芸人プロレスごっこ王23アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/19〜07/21

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
 基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
 もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「7月19日は、特にこれといった日ではないのう‥‥」
「ああ、早くも日付ネタに行き詰ったんですね‥‥ぐはっ!」
 どうなるか分かっているにも関わらず、ついポロっと言ってしまったスタッフだが、期待どおりにえらい人の鉄パイプのエジキとなる。
「そうか、そんなに死にたいか‥‥となると、死んだ先は地獄だよな? えらい人は天国だけど」
「お待ちください。せめて、閻魔大王の裁きを受けさせてくださいよ!」
「ん? 閻魔大王に舌を抜かれたいのか? 変わった性癖だな‥‥ま、個人の自由だが。ともかく、裁きをするっていったら裁判所か? じゃ、今回は最高裁判所でやるか!」
「借りれませんって! 大体、やるならえらい人の弾劾裁判を先にやるべきです!」
 ブチギレたスタッフが思い切って言うが、今度は鉄パイプの制裁はなかった。ただ、あっさりとした答えが返ってきたのみである。
「そんな民主主義的制度はないよ? 専制君主制だから」
「やっぱそうですよね‥‥サー、イエッサー!」
 スタッフの悲痛な叫びがこだまする中、第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第23戦目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・法廷セットで収録を行います。法廷セット内にリングを置くかどうかは自由です。
・法廷セットを活用して試合をしなくてはなりません。でも、活用しなくても構いません。そういうものです。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる2代目プロレスごっこ王の決定は、本当に第25回あたりなんですかねぇ? もう第23回ですが‥‥。
・そろそろポイントのインフレをはじめようと思っていますが、どうせ最後に一発逆転が待ち構えています。そういうバラエティのノリに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。つまり、死んではいけないということです。

ランキング(第17回分まで)
 1位 百鬼レイ(fa4361) 25pt
 2位 伊藤達朗(fa5367) 23pt
 3位 白海龍(fa4120) 21pt
 4位 あずさ&お兄さん(fa2132) 17pt
 5位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第18回 07月04日 07:00〜 美しい国
・第19回 07月07日 07:00〜 天の川
・第20回 07月10日 07:00〜 茨城県水戸市
・第21回 07月13日 07:30〜 湖畔のキャンプ場
・第22回 07月16日 07:00〜 東京湾

●今回の参加者

 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4287 帯刀橘(8歳・♂・蝙蝠)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 ついに迎えたプロレスごっこ裁判当日。カメラが入らないのですべてイラストで‥‥とかいう面倒なコトはせず、普通にセットを組んでその中での様子を流すのみである。
 まずは裁判官であるが、羽曳野ハツ子(fa1032)が座っている。その隣にはなぜか門松が置いてあるが、それはDarkUnicorn(fa3622)が着ぐるみ『どこでもかどまつ 』を着ているものであった。
 その効力が発揮されているのかどうかは分からないが、羽曳野はマジメな顔をして座っているのみである。
 そして、裁判長はトロイカ体制である。トロイカ体制というとロクなことにならないイメージがあるが、とにかくあずさ&お兄さん(fa2132)の二人に、犬神一子(fa4044)の三人である。
 そんなあずさは10tハンマーを持っているが、それは木槌の代わりだろうからいいとしよう。お兄さんは奉行の格好をしているが、時代背景とか気にしないコトにすれば、それもまたよかろう。
 だが、犬神は上半身裸でマッチョな身体を惜しみなく披露している。
「俺・イズ・ジャスティス!!」
 ムダにバンプアップされた胸筋をピクピク主張させているが、黙って全員でスルーである。
 そんな裁判官たちに混じって、よく分からないのが帯刀橘(fa4287)だ。死神のような鎌を持って、油断なく周囲を見渡している。
「どこでやろうとも、プロレスごっこにレフェリーは欠かせません。検察官兼裁判官兼陪審員兼死刑執行人、それがレフェリーなのです!」
 偏ったイメージによる死刑執行人の部分しか取り上げていないような気もするが、犬神をスルーできる心構えがあるのなら、帯刀のデスサイズくらいスルーできなくては意味がないのである。
 そして、傍聴席はなかなかの盛況であった。とはいえ、その中で人なのは、というか動くのは伊藤達朗(fa5367)ただ一人であった。
「さて、今回は法廷が舞台や。法廷といえば、傍聴人がつきものや。傍聴人→膨張人、つまり膨らんどる人や!」
 大多数の男子が股間のテントが膨張とか安易な方向に流れてしまいそうなお題でありながら、伊藤はその道へとは進まなかった。
「膨らました風船人形を相手に、傍聴席の戦いを繰り広げさせてもらいいますわ」
 つまり、まずはひたすら風船人形を膨らませるのである。すでに顔が紅潮して死にかけているが、まだ空席はいくつかある。
 そんな中、ついに被告のサトル・エンフィールド(fa2824)が入ってくる。いつもは実況を務めるサトルであるが、今は特にしゃべらずに、かなりブスっとした表情ではあるが黙って席に座る。
 そして、原告のヨシュア・ルーン(fa3577)がノートパソコンを携えて入ってくる。一瞬、サトルと視線が交錯し、法廷内に緊張が走る。
「ひどいよ、サトルくん! 人のパソコンの熱暴走が激しいからって、勝手にマザーボードを換装するなんて。冷却効率をよくするという名目の下、いじくり回した挙句に収拾がつかなくなって放棄するなんて‥‥ああ、どうかこの兄に天誅を下してください!」
 そう言ってヨシュアが提示したB5ノートパソコンは、無残な姿をさらしていた。平然とデスクトップ用のマザーボードを入れたものだから、ケースが閉まらなくなった上、せっかくできた隙間だからと12cmファンが挟んである。
 こうして最初に動いたのはヨシュアであった。だが、サトルも黙ってはいない。
「たかだか1時間も稼動しないコンピュータを見るに見かねて、クーラーを増設してやっただけじゃないか。動かなくなったけど、結果オーライだろう? それを天誅を下せだ? ならば人誅だ! 実況芸人として、僕はヨシュアを裁く!」
 一歩も引かないサトル。いや、むしろ飛びかかろうとするサトルだったが、その動きがピタリと止まった。
「レフェリーとして、その行動は許せませんね‥‥」
 帯刀が鋭く動くと、サトルの首筋に鎌の刃を当てていたのだ。
「くっ‥‥裁判長! こんなコトが許されていいのですか?」
 どの裁判長に呼びかけたのか分からなかったが、それに応えたのは犬神だった。ただ、鼻毛を抜いて吹き飛ばすという態度をもってだが。
「つまらない異議はすべて却下だ。熱い魂が込められたもの以外、認めない。だから、熱い血潮が飛び散ってたら考えたかもなー?」
「‥‥えーっと、あずさ裁判長!」
 仕方なく、名指しであずさに呼びかけるサトル。
「ちょ、話かけないで! バランスがとれなくなっちゃう!」
 だが、あずさは立てた10tハンマーのバランスをとるのに忙しかった。静粛に! とか叩く前に、お前が静粛にしろ状態である。
「砂浜で靴下に砂を詰めるように、10tハンマーにも砂を詰めたんだけど、これがまた重くて‥‥」
「そんなので完全犯罪はできません! ‥‥ダメだ、トロイカとか抜きに裁判長どもはダメだ。実況している分には頼もしいが、敵に回すとこれほどウザいとは‥‥こうなったら、羽曳野裁判官!」
 サトルに応えて、羽曳野がすくっと立ち上がる。ようやくサトルにとって期待がもてそうな裁判官である。
「ふふ‥‥私を指名するとはやるわね。しかーし! 羽曳野流の対戦相手は、法そのものなのよ! お題そのものと戦わなければならないという悲しき宿命に導かれているんで、サトル君の相手をしている場合じゃないの!」
 やっぱ裁判官全員ダメだと肩を落とすサトルを気にせず、羽曳野の言葉はつづいていく。
「現代の法のすべてを、ハンムラビ法典196条ならびに197条へと変更すべく戦っているのよ! 『目には目を、歯には歯を』で有名なそれを、現代唯一の法とするのが自分の戦い。この本に記された‥‥っと」
 分厚い本を掲げる羽曳野だったが、重かったのか手を滑らせてポロっと落としてしまう。
 それを拾おうと、羽曳野がかがんだときだった。なんと、スカートの後ろ半分がなかったのである。アリス・ディールの女性用下着『ベビーキャット』から、お尻の割れ目が半分見えていた。高級感漂う黒を基調とした大人の魅力を際立たせる一品とか関係なく、半ケツばかり気になってしまう。
「ムムム‥‥先にやられてしまったぞえ。門松に入って気配を消している場合ではないのじゃ!」
 そこへ、DarkUnicornも半ケツで飛び出してくる。こちらはLUNAの女性用下着『フラックス』である。黒のほっそりとしたデザインが体のラインを際立たせるとかはやっぱり関係なく、必然的に目は半分見せられたお尻の割れ目へと吸い寄せられてしまう。
 ブフー! サトルにヨシュア、それに帯刀といった少年たちが鼻血を吹く中、大の大人である犬神の反応は違った。
「異議あり!!」
 上半身の筋肉を誇示しながら立ち上がる犬神。全員の視線が犬神に向く。
「半ケツなど生ぬるい。フンドシ締めてフルケツでいこう! やらんヤツはフンドシで吊るすぞ!」
 日の本褌一丁の姿を誇示する犬神。犬神へ向いていた視線のすべてが、一気に殺意のこもったものに変わる。
「受けた攻撃をそのまま同じ力で相手に返す‥‥ハンムラビ法典アターック!」
「リアル10tハンマー!」
「闇の裁き人、DarkUnicorn登場なのじゃ!」
 止血に忙しい少年3人と未だ肺活量の限界に挑戦しつづける伊藤以外の全員が、犬神に攻撃をしかける。
「すべての証拠が出そろったから、判決‥‥もといフルケツを。犯人は俺!! ‥‥ガクッ」
 意味不明の断末魔の叫びを残し、犬神は倒された。
「悪は滅びたようですね‥‥これにて閉廷!」
「えーっ!? ちょ、僕のノートパソコンは!?」
 その勢いにまかせて帯刀がシメようとするが、慌ててヨシュアが遮る。
「ぐすん。一度言ってみたかっただけなのに‥‥そんなに怒らなくてもいいじゃないですか‥‥」
「分かってますよ‥‥そんなコトよりも、裁判の方を‥‥」
 そんな中、騒ぎに一切加わらなかった裁判長の一人、お兄さんがぶちギレ金剛化していた。
「ちょ、どうしたの? お兄さん‥‥『じゃかぁしいやい!』‥‥えーっ!? なにを‥‥『おうおうおう、ガタガタぬかすんじゃねぇ! てめぇらの悪事は、この桜吹雪が全部お見通しなんだよっ!!』」
 奉行の衣装の肩がはだけると、そこには桜吹雪の入墨があった。しかも、きっちり彫り込んでしまったので、今回限定モデルのお兄さんである。つまり今回限りの命‥‥陰腹切った状態で臨んでいるも同然なのである。
「お、お兄さん!? ‥‥『何も言ってくれるな。こうでもしなきゃ、てめぇらは‥‥ぐはっ!』‥‥お兄さん! ねぇ、お兄さん!?」
 あずさの腕の中で息絶えるお兄さん。無事お兄さんが犬死にしたところで、裁判は続行である。
 バーン!
「な、なにごとじゃ!?」
「あ、すんまへん。風船を破ることなくフォールを決めたら勝ちと思ってやっとったんですが、ちょっと手加減できまへんでした」
 白昼の裁判所で風船人形相手の性的暴行事件のような体勢になっていた伊藤が、頭をかいて謝る。
 だが、それを合図とするように、門松ではなく今度はサイの着ぐるみを着出すDarkUnicorn。
 バーン! そのまま伊藤に突進し、伊藤を吹き飛ばしてしまう。
「バーンだけでは惜しかったの。サイ、バーン! でなくては裁判にはなれんのじゃ!」
「そ、そうやったのか‥‥」
 ガックリうなだれる伊藤。そこへ、なぜかカレーを差し出す
「これは?」
「サバカレーじゃ。サイに裁かれたおぬしには、これがふさわしい」
 ブフーッ! 勢いに流されて伊藤がカレーを食べるが、腫れた唇からカレーを吹き出す。
「サイ、バーン? そんな甘口裁判は、激辛カレーでも食らえなのじゃ」
 半ケツを晒したまま、悶絶する伊藤を見下すDarkUnicorn。
「こうして、闇の裁き人DarkUnicornが法では裁けぬ人外の者、すなわち打たれすぎを裁いたのじゃった‥‥」
「めでたしめでたし‥‥これにて閉廷!」
「えーっ!? だから、僕のノートパソコンは!?」
 またも帯刀がシメようとするが、またもヨシュアが遮る。だが、それがサトルの逆鱗に触れた。
「ええい、何度もやめるチャンスはあったのに、それでも兄に背こうというのか!? 兄の善意を信じられないとは‥‥食らえッ! ブローパイプだッ!」
 ブローパイプで吹き矢のようにグリスを飛ばすと、それはヨシュアの顔面を直撃した。
「目が、目がぁッ!」
「フッ‥‥どうかな? シリコングリスの味は。超高級品の銀の粒子入りのものだ。喜んでいただけたようで、光栄の極み!」
「やれやれ、今度こそ‥‥これにて閉廷ぐぼはっ!」
 被告のリタイヤで今度こそシメられると思った帯刀だが、飛び込んできたえらい人に弾き飛ばされてしまった。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ! じゃ、これ読んで‥‥目指せ、プロレスごっこ王! さらばだ!」
 そのまま去っていくえらい人。一方、紙を手渡されたあずさはそれを読みはじめる。
「えーと、静粛に! 判決を言い渡す!」
 1位 伊藤達朗 7
 2位 犬神一子 3
 3位 羽曳野ハツ子 1
「『これにて一件落着‥‥ガクッ』‥‥お、お兄さーんッ!?」
 急に復活したお兄さんだが、やっぱり崩れ落ちる。というか、あずさのサジ加減一つのような気もするが、そこを気にしてはいけない。
 気にすべきは、サトルが倒れていることである。
「目が、目がぁッ!」
 ヨシュアとまったく同じ言葉で悶絶するサトル。その前には、羽曳野が立っていた。
「バビロニアの力、ナメないことね」
 目の前に『目には目を』を直接体現できる対象がいたので、ついついサトルにヨシュアとまったく同じ目に遭わせてしまったのである。
「うぅ‥‥今度こそ、本当に‥‥これにて閉廷!」
 よろよろと起き上がった帯刀がそう宣言したところで、今度こそちゃんと放送は終了していくのであった。結局、ヨシュアのノートパソコンが壊れたままであるが、ヨシュア一人が泣いておしまいである。