから、とりあえず走って登場してみているだけである。
「大荒れの配当もシンガポールのワンツーも牝馬の活躍も関係なく、気づけば夏になってしまいましたが‥‥」
「そんな打ち切りに怯えるあなたに朗報が! まだ3歳ダート王決定戦が残っているではないか、と」
別に打ち切りの心配とかは一切していない後輩に対し、勝手に決めつけた先輩が無意味に励ましにかかる。
「へー、じゃあナイター競人ですね! 蒸し暑くなってきたコトですし、いいんじゃないですか?」
「うむ。ライトに映える白い砂の上を必死に走る8人を観戦しつつ、海風を浴びながらビールを飲む。サイコーじゃないか!」
「トゥインクル、サイコーですね! そうだなー。今回はスピード感あふれるモノが見たいですねー」
どう見てもスタッフはレジャー気分だったが、ナイターでのダートコースを使用した競馬場疾走企画がスタートすることとなった。
使用コース・ハンデ
・競馬場のダート2,000m外回りコースを使用。制限時間2分の電撃戦です。
・コース形態等は、品川区にある某競馬場にすべて準じます。
・走り方が特殊な(遅そうな)場合のみ、ハンデとして距離が短縮される場合があります。
・なお、サラブレッドが走った場合のレコードが2分02秒1ですので、普通に素で走って2分を切ると怪しすぎますので、その辺の獣人TPOをわきまえて走ってください。
事前に用意される物
・大抵のものは用意されます。番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。実況しながら走ったり、走らずに実況や解説だけでの参加も可能です。
ルール
・制限時間があります。2,000mを2分以内に走り抜けてください。平均時速60km以上でないとダメな計算です。
・近くに競艇場もありますが、使用できません。コース内から発走してください。レース中も、コースアウトは失格となります。
・自分の力のみで走る必要はありません。どんな動力を使っても構いません。
・法に触れない限りは、何を使っても構いません。たとえば自動車の場合、私有地内なので免許はなくても問題ありません。
・獣化は、視聴者に気づかれない限りにおいて、いくらでも使って構いません。ただし、獣化して走るだけだと、タイムでおかしいと気づかれてしまいます。
・優勝賞金2万円。敢闘賞10万円。勝利よりも目立つ、ウケる方重視となっています。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・走れ、人間ども08 10月02日 07:00〜
・走れ、人間ども09 12月09日 07:00〜
・走れ、人間ども10 12月24日 15:00〜
・走れ、人間ども11 02月18日 08:00〜
・走れ、人間ども11 04月14日 07:00〜
●リプレイ本文
夜にして雨の競馬場。ダートコースに水溜りの浮かぶ劣悪なコンディションの中、それでも人は走りつづける。そこにお墓がなくても、風になれるために。
そんな死ぬ前提のようなキケンな競技に挑むは、今回も8名の精鋭である。では、出走各人を順に紹介していこう。例によって、ハンデが軽いほど内枠になっている。
1枠1番はジョニー・マッスルマン(fa3014)、スタート地点はみんなと同じ位置だが、ぐるりと1周せずに直線のみの400mである。
なぜ一人だけここまで軽いかといえば、乗るのが足こぎ四輪車だからである。ダート向けにキャタピラ仕様になっているが、だからなんだと言うのだってもんである。
「熱砂にはキャタピラがよく映えるからNA、HAHAHA!」
ジョニー本人は高笑いを上げているが、熱砂どころか雨季の砂漠状態である。
つづく2枠2番は、マウンテンバイクのZebra(fa3503)である。1,200mを走るのだが、唯一隔離されたというか、2角を回った向こう正面直線に一人たたずんでいる。
「微笑みに肉体美、それがコスチューム!」
だが、Tシャツにハーフパンツ、キャップ、シューズ、タオルと新聞配達スタイルで、憎らしいまでにさわやかな笑みである。
ちゃんとカゴには一杯の新聞紙が挿されているが、雨で湿ってしまっている。普通はビニールに包んだりするのだが、そんなコトはしない。というか、できない理由があった。
なので、早くスタートしてくれないかと気が気でないのだが、そこは笑顔で隠してしまっている。
そして本来のスタート地点に戻って、3枠3番は高柳徹平(fa5394)である。ここからは2,000mを走るわけだが、高柳は騎士の甲冑、つまりはとても重いフルプレートアーマーなわけだが、それでも2,000mである。
このハンデを可能にするのが、具足の底に装着されたスケボーである。もちろんただのスケボーではなく、750ccのエンジンを積んだモンスターだ。すでに唸りを上げ、スタートを今か今かと待ち構えている。
さらに右手に突撃槍、左手に大型の円形盾を装備とムダに重くなっていたが、それすらも気にさせない鋼鉄の咆哮であった。
そして、自前のバイクを持ち込むという男前が二人。うち一人は男じゃなくて女だったし、もう一人は男というよりは万年発情期のオスだったが、とにかくバイクがスクラップになり、産廃扱いされても気にしない男前が二人。
その4枠4番はイルゼ・クヴァンツ(fa2910)、北海技研のNR750である。中古とはいえ耐久レース用のタフな車体はここでも活きるかと思いきや、思いっ切りオンロード仕様のままである。
「制限時間を突破するため、風になるべくバイクを用意してみました。750ccの壁を越えて、1,000ccの、千の風になっちゃうのです‥‥ふふふ」
物騒なコトを言っているが、そこはプロの曲芸師の腕でカバーである。というか、むしろそこが腕の見せどころくらいの気概である。まあ、そういう気概を持つと大抵ロクなコトにならないのはさておき。
その隣の5枠5番は佐渡川ススム(fa3134)、山崎重工のKDDX250である。イルゼに比べれば排気量は圧倒的に劣るが、なんといってもオフロード仕様、しかもモトクロス競技用のバイクである。
「あ、はじめまして。佐渡川ススムと申します。安全運転を心がけ、他の競技者と接触したり進路妨害などせぬよう細心の注意を払い、完走を目指します。応援、よろしくお願いします」
やけに丁寧にあいさつをする佐渡川。とはいえ、かぶり芸人特有の猫かぶりであるのは言うまでもない。
そしてここからは、大分ムチャな乗り物になってくる。6枠6番の長瀬匠(fa5416)はホバークラフトである。ムチャとはいえ、フェリーに使われているような大型ホバーとかではないが。さすがに、輸送費だけでもそんな金はない。
「砂漠戦闘用ロボットは、ホバー走行機能を持っている機種が多いですからね。ここはホバーですよ」
その理屈はいいとして、なぜかバズーカを担いでいる長瀬。戦闘ロボになりきるための小道具であろうか?
そして7枠7番は湯ノ花ゆくる(fa0640)、堂々のF1マシンである。
「‥‥マシンのように‥‥冷静に‥‥無駄なく‥‥計算されつくされた‥‥コース取りで‥‥走ります‥‥」
なお、当番組ではF1マシンなんぞレンタル代で精一杯なので、ぶっ壊したらすべて湯ノ花の自腹である。もちろん、湯ノ花はライセンスなんぞ持ってはいない。
「え‥‥ちょ‥‥さっき‥‥火薬の手配‥‥しちゃったんです‥‥けど‥‥」
湯ノ花が微妙に慌てるが、そんなコトは一切無視してスタートである。
ドーン! 号砲一発、一斉にスタートを切る。
え? 大外8枠8番はどうしたかって? 今の音、スターターのピストルというわけではない。鳳雛(fa5055)が発射された音である。鳳雛は、千の風になるよりもむしろ一筋の流れ星になると、人間大砲を選んだのだ。
よく見れば、1、2コーナー中間点と3、4コーナー中間点にネットが張られている。ちゃんと、1、2コーナー中間点のネットに着地し、今度は3、4コーナー中間点のネット目がけて飛ぶべく、そこに設置された大砲に入っていく。
それに対し、普通にコース上を走る他の面々も、きっちりとしたスタートを切っていた。
まずトップに飛び出したのは、長瀬である。水上も走れるホバーにとっては、この馬場コンディションもまったく苦にならない。
つづいてイルゼがややハンドルを持っていかれそうになりつつも、なんとか立て直して進み、その真後ろに佐渡川がつけている。
とはいえ、佐渡川は空気抵抗を考えてのスリップストリームとかいう高等技術を使っているわけではない。ただ、本能に従っているのみである。
「ライダースーツがぴったりしていて胸が揺れないのは残念だけど‥‥ピッチリしたお尻もまたよし!」
ただ単に、イルゼを視姦するのに都合のいいベストポジションをとっただけの話であった。
対して、ジョニーはロケットスタートを切れるわけがなかったが、1周少ない400mなので、これはこれで上々のスタートである。
それよりも問題なのは、出遅れた二人である。湯ノ花は路面状況を考えてかどうかは分からないが、タイヤをメロンパンにしていたので、一瞬でジョリジョリジョリと削れてしまっていたのだ。
「メロンパンが‥‥ピットイン‥‥なのです‥‥」
仕方なくタイヤ交換をしてもらい、メロンパンは補助輪という形でなんとか残すことにする。
そして、高柳はキュキュキュとスケボーのたいやが空回りしていたかと思えば、急にギューンと発進してしまった。おかげで、バランスを崩してスケボーに引きずられる形となる。
「うがっ‥‥ぐほっ‥‥‥‥」
最初は呻き声が聞こえてきたものの、やがて静かになる高柳。それでも、スケボーは走りつづけ、一躍先頭に踊り出てしまう。
しかし走りつづけてはいるものの、頑丈な鎧はまったくの無傷だけど、中の人は死んでいたとかいうホラーオチにならないか、非常に心配である。とりあえず、赤黒い液体が流れ出してきたりはしていないので、一応は安心のようであるが。
一方、一人離れているコトを言いことに、Zebraは瓦版売りのように新聞の内容を大声でしゃべり出していた。
「号外、スクープだよ! え? 『メロンパン芸人のはずなのに他のパンを!?』だって!? こちらは、ふむふむ『奥さんがいるはずなのにっ、こんなコトがっ!』と来た! なになに『その肉体にオイルを塗る男!』って、今回マッチョが多くて誰だか分からん!」
競人新聞とかではなく、Zebraが勝手に作ったゴシップ紙である。しかも、登場人物はすべて今回の出場者のようだ。
ドーン! その隙に鳳雛が発射され、Zebraを飛び越していく。また今回も無事に、着地できたようだ。
ドーン! すぐに鳳雛がまた飛んだわけではない。こちらは埒との衝突音である。高柳が、ついに直線を使い切ってしまっていたのだ。
高柳はピクリとも動かないが、鎧は相変わらずの無傷である。赤黒い液体も流れ出してきたりはしていないので、鎧を脱がせたりしない限りは問題ない。
そんな間にも、鳳雛が1角に入っていき、イルゼと佐渡川もそのすぐ後ろを追っていく。ついに牙を剥いた湯ノ花のF1マシンも、一気に差を縮めて後を追う。
その遥か後方で、必死にこぎまくるジョニー。
「えっほ‥‥えっほ‥‥もうゴールは間近だZE!」
確かにゴールは誰よりも間近だったがハンデのおかげなだけであって、スタート地点から一番進んでいないのもジョニーである。
「ええっ!? 『メロンパン芸人のはずなのに他のパンを!?』だって‥‥ぐぼはっ!」
一方、ハンデ込みで2番手のZebraは、相変わらず勝手なコトを言っていた。その天罰が当たったのか、いきなり吹き飛ばされてしまう。
いや、持ち前のスピードで先頭に踊り出ていた湯ノ花のF1マシンに弾き飛ばされたのだ。とはいえ、本当に飛ばしている段階だったらZebraは死んでいるので、ちょうど止まろうとした場所に、たまたまZebraがいただけのようだった。
「このままでは‥‥勝てません‥‥勝つためには‥‥一発逆転‥‥可能な‥‥必殺技が‥‥必要です‥‥いま‥‥その封印を‥‥解きます‥‥」
なにやら、その隙にクレーンから下ろされたフックに身体を固定する湯ノ花。本当はF1マシンごと固定したかったのだが、万が一の場合に払う金がないので、ここは自分の身一つである。
そうしている間に、長瀬にイルゼ、佐渡川が一気に追い越していく。そして、長瀬がついに手にしていたバズーカを使おうとしていた。
「恨みはありませんが‥‥これも勝負ですから、えい!」
「なんの!」
イルゼの近くに着弾するが、見事なハンドル捌きで避ける。イルゼの真後ろにピタリの佐渡川も、あまりにピッタリを維持しすぎているせいで、一緒になって避けることができた。
「いいぞ、もっとやれ! もっと撃ち込んでください!」
佐渡川が怒鳴る。避ける際にイルゼの胸が微妙に揺れたのをいいことに、もっとやって欲しいというわけだ。
だが、長瀬にしてみればドMの変態がいるようにしか見えなくて、背筋が寒くなってくる。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。つづいて発射しようとする。
チュドーン! 大爆発が起きた。
「え? え? 私じゃない。私じゃないですよ」
あまりの爆発に、長瀬が必死に否定をする。とはいえ、爆発はかなり離れた場所で起きていた。
「必殺技‥‥発動‥‥なのです‥‥」
見れば、湯ノ花がクレーンに吊られて飛んでいた。爆風で飛ばされているという設定なのだ。F1マシンを傷つけるわけにはいかないので、不自然に遠く離れた場所での爆発とはなっていたが。
それよりも、コースを無視したショートカットはありなのか? という話であるが、鳳雛の人間大砲が許されてしまっている以上、ありなのである。鳳雛を見て分かるとおり、今回は本人さえゴールインすればいいので、これはこれで特に問題はない。
というか、湯ノ花のこの必殺技の爆発のせいで、その鳳雛があおりを受けていた。
「え? 大砲ないじゃん。なんだよ、これ?」
火薬の予算を使い切ってしまっていたので、用意されていたのは投石器であった。
「‥‥えーい、背に腹は代えられないゼ!」
だが、投石器の精度は大砲よりも低かった。ゴールに張られたネットではなく、空中を移動している湯ノ花目がけて飛んでいってしまう。
「うわーっ!?」
「‥‥はい‥‥?」
ドーン! 無事湯ノ花も鳳雛もお星さまになったところで、先頭は依然ジョニーである。
「くっ‥‥はっ‥‥やっとゴールだ‥‥ん?」
地道にひたすらこぎつづけ、ようやくゴールに到達しようとしていたジョニーであるが、その横を一陣の風が通り過ぎていく。
バズーカをあきらめて走りに専念した長瀬がそのまま1位入線でなだれ込み、回避の分の減速が響いたかわずかに遅れてイルゼが2位入線。そして、あくまでもイルゼのストーキングに徹底した佐渡川が3位入線だ。
4位入線は、悲しみジョニーである。ハンデを生かして限界まで逃げ粘っておきながらきっちり差し切られ、ゴール前の熱戦を盛り上げるだけの役に終わってしまった。
そして、残る4人はすでにこの世の人ではなく‥‥というわけではないが、ゴールを切ることはできなかった。
こうして、わずか2分の電撃戦は幕を閉じた。なお、着順は到達順位のとおり確定した。
1着 6 長瀬匠
2着 4 イルゼ・クヴァンツ
3着 5 佐渡川ススム
4着 1 ジョニー・マッスルマン
中止 2 Zebra(交通事故)
中止 8 鳳雛(お星さま)
中止 7 湯ノ花ゆくる(撃墜)
失格 3 高柳徹平(コースアウト)
優勝した長瀬には、優勝賞金2万円が贈られた。
そして、宣言どおりの流れ星とはいかなかったものの、お星さまにはなれてしまった高柳に、敢闘賞10万円が贈られたという。