芸人プロレスごっこ王21アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/13〜07/15
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「13日の金曜日じゃのう‥‥」
「はい、そうですけど‥‥何か問題でも‥‥?」
スタッフがおずおずと尋ねてみると、えらい人の目がくわっと見開かれる。
「今宵のえらい人は血を求めておられる! ホラーの季節の夏を迎え、ここに『ドキッ! 血まみれの納涼プロレスごっこ』を執り行うことを宣言する!」
「あの‥‥プロレスごっこは安全第一、流血禁止でしたよね‥‥?」
スタッフが再びおずおずと尋ねてみると、えらい人の目がさらにくわっと見開かれる。
「ああ、もちろん流血はなしだが、それが何か?」
「いえ何も‥‥サー、イエッサー!」
流血厳禁の血まみれの意味がよく分からなかったが、気圧されてイエッサーと答えてしまうスタッフ。
こうして、血は出してはいけないけど血まみれという矛盾にも似た状況の中、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第21戦目は平然とスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・どこかの湖畔のキャンプ場で収録を行います。
・『血まみれ』をテーマに試合をしなくてはなりません。『血まみれ』から連想できないこともないものであればどんなに遠くても構いませんが、本当に『血まみれ』になってはいけません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定は第25回あたりのつもりでいますが、果たしてどうなるッ!?
・そろそろポイントのインフレをはじめようと思っていますが、どうせ最後に一発逆転が待ち構えています。そういうバラエティのノリに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。特に今回は流血、出血、喀血等が厳禁ですので、最悪モザイクでとかいう甘い気持ちは捨てましょう。
ランキング(第17回分まで)
1位 百鬼レイ(fa4361) 25pt
2位 白海龍(fa4120) 21pt
3位 伊藤達朗(fa5367) 20pt
4位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
5位 パトリシア(fa3800) 14pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第16回 05月20日 07:00〜 東京都新宿区
・第17回 05月23日 07:00〜 東京都港区
・第18回 07月04日 07:00〜 美しい国
・第19回 07月07日 07:00〜 天の川
・第20回 07月10日 07:00〜 茨城県水戸市
●リプレイ本文
「視聴者のみなさん、おはようございます。解説芸人のヨシュア・ルーン(fa3577)です。今回はショッキング映像続出なので早めに警告をしようと思い、サトルくんを出し抜いてしゃべりはじめてみました」
ヨシュアの解説、というか実況ではじまる今回のプロレスごっこ。
「大地に寝っ転がって七転八倒する地まみれや、トイレに入って出てこられなくなる痔まみれなどが僕の思考の予想範疇に入ってきますが、プロレスごっこの芸人たちがそんな甘噛みするような思考パターンを持っているはずがない! 最悪の事態を想定しても、なおかつその斜め上を行くに決まってます!」
ヨシュアが力説していると、ようやくドドドとサトル・エンフィールド(fa2824)がやって来る。
『最初の贄はヨシュアかぁ。湖畔のキャンプ場でなくとも、常に惨劇なのがプロレスごっこ! 流血禁止の血まみれなんて、惨劇的に当社比50%減です。そこで、肌の露出50%増の夏にやさしいエコルックで決めてみました!』
「それがなんだって‥‥うわぁっ!」
サトルがヨシュアを組み伏せると、服をひん剥いてしまう。強制生着替えである。
「ちょ、サトルくん! 意味が分かんないよ!」
サトル同様に涼しげな格好をさせられるヨシュア。ただ、唯一大きな違いがあって、サトルだと布の部分が、ヨシュアだと思いっ切り透明になっているが。
『僕がエコルックなら、ヨシュアはエロルックだね! さあ、誰への贈り物にして欲しい? あずささんか、ハツ子さんか‥‥え? たつやんの胸板に埋もれたいだって? 貪欲にマニアックだなぁ‥‥』
「そんなコト言ってないよ! ああ、愚兄のせいでいきなり最悪の事態の斜め上に‥‥」
最悪の事態とはいえ、最後の砦だけはさすがに透けパンではない。無論、半透明でもない。伊藤達朗(fa5367)が鍛え上げられた肉体を披露しに出てきたりもしない。
たが、それで安心してはいけない。斜め上の事態は、これから起こるのだから。
それはさておき、羽曳野ハツ子(fa1032)が放送席に怒鳴り込みに来ていた。
『ヨシュアはいかがっすかー?』
「別に嫌いではないけど、大好物ってワケでもないわ!」
ヨシュアを売り込みにかかるサトルだったが、羽曳野はひょいとヨシュアを放り投げるだけだった。
「そんなコトよりも、発注しておいたチュパカブラが届いてないじゃないの!」
『そんなUMA、放送席に文句を言いに来られても‥‥』
サトルが羽曳野と押し問答をしている隙にヨシュアが逃げ出そうとするが、そこへひょこっとパトリシア(fa3800)が現れる。
「うわっ!」
ホッケーマスクにチェーンソーを持ったパトリシアに、ヨシュアが驚いて立ちすくんでしまう。一瞬のこととはいえ、それが命取りだった。
「ちま=小さくてかわいいもの。さあ、みんなのちまをさらけ出せ☆」
スコーンとヨシュアのズボンを下ろすパトリシア。無論、パンツと一緒に。
「‥‥ちま‥‥みれ‥‥」
ちまちましたものを見ろというコトのようだ。すなわち、ヨシュアのちまをさらけ出すということである。
「‥‥う‥‥うわぁーん!」
股間を隠しながら、ヨシュアが泣きながら去っていく。
『例によってヨシュアがヒドい目に遭ったところで‥‥プロレスごっこ、レディー! ゴー!!』
サトルが平然と実況を開始したところで、試合開始である。
「まさか、チュパカブラを取り寄せることもできないとわね。吸血生物とタイマンを張りつつ、まったく血を吸われることなく勝利するという方程式が台なしだわ‥‥」
流血厳禁の血まみれ=吸血の方程式を維持するため、やぶ蚊を求めて水辺へと向かう羽曳野。
「ボウフラはちゃんとモスキートになっているかしら‥‥ん?」
そこへ、大きな桃がどんぶらこと流れてくる。別に洗濯をしているわけではないが、ナタを手に割りたい衝動にかられてくる。
だが、近寄ってみるとどうも様子がおかしい。桃の割れ目に漆黒の布がかぶせてある。
ドーン! 急にその桃の周辺に水柱が上がる。その中からDarkUnicorn(fa3622)が現れた
「血まみれ→流血→流れるケツ→流尻なのじゃ! ウサミミホラー界の悪夢の怪人、流尻ウサ耳女‥‥うさうさうさなのじゃ♪」
頭のウサミミはともかく、黒色サラシに黒のゴスロリ褌だけで尻丸出しという格好は、怪人というよりは変人、むしろ変態というか痴女っぽい気がしないでもないが、DarkUnicornが気にしていないならよしとしよう。
「流尻というコトで、普段は滑らないようなモノまで滑り台のように滑ってしまうのじゃな! さーて、最初の獲物は‥‥」
何で滑るかターゲットを探し求めるあまり、パトリシアがスルスルと近づいてきていることにDarkUnicornは気づいていなかった。
「さあ、みんなのちまをさらけ出せ☆」
スコーンとDarkUnicornのサラシを下ろすパトリシア。無論、貧相とはいえ速攻モザイクが入る。
「‥‥ちま‥‥みれ‥‥」
咄嗟に胸を腕で隠すDarkUnicornだったが、たちまちのうちに顔が赤くなる。無論、恥辱によるものもあるが、怒りによるものもある。すなわち、そう言うパトリシアも貧乳じゃないか! ということに対する怒りである。
「ちまちま言うな! おぬしじゃって、ちまじゃろうが!」
「私はちまなんて持ってません。持ってませんったら!」
低レベルな言い争いがはじまるが、たまらずDarkUnicornが証拠提示を求めて飛びかかる。が、パトリシアはDarkUnicornと違ってグラビア芸人ではないので、多少服はめくれても肝心のポロリはない。
「あ、蚊に刺された痕がすでに2ヶ所も‥‥ムム、負けてられないわ!」
さらに、羽曳野が余計なコトを言ってしまったものだから、火に油を注いでしまった。
「ムキー! ちょっとデカいからって、調子に乗るななのじゃ! これは‥‥」
「これは何?」
急に冷静に聞き返す羽曳野。DarkUnicornの勢いがピタリと止まる。
「えー‥‥蚊に刺されたわけじゃないのじゃ‥‥」
消え入りそうな声になってしまうDarkUnicornだが、なおも羽曳野は追い討ちをかける。
「蚊に刺されたんじゃなかったら、何なのかしらね?」
「そうだ、そうだー!」
ちまの矛先がDarkUnicornに向かったのをいいことに、羽曳野に乗っかるパトリシア。もはや、ちょっとした言葉責め状態である。
『みなさまに直接お見せできないのが残念ですが、より詳しく実況できるようもっと近くで‥‥おっと、ここぞとばかりに男性選手二名が入って来ました!』
サトルが砂かぶりに陣取る中、真っ先に走り込んできたのは伊藤だった。
「はぁはぁ‥‥まいど、伊藤達朗や。確か『忌み言葉』で血のことを『あせ』言うとったから、血まみれならぬ汗まみれになればいいんや!」
ホッケーマスクで顔を隠しているが、その下の息がやけに荒い。単に息苦しいのか、汗をかくための運動のせいか、あるいは何か他の理由か?
「蚊は汗かいた方に寄ってくるし、その隙に蚊に刺された場所をかいてあげまひょ‥‥」
フラフラとDarkUnicornの方に手を伸ばす伊藤。息が荒い理由は確実にその他の理由、つまり興奮しているからであったようだ。
「さあ‥‥ぐぼはっ!」
争っていたハズのパトリシアとDarkUnicornだったが、ここは一致団結にして伊藤に立ち向かう。蚊を横取りされるピンチだと思った羽曳野まで加わってしまっている始末だ。
『あ、ダメですよ! ホントの血まみれは‥‥』
サトルが止めに入るが、すでに遅かった。伊藤はすでにボコボコにされた後である。まあ、そう言うサトルもすでに鼻血まみれになっていたのだが。
「ハイどーも★ 伊藤さんは分かってませんねー。ここは蚊よりも強大な吸血生物の出番じゃないですか」
そこへ、颯爽と百鬼レイ(fa4361)が現れる。上下黒スーツに襟高黒マントをなびかせ、爪と唇を妖しく赤く光らせ、模造牙まで生やしている‥‥ということは、百鬼は吸血鬼であった。
「スプラッタ系の元祖といったら、ドラキュラさんでしょう! さーて、このドラキュラさんが乙女の喉に噛み‥‥」
「さあ来るがいいわ。この羽曳野、蚊ごときでは物足りなく思っていたところよ!」
百鬼が女性陣へと向かっていくと、羽曳野が仁王立ちして待ち構える。
「‥‥つく代わりに、血ではなく唇をいただこうかと思います!」
百鬼がさりげなく内容を変更するが、それでも羽曳野に一歩も引き下がる気配は見えない。
ブチュー! だが、百鬼が羽曳野の唇を奪うに至らなかった。パトリシアの腐女子センサーが今こそチャンスと発動したせいである。
とっさにサトルの首根っこをつかむと、百鬼の顔の前に突き出したのである。そういうわけで、今現在濃厚なディープキスをかましているのは百鬼とサトルの男同士なのであった。
しかも、その味はレモン味なんてことはなく、サトルの鼻血のせいで鉄の味である。
「‥‥ぷはっ。くっ、こうなったらこの泥水‥‥もとい、トマトジュースで口をすすぐしかありませ‥‥ぐぎゃーす!」
百鬼がドラキュラの必需品トマトジュースを口に含むが、次の瞬間にブフーッと吹き出す。
『‥‥チキン向けに、赤い液体をすべてタバスコにすり替えておいたのですが‥‥こんな形で役に立つとは思いませんでした!』
サトルがしてやったりの顔をしていたが、プラマイで考えたらかなりのマイナスである。
「‥‥やはり、私のライバルたりえるのは蚊しかいないのね。こうなったら‥‥蚊よ、あなたたちが全滅するのが先か、私が力尽きるのが先か、いざ勝負よ!」
その成り行きを見て、羽曳野が再び蚊に勝負を挑む。
一方、泣きながらではあるものの逃げ切ったヨシュアであるが、それで事態が好転するほどプロレスごっこはアマくない。
「うわっ!」
突然、血まみれのあずさ&お兄さん(fa2132)が目の前に現れ、思わず腰を抜かしてしまうヨシュア。
「あ、いらっしゃいませ」
あずさにイスに座らされると、目の前のテーブルに魚料理が運ばれてくる。いや、これから目の前で調理してみせようというのだ。
「血を流さずに血まみれになれとはいかに? なんだか『このはしわたるべからず』の世界だよね。となれば当然とんち勝負であり、とんちといえば彦一。かつて彦一は借金を払いきれなかったとき、魚のはらわたを仕入れてきて自分の腹の上にぶちまけ、包丁片手に死んだふりをして借金取りを欺いたことがあるとかないとか。その逸話にならい『人の血じゃなきゃ大丈夫』という結論に‥‥って聞いてる?」
「聞いてますけど‥‥あの、包丁、包丁!」
手元を見ずにヨシュアの方を見ながらしゃべるあずさの包丁使いは、大変危なっかしかった。
「え? ああ、包丁で指切ったら人の血が入っちゃうもんね‥‥というわけで、出来上がったものがこちらに用意してありまーす」
そう言って出てきたのは、やはりダイナミックな魚のぶつ切りであった。一応、はらわたはとってあったが、それを全部お兄さんの口に突っ込んで処理したものだから、お兄さんの口から内臓が出ているようでホラーである。
「さあ、召し上がれ!」
「は、はい‥‥」
あずさに満面の笑みで言われては、断れるヨシュアではない。とはいえ、何かハプニングが起きてこの窮地から救ってくれないかと、周囲を見渡す。
「‥‥ちま‥‥みれ‥‥」
一応、パトリシアが来ていたが、この中で一番小さな体格であるお兄さんばかり構っていて、まったく役に立たない。
「そういえば、明治初期の日本人は牛肉を食べつつ赤ワインを飲む西洋人を見て、『肉を喰らい血を飲む』と思ったとか。それを参考に、せっかくなので赤ワイン‥‥は未成年なのでムリなので‥‥」
料理には手をつけず、グレープジュースを飲みながらじっとヨシュアの様子を見ているあずさ。
やはりヨシュアに救いはないのか? いや、あった。DarkUnicornがやって来ると、いきなりあずさにボディスラムをかけたのである。
「怪人、流尻ウサ耳女なのじゃ! 平らで滑りやすい洗濯板の胸の上を滑るのじゃ!」
「え? ちょ‥‥」
お尻に蜂蜜を塗って、あずさの上を滑るDarkUnicorn。
「レベル1クリアじゃ! つづいてレベル2は、パトリシアのなだらかなお椀を‥‥」
あずさが怒るとかできる以前にポカーンとしている間に、早くも次のパトリシアに的を絞るDarkUnicorn。そこへ、たまらずえらい人が飛び出してくる。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
1位 百鬼レイ 7
2位 伊藤達朗 3
3位 羽曳野ハツ子 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
そして、伊藤と百鬼が横たわる水辺では、羽曳野とサトルが悶絶していた。
「ぬおおおおおっ! かゆいかゆいかゆーい!」
『ぐはっ‥‥それではみなさん、ごきげんよう!』
伊藤と百鬼の横でのた打ち回る画をバックに、放送は終わっていくのであった。