芸人プロレスごっこ王22アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/16〜07/18
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「海の日じゃのう‥‥」
「最近、日付ネタばっかですね‥‥ぐはっ!」
つい思ったコトをそのまま口にしてしまったスタッフだが、無論えらい人の鉄パイプのエジキとなるだけであった。
「海の日じゃのう!」
「はい、海の日です。国民の祝日でございます」
語気を強めるえらい人に、スタッフは普通のどうでもいい当たり障りのない回答しかできない。
「祝日か‥‥ふむ、休みたいのか?」
「‥‥‥‥」
「そうか、祝日で休むくらいなら、えらい人を祝いたい。そういうわけだな?」
スタッフの沈黙を、勝手に解釈するえらい人。とはいえ、スタッフに逆らう術はない。
「えーと‥‥最初から、休みにする気はなかったですよね?」
「もちろんだ!」
勇気を振り絞ったスタッフが尋ねてみるが、えらい人はあくまでも理不尽であった。
「さーて、海の日だから‥‥えらい人の海は大宇宙だが、おまえらの海は大まけにまけて‥‥東京湾ってトコか?」
「サー、イエッサー!」
変に文句を言って変な場所にされるよりも、近場の東京湾で済ませたいという後ろ向きな二択により、肯定の返事を元気よくすることにしたスタッフ。
こうして、休日返上の第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第22戦目がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・東京湾で収録を行います。
・『海』をテーマに試合をしなくてはなりません。『海』から連想できないこともないものであれば、どんなに遠くても構いません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定は、第25回あたりのつもりでいますが‥‥。
・そろそろポイントのインフレをはじめようと思っていますが、どうせ最後に一発逆転が待ち構えています。そういうバラエティのノリに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。溺死、遭難、流血等は、母なる海でも水に流せません。
ランキング(第17回分まで)
1位 百鬼レイ(fa4361) 25pt
2位 白海龍(fa4120) 21pt
3位 伊藤達朗(fa5367) 20pt
4位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
5位 パトリシア(fa3800) 14pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第17回 05月23日 07:00〜 東京都港区
・第18回 07月04日 07:00〜 美しい国
・第19回 07月07日 07:00〜 天の川
・第20回 07月10日 07:00〜 茨城県水戸市
・第21回 07月13日 07:00〜 湖畔のキャンプ場
●リプレイ本文
『東京湾もなんのその、浮きマットにアロハに水着、サングラスに麦わら帽子という夏満喫の実況、サトル・エンフィールド(fa2824)です‥‥って、何やってんだ?』
どんよりとした天気の中、実況だけは晴れ晴れととサトルが実況を開始するが、少し離れた場所でヨシュア・ルーン(fa3577)がボードの前に立ち、新聞を丸めてペシペシ叩いていた。
「いずれもコンディションは上々。とはいえ、今回は鉄板ですよ! 予想オッズはコレで間違いなしですよ!」
『ホントに、何やってんだ?』
サトルがボードをのぞき込むと、今回の出場選手たちの名前が並んでいた。
1.2倍 DarkUnicorn(fa3622)もといヒメ・ヒノトさん 16pt(5位)
1.6倍 あずさ&お兄さん(fa2132) 17pt(4位)
2.9倍 羽曳野ハツ子(fa1032)さん 10pt(7位)
4.3倍 伊藤達朗(fa5367) 29pt(2位)
5.2倍 Tyrantess(fa3596)さん 5pt(12位)
8.7倍 森里時雨(fa2002)さん 0pt(28位)
『? ‥‥えーと、現在のポイントと予想オッズの関連性が分からんのだが‥‥』
「そりゃ、僕の嫁になる確率だもの。男のオッズが高かったら困るでしょ‥‥ぐぼはっ!」
勝手なコトを言うヨシュアの腹に、サトルの拳が炸裂する。ヨシュアもバカンス気分を満喫しようと水着だったので腹はむき出しだったが、そんなコトを気にする間もなく拳が勝手にめり込んでいた。
『っつーか、僕の嫁だろ‥‥と言いたいところだけど、我が愚弟ながらTyrantessさんがたつやんより下なのが意味不明だ。まさか、ポイントが高ければ、誰にでも抱かれてしまう男だったのか‥‥?』
サトルが改めてオッズ表を見るが、女性のTyrantessよりも男性の伊藤が上にあったり、あずさとお兄さんがセットになっていたりと、末おそろしいオッズ表である。
『見えぬ! この海のサトルの眼をもってしても、ヨシュアの趣味が見えぬ! これは天が我を試しているのか?』
苦悩するサトル。だが、海の○○とか呼ばれる人の目は、大抵節穴である。ので、気にせず実況に戻るコトにした。
『東京湾といっても広いですからね。この高速ボートで移動しましょう‥‥お、あちらに見えるのはTyrantessさんよりヨシュアの嫁に近い男、伊藤さんではないですか』
「なんやよう分からへんけど‥‥まいど、伊藤達朗や! 今回は、海につきものの『波』に挑戦させてもらいます。波を征するといえば、サーフィンやな!」
波間に浮かぶ伊藤だが、一向に波に乗ろうとはしない。今日の波が若干高めとはいえ、それは湾内としてはの話。伝説のビッグウェーブを待つ伊藤としては、勝負にもならないというわけだ。
「このままでは、試合がはじまりもしませんわ。ちーとばかし遠出するべきでっしゃろか?」
『そういうことなら、おまかせさ!』
女子じゃないということで興味を失っていたサトルだが、急に目を輝かせる。ロープを取り出してきてそれに伊藤を引っかけると、そのまま沖へと向かっていく。
「うわっぷ‥‥速すぎやないでっしゃろか?」
しかし、聞く耳を持たないサトルはそのまま湾の外へと連れていってしまう。
「〜ッ! これや、このビッグウェーブを待っていたんや!」
喜び勇んでボードの上に立つものの、スコーンと荒波になぎ倒される伊藤。
『はい、湾外は今回のテーマ外ですから反則負けですね。では、次の選手の様子を見に行きましょうか』
そして、サトルは引き返していく。勝手に連れて来て、勝手に切り捨てたようなものだが、伊藤から非難の声は上がらない。ただ、悲鳴が上がるのみである。
「ちょ、時化すぎや! ヘ、ヘルプ‥‥ゴボゴボ‥‥」
しかし、管轄外というコトで見捨てるサトル。そこへ、湾内目がけて小型船がやって来る。
「やつらは海からやって来る!」
船首にはあずさが立っていて、ナゾの言葉を発していた。
『あずささんじゃないですか? 一体、何をしているんですか?』
「最近お兄さんの損耗率が高いので、予備を大量に密輸‥‥もとい、仕入れてきたところだよ! ほら」
あずさの指差した箱には、大量のお兄さんが詰め込まれていて気持ちが悪い。
「何人目か忘れたけど、今のお兄さんともお別れだね‥‥『私の代わりなんてたくさんいるのね‥‥』‥‥そうだよ、ほーら母なる海にお帰り!」
ポーンとお兄さんを海に放り投げるあずさ。伊藤同様、あっという間に見えなくなる。そのある種の残酷ショーに、サトルは実況の言葉も出ない。
『‥‥で、これからどちらへ?』
なんとか声を振り絞ったころには、もう目的の地点に到着していた。見れば、すぐ近くに野球場が見える。
「今回の戦いは、サンフランシスコばりにスプラッシュヒットのボールを確保できるかどうか!」
あずさがデッキチェアを出すとそこに寝そべって、早くも長期戦に突入してしまっている。
『そうですか‥‥がんばってください‥‥』
サトルは知っていた。14、15日と雨で試合が中止となっていることを。ギリギリの16日はデーゲームがあるが、放送は朝なのでやはり間に合わないということを。
位置的にはファールフライが幕張メッセまで飛んでしまう可能性よりは高いものの、決してボールが飛んでくることはないのだ。
だが、あずさを不幸のどん底に叩き落すことのできないサトルは、言い出すことができない。結局、そのまま次の選手のところへと向かっていってしまう。
バシャ! 一方そのころ、バケツで水をかけられて、ヨシュアが意識を取り戻す。とはいえ、それはヨシュアを起こそうとしてかけられたものではない。単にたまたまかかってしまっただけの話である。
「‥‥? あの‥‥何をやってるんですか?」
「見て分からないの? 海と戦っているんじゃないの!」
ヨシュアが辺りをキョロキョロと見回すと、そこに必死に一人バケツリレーに励む羽曳野を発見する。
「一子相伝の羽曳野流は、いかなる場合でもテーマそのものに挑む運命! だから海と戦っているわ。そして勝つわ!」
ヨシュアをしてまで、かわいそうな人を見る目にさせてしまう羽曳野。だが、本人はそれどころではない。必死に海の水をかき出しては、ブツブツ言っている。
「大体、地表の7割が海というのは、いくらなんでも欲張り過ぎではないかしら? 多く見積もっても、陸5に対して海5がいいところだと思うの」
とはいえ、東京湾は埋め立て地が多くて陸もがんばっている気はするが、そこは目をつむるのが羽曳野流。
また、海水の行き先が陸なので、逆に陸が海に侵食されているようにも見えるが、そこにも目をつむるのが羽曳野流。
「素人が見れば、こちらの圧倒的不利を笑うかもしれない。でも、絶大な海水保有量を持つ海がそれを過信するようなことがあれば、まだ勝負は分からないと思うの。ねぇ?」
ねぇと言われても、ヨシュアには返答のしようもない。ただ、呆然とその様子を見つめるだけだ。
が、そこへ素人ではない森里が現れてしまう。何の素人ではないのかは不明であるが。
「海は『毎日、毎回、毎度がサンズイ』という意味。つまり、毎朝がヌレヌレ‥‥むしろカピカピ! いや、なんでもありません‥‥」
だが、羽曳野は森里を相手にしているどころではないし、ヨシュアはポカーンの2連発なだけである。
「ああ、そんな傷心な俺を包み癒してくれる‥‥それは海! エーゲ海に魅せられて知る真理‥‥女は海! そして、逆もまた然り! だから、東京湾に女性と母性を求めるべきであると思います‥‥オッパーイ!」
森里がこの場にいる女性陣、すなわち羽曳野に突撃するかと思われた矢先、スルリとDarkUnicornが現れていた。両の胸におわんを詰めて、不自然に水増しした姿で。
「東京湾→とうきょおわん→特攻お椀というわけじゃな! さあ、この胸に飛び込むがよいのじゃ!」
「オッパーイ!」
天然モノの羽曳野に飛び込むかと思いきや、そのままDarkUnicornに突っ込んでいく森里。別に森里はオッパイ星人というわけではないし‥‥というか、どうせなら全員とフィッティングしてやると、貪欲なだけである。
「‥‥あれ?」
だが、森里の腕は空を切る。DarkUnicornが巧みに体を入れ替えて、森里をちゃぶ台の前に座らせてしまったのだ。
「朝飯抜きは夏バテの原因じゃ! ちゃんと食べるのじゃぞ」
そして、なにやらご飯の盛られたおわんが出される。これが胸のおわんを取り出して持ったものだったら、森里もしゃぶりつくところなのだが、残念ながら胸のおわんは装着したままである。
「だがしかし! 東京湾を誤変換すると陶器おわん!」
よく分からない理屈で、森里が納得してしまう。普通にご飯を食べはじめる。
ブフーッ! が、ご飯を吹き出す森里。いや、ご飯などではなかった。白い物体は塩だったのである。
「だがしかし! 塩を吹き出すということは、潮を‥‥」
「なんと、おわんモアプリーズとな? そうじゃな、塩分は多めに補給せねばの」
森里の言葉の途中で、構わずDarkUnicornが次の一杯を差し出す。
一方、船上でのバカンスにも飽きてきたあずさである。
「でも大丈夫! まず来ないことは最初から分かってるコト。あとは、この捏造用のボールをどのタイミングで出すか‥‥あっ!」
あずさが懐から取り出したボールを、突然飛び跳ねてきたイルカにさらわれてしまう。さらにそこへ、急にさわやかに水着姿のTyrantessが姿を現す。
「スピード勝負は負けちまったが‥‥そのボールは、水球で勝負ってコトだな! よし、とことん戦ってやるゼ!」
そして、そのまま海に戻っていくイルカとTyrantess。突然のコトに、あずさはただ見送ることしかできなかった。
「‥‥えーと、どうしよう‥‥」
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
その船上に、今度はえらい人がバタフライでやって来る。
1位 Tyrantess 7
2位 伊藤達朗 3
3位 あずさ&お兄さん 1
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ!」
そして、再びバタフライで去っていくえらい人。途中イルカとTyrantessが巻き添えを食らっていたが、動物保護団体がうるさそうなので映していない。
しばらくして、再びTyrantessがあずさの船上に上がってくる。見れば、イルカと握手っぽいことをしているではないか。
「ふっ、やるじゃねーか!」
勝負を経て、そして危機を一緒に乗り越え、種族を超えた友情が芽生えてしまったらしい。
と、ここにきて、ようやくあずさの視線に気づくTyrantess。
「ん、なんだよ? ちょっとイルカと戯れたい気分だっただけだぞ。いいだろ、無邪気な表情の俺とかそうそう撮れるもんじゃねーぞ!?」
「そうじゃなくて! ボールを返してよ!」
「あー、あれね?」
そう言うと、大量のお兄さんが詰め込まれた箱に進むTyrantess。その中の一つを取り出すと、おもむろに腹を掻っ捌く。と、中からボールが出てくる。
「なんだ、こんなところにあったのか‥‥って、どんなマジック!? スゴーい!」
「イルカと心が通じ合うと、このくらいできるものなのさ‥‥」
Tyrantessが勝手なコトを言っている。お兄さんの腹が元通りになるマジックはなかったが、なーに代わりはいくらでもいる。
一方、陸では森里が倒れていた。当然の結果である。というか、塩を過剰に摂取して危険な状態である。
「食事が終わったところで、いよいよ対戦。東京湾をおわんに乗って横断じゃ!」
おわん型の泥船に乗ったDarkUnicornが、森里を置いて逃げていく。が、すぐに沈むので、沖にいたサトルのボートが救出する。
「まだよ。私はまだ負けを認めちゃいない!!」
そして、羽曳野は延々と海と戦っていた。いい加減負けを認めて欲しいのに、それはもう延々と‥‥。