芸人プロレスごっこ王24アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/22〜07/24
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。そこへプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「あの、2代目プロレスごっこ王が第25回に決定するという噂は本当なのでしょうか? 何も聞かされてませんが、もう次回なんですけども‥‥ぐぼはっ!」
えらい人が口を開くよりも早く、あせったスタッフが質問をしてしまう。当然ながら僭越なので鉄パイプの制裁を受けるが、えらい人は質問には答えてくれた。
「うん、決定するねぇ」
「そのわりには、第一期のようなポイントのインフレがなかったんですが‥‥ぐぼはっ!」
ならばと、別のスタッフが質問を重ねていくが、やはり僭越ということで鉄パイプの制裁を受ける。でもやはり、えらい人は質問には答えてくれた。
「毎回毎回必死に少ないポイントを積み重ねていくのを、インフレという荒波に飲み込ませたくなかったんだ。そんな格差社会にはしたくないんだ」
「じゃあ、第一期はなんだったん‥‥ぐぼはっ!」
僭越とか抜きにただムカついたということで、鉄パイプのエジキとなるスタッフ。こうして、ようやくスタッフによる質問攻めは止まった。
「ん? もういないのか? じゃあ、7月23日ということでふみの日をテーマに‥‥」
「ふみの日は毎月ありますけど‥‥」
「バカヤロウ! 7月は文月、23をふみと読むだけの日とは、重みが違うんだ! いいから、おまえらは手紙でも読んでろ!」
「それ以前に、放送日が22日だというのは‥‥サー、イエッサー!」
1日くらいではえらい人には誤差にもならないとして、いよいよ次回に決着する第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第24戦目がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・試合形式が、手紙を朗読する形になります。誰宛でも構いませんし、内容も特に問いません。官能小説を朗読しようと、手紙と言い張るのであれば、それは手紙となります。
・手紙さえ朗読するのであれば、その前後や最中に何をしようと個人の勝手です。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・次回、ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決定します。
・結局ポイントのインフレは起きませんでしたが、最後が一発逆転であることに変わりはありません。そういうバラエティのノリに怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。
ランキング(上位10名、第20回分まで)
1位 伊藤達朗(fa5367) 26pt
2位 百鬼レイ(fa4361) 25pt
3位 白海龍(fa4120) 21pt
4位 あずさ&お兄さん(fa2132) 17pt
5位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
6位 パトリシア(fa3800) 15pt
7位 槇島色(fa0868) 10pt
8位 羽曳野ハツ子(fa1032) 9pt
9位 阿野次のもじ(fa3092) 8pt
10位 古河甚五郎(fa3135) 7pt
10位 MAKOTO(fa0295) 7pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第19回 07月07日 07:00〜 天の川
・第20回 07月10日 07:00〜 茨城県水戸市
・第21回 07月13日 07:30〜 湖畔のキャンプ場
・第22回 07月16日 07:00〜 東京湾
・第23回 07月19日 07:00〜 法廷セット
●リプレイ本文
『文月のふみの日ですか‥‥えらい人が考えたとは思えない風流さですネ! ともあれ、最近はあやしいメールが次々と来ますけど、気のせいですかねぇ?』
番組の開始を告げる実況を軽口ではじめるサトル・エンフィールド(fa2824)。そのサトルが横をチラと見ると、そこでは必死な形相でパソコンだったモノをいじくるヨシュア・ルーン(fa3577)の姿があった。
「気のせいとか言えるだけいいよ! ああ、何度電源入れなおしてもハードディスクを認識してくれない。今までの受信メールが‥‥パソコン本体は買いなおせても、失ったデータは戻ってこないんだよ!?」
前回放送分を引きずるヨシュアだったが、サトルは振り返ったりしない。
『ふむ‥‥気のせいのようですね。大体、人と人が争うのはよくない、ましてや骨肉の争いはよくない。というわけで、さっそく本日の朗読会の方に‥‥』
「うぅ‥‥このヨシュア・ルーン、過去を捨ててゼロから再出発するのです‥‥うぅ」
サトルが平然と進行しようとする横で、ヨシュアが未練がましくジャンクとなったノートパソコンをいじくっているが、突然スパスパスパーっと何かが走った。
『あーっと、DarkUnicorn(fa3622)選手がノートパソコンをみじん切りだーッ!』
走った閃光は、DarkUnicornの刀の軌跡であった。あまりのコトにヨシュアは固まったままだが、DarkUnicornは悠然と刀を鞘にしまっている。
「またくだらぬものを斬ってしまったのじゃ‥‥って、みじん切りじゃなく、さいの目切りなのじゃ!」
「‥‥あぁ、僕のノートパソコンが‥‥」
放送席の机ごと、ヨシュアのジャンクパソコンも滅多斬りにされてしまっている。だが、DarkUnicornは謝るどころか、むしろ憤慨している様子だった。
「ムム‥‥紙を作るための木材を調達するハズが、不純物が混じりすぎなのじゃ! 誰じゃ、こんなに金属片やプラスチック片を混ぜたのは!? 紙がないと、手紙が書けないのじゃ!」
手紙を朗読→手紙を労働苦→手紙を苦労して一から作成というコトで、まず紙の原料の調達からはじめようというのだ。
「‥‥だが、心配無用なのじゃ! この木片からできあがったものを、コチラに用意してある料理番組方式なのじゃ!」
トイレットペーパーを3ロールほど取り出すDarkUnicorn。言うまでもないが、局のトイレから持ってきただけである。
「手で使う紙、すなわちこれも手紙の一種なのじゃ!」
『これはお見事! 抜かりがないとしか言いようがありません。まったく、ヨシュアにも見習って欲しいものです』
勝手なコトを言うDarkUnicornに負けじと、サトルもヨシュアに身勝手なフリをする。
「えーと、じゃあ‥‥産業廃棄物に変わり果てたモノからできあがったんじゃないけど、コチラにもしものときバックアップ用パソコンをメインマシンに‥‥って、ない!?」
キョロキョロするヨシュアの後ろで、百鬼レイ(fa4361)がヨシュアの下ろしたてのパソコンを手にしていた。
「はっ、いつの間に!?」
『ああ、予告が達成されないよう、予告時間より先に手渡しておいたんだ』
驚くヨシュアとは対照的に、冷静にサトルが説明する。とはいえ、極めて言葉足らずではあったが。
「予告? って、何の予告?」
『ああ、見せてなかったっけ。これ』
そう言うと、サトルは百鬼の出した手紙──予告状をヨシュアに手渡した。
「えーっと、なになに‥‥『本日の7時15分に、えらい人の鉄パイプをいただきに参上致します。怪盗ノレパン』‥‥ツッコミどころが多すぎるんで、前から順番に‥‥まだ7時15分になってないじゃん!」
『いや、だから予告が達成されないように予告時間より先に渡したって、さっき言ったばっかりだろ!』
「ぐっ、じゃあ‥‥えらい人の鉄パイプじゃなくて、僕のノートパソコンじゃん!」
「ドキドキ★ 芸能人の所持品抜き打ちチェーック!」
サトルが説明しようとするのを遮って、百鬼がキュートに割って入ってくる。
「へ?」
「手紙といえば、男子たるもの一度はもらってみたいラブレター、新聞や広告の記事を切り貼りした脅迫状など、多種多様に存在しているワケですが‥‥その中でも一際異彩を放ち、なおかつ高尚で美学を感ぜざるおえない手紙があります‥‥分かりますか?」
「分かりません!」
「ご名答! そうです、予告状なのです!」
「いや、分からないと答えたんですけど‥‥」
会話が確実に噛み合っていなかったが、百鬼は問答無用で進めていく。一人芝居をはじめてしまうほどの勢いで。
「『警部! 美術館にこのようなものが送りつけられてきました』『む? 手紙ごときに何をそんなに騒いで‥‥何ぃ! ノレパンめぇ、舐めおって! 緊急配備だ!!』」
「まだツッコミを入れてなかったですが、大体がノレパンって何者ですか?」
「是弐型の坊ちゃんのライバルに決まってるでしょう?」
「その是弐型ってのは‥‥ああ、堂々巡りになるのが読めたのでいいです」
ただでさえあさっての方向に向かっているというのに、これで無限ループに入ったらたまったものではない。とはいえ、パソコンを取り戻すためのツッコミはつづく。
「そんなことより、なんで鉄パイプじゃなくて僕のパソコンを盗んでるんですか?」
「えらい人の鉄パイプにはえらい人自身という最強の警備がなされていますが、こちらの美術館はまともな警備がされていないので、行きがけの駄賃に‥‥ほら★」
「うわぁ!」
なにやら表示された画面を見せようとする百鬼に、慌てたヨシュアが飛びつく。
美術品というか、コレクションのエロ画像や動画を失っていたヨシュアだが、一度食べたおかずは二度と食べないグルメとばかりに、すでに新しいコレクションでギッチギチになっていたのだ。
『えー、ヨシュアコレクションは放送できないので、個人的に見せてもらうとして‥‥放置プレイ状態だったDarkUnicorn選手に戻りましょう』
早くも仲良く画面に見入っている百鬼とヨシュアを無視して、DarkUnicornに話を戻すサトル。
「うむ。で、このトイレットペーパーをじゃな‥‥」
先程から軽く3分以上経っていたが、無論木片は木片のままであるのは言うまでもない。あくまでも、トイレットペーパーを使う気である。
「手紙を労働食うというワケで、ヤギにできるコトがわしにできない道理はないのじゃ!」
トイレットペーパーを食べはじめるDarkUnicorn。いくら水に溶けやすいとはいえ、食用ではないのでよい子は絶対にマネしてはいけない。
『やはり、紙は苛性ソーダに浸けてからの方がいいんじゃ‥‥』
それもどうかと思うが、どちらにしろDarkUnicornはトイレ直行である。
ドタドタと出て行くDarkUnicornを白い目で見ながら、今度は白鳥沢優雅(fa0361)が入ってくる。
「その歩き方は美しくないよ。やはり、僕みたいにコーヒーカップ片手に入ってくるくらいでないとね」
そのままコーヒーをこぼすことなく、名のとおり優雅にリングインする白鳥沢。そして、ようやく本日はじめてのマトモな朗読がはじまるのであった。
「母上様、みな様、三日とろろ美味しゅうございました‥‥って、あれ? 書いた記憶がないんだけどな‥‥ま、いいや。干し柿、餅も美味しゅうございました‥‥」
このまま行くと自ら命を絶ってしまいそうな文面だが、どちらにしろ長いのでごっそりカットである。
「‥‥優雅はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません‥‥って、なんで僕が走らなきゃいけないの?」
『知るか! おっと、天使、天使‥‥書いたのはあなたですよ!』
カットされた部分もずっと白鳥沢の対応をしていたサトルの方こそ疲れ切っていたが、ギリギリのところで耐えている。
「というわけで、僕が対決するのは‥‥この手紙さ!」
白鳥沢がリングに手紙を叩きつける。そしてそのまま試合に‥‥というところで、声がかかる。
「死地に赴く者の手紙とは、そう軽々しく扱ってよいものではないで!」
「え?」
白鳥沢が視線を上げると、そこには旧日本軍の二等兵の格好をした伊藤達朗(fa5367)が立っていた。
「小隊長殿、恥ずかしながら、帰ってまいりました!」
誰が小隊長か以前に、どこから帰ってきたのかすらナゾであるが、それ以前にえらい人が飛んでくると、そのまま伊藤をどこかへと連れて行ってしまう。
「みんな退場の仕方が美しくないね。僕が本当の戦いの結末というものを見せてあげよう‥‥天上天下優雅独尊! 奥義なんと白鳥拳!」
自分の名前の散りばめられた必殺技を放つ白鳥。とはいえ、単に拳を突き上げただけだが。
だが、それなのに立ったままピクリとも動かなくなる。
『はっ、立ったまま絶命しているッ!?』
自分の名の入った必殺技だけあって、どうも自分自身を必ず殺したようだった。
そんな勝手に真っ白な灰になった白鳥はオブジェとして放置として、あずさ&お兄さん(fa2132)が入ってくる。
「はい、今日は私宛てに届いているファンレターを紹介しますっ♪」
「え? 自分で書いた手紙を朗読するんじゃなくてもいいの? まあ、確かに僕の手紙も誰が書いたのか分かんなかったしなぁ‥‥」
あずさがしゃべりはじめると、当たり前のように復活した白鳥沢が茶々を入れる。
「まず最初のお手紙から‥‥『お兄さんは預かった。返して欲しくば25,000円用意しろ』‥‥んー、お兄さんの値段にしては高いですね?」
「そうだね。ファンレターじゃなくて脅迫状だけどね」
「あれ? この手紙、差し出し人の名前がないっ? 番組で紹介された人には、抽選でプレゼントがあったのに‥‥残念、残念っ☆」
「募集してないのに、プレゼントはあるんだね」
気づけば、普通にあずさと白鳥沢のボケツッコミが成立してしまっている。ツッコミはお兄さんの立ち位置なんじゃ? という話もあるが、25,000円を用意できなかったので、帰らぬ人となってしまっている。
「つづいてのお便りは‥‥『これを読んだ人は、3日以内に同じ内容の手紙を5通送らないと死にます』‥‥え? 死んじゃうの?」
「それは大変だよ! さあ、早く書かないと‥‥ささ、たつやんも手伝って!」
ノッてしまった白鳥沢の手によって、ちょうどそこへ戻ってきた伊藤が引きずり込まれる。
「なにぃ! 官能小説の執筆やって!? まかせなはれ!」
おかしなコトを言っているが、伊藤はなりたての打たれすぎなのでしょうがない。
伊藤の顔は、すっかり形が変わってしまっていた。えらい人は服で見えないボディを狙ったりせず、打たれすぎも辞さずに頭部を集中的に狙ったのである。
「確かに、官能小説がいきなり送りつけられてきたら、不幸だね!」
「ならばよかろう! この美しい僕を総受に書くがよい!」
白鳥沢がよく分からないセクシーポーズをとるが、それを一切無視してあずさと伊藤が執筆に励む。
こうして伊藤は戻ってきたが、DarkUnicornは戻ってこない。いや、戻れない。勝手にトイレットペーパーを持ってきたせいで、紙のない個室から脱出することができずにいたのだ。
その点でいえば、百鬼とヨシュアもパソコンの画面に広がるエロパラダイスから戻って来れないままだったが。
「I’m ムチャキーングッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくヨ!」
膠着状態に陥ったそこへ、正装した羽曳野ハツ子(fa1032)が普段のえらい人のように飛び込んでくる。
懐から封のされた小ジャレた封筒を取り出すと、銀のナイフでさっと開封し、それを読み上げはじめる。
「では、2代目プロレスごっこ王の発表ですッ!」
『あの、それは次回‥‥』
だが、羽曳野はサトルを無視して構わずつづけていく。
「まずは第3位、どらららららら‥‥」
例のドラムの音を自分の口で表現する羽曳野。無論、ボイスパーカッションというレベルではなく、そのまま『どらららららら』と棒読みしているだけである。
「じゃん! 72ポイント、該当者なし!」
『‥‥該当者がいないのはともかく、ついに恐れていたインフレになっていますが‥‥』
だが、羽曳野はやっぱりサトルを無視して構わずつづけていく。
「気にせず第2位、だらららららら‥‥じゃん! 103ポイント、えらい人」
えらい人が走り込んでくると、先程の伊藤のように連行して‥‥いくのかと思いきや、ガッツポーズをしながらそのまま走り抜けていってしまう。どうも、単に通算2位に躍り出たコトを喜んでいただけのようだ。
『ああ、もう誰も羽曳野選手を止められない‥‥こうなると、もう1位はバレバレの気がしますが‥‥』
サトルがあきらめにも似た実況をつづける中、羽曳野がついに1位を読み上げる。
「そして栄えある第1位は‥‥でゅららららら‥‥じゃん! 1万飛んで20ポイント、羽曳野ハツ子! プロレスごっこ王、おめでとう! 以上だ!」
いつものえらい人のポイント発表と同じように、颯爽と去っていってしまう羽曳野。えらい人が一向に止めに来ないので、本当にこのままのポイントで確定してしまった。さすがにポイントだけで、2代目プロレスごっこ王の決定とまではいかなかったが。
『それでもなお、次回で決着がつかない方に魂を賭けようッ!』
サトルがよく分からない魂のBETをして、お別れの時間となった。
こうして、羽曳野がぶっちぎりで1位の中、いよいよ次回の2代目プロレスごっこ王決定戦を迎えるのであった。