芸人プロレスごっこ王25アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
07/25〜07/27
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
もはやプロレスどころか、本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。いつもとは若干違った空気の一同の前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「特にポイントのインフレもなく、ついに来たな!」
「はい、えらい人の『毎回毎回必死に少ないポイントを積み重ねていくのを、インフレという荒波に飲み込ませたくない』との言葉どおり、地道なポイントの積み重ねだけでついに大一番を迎えました!」
えらい人の呼びかけに、スタッフ一同半泣きで返す。これだけだと、カルトの集会か何かに勘違いされそうだが、無論そのまま済ますえらい人ではない。
「今回、ついに2代目プロレスごっこ王が決定するわけだが‥‥ここでジャンピングチャーンス!!」
「は!?」
「今回の1位には、10,000ptが加算されまーす!!」
「え、えーッ!?」
突然のことに、動揺を隠し切れないスタッフたち。とはいえ、どうせこうなるだろという思いもあったのは事実だが。
「あの、格差社会うんぬんの公約は‥‥?」
「言ってる意味が分からん! 分かるけど、分からんのだよ! ククク‥‥」
「うぅ‥‥サー、イエッサー!」
スタッフが振り絞るように返事をする中、ついに第二期芸人プロレスごっこ王選手権ランキング戦の第25戦目にして2代目プロレスごっこ王決定戦がはじまるのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・通常のスタジオにリングを置き、そこで収録を行います。
・試合にあたり、特にテーマはありません。優勝目指して突き進むのみです。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・今回、ランキングによる2代目プロレスごっこ王が決定します。
・今回の1位が自動的にプロレスごっこ王になるわけですが、その上でさらに決着しないとか、えらい人が優勝してしまうとか‥‥何が起こっても怒らない人募集です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。
・第3期シリーズは、8月末〜9月頭の開始を予定しています。
ランキング(上位10名、第22回分まで)
1位 百鬼レイ(fa4361) 32pt
1位 伊藤達朗(fa5367) 32pt
3位 白海龍(fa4120) 21pt
4位 あずさ&お兄さん(fa2132) 18pt
5位 DarkUnicorn(fa3622) 16pt
6位 パトリシア(fa3800) 15pt
7位 Tyrantess(fa3596) 12pt
8位 槇島色(fa0868) 10pt
8位 羽曳野ハツ子(fa1032) 10pt
10位 阿野次のもじ(fa3092) 8pt
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第20回 07月10日 07:00〜 茨城県水戸市
・第21回 07月13日 07:30〜 湖畔のキャンプ場
・第22回 07月16日 07:00〜 東京湾
・第23回 07月19日 07:00〜 法廷セット
・第24回 07月22日 07:00〜 ふみの日
●リプレイ本文
『長かった戦いも、いよいよ大詰め。ついに今日、2代目プロレスごっこ王が決定します‥‥って、そんなわけがありません! 今回で終わらず、あと1回か2回つづく方向にぼくの魂を賭けます。どうせ、次回は1千万pt、次々回は1億ptくらいになっちゃうんだ、あはは‥‥』
実況をはじめたものの、気づけば壊れ気味に笑うサトル・エンフィールド(fa2824)。それには、隣のヨシュア・ルーン(fa3577)もやれやれという顔をしている。
「そんなわけないでしょ。せっかく初代プロレスごっこ王のマリアーノ・ファリアス(fa2539)選手にもお越しいただいているというのに‥‥あ、よろしくお願いしますね」
「うむ、よきにはからえ!」
大仰にうなずくマリアーノ。スペシャルゲストということで、若干調子に乗っているのはご愛嬌。
と、それまで真っ暗だったリングに、スポットライトが当てられる。そこには、あずさ&お兄さん(fa2132)のあずさの姿だけがあった。
「‥‥この決戦のリング。そこにたどり着くために、一体いくつの屍を乗り越えてきたのでしょうか? レインボーブリッジから落ちたり、マカオでボッシュートされたり、目玉をくり抜かれて五円玉をはめ込まれたり、連想ゲームの途中で撲殺されたり、塩ビ人形だったり、火炎放射器で焼き払われたり、まるまる1回出番がなかったり、ピッチングマシンで投げられてカットされたり、魚のはらわたを突っ込まれたり、海に放り込まれたり、腹をかっさばかれたり、陰腹切ってお奉行様になったり。そんな散っていった多くの『お兄さん』の思い出を胸に、第2期最後の戦いに挑みます‥‥え? 散った直接の原因の大半があずさにある? きっと気のせいです!」
『いかにも最終回っぽい前口上から入ったあずささんですが、どうするつもりでしょうか‥‥?』
「最終回‥‥当然、それに相応しい敵が必要ですが、それはどんな相手でしょう? 今回はいないムチャな人なら、きっとこう言い切ったハズです。『プロレスごっこ』そのものと戦う、と!」
高らかと宣言するあずさ。かぶせても気にしないのもあずさ流である。
『プロレスごっこそのもの‥‥って何?』
「えーと、僕のパソコンにインストールされているDBによると‥‥って、いつの間に!? サトルくん、また勝手にいじったね?」
『激レアな辞書ソフトを入れてやったんだから、ありがたく‥‥』
放送席でサトルとヨシュアが争う間にも、あずさは試合をはじめるべく進行していく。
「プロレスごっこそのもの。それはえらい人や初代王者、実況解説コンビや他の選手を含めてのプロレスごっこそのものなのです!」
放送席のマリアーノ、サトルやヨシュアをビシっと指差すあずさ。その中を、サンドバッグを担いだ九条運(fa0378)が入ってくる。
「それが本当にプロレスごっこそのものかい?」
「えっ?」
ドサっとサンドバッグを下ろすと、今度は九条があずさをビシっと指差す。
「なぜ毎回『軟体レスラーvsボストンバッグ』が例示されているか考えたコトはあるかな? そう、それこそが原点だからさ。原点の戦いをすることこそ、プロレスごっこと戦うってことさ。イクぜ!」
九条が立てておいたサンドバックを、水平チョップで豪快に吹き飛ばす。
「まずは基本に忠実に、チョップとエルボーの応酬だッ!」
吊るしているわけではないので、反動がなくて一方的に攻めているだけの九条だが、それでも応酬と言い張る。おかげで、あずさが気圧されてしまう。
「くっ‥‥しかし、今のままではあまりに無力。でも、大丈夫。最終回名物、脈絡なく出てくる新必殺技が発動するからね! お兄さん8体を生贄に捧げ、等身大キングお兄さんを特殊召喚! ずっと私のターン!」
気を取り直したあずさがお兄さんを8体並べると、等身大サイズのお兄さんの着ぐるみを取り出してきて、その中にもそもそと入っていく。
いや、これはあくまでも召還である。お兄さんに中の人などいないので、すべて目の錯覚というものであろう。
「何をやっておる?」
「ひーっ!」
一方、物陰からリング上の様子をうかがっていた伊藤達朗(fa5367)に、百鬼レイ(fa4361)が声をかける。思わず伊藤が飛び上がる。
「しーっ! まいど、伊藤達朗や。こうやって、戦況をうかがってるんやないか」
「笑止! 我が眼前に立ちふさがる者すべては、我が王への輝かしき軌跡への障害とみなし排除するのみ! 蹴散らすのみよォォ!!」
百鬼はおかしなテンションのまま、漆黒の馬体のばん馬にまたがり、リングに走っていってしまう。
「ふー、若いってステキやね」
あくまでも冷静な伊藤は現在3位。トップとは9,992pt差と逆転優勝できる位置にいるので、慎重に情勢を見極めているのである。まあ、百鬼も9,999pt差の4位なので、奇跡の大逆転を演出できる位置にいたのだが、変なスイッチが入ってしまっているのでもう止まらない。
「ヘッドロックだ。バックドロップで返せるものなら返してみやが‥‥ぐぼはっ!」
「それ行け、戦え! キングお兄さん‥‥きゃっ!」
リング上に暴れ馬乱入で、さっそく大惨事である。肝心の百鬼にいたっては、とっくに振り落とされてリングサイドに頭から突き刺さっている。
『さすがはプロレスごっこ、最終回へ向けて盛り上げてくれます!』
「だから、今回が最終回だってば‥‥ま、愚兄の打たれ過ぎの頭じゃ理解できないのもしょうがないかな?」
『あーっと、ここへシェフを引き連れて伊藤選手が入って来ました!』
「‥‥みんな格闘系のようやね。やったら、わいは大食い系でいかせてもらいまひょか!」
無人となったリング上に立つ伊藤。
百鬼は直立したオブジェだからどうでもいいとして、対戦相手のサンドバックを抱えたままの九条と、あずさ、もといキングお兄さんは百鬼の馬に追われてリングサイドをグルグル回っていた。それこそ、バターになりそうな勢いで。
「みんな勘違いしてるようやけど、戦う相手は自分自身や! 今までの自分を乗り越えんかったら、新しい道は切り開けへんで!」
そう言って、大食いに入る伊藤。伊藤も勘違いしてる気がしてならないが、そこは生温かく見守る放送席。というか、放送席にも魔の手が忍び寄っていたのだ。
「やはり、先っぽは小さい穴よりも大きい方が良いのッ。出の勢いが違うのじゃ!」
なぜかじょうろをいじっていたDarkUnicorn(fa3622)が、放送席のサトル、ヨシュア、マリアーノの股間に水をまきはじめたのだ。
『うわっ!?』
「おねしょじゃないですよ?」
サトルとヨシュアが慌てる中、相変わらずどっしりと構えたままのマリアーノ。だがとにかく、DarkUnicornがミスに気づく。
「はっ!? すまんのじゃ。わしとしたことが、少し寝ぼけておったようじゃ。これはすぐに洗濯せねばの」
問答無用でズボンを下ろしにかかるDarkUnicorn。ここに、古河甚五郎(fa3135)が飛び込んでくると、三人の股間にガムテープを貼りつけてしまう。
「ふう、危ういところで会場保守が間に合いました。このポイントインフレのご時勢、せめて子どもたちは守って上げなければなりませんからね。少子化の時代に、子どもを格差社会の被害者にしてはいけないのです‥‥ん? 格差ない社会‥‥隠さない社会‥‥おお、なんということでしょう。隠してはいけない社会の窓をふさいでしまいました、ガムテで!」
突然やってきて、勝手なコトを言いまくって身悶える古河。自分で勝手にガムテを貼っておきながら、どうやら剥がすつもりらしい。
『ちょ!』
「ああ、よかったですね。少年たちなので、剥がすときの痛みが大人ほどではありませんからね。ヒノトさんと同じでね‥‥ぐぼはっ!」
後ずさる三人ににじり寄る古河。だが、勝手なコトを言いつづけたおかげで、DarkUnicornに殴られることとなった。
「誰が白板じゃ! が、それはともかく、剥がしてやらんといかんのぅ‥‥」
今度はDarkUnicornににじり寄られる三人。
『結局、痛い目に遭うのね‥‥』
「でも、古河さんよりはヒメさんの方がいいよね?」
『まあね』
気づけば、同一状況下に置かれてサトルとヨシュアに兄弟愛のようなものが芽生えていた。
『ぎゃっ!』
「ぐはっ!」
ベリ、ベリベリっと三人分を一気に引っぺがすDarkUnicorn。お子ちゃまのジュニアならコワいものなしなので、実に豪快である。
「ふむ‥‥ふむふむ‥‥」
サトルとヨシュアがもじもじする中、やはり堂々と立っているマリアーノ。それにDarkUnicornが何かに気づく。
「王になるには、前回なくなった玉を揃えるのが手っ取り早いからのッ! 一つ、二つ‥‥あと1個足りない‥‥」
ナニを数えたのかよく分からないが、龍玉が1個足りないと言い張るDarkUnicorn。飢えた目で周囲を見渡す。
百鬼か伊藤か、あるいは古河か九条か。というか、自分以外は全員が玉の所有者である。そう、一応あずさも持っているといえば持っているのだが、思い込みの力は強力ですでに誰もが対象外としてしまっているが。
「やはり玉に頼って居る様ではいかんの‥‥ぐはっ!」
DarkUnicornが思い直したところで、ちょうど入ってきたえらい人に突き飛ばされてしまう。
「I’m えらい人ーッ! 今回の1位、1万pt獲得者の発表だゼ!」
1位 DarkUnicorn 2万pt
「ちょ、待つのじゃ! なんで2万ptなのじゃ!?」
「だって、玉は2つ、ポイントは2倍でしょ! さらばだ‥‥」
こうして、25回つづいた第2期プロレスごっこ王も、トータル2万16ptを獲得したDarkUnicornの優勝で幕を閉じるのであった。
「ちょっと待つのじゃ! マリアーノがプロレスごっこ王のままなのはよいのじゃが、なんでわしはプロレスごっこ玉になっておるのじゃ!」
『前回の決定戦で、将棋の駒に王将と玉将があるって言ったのはヒメさんですよね?』
「確かに、某アマチュア芸人にプロレスごっこ玉をススメはしたのじゃが、よもやわしがなるとは‥‥とほほ」
サトルに指摘され、ガックリ肩を落とすDarkUnicorn。そこへ、古河が追い討ちかける。
「むしろ『生』にした方が、隠さない社会に近いですよね。少子化対策にもなりますし‥‥ぐぼはっ!」
いつの間にかガムテで『玉』という字を作っていた古河が、『玉』の『、』をずらして『生』という字にしていたが、鋭くDarkUnicornにボコボコにされた。
だが、ボコボコどころかボロボロになっても戦いつづけている者もいるのだ。そう、伊藤である。
食べすぎで終わりを理解できず、ただひたすらに大食いをつづけている様が、視聴者の涙を誘ったという。
え? 九条とあずさ? まだバターになってないので、馬に追われて走ってるままですが、何か? 百鬼の犬神家オブジェよりマシでしょう?